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企業動向 2025.01.21

「空間コンピューティングに向けたピースが揃う」XREALが戦い続けられる理由、そして次の挑戦

中国発のARグラスメーカーXREAL。スタートアップさながらのスピード感で毎年数モデルの新たなグラス型デバイスや周辺機器を発売し、市場を切り拓いてきた。

2025年初にラスベガスで開催されたCES2025では、XREALは毎年恒例の目立つブースを展開。2024年
12月に新たに発表したXREAL OneXREAL One Pro(※現在プレオーダー中)の2機種を中心に積極的な展示を行っていた。

筆者は会期中にXREAL CEO、シュウ・チーに取材する機会を得た。目まぐるしく変化するXR業界と同社の戦略について深堀りするはずだったが……今回のインタビューは、筆者が準備中に録音のためにスマートフォンを置いたところ、CEOのシュウ・チー氏からの唐突な逆質問から始まった。

空間コンピューティング時代のUXとAndorid XRへの期待

チー:(著者の持っているスマホを覗き込んで)これは何の機種ですか?

ーーPixel 9 Pro Foldです。ほら、こうやって、「ポケモンGO」と「モンスターハンターNOW」を左右に表示すると……同時に2つのNianticのARゲームが遊べて便利なんですよ!! 片方でモンスターボールを投げながら、こっちの画面ではモンスターを狩猟しています。

チー:私はこのスマホを使っています(Huaweiが2024年に発売して話題になった3つ折りスマホを見せながら)。

ーーそれは例の…

チー:これもすごくいいですよ。気に入ってます。ミーティングに出ながら、Webサイトを見て、メモをとることができます。

ーーとても効率的になりますよね。ARグラスを日常的にかけている時代がきたら、それぞれのコンテンツを切り替えていくことになりますよね? 例えば、ゲームで遊ぶときはARゲームを起動して、そのあと天気を確認したくなったら、天気のアプリを起動して……と。

チー:それは自動でできるようになるんじゃないでしょうか。 これがスマートフォンの時代との一番大きな違いですよ。会話しているときに「ねえ、天気はどう?」と聞けば、天気を調べてくれて教えてくれる、そんな世界観はおそらく今後2〜3年で実現すると思います。

もしAIが十分に賢ければ、「どのアプリケーションを立ち上げて、どんなコンテンツを表示するか」を自動的に判断してくれるはずです。 だから、そこが一番大きな進化だと考えています。(Googleが2024年12月に発表した)Android XRに期待しているのもその点が大きいです。

ーーAndroid XRでは今話していた世界観が実現できるということでしょうか?

チー:AIが深く組み込まれたOSになることで、もう自分がこの機械を操作しているという感覚ではなくなります。いまのところ、ノートPCやスマホを使うときは、自分でアプリを開き、全部操作する。でも今後のXRの一つの形としては、「自分がグラスを操作している」という感覚より、「AIと会話している」ようになるかもしれない。まるで人と話すように。そのAIはインターネットに接続されているから、「天気を出すべきか」「ゲームなのか」「別の情報なのか」をシームレスに切り替えてくれます。

さらに、Andoird XRが解決してくれる大きなポイントとして、フラグメンテーション(分断)という大きな問題があります。いまARデバイスは、いろいろなデバイスや、プラットフォーム、SDKがあって、開発者は「どうすればいいんだ?」と混乱しています。 でも、Android XRなら、そういう環境をまとめられる可能性がある。みんなが同じ方向を目指せるのはとても良いことです。AppleはVision OSを展開していますが、開発者を集めるところでつまずいたり、AIがOSにネイティブに組み込まれていません。

NVIDIAのCEOのジェンスン・フアンは「AIが次のOSだ」と言っていましたが、私もそう思います。だから、すごく楽しみなんです。

ーー音声がグラス型デバイスとの重要なコミュニケーション手段になってくるということですね。

チー:小さな“人”と話しているような感覚で、本物のAIと会話しているように感じられます。でも、手で操作するジェスチャーのような従来型の方法も使えます。新しい方法として“エージェントと話す”が加わる。

ーー例えば周囲がうるさい状況でも音声コマンドは有用なんでしょうか?

