2025年10月8日から10日まで開催された「XR・メタバース総合展 2025(XR & Metaverse Fair Tokyo 2025)」には、日本企業だけではなく海外企業のアプリケーションやソリューションも展示されていました。
その1つが、韓国政府機関・情報通信産業振興院(NIPA)の「K-Digital Contents Pavilion」。韓国企業8社で構成されたブースです。
NIPAは仮想/融合産業を促進する専任機関として行政から指定された機関であり、メタバース産業振興支援としてグローバル市場への進出支援や、国際協力プログラムの促進も行っています。「K-Digital Contents Pavilion」に出展した8社は、国として応援するポテンシャルをもっていると言えるでしょう。実際にどういったサービス・ソリューションを日本市場、日本企業に向けてアピールしてきたのか見てきました。
XRで心を癒す瞑想空間を提供するDoubleMe
AIとXR技術の融合によって新しいウェルビーイング体験ができるのが、DoubleMeの「Dimension」です。Meta Quest 3を用いてMR空間内でストレス緩和や集中力向上を促します。
同社によれば、従来の瞑想は目を閉じて自分の内側に意識を向けるものが中心でした。それに対してDimensionは「目を開いたまま、現実とバーチャルが融合した世界で心を整える」(担当者・談)ことを目的としています。XR・メタバース総合展 2025では約60秒間の短時間で体験できるコンテンツを展示。光・香り・映像マッピングなど複数の感覚を刺激する要素を統合し、空間デザイン自体で特許を取得しています。
複雑な操作を必要とせず、子どもから高齢者まで誰でも簡単に体験できる点が特徴。韓国ではサムスンソウル病院で患者や介護者の耳鳴り治療、ストレス緩和プログラムとして導入し、2026〜2027年の実用化を視野に臨床研究を進行中とのこと。またビジネスジェット/プライベートジェットや送迎車など、移動中の閉鎖空間におけるストレス緩和用途にも応用しています。
企業サイト:https://www.doubleme.me/ja
MillennialsWorksが描く、自分をベースにしたAIキャラクタープリクラ
MillennialsWorksは同社が開発したAIキャラクター生成&プリントマシン「Ani Moment」を展示していました。生成AIのタッチを選択し、自分の姿をそのタッチに合わせて改変。写真をプリントアウトしてくれます。
「昔はバーチャルキャラクターを使ったプロモーションといえば、大手企業や有名インフルエンサーの専売特許でした。でも私たちは、それを500円ほどで、1分で作れるようにしたかったんです」(展示担当者)
小型の筐体にAIキャラクター生成・撮影・出力機能を搭載した端末というのも特徴です。昨年もXR・メタバース総合展 2025で展示していましたが、この 1年で大きく進化したのは、機材そのものの軽量化とローカライズ。日本ではイベント開催や機材運搬のコストが高く、韓国と同じモデルでは採算が合わない状況です。そこで女性一人でも持ち運べるほど軽く、設置作業も簡単になった新モデルを開発。これにより地方イベントやショッピングモール、ポップアップストアなどでも手軽に導入できるようになり、「東京から大阪まで7万円以上かかっていた輸送コストを、約2万円にまで抑えられた」とのことでした。
さらに、新大久保の直営拠点で得たデータをもとに、可愛さや繊細な色使いなど日本人ユーザーが好むキャラクターデザインや表現スタイルの研究も進んでおり、今後はアジア各国への展開も加速させていくそうです。
企業サイト:https://millennialsworks.com/en/sub/index.php
NEWJAKが提案するのは、家族全員で身体を動かす新しいロケーションXR
NEWJAKが開発したのは、身体を動かしながら多人数で楽しめるロケーションXRスポーツゲームです。最新の技術を用い、プレイヤー自身がアバターではなく現実の身体でゲーム空間に参加できます。
現在、韓国・金浦近郊にある大型商業施設ロッテモールでの常設展開をしており、子どもから大人までが一緒にプレイできる空間として人気を集めているとのこと。「キッズカフェではお子さんしか遊べませんが、ここでは親も一緒に楽しめます」(展示担当者)とあって、開始からわずか3ヶ月で来場者は1万人オーバー。リピーターも多く、XRゲームをきっかけに、家族が一緒に身体を動かして笑い合う光景が生まれているそうです。
また韓国の海沿いのリゾート地・束草(ソクチョ)では、ホテルのアクティビティとして導入が進んでおり、観光とスポーツXRを融合させた新しい滞在型エンターテインメントとして注目されているとのこと。
