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「今の世の中にはない技術」を世界へ Diver-Xが挑戦する人間拡張の実装とは?

バーチャル空間で指の動きを精確に反映させる「ContactGlove」や、Meta Quest 3のコントローラー操作体験をよりリッチなものにする「ContactSheet for Quest」など、ユニークな製品を開発してきたDiver-X。その製品は、VR分野ではもちろん、今後さまざまな領域でも活用できるポテンシャルを秘めています。2024年10月には、新作となるモーショントラッキングデバイス「ContactTrack」を発表。着々と製品開発の実績を積み上げています。

そんなDiver-Xは今後の成長のために企業としての体制強化と、製品開発のための人員を募集中とのこと。そもそもDiver-Xとは、どのような企業で、何を目指して開発を続けているのか、代表の迫田大翔氏とエンジニアの伊東健一氏のおふたりに話をお訊きしました。

インターフェースで人間の能力を拡張するために

――おふたりの自己紹介をお願いいたします。

迫田大翔氏:
4年前にDiver-Xを設立した、代表の迫田です。VR技術そのもの、というよりは人間が使うインターフェースに興味があり、主にVRのハードウェアを開発しています。

伊東健一氏:
伊東健一と申します。Diver-Xに入社したのは今年の4月ですが、それ以前から業務委託の形でソフトウェアの仕事に携わっていました。現在は研究員として最新の研究の調査などをしながら、ソフトウェアの制作もしています。

――Diver-X設立の経緯を教えてください。

迫田:
最初のきっかけは「HalfDive」という、寝ながらVR体験ができるデバイスの研究と開発です。

私はもともとインターフェースに興味があったのですが、開発しているものを研究段階に留めておくのではなく、製品としての社会実装を同時並行で進めることで、社会にインパクトを与えていきたいと、そのような思いがありました。そこで、研究という一本道ではなく、営利化をしながら歩む道を選ぶのに伴って、2021年にDiver-Xを設立しました。


(HalfDiveのプロトタイプ。寝たままの姿勢でのVR体験を目指し、開発が進められていた)

――HalfDiveの発表はVRユーザーのあいだでも話題になり、クラウドファンディングにもたくさんの支援と応援の声が集まっていたと記憶しています。ただ、残念ながらその後、クラウドファンディング中止の発表がありました。

迫田:
クラウドファンディングの中止と、HalfDiveが実質的に凍結状態となっている理由としては、主に2点あります。1つは金銭的な理由。もう1つは、それに伴うHalfDive自体のマネタイズの問題です。

2021年12月にスタートしたクラウドファンディングでは、ありがたいことに約2500万円ものご支援が集まったのですが、それでも量産を考慮するとギリギリでして……。少ないチームで製品を量産しようとすると、それだけで1、2年のリソースが必要になる。つまり、一度そこで「量産」という選択をしてしまうと、よほどチームが急拡大しないかぎり、他のことができなくなってしまうんです。

そこで、「それは本当に、自分たちの1、2年間を賭ける価値があるプロダクトなのか」を改めてチーム内で考え直しました。その中で浮かび上がってきたのが、「このHalfDiveをどうやって実用的なものにしていくか」という観点です。

というのも、「ヘッドマウントディスプレイは良いものができたとして、寝ながら使うインターフェースはどうするのか」という問題があったのです。HMDを作る以前に、それと組み合わせて使うインターフェースの部分をしっかり作っていかなければならないという考えに至りました。

特に今後は、「インターフェース」の存在がいろいろな業界においてキーになるのではないか、という予感があります。その典型例であるグローブを作ろうと考えて誕生したのが「ContactGlove」であり、それが現在の事業にも繋がっている形ですね。


(「ContactGlove」バーチャル空間で指の細やかな動きを再現可能なデバイス)

「ContactGlove」以外にもいろいろなデバイスを作っていますが、その大元には「インターフェースで人間の能力を拡張する」という思いがあります。

毎日が刺激的でワクワクできる、ものづくり好きが集まる職場

――実際にDiver-Xでエンジニアとして働いている伊東さんに、現在のお仕事の内容を詳しくお聞かせいただけますか?

