Appleは、ARヘッドセット「Vision Pro」において、脳コンピュータインターフェース(BCI)デバイスのサポートを2025年後半から開始すると発表しました。新たに導入される「BCI HID」プロトコルにより、ユーザーは思考だけでApple Vision Proを操作できるようになります。視線操作と脳信号を組み合わせた新しい入力方法が実現します。
対応デバイスの第一弾として、BCI開発を手がけるスタートアップ企業Synchronの埋め込み型神経デバイス「Stentrode」が採用される予定です。Synchronは2012年にオーストラリア・メルボルンで設立され、神経学者のトーマス・オクスリー博士と生体工学者のニコラス・オーピー博士が創業者です。
同社のStentrodeは、頸静脈から脳の血管内に挿入し、開頭手術なしで使用できる神経デバイスです。脳の運動野近くに設置され、体を動かそうとする信号を検知します。信号は胸部に埋め込まれた送受信機を経由し、Bluetoothで外部デバイスに転送され、操作に変換されます。過去の臨床試験では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が92%の精度でパソコンを操作できたと報告されています。
Apple Vision ProにBCIが対応することで、ユーザーは視線で項目を選び、”クリックしたいと考えるだけ”で操作が可能になります。この入力方法は、身体障害のあるユーザーにとって、従来よりも実用的なアクセス手段となります。Appleはこの他にも、パススルー映像の拡大や、視界内の物体の認識・説明・読み上げといった支援機能を併せて発表しています。
パススルーとは、VR/MRヘッドセットの前面カメラから取得したリアルタイムの映像を、開発者が自由に利用できるようにする技術です。Apple Vision Proのパススルーカメラで得られる映像データの利用は、一般的には限定されています。2023年6月には、Apple Developer Programに登録された企業を対象に、業務用に使用用途を限定しデータへのアクセスが許可されました。
Synchronは以前からApple Vision ProとBCIを組み合わせた技術実証を行っており、脳信号でスマートホーム機器を操作するデモも実施していました。今回の公式サポート開始により、こうした機能が安定的に使用可能となります。視線と脳信号を組み合わせた操作は、重度の障害を持つユーザーにとって有効な入力手段となる可能性があります。
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