チー:人間は声を拾えるから意思疎通できてますよね? それなら、問題ないわけです。一番の問題は機械がそれをできるかどうか、ですからね。大事なのは、操作方法はどれか一つを選ぶというわけではないことです。音声操作で多くの操作を簡素化できるなら、それが効率的だし、AIが十分に賢ければいい。でも、どうしても声を出せないシーンもあるわけですよね。そういうときは手で操作すればいい。どちらもちゃんと機能するはずです。

私は今すごくワクワクしています。サムスンのXRヘッドセット「Project Moohan」は、そういった機能をすべて見せてくれるでしょう。時が経てば、もっといろいろなことがわかってくると思います。

ーー昨年12月にGoogleがAndroid XRを発表して、そこにXREALの名前がパートナーとして挙がっていました。今年、なんらかの動きがあるということでしょうか。

チー:具体的な内容は言えませんが、本当にワクワクしています。空間コンピューティングを実現するには、優れたプラットフォーム企業と組む必要がありますが、Googleはおそらく最適なパートナーでしょう。GoogleはGeminiを持っています。Android XRはGeminiとの深い連携が前提になるでしょうし、いろいろなものが組み合わさる。そのパートナーとして長期的に協力できるのはとても楽しみです。それに、私たちは1年以上前からこのプロジェクトに一緒に取り組んできています。多くの成果がすでに上がっているので、本当に楽しみなんです。

ーーXREAL Oneでは新しいチップセットを開発しています。XREALはチップセットメーカーの一社という立ち位置にもなったわけですが、その前はQualcommとの強力なパートナーシップがありました。Qualcommとの関係性はどう変化するのでしょうか?

チー:まったく変わっていません。X1をQualcommの代替に使うわけではありません。これはあくまでARグラスに搭載するプロセッサで、Qualcommとうまく連携して動くように設計されています。これまでARグラスに適したチップが、どのメーカーからも出ていなかった。だから私たちはARグラス向けのチップを作ったんです。Qualcomm、あるいはIntel、Appleのチップと組み合わせても、ちゃんと動くようにしたい、というのが狙いです。

ーーQualcommは貴社が対応させるチップの一つということですね?

チー:はい、Qualcommとの関係は依然としてとても緊密です。今日も彼らと打ち合わせをしてきましたし、これからも色々と楽しみなことが起きると思います。自動車業界ならBMWと組んでいるように、パートナーシップに関する私たちの哲学は“Tier1のパートナーと組む”ことです。国際的なエコシステムという観点ではGoogle、そしてモバイル向けではQualcommがナンバーワンです。今後も一緒に取り組んでいきます。

ーーXREALは、XREAL Oneシリーズを「空間ディスプレイ」、そしてXREAL Air 2 Ultraは「空間コンピューティング」と2種類のコンセプトのデバイスを投入していますよね。そして、それぞれ違うアプローチで、異なる用途を想定しています。一方で、空間ディスプレイにはすでに素晴らしい市場があります。一方、空間コンピューティングとなると、まだ早すぎる感じがします。Appleですら苦戦しています。空間コンピューティングが大きく普及する引き金はどこになると思いますか?

チー:ようやくすべてのパーツが揃いつつある、という印象を受けています。これまではハードウェアはなんとか整っていたものの、OSやカルチャーが足りなかった。でもAndroid XRが出てきたことで、ARグラスと合わせてようやく体験が完成するんじゃないかと思います。だからとても期待しているんですよ。

ーーつまり、Android XRが最後のピースのひとつだと?