伊東:
ただソフトウェアを作るだけではなく、研究員として、主に技術面での研究も並行して進めています。製品レベルではまだ誰も実現していないようなことを実験したり、実装してみたり。最近だと、ContactTrackのような製品に組み込むアルゴリズムの開発にも行き来して取り組んでおります。

私個人のバックグラウンドとしては、博士課程と修士課程で5年間にわたってVRの研究に携わっていました。そこで培ったVRや触覚に関する知識を用いて、会社でも研究に従事しております。

――大学時代の研究について、もう少し詳しくうかがってもよろしいでしょうか。

伊東:
簡単に説明すると、風を使ったVRの触覚刺激について研究していました。私たちが日常で当たり前のように感じている風ですが、VRの世界では、街中では味わえない風を体験することがあります。たとえば、砂漠の熱い風や、雪山の冷たい風などですね。

通常の自宅でのVR体験においては、「VRChatで砂漠に行ったけれど、部屋はクーラーでキンキンに冷えている」なんてことは珍しくありません。ですが、それではせっかくのVR体験への没入感が削がれてしまう。そこで、「環境の刺激をうまく合わせることで、VRの世界により溶け込めないか」と考えて、研究に取り組んでいました。

――Diver-Xとはどのようなきっかけで出会ったのでしょうか。

迫田:
Twitterで募集をしていたところ、たまたま応募してくださったのが最初ですね。定期的に「この案件、やりたい方いませんか?」と募集をかけていたのですが、そこでご縁があり、ちょうど今年の3月に博士が終わるということだったので、新卒として入っていただきました。

伊東:
私の目線でお話しすると、もともとHalfDiveの頃からDiver-Xのことは存じておりました。「おもしろいプロジェクトをやっているな」と思って、ContactGloveのクラウドファンディングにも参加していたので、製品のユーザーとして集まってきた1人でもあります。

あとは私自身、スタートアップで働くことにも興味がありました。VRの研究をしていたこともあり、「VRの分野に関して日本国内で一番おもしろいことができるところはここかな」と思って、自分から「入れてください」とお願いした感じですね(笑)。

――実際にDiver-Xに入社してみての感想はいかがでしたか?

伊東:
最初はレギュラーメンバーが自分を含む3人しかおらず、4月に入った当初はオフィスも狭く、「事務所に来ても使えるパソコンがない」みたいなこともありましたね(笑)。それはそれでアットホーム感がありました。もちろん、今は広々としたオフィスで伸び伸びと働けています。

迫田:
伊東さんが入ってからリリースされた「ContactSheet」は、多くのユーザーの方からご好評をいただいております。自分が携わった開発の成果がすぐに製品としてリリースされ、それによって会社がちょっと大きくなり、自分が働く場所も変わっていく――という、大企業だと数十年かけて味わうようなサイクルを数ヶ月で体験できることは、1つの刺激になるかもしれないですね。

伊東:
そうですね。やったことがダイレクトに返ってくる感覚があります。

――ベンチャー企業ならではの魅力ですね。伊東さんご自身も、チャレンジ精神の強い印象です。

伊東:
客観的に見ると、あるのかもしれません。そもそもVRで博士課程に行くことは珍しく、日本全体でも何百人もいるわけではないので。私個人としては、どんどん新しいことをやっていきたい、それによってワクワク感を得たいという強い気持ちがあります。

Diver-Xでの日々がまさにそうで、毎週のように出てくる新しい成果に対してみんなで盛り上がることもありますし、お客さんからもいろんなフィードバックが来ますし、「あの会社が新しい製品を出したらしいぞ!」というニュースも飛び込んできます。「こんなにいろんなことが起こっていいのか!」と思うくらい本当に毎日が刺激的で、ワクワク感を得られる環境だと感じています。

――そういった部分が、仕事のやりがいにも繋がっていそうですね。ほかに「Diver-Xに入って良かった」と感じる部分はありますか?

