XREALは「XREAL Air」、「XREAL One」といったグラス型ディスプレイで市場をリードし続けてきた。2025年5月に新たに発表された「Project Aura」はこれまでの製品とは異なる次元の体験を予感させる。Googleの「Android XR」と連携し、快適さと没入感を兼ね備えた空間コンピューティングを目指すという。
CEOのシュー・チー氏は、ただのハードウェア進化ではないと強調する。「適切なフォームファクター、プラットフォーム、そしてAIが初めて揃った」と語る同氏の言葉からは、「Project Aura」への自信が伺える。
Mogura VR編集部では、XREALの最新プロジェクトやARグラスの未来について、シュー・チー氏にインタビューを実施した。
Project AuraはXREAL Air2 Ultraの後継機ではない
ーーGoogle I/Oで発表されたProject Auraについて。Project AuraはXREAL Air 2 Ultraの後継機と考えて良いのでしょうか?
シュー・チー氏:そう考えることもできますが、私としては全く違うものだと感じています。Air2 UltraはARグラスの6DoFバージョンで、よりハードウェア寄りの製品です。私たちはSDKをサポートしていますが、本格的な体験を提供するものではありません。
Air2 Ultraのターゲットは、消費者ではなく開発者でした。6DoFや空間コンピューティングを試したい開発者向けのデベロッパーキットだと伝えました。一方、Project Auraは開発者向けでもあり、同時に消費者向けでもあります。
最大の違いはGoogleのAI、Geminiです。Project Auraが対応するAndroid XRにおいては、Geminiが大きな役割を果たし、インタラクション全体をより滑らかで効率的にします。これだけでProject Auraは消費者にとってはるかに使いやすくなるでしょう。
適切なフォームファクター(外見)、適切なハードウェア(性能)、適切なプラットフォーム、適切なAI、これらすべてが初めて揃いました。業界全体が収束し始めているのです。
ーーまだ「Project Aura」と呼ばれていますね。現行機のXREAL Oneシリーズの後継となる「XREAL One Ultra」ではないのでしょうか?
チー氏:Project Auraはコードネームです。最終的に何と呼ばれるかはまだわかりません。もしかするとUltraになるかもしれませんが、Ultraと名付けるなら、それはAirやAir Proとは明確に違うという強いステートメントでなければなりません。
AirとAir Proはウェアラブルディスプレイですが、Project Auraは空間コンピューティングデバイスです。単なるハードウェアではなく、ソフトウェアも含めたトータルエクスペリエンスなのです。
カメラ「XREAL Eye」の真の狙いは「AI」
ーーグラス本体以外だと、XREAL Eyeが発売されましたね。なぜグラスに組み込まれたUltraではなく外付けのカメラという形だったのでしょうか?
チー氏:「Eye」は異なるアプローチです。XREAL Eyeは単なるアタッチメントカメラではなく、AI用カメラです。私たちはウェアラブルディスプレイにより多くの機能と能力、そして潜在的にAI機能も追加したいと考えています。多くの人はカメラを装着している人に見られることを好まないため、(外付けの)モジュール式カメラにしました。
装着すれば6DoF機能、写真・動画撮影機能、そして多くのAIを使う可能性が得られます。AIグラスが非常に注目されており、各社が独自のハードウェアを構築してマルチモーダルAI(映像や文字など異なる情報をまとめて扱い、処理するAIのこと)の力を引き出そうとしています。しかし、OSはまだ限定的でオープンになっていません。
ハードウェアがAI研究者や開発者の障壁になってはいけません。だからこそ、AIのためのカメラ付きグラスが、AIアプリ開発のためのオープンプラットフォームのツールになると信じています。
(XREALのハードウェアは)6DoF機能、動画・写真撮影機能、そしてAI機能を可能にします。私たちだけでなく、誰でもその上でアプリケーションを開発することを奨励しています。
ーーXREALのNebula SDKは独自ですが、EyeはNebula SDKで開発できるということでしょうか。Android XR SDKが登場する前から展開していたARグラス用のSDKキットですよね。今後SDKはどうなるのでしょうか。
チー氏:その通りです。Android XR登場後も、iOSとAndroidの両方で動作し、グラスでのオンデバイス処理でも、オンラインでクラウド処理でも、いずれも互換性のあるアプリケーションを簡単に開発できます。クロスプラットフォームで汎用的なオープンフレームワークです。
AIグラスとARグラスの新しいスペクトラム
ーーGoogleが発表したAndroid XRの新しいスペクトラムについて、どう考えていますか。以前はMRヘッドセットとARグラスの2種類でしたが、今はヘッドセット、ARグラス、AIグラスという3つのカテゴリーになりました。
チー氏:Googleはヘッドセット、AIグラス、そしてその間にあるすべてのものを作りたいと言っています。私たちが開発しているProject Auraはその「間にあるもの」です。
すべてのカテゴリーがそれぞれの用途を見つけると思いますが、私はARグラスを信じています。これは私たちが最初から追求してきたことで、長時間着用できるフォームファクターとリッチなコンテンツ体験の完璧なバランスを求めています。
現在のAIグラスは限定的なディスプレイか、まったくディスプレイがありません。これはリッチなコンテンツではありません。私たちはヘッドセットに似たリッチなコンテンツプラットフォームを構築したいのですが、より快適にしたいのです。
ーーXREALは独自のAIグラスを作らないのでしょうか?