チー:そうだと思いますね。

ーーコンテンツの問題はどうでしょうか? まだリリースされたばかりで、Googleは「既存のAndroidアプリが空間的に展開される」と言ってはいますが、正直それだけではコンテンツが足りない印象です。

チー:それは誤解だと思います。ただ2Dアプリをそのまま移植するだけではありません。Android XR自体が、そうしたUIやUXを大きく変える設計プロセスに則っていますから。要するに、Androidで開発していれば、XR向けにも同時に開発できる仕組みが備わっている。だから、あるプラットフォームから別のプラットフォームへの移行が圧倒的に楽になるということです。開発者にとっては大きいですよ。

情報がまだ少ないので疑問を持つ人は多いでしょうが、もう一つ付け加えると、Googleはすでに自社のファーストパーティアプリを移植し始めています。Maps、Photos、YouTubeなどはすごくいい出来です。

Apple Vision Proではまだ見られないようなことをすでにGoogleはやっている。そこがすごく楽しみです。しかもGeminiのような強力なエンジンが裏で動いているわけですから。こうしたファーストパーティアプリの仕上がりがよければ、開発者にとってはよいお手本になるし、結果的に空間コンピューティングやXRの発展につながります。

空間ディスプレイの競合が意外と増えないわけ

ーー空間ディスプレイについては、 貴社は世界でもトップクラス、いやトップのハードウェアメーカーだと思っています。実際、ユーザーはすごく満足しています。、昨年のCESで、もっと他の会社が参入してくるかと思ったのですが一年経ってもそんなに増えていないように見えます。

チー:XREAL Airを初披露したとき、空間ディスプレイという市場に取り組む姿を見せました。見通しとしては有望に見えたので、他社も参入しようとした。でも実際には技術的にかなり難しく、全体の体験を真似するのも簡単じゃない。だから多くの会社はフェードアウトしてしまったんだと思います。

今年も似たようなことが起きていますね。スマートグラスが量産されて、Ray-Ban Metaのコピー品のようなAIグラスも出てきています。でも、来年には同じように消えていくかもしれない。重要なのは、消費者が納得するだけの品質を満たすことです。それができない企業は続かないでしょう。

ーーXREALが考えている空間ディスプレイのポイントは何でしょう?

チー:私たちはX1チップを作っています。ユーザーが望むのは「簡単に使えて、どのプラットフォームでも同じように動いて、最高の映像と音質が得られる」ということ。だからこそ、(XREAL Oneシリーズでは、)現状で最大の視野角(FOV)である57度を実現したり、Boseとのコラボでオーディオを最高レベルに仕上げたりしました。数あるスマートグラスのなかでも一番だと自負しています。加えて、X1チップを使えばAndroidだけでなくAppleのデバイス、Nintendo Switch、Steam Deckなど、あらゆる機器で接続できる。

さらに、ユーザー自身が好みに合わせてディスプレイのサイズや固定方法を細かく調整できるような手段も用意している。こうした要素の組み合わせによって、この市場を開拓できると思っています。

ーーXREALは空間ディスプレイ市場の先駆者です。世界で初めてこういう製品を本格的に投入した。ユーザーの望むものを理解し、それを形にしている、というわけですね。

チー:他の会社でも参入はしたいけど、大きなコストや労力をかける覚悟がない場合は結局撤退してしまう。ARハードウェアは本当に難しいビジネスです。XR業界に長くいるとわかることですが、この業界は挑戦する時間が長く続いていて、誰もがすぐに収益を得られるわけではない。MetaやAppleですら利益を出しているわけではありません。そうなると、やはり時間をかけて性能を上げ、消費者が納得するレベルに到達するまで粘るしかないんです。

ーー日本のみならず世界中どこへ行っても長年この業界にいる人たちに会うと「生き残ってるね」という話になります。

チー:本当に。タイミングが大事ですね。

XREAL One Proの秘密とXREALの製品戦略

ーーXREAL OneとOne Proの比較について教えて下さい。単に視野角の違いだけじゃなくて、光学系が違うんですね。

チー:私たちは、よりコンパクトで、かつ視野角を大きくして、映像体験をさらに良くするために、ずっと限界に挑戦してきました。そして社内にテストや製造のできる工場を持っていて、プロセスや素材の設計などを、どんどん突き詰めることができます。とにかく、もっと薄型で大きな視野角を実現したいわけです。

幸いにも、X1チップがそれをさらに後押ししてくれます。チップと光学系を足して1+1が2以上になるようなイメージですね。


(XREAL One Pro)