伊東:
研究開発においては、ハードウェアとソフトウェアに関する幅広い知見が欠かせません。基礎と応用だけでなく、いろいろなレイヤーで把握していく必要がある。もちろん、ちょっとずつ勉強してはいくのですが、そのすべてを最初から1人で完璧に把握するのは困難です。

ですが、Diver-Xには、各分野のスペシャリストがソフトウェアチームにもハードウェアチームにも揃っています。詳しい人にすぐに聞きに行ける環境が整っていることで、自分の知らない分野のことも最先端のレベルで取り組みつつ、前へ進んでいける。それがすごく楽しいですね。

迫田:
ソフトとハード、さらにはその生産まで含めてトータルでやっている会社は、結構少ないように感じています。一連の流れをすべて集約しているからこそできることもあると思うんですよね。

ハードウェアエンジニアとソフトウェアエンジニアが常に同じ場所にいて、お互いに意見を出し合いながら、ハードに合わせてソフトを変えることも、ソフトに合わせてハードの仕様を見直すこともできる。そういったことができるのは、環境としてもおもしろいんじゃないかなと思います。

――メンバーの学習意欲の高さもそうですが経営者である迫田さんご自身がかなり専門分野に詳しいことも大きな要因に感じました。「経営者がエンジニアと対等に話せる」「エンジニアの話をわかってくれる」という部分は、働く側からすると嬉しいポイントではないかと。

迫田:
そうかもしれません。ただ、それゆえにマイクロマネジメントしすぎることもあるんですけど(笑)。

伊東:
立場や肩書に関係なく、全員から「ものづくりを愛している」という雰囲気がひしひしと伝わってきますよね。私も機械工学科の出身で、「ものづくりが大好き!」という気持ちで大学生活を送ってきたので、同じ思いを持っている人たちに囲まれながら仕事ができて楽しいです。

――これまでに関わってきたプロダクトに関して、嬉しかったエピソードなどはありますか?

伊東:
「ContactTrack」が完成したときは嬉しかったですね。


(「ContactTrack」アウトサイドイン式のモーショントラッキングデバイス。VRデバイスと組み合わせて利用可能)

ユーザーの姿勢を把握する手段として、機械学習が必要なのか、それともアルゴリズムの高速化をがんばるべきなのかなど、実現に至るまでには紆余曲折がありました。最終的には、当初は考えつかなかったような性能のものができ、驚きもありつつ嬉しかったです。

迫田:
現時点ではあくまでも「開発中のステップアップの喜び」のようなイメージですが、リリース後になるとまた印象が変わってくるかもしれません(※インタビューは9月上旬)。たとえば、「VR系のイベントで、知らない人が自分たちの製品を使っていた」という光景を見たら、また別の嬉しさがこみ上げてくるんじゃないかなと。少し前の話になりますが、『パトレイバー』のイングラムを動かすために「ContactGlove」が使われているのを見たときが、まさにそうでした。自分たちの成果が世の中にちゃんと普及している光景を、自分の目で見て実感できることが、やはり一番嬉しいかもしれません。

――そのような光景を見られることも、Diver-Xで働くことのおもしろさであるとも言えそうですね。世に送り出した製品が、1つのユースケースにとどまらない、思いも寄らない方法やシーンで活用されている。そういうおもしろいデバイスに携われることは、魅力的に感じる人も多いように思います。

製品の用途をより広げていくために

――現在はエンジニアを募集中で、採用全般に関しても拡大されています。どのような理由で採用を増やしているのでしょうか。

迫田:
理由は主に2つあります。まず1つは、人員の拡充ですね。

Diver-Xは現在、ヒューマンインタフェースデバイスの開発・販売を主な事業の1つとしているのですが、細分化すると実はいろいろなことに取り組んでいます。ハードウェア自体の設計もそうですが、そのデバイスに組み込むセンサーや、必要な技術の研究開発、たとえばハンドトラッキングの技術などを行うチームもあります。さらに、形になったデバイスを量産化するハードウェアチームがあり、その製品をソリューション化する事業も存在しています。