「日本には多くの海外観光客が訪れています。観光だけでなく、滞在中に楽しめるエンターテインメントとして、このゲームが広がれば、アジア全体に波及する可能性があると思います」(展示担当者)
企業サイト:https://www.newjak.net/
Shareboxが切り拓く、空間と人をつなぐ新しいインタラクションの形
ヘッドセットも、ゴーグルもいらない。その場に立つだけで現実とデジタルが重なり合うマルチセンシングXRインタラクションシステムを開発しているのがShareboxです。LiDARセンサーやKinectカメラを駆使して、壁や床、空間そのものにインタラクティブな映像を投影し、人の動きに反応して動きを見せる。いわばプロジェクションマッピングとXRの融合によって、見るだけではなく体験するデジタルを実現しています。
Shareboxのラインナップは現在5種類。屋内型から屋外型まで用途に応じたモデルを展開しており、中でも店舗内などの屋内で展開できる「LX-Sharebox」は、五感を使った体験を可能にする設計で注目を集めています。プレーヤーは特別な装置を身に着ける必要なし。手の動きや立っている位置に応じて空間に投影されるグラフィックが反応し、VRヘッドセット越しとはまったく異なる臨場感を生んでいます。
現代デパート弘大(ホンデ)店の屋外ビジョンで実施したアナモルフィック3Dコンテンツ、高級香水ブランド・モンクレールとの共同プロモーションを経て、今秋から冬にかけては、現代デパート板橋(パンドー)店やスターフィールドモールなど複数施設での導入が決定済み。またAPEC首脳会談の展示演出にも採用が内定しており、国際的なシーンでの展開も始まっています。
「日本は素晴らしいIPを多く持ち、韓国は変化に強い市場です。両国が持つ強みを組み合わせれば、より大きなシナジーを生み出せると信じています」(展示担当者)と、現在は日本企業とのジョイントベンチャー立ち上げを模索しているそうです。
企業サイト:http://www.ssharebox.com/eng/home/
BRAINDECKが見据える人間とAIが協業する音楽生成の新時代
BRAINDECKが開発したAI音楽生成ソリューション「Lucy 7」は、多言語・多ジャンルに対応しながら、著作権リスクを回避する独自の生成構造を持っています。
これまでのAI音楽ツールの多くは、既存の音源データを学習素材として生成するため、著作権侵害のリスクを抱えていました。しかしBRAINDECKのAIは、「音源を模倣せず、人間の知識を拡張する」(制作担当者)仕組みを採用しています。AIは作曲家やユーザーの創造力を補完し、知識を支援する、言わば「AI先生」という立場を務めるそうです。
「AIが作品を作るのではなく、人がAIを使って作品を生み出す。その違いを大切にしています」と担当者は強調しました。
彼らの掲げるビジョンは、AIと人間の創造性を対立させるのではなく、協調させること、いま世界中で注目が集まる生成AIの潮流の中で、BRAINDECKは一歩先を行くアプローチを提示しているといえるでしょう。
専門的な音楽知識がなくても、シンプルな操作で楽曲を生成できる一方、プロデューサーやクリエイターが細部をコントロールすることも可能です。自分の声をサンプリングして学習させれば、自分自身が歌うAIボーカルも作れます。
対応している言語は英語、日本語、韓国語、フランス語など。K-POPからジャズ、クラシック、EDMといった数多の音楽ジャンルに対応しているのも特徴です。
企業サイト:https://www.3i.ai/
リアルタイムな現場の姿を5分でバーチャルツイン化する3i
劣化するインフラ、人手不足、属人化したデータ管理……。現場を支える人々が直面する根本の問題は、情報伝達の遅さにあります。現場に行けない、報告が遅れる、意思決定が後ろ倒しになる。その悪循環を断ち切るために、3iは屋内版Googleストリートビューともいえるソリューション「K-SPATIAL AI」を開発しました。
スマートフォンと360度カメラで数分撮影するだけで、現場の3Dビューを生成。クラウドにアップロードすれば、わずか5分で世界中からいまの現場を確認できます。
ポイントは、GPSの届かない屋内空間でも機能するところ。工場のライン裏、機械室、地下配管、クリーンルームのサブフロアなど、従来なら図面とメモでしか共有できなかった場所が、ブラウザ上に立体的に表示されます。さらに、図面・仕様書・メーカー情報・手順動画など、散逸しがちなドキュメント群をこの3D空間の位置にひも付け、施設管理のための3Dビジュアル・ダッシュボード環境を整えてくれます。