というのも、この光学系を設計するうえでさまざまな制約がある。歪みをどうやって抑えるか、色ずれをどう抑えるか……でも私たちのチップには、キャリブレーションや歪み補正を行う機能があります。だから、光学設計の段階で「あえて少し歪ませる」という選択肢が出てくるわけです。後でチップ側で補正してしまえばいい。それによって、設計上の自由度が増すんです。

さらに工場を自社で持っているので、ポリッシングや量産化の段階でも自由度が高い。結果的に、新しい光学系を開発できました。私たちはそれを「フラット・プリズム」と呼んでいます。ウェーブガイド(※)とは異なる方式ですね。だからこそ、最終的にこの形になりました。

※ウェーブガイド方式:小型プロジェクターに表示されたものを導光板(ウェーブガイド)と呼ばれる部位を経由して眼球に表示する光学系技術。ARグラスを小型軽量化するための基盤技術として採用している企業が多い。


(刷新された光学系。左が視野角50度のXREAL One、右が視野角57度のXREAL One Pro)

それとX1チップが組み合わさったことで、ARグラスに必要な2大要素(チップと光学系)が非常に良い形でまとまったと思います。

それと、もう一つ面白い数字を紹介します。XREAL Oneの部品の65%がXREALの社内で独自に作られたものだということ。チップや光学系はもちろん、それ以外の多くも自社開発で、既製品は35%程度しか使っていないんです。これは、かつてのRivianやDJIみたいな感じですよね。私たちはハードウェアの“クリエイター”であって、フォロワーではないということ。だからこそ、他社が追いつくには時間がかかると思います。

ーー目標は100%なのでしょうか?

チー:そこまで行く必要はないと思っています。65%でも十分ですし、他社が追いつくのには相当な努力が必要でしょう。

ーーフラット・プリズムという光学系はこれまでXREALが採用してきたハードバス(※)とも異なるということですね。

ーーはい、バードバスをベースにしつつも複雑にしたシステムです。そして、ウェーブガイドではありません。ウェーブガイドも将来的には有望かもしれませんが、少なくとも今後5年くらいは、現在XREAL Oneなどで実現している画質を実現できないと思っています。エンタメ、ゲーム、生産性で高い画質が求められますから。

(※)バードバス方式:ハーフミラーの仕組みを使いプロジェクタの映像を使用者の目に届ける方式。これまでXREALは全てのARグラスでこの方式を採用してきたが、構造上視野角と小型軽量の両立が難しいという課題があった。

ーー自社工場があることで、素材やデザイン、チップセットの開発まで全部内製化できる。つまり設計しているときのイテレーション(トライアンドエラー)が速いということですね。

チー:そうなんです。製造も速くなる。非常に大きいことです。

ーーすでに北米市場ではOneとOne Proを発表していますが、機能の差はほぼ視野角だけですよね? それに比べて、XREAL Air 2シリーズ(Air 2とAir 2 Pro)のときはProにはディミング(※透過度の調整機能)があって、通常モデルとProモデルの違いが変わりました。

チー:私たちはXREAL Air 2を通してディミングはベストな機能だと気づきました。そのため、Oneシリーズにはすべて搭載しています。たぶん今後のARグラスには全部ディミングの機能が標準搭載されると思います。


(並べると2機種の違いは全然分からない。左がXREAL One Pro、右がXREAL One)


(光学系以外はほぼ同じ。左がXREAL One、右がXREAL One Pro)

XREAL OneとONE Proについて、「どちらを買うべきか?」と聞かれますけど、いまのところ解像度は同じなので、視野角が大きいと画素密度は下がる。だから文字の読みやすさや生産性重視なら、狭めのFOVのほうが向いているかも。でも映画やゲームをするなら、広いほうがいい。価格差が気にならないなら、Proにしておけばいいと思います。視野角の違いは、テレビサイズでいえば55インチか75インチか、みたいな違いになります。スマホにも大画面派と小画面派がありますよね? 同じです。

ーーなるほど、解像度が同じということでマイクロOLEDの仕様を変えることもありますよね?