たとえば、まもなく発表予定の「ContactTrack」をOEM(他社ブランドとして生産)して、PCに組み込めるようにしたり、ほかのVRHMDと互換性を持たせたり、ARグラスに組み込んだり、といった活用方法も想定しています。

我々の理念としては、ある製品を1つのパッケージに留めるのではなく、そこから派生するアプリケーションまでトータルでサポートしていきたい。これまではデバイスに注力していたのですが、1つのデバイスに付随していくつもソリューションを提供できるようにしたい。ハードウェア自体も今後増やしていきたいと考えています。

ですが、それを実現するには、人員の拡充が欠かせません。ハードウェアを毎年1個作るだけならまだしも、「ハードウェアを年に2、3個作ります」「そのハードウェアを1個作ったら、それに伴って複数のアプリケーションも出します」となると、倍々に人が必要になってくる。それが、1つ目の採用の背景です。

――一般ユーザー向けに作ったプロダクトをただ量産して販売するだけでなく、それをビジネス用途で使えるアプリケーションを作ったり、ソリューションを提供したりといった方向での展開も考えており、それを実現できる方を求めていると。

迫田:
仰るとおりです。採用のもう1つの理由は、1つの製品を長く使ってもらうための人的コストの確保ですね。

現在、弊社の売上の多くがVRChatユーザー向けのデバイスなのですが、これは非常に特殊な事業構造だと思っておりまして。というのも、1つのデバイスと紐づく互換関係が多いんですよね。

一例として、ContactGloveの場合、使えるHMDが10種類くらいあります。加えて、それを使うパソコンのスペックや環境もユーザーさんごとに違いますし、ほかにどのようなトラッカーを使っているかも異なります。要するに、環境が千差万別なため、サポートが大変なんですよね。

そもそもVR業界自体も、まだ地ならしされていない、環境が不安定な業界です。「これからちゃんと作り込んでいこう」という段階なので、関連するプロダクトを販売している我々も「出して終わり」ではなく、サポートとアップデートをずっと続けていく必要があります。今回の採用拡大は、ハードウェアを増やし、その活用方法を広げるだけではなく、個々の製品を維持するための人的なコストをカバーするためのものでもあります。

競合優位性の要となる「技術」の部分を固めたい

――すると、製品を研究・開発するエンジニアだけでなく、広報やビジネス方面の人材も募集されているのでしょうか。

迫田:
そうですね。最近もXでカスタマーサポート用のアカウントを開設して、ユーザーの方々のサポートをできるような体制を整えている最中です。

ほかにも、たとえばデバイスの説明会や、ユーザーコミュニティの運営などもできればと考えています。ただ、それもVRをまったく知らない人におまかせするのは難しいので、普段からVRに親しんでいる方に入ってきていただけたらありがたいですね。

なので、エンジニア採用を推進している一方で、開発スキルは必須というわけではなく、人にわかりやすく伝えることができる、ユーザーや企業との円滑なコミュニケーションができる方も募集しています。

――ちなみに、そのようなビジネス方面の募集に関しては、どのような方に来てほしいですか?

迫田:
アポイントや営業から広報素材の作成、自分でプランニングをしてSNS運用までできる、トータルの能力がある方だと嬉しいですね。特にデザイナーの方、趣味で開発をされている方もVRの世界には多いはずなので、応募していただけたらと思います。

少し話がそれますが、採用の一番難しい領域がどこかと言えば、「今の世の中にはない技術自体を開発する」部分にあると考えておりまして。企業としての競合優位性も、技術開発の部分が大きな割合を占めていると思うんですよね。

例えば「ベースステーション(※VRデバイスに信号を送り、トラッキングをおこなうためのセンサー)」が登場してからもう随分経ちますが、その代わりになるものはほとんど出てきていません。難しい技術レイヤーで製品を作ると、やはりニッチになりやすいと思います。ですが同時に、開発コストが高いということは他社が参入しにくく、長く販売を続けられるメリットもあります。