韓国ではサムスンの大規模建設プロジェクトで導入され、セキュリティ要件からオンプレミス運用にも対応。数千人が出入りする現場で、午前に撮影した360ビューを午後の全体会議で共有すれば、工程表と実際のギャップが即座に可視化されます。現場入場のセキュリティチェックで往復数時間を要する関係者も、リモートで議論に入れるというメリットがあります。
日本でも、NTTによる全国の旧基地局の活用検討で3iのソリューションが使われているとのことです。
企業サイト:https://www.3i.ai/
「話せるAIヒューマン」で企業も社会も変えるBIBIMBLE
BIBIMBLEが開発したのは、最新のAI技術とデータ分析を融合したAIデジタルヒューマン・ソリューション「AIDEX EX-001」です。企業の意思決定を支援しながら、顧客との対話を自然に行える話せるAIです。
「AI ELIXは、誰でも簡単に導入できるAIヒューマンです。クラウドとストリーミング技術を使っているため、低スペックのPCでもリアルタイムに動作します」(展示担当者)
30カ国語以上の言語に対応。アバターの外見や話し方も自由に設定できます。ウェブサイト上で案内役として動かすことはもちろん、デジタルサイネージを使えば実店舗やイベント会場、医療機関など幅広いシーンで活用できます。
展示会のデモでは来場者がブースの前に3秒立ち止まると、AIヒューマンが自動的に反応し、首から下げた名札情報を読み取り、対話を通じて企業データを収集。さらに、会話内容をもとに営業提案書を自動生成して送信するところまでを一連で実現してみせてくれました。まさに、リアルタイムで働くAI営業アシスタントです。
同社のシステムはすでにLGグループやサムスングループでの導入実績あり。企業受付やインフォメーションカウンターなどでも試験運用が進んでいます。高齢化が進む日本市場においても、人手を補い、会話で案内できるAIとして関心が高くなりそうです。
「高齢の方が病院のデジタル機器に戸惑う場面でも、デジタルヒューマンが自然な会話で案内できれば、操作のストレスを軽減できます。孤立しがちな高齢者の話し相手としても役立つかもしれません」(展示担当者)
AIが単に業務を代替するのではなく、コミュニケーションにも行える存在として期待されています。
企業サイト:https://bibimble.com/
次世代クリエイターのためのVRファンダム経済圏を作り出すXROMEDA
「クリエイターが、もっと自由に、もっと報われる世界を」という理想を掲げて生まれたのがXRファンダム・プラットフォームのXROMEDAです。映像、写真、そしてVRコンテンツまで、あらゆる創作活動を支援しながら、ファンとクリエイターが直接結びつける場所を構築しています。
注目するべきはクリエイターへの還元率の高さ。大手の既存プラットフォームでは30〜40%以上の手数料が発生しますが、XROMEDAの手数料はわずか9.9%。クリエイターにより多くの利益を還元し、創作活動を持続・維持できる設計になっています。
また現実空間で活動するアーティスト、パフォーマー、モデル、写真家がVR空間を用いた動画・作品を展示できるよう、自社スタジオと制作パートナーの支援によるVRコンテンツの制作支援も実施。簡単にVRコンテンツに挑戦可能です。
「撮影に来ていただければ、あとは弊社が販売までサポートします。初めてチャレンジされたクリエイターの方にも『やってみたら思った以上に良かった』と評価していただけました」(展示担当者)。
XROMEDAのユーザー層を聞くと、海外ユーザーが全体の40%以上を占めているとのこと。特に日本のユーザー数が最も多く、正式に日本語サービスも開始しています。
XROMEDA。自分の作品をVR世界から発信したい。VRという新しい表現を試したい。そんな願いを持つクリエイターにとってXROMEDAは、次の世代のトップクリエイターになるためのステップとなるのでしょう。
企業サイト:https://xromeda.com/xrfair-tokyo-jp
韓国のXR関連企業への問い合わせ先は?
今回、総合展にブースを出展したNIPA(National IT Industry Promotion Agency)は、韓国の科学技術情報通信部傘下の政府系機関です。政策実施、研究開発促進、国際協力プログラムを通じて、韓国のICTおよびデジタル産業の発展を支援しています。
韓国のデジタルコンテンツエコシステム内の企業、またはその他の企業との接続に関心のある方は、以下にお問い合わせください。
ケビン・ソ:[email protected]