チー:ある段階になれば解像度も変わってくると思います。解像度がフルHDで止まることはありません。2K、さらにその先に行くでしょうね。

ーーAir 2には空間コンピューティングを意識したUltraというモデルがあります。XREAL Oneでも登場するのでしょうか。

チー:現時点では何も言えませんが、将来的にはXREAL One Ultraみたいな製品が出て、空間コンピューティングに特化する可能性があります。

そうそう、私の好きな言葉を紹介します。「一人で行けば速く進めるが、みんなで行けば遠くに行ける」という言葉です。これは空間ディスプレイに関して言えば、私たちは“自分たちだけでやれる部分”をやることで迅速に対応しているわけです。互換性の問題とかは自社のチップで全部解決して、素早く進める。でも、空間コンピューティングは、パートナー企業と一緒にならないと大きな課題(コンテンツエコシステムなど)を突破できない。だからこそ、最高のパートナーと組みたいと思っているんです。

ーー全く異なる戦略をとっているわけですね。だから空間ディスプレイのほうは新製品のサイクルが速い、と。

チー:みんなで進むには時間がかかります。でも運がいいことに、ようやく最後のピースが揃った感覚があります。いまこそカルチャーも含めて整備して、これから数年でスペーシャル・コンピューティングを本当に盛り上げていきたい、と思っています。

ーー空間コンピューティングのデモを今年のCESでも出していました。同じXREAL Air 2 Ulrtaを使ったデモですが、よりインタラクションのある体験や動画をみんなで見る体験など内容がアップデートしていましたね。今後、空間コンピューティングのデバイスはどういう方向に進化していくとイメージしていますか?

チー:空間ディスプレイとして「ちょうどいい視野角」は50〜60度くらいかなと思います。ところが、しっかりした空間コンピューティング体験をするには70度以上欲しいと考えています。まだそこまで到達していません。ここはハードウェアへの挑戦です。「もっと広い視野角を実現し、かつ優れたプラットフォームを作れるか?」

VRヘッドセットを見るとFOVは100度以上あったりしますが、重いですよね。でも、ARグラスでそれを実現しようとしたら、VRの80%くらいの臨場感を重さや価格の20%以下で実現できないか、という話になる。それを目指しています。重さやコストを抑えながら視野角を広げるというのは大きな挑戦です。
とはいえ、私たちは少しずつ視野角を広げていて、One Proではすでに57度まで来ている。次は更に広げていきます。フラットプリズムのおかげで、さらに進化させることができるようになりました。

ーー垂直方向の視野角も拡大できるのでしょうか?

チー:両方拡大します。アスペクト比は16:9や16:10なので、対角線が広がれば縦も広がります。

確かに垂直方向の視野角は特に重要だと思います。最終的には1:1のようなアスペクト比になる可能性もありますが、まだ技術的には困難です。いずれにしろ、私たちがそこをどう乗り越えるかにかかっている。

フラットプリズムの試作を作っていた頃は、ARグラスの視野角は「50度なんて超えられない」とか「40度台が限界」と言われたんです。でも実際はそれを突破できた。だから限界と感じるのかは自分たちの想像力次第ですね。

とはいえ、「どこまで大きければ十分か」という問題もあります。空間コンピューティングにとって72~80度あれば、眼鏡型デバイスとしては十分実用的かもしれません。何でもかんでも視野角を最大化すればいいわけでもなく、重量や価格、日常的に使いやすいかどうか、などいろいろな要素が絡んできますから。

実は今月末にSPIEのイベントがあり、そこで私が基調講演をするんです。One Proにどんな技術が詰まっているか、X1や新しい光学エンジンがどうなっているか、詳しく話す予定です。興味深い内容になると思いますよ。

ーーこれだけいろんな情報があると、今年のXREALの動きは昨年よりももっと面白くなりそうですね。

チー:昨年はまだこのチップを開発中だったり、Androidとの連携も初期段階でしたから。今年はその先が見られます。ワクワクしますよ。

毎年面白いことが起きる…… とは限りませんが(笑)、振り返るとやはり山あり谷ありです。でも、そうやって振り返ると落ち着きますよね。長い目で見ると、2025年か2026年あたりがこの業界の本番かなと思っています。いままでの経験や見てきたことを踏まえても、そこがいちばんエキサイティングな時期になるのではないかと思います。

ーーありがとうございました。


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