弊社としては、そのようなコア技術を作っていくことを、これからのチームの要にできればと考えています。まずは研究チームを固めて、たとえば開発が難しい製品を3つ同時に作れる体制ができれば、いつかは自分たちでMeta Questを超える製品を作れるようになる未来もあるかもしれない。そのためにもまずは、競合優位性の要となる「技術」の部分を固めたい、という思いがあります。

――ビジネス系の募集も行いつつ、最優先事項としてはやはり、コアな技術を研究・開発できる人材を強く求めていらっしゃると。

迫田:
はい。良い製品を作れれば、製品ベースで応募してくれる方も増えると思うので、まずはチームを固めたいと考えています。実際、「研究開発の領域からやります」という企業はまだまだ少ないと思っています。たしかに、MetaのReality LabsやByteDanceなどと比べれば、当然ながら資本の量も小さい弊社ですが、プロジェクト単位で見れば、引けを取らないこともできるはず。そのような環境を日本に作っていきたいという思いもあります。もし我々と興味関心の領域が近しく、賛同してくれる方がいらっしゃったら、応募していただけたら嬉しいです。

「自分はスペシャリストだ」という自覚から生まれる、自信とやりがい

――Diver-Xではどのようなマインドを持った人材を求めていますか?

伊東:
何か1つの分野で「自分はスペシャリストだ」という自覚を持っていると、すごく働きやすいと思います。私の場合はずっとやってきた「研究」ですね。得意分野があれば、たとえば「新しいContactGloveの筐体の設計をします」とか、自分のフィールドでその製品を担当できるので、自信も生まれやすいと思います。

――ちなみに、広い枠では「VR」を対象とした採用活動をされているかと思いますが、VR以外の分野を得意とする人とも会って話してみたい、というところはありますか?

迫田:
あります。今は主にVRに注力していますが、あくまでも僕の興味範囲はインターフェースなので、将来的にはVRに関係のないものも作っていきたいなと。ContactTrackも半分くらいはVRから足を外していて、汎用化を目指していければと思っています。

伊東:
実際、Diver-Xで働いているソフトウェアのメンバーの中には、「特にVR関連のプロジェクトに携わってきたことないが、C++に詳しい」「Rustに詳しい」といったスペシャリストの方もいらっしゃいます。なので「VRユーザーの方々に対するサポート/UX設計/営業」といった業務に関心を持っていただけるようであれば、現在のVRの現場感を知っていてくださると嬉しいですが、「0から1を生み出すような挑戦的な開発」に興味を持たれる方であれば、様々な領域の幅広い知識を持ってくださっていると、弊社としても積極的にお話させていただきたいと思っています。

迫田:
1点補足すると、インターフェースの設計論について、何か仮説を持っていてほしいなと思います。

たとえば「ContactGlove」を作るときも、当初はいくつかの意見が対立していました。「手が自由に使えて、没入感もあり、操作も正確にできる」という前提のもと、グローブに付属するコントローラーモジュールの比率をどうするか。操作性を向上させるために操作盤を大きくするとか、棒を付けて握れるようにするとか、そういったアプローチもあったんですよね。

結局そのような実装はされなかったのですが、それもメンバーで話して最終的に結論を出しました。そういったシーンで、「そもそも使いやすいインターフェースとは何なのか」という自分なりの仮説を持っていると、設計に活かせると思います。

――差し支えなければ、実際の採用事例を教えていただけますか?

