VR体験者が手に持っているバーチャル物体に即した形状感覚を、提示されている映像とは異なる形のコントローラーで実現するための研究結果が発表されました。東京大学の廣瀬・谷川・鳴海研究室と、産業技術総合研究所の共同研究によるもの。
図1:左図は体験者が感じている物体の形状。右図は体験者が実際に持っている物体。短い形状のコントローラーでも、デザインによって実際より長いと感じさせることが可能
たとえばVR内で剣を持ったとしても、現実で手に持っているのは剣ではなくコントローラーであり、重さや形の感覚が一致せず、没入感を損なうことがあります。
しかし、形の感覚を一致させるために、全く同じ重さ・形のものをコントローラーとして使うと、制作コストや振り回したときの安全性などのさまざまな問題が生じてしまいます。今回の研究成果は、こういった問題を解決できる可能性があります。
物体のモーメントと形状知覚の関係をマッピング
この研究では、ある慣性モーメントや静的モーメントを持つ物体に対して、どのような形状(長さ・幅)を感じるかを実験して調査し、「実際の形状 ー 感じる形状」間の対応関係をモデル化しました。
さらにこれらデータを利用して、ユーザーがVRで実現したい形状の3Dモデルを入力し、現実でのコントローラーの形状的制約(長さ・幅)を指定することで、3Dプリンターで出力可能なCADデータに変換してくれるシステムの作成も行われています。
図2:一番左が体験者に感じさせたい形状(A)。それに対してコントローラーの物理的制約(長さ・幅)を長方形で指定すると、システムがAと形状が等価に感じられるデザイン(重りの位置など)を提案し、CADデータとして出力する。
今回の研究結果では、デザインできるのは薄く均一で形状変化をしない、対称な物体に限られています。今後の課題としては、より複雑な形状の物体に応用することや、動的に形状を変える物体(伸びたり広がったりするなど)にも適用することなどが挙げられています。
(関連リンク)
http://nawafuji.org/illusioncontroller/
(論文)
Eisuke Fujinawa, Shigeo Yoshida, Yuki Koyama, Takuji Narumi, Tomohiro Tanikawa, Michitaka Hirose 2017. “Computational Design of Hand-Held VR Controllers Using Haptic Shape Illusion”. ACM VRST 2017, Gothenburg, Sweden, November 2017.
http://nawafuji.org/illusioncontroller/downloads/paper.pdf
2017年11月7日20:40 記述を一部修正致しました。