迫田:
最近ですと、実際にVRChatで遊んでいるユーザーの方の応募がすごく増えています。Xで自社製品について検索する中でお見かけしていた、いつもContactGloveについて呟いてくださっていた方が、お問い合わせフォームからご連絡をくださっていた、なんてこともありました。実は、明後日から働き始めてくださる方もそうなんです(笑)。

我々が取り扱うのはまだ「ニッチ」の領域を出ないデバイスなので、その人自身がユーザーであってほしい、という気持ちは結構あります。普段から使っているからこそ、互換性やサポートなどの部分で気づける問題も多いと思っているので。

――VRChatユーザーからの応募も実際にあるんですね。

迫田:
そうですね。最近入ってくださったハードウェアの方は、もともと趣味としてご自身でグローブを作っていました。その経験があるので、グローブとVRChatの互換性については誇張抜きで、世界で一番詳しいと思っています。普段VRChatで遊びながら使うだけではなく、業務でも開発するとなると、技術面でも製品面でも解像度が上がっていくと思います。

――「現場感がある程度わかっていて、もちろん開発もできる」ことが重要であると。

迫田:
ユーザーとしての現場感は重要ですね。僕はデバイスを作るのが好きでやっているところがあるので、その先は疎かになりがちなんです。実際のユーザー環境やサポートを考慮できる、自らもユーザーとして普段から継続的に使っている人材は、弊社としても常に求めています。

インターフェースが生み出す「差」と価値

――Diver-Xで働くことで、社員の成長のステップアップになるような機会や取り組みは用意されていますか?

迫田:
現状ですと、学会参加費を出していますね。かなり深い分野での研究開発をやっていくことになるので、日々の情報収集は不可欠です。なので、そういった機会を得るための参加費などは出しています。

ちなみに、ものづくりが好きな学生さんがもしいらっしゃいましたら、アルバイトや業務委託としてのご応募もお待ちしております。最先端の現場感が味わえる環境で経験を積めると思います。実際、大学1年生の頃から業務委託として4年間働き、来年の春から正社員になる方もいらっしゃいます。

――事業全体の今後の方針をお聞かせください。

迫田:
繰り返しになりますが、弊社が基軸としているのは「インターフェース」であり、将来的にはVR以外のデバイスも作っていきたいと考えております。では、なぜ今はXR領域に注力しているのかと言えば、そこに「体験」としての価値の差が生まれやすいと感じているからです。

たとえば「良いキーボードを使ったらタイピングが速くなる」「良いディスプレイを使ったら映像がきれいに見える」というように、良いインターフェースを使うと、それによって得られる体験もぜんぜん違ったものになります。つまり、良いインターフェースを使えば何らかの差異が発生する。そして、その「差」の部分に顧客は価値を感じてくださるわけです。

そのような原理を前提として考えたときに、その「差」を生み出しやすいと感じたのが、XR領域でした。そもそも発展途上の業界ですし、VRはそれ自体が身体感覚を伴う体験です。新しいデバイスをちょっと付け加えるだけでも、体験の質が大きく変わってくる。だからこそマネタイズもしやすいのではないかと考えて、現在はこの領域に取り組んでいます。

ただ、あくまでもベースは「良いインターフェースを使えば、何らかの差異が発生する」という部分にあるので、ゆくゆくは別分野のインターフェースもやっていくつもりです。「ContactTrack」も、VR用のトラッカーとしてだけでなく、それ以外の用途も想定しています。たとえば「ボールペンにトラッカーを埋め込んで、マウスとして使う」といった形で、身の回りのもののインタラクティブ性を高めるような活用方法もあるのではないかなと。

また、弊社のマネタイズポイントとしては、BtoC製品の一般販売とそのOEM案件などもやっているほか、BtoC製品に合わせたソリューション展開も今後の1つの肝として考えています。「ContactTrackのソフトウェアにVTuber向けのライブ配信機能を組み込む」「ContactGloveを使ってトレーニングシステムを作る」というようなものですね。

弊社としては、ハードウェアとコア技術の開発は続けつつ、それに伴うソリューションやアプリケーションも提案し、そこから顧客のニーズをフィードバックすることで、次の研究開発に生かして、新しいハードウェア製品を作るというループを繰り返して、徐々に拡大していきたいなと。それを1つの製品だけで回していくのではなく、いくつかを並列化してやっていければと考えています。