チー氏:まだです。時期が来たら考えますが、他に拡張する前にARグラスを正しく作りたいのです。集中することが重要だと思います。
ARグラスを作ることは、既製品の部品を組み立てるだけではありません。独自のチップ、独自の光学系が必要だと気づきました。境界を押し広げ、体験を次のレベルに引き上げる、そのためには部品レベルの製造に踏み込む必要があります。
70度超の視野角を実現するフラットプリズム技術
ーーProject Auraの視野角は70度超と発表されました。これは新しいシステムでしょうか、それとも既存のフラットプリズムシステムの進化でしょうか?
チー氏:XREAL One Proで57度を実現したフラットプリズム技術です。同じ方向で取り組めば70度超が達成できます。
50度では十分なMR体験は提供できませんが、70度を超えると状況は完全に変わります。私の理想的なFOVは80度以上です。それが私たちの目標です。

ーーコンピューティングパックについては現状あまり言及されていません。まだ秘密なのでしょうか?
チー氏:その通りです。Project Auraには専用のコンピューターユニットが必要となります。スマートフォンに接続して動作させるものではありません。Android XRでは、まず最高の体験を提供することに焦点を当てています。スマートフォンとの汎用互換性は作業量が多すぎます。体験ファースト、次に規模拡大です。
ARグラスで求められている2つのイノベーション
ーーARグラスに取り組む中でXREALは光学系でフラットプリズムを生み出し、視野角の問題を解決しにかかっています。ARグラスが進化するために必要なイノベーションは何でしょうか?
チー氏:ARグラスで主要なイノベーション領域は2つあります。1つ目はアルゴリズムです。ARグラスのために世界をどういった方式で認識し、理解するかということです。SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、ジェスチャーコントロールなどがこれに含まれます。
アルゴリズムの最終目標は、ソフトウェアとともにそのすべてをハードウェアに組み込むことです。つまり、すべてのソフトウェアを実行できるシリコンに組み込むことです。だからこそオリジナルのX1チップを構築しています。
もう1つの領域はディスプレイです。この2つだけがARグラスの真の差別化要因です。だからこそ私たちは両方を構築しています。
簡単ではありません。このイノベーション領域での開発には多くの投資が必要で、だからこそ多くの企業がそれをやっていないのです。しかし、私たちは早くから投資する決断をしたため、幸運でした。これが(他社と)差別化できる唯一の方法です。
ユーザーインターフェースの断片化問題
ーー先ほど話に上がったジェスチャーコントロールについて、お聞かせください。ハードウェアユーザーの一部の人はハンドコントロールでの操作を求め、一部の人はそもそも手を使いたくないという状況があります。
チー氏:これはまさにユーザーインターフェースの断片化(フラグメンテーション)と呼ばれるものです。だからこそ多様性を意識しているAndroid XRと最初から協力したいのです。
AIがその中で大きな役割を果たすと信じています。単なるジェスチャーではなく、AIでの操作が中心となり、ジェスチャーや他の要素がそれを補完するのです。
ーーGeminiとのコミュニケーションで最適なインターフェースは音声でしょうか?
チー氏:AIとの最も効率的な対話方法は音声です。そのためにカメラも必要です。AIが人間が見ているものを正確に“見る”ことで、環境やコンテキストをより良く理解できます。
マルチタッチがスマートフォンの普及を助けた重要なユーザーインターフェースだったように、AIがXRの普及を助ける重要なユーザーインターフェースになると信じています。
ーー例えばの話ですが、日本の通勤電車内のような話すことをためらわれるような場所であっても、音声操作が最適でしょうか?
チー氏:環境によりますよね。私たちが望むのは、ウェアラブルデバイス内にスーパーエージェントが常駐していることです。常に話す必要はありません。あなたを理解していれば、AIは先回りして動くことができるでしょう。
音声以外の方法でコミュニケーションする可能性もあります。音声が最も効率的だと思いますが、特に人々が直接話せない環境で重要なのは、ジェスチャーやその他の入力での通信です。
それがまさにAndroid XRが解決しようとしている「断片化」と呼ばれるものです。Android XRでは、システムが統一設計を提供し、スタンダードにすることで、断片化は解決するでしょう。
ARグラスのユニバーサルデザインへのアプローチ
ーーグラス型デバイスはどのような社会に受け入れられていっているのでしょうか。グラス型ディスプレイの用途でアジア、北米、ヨーロッパなど地域による違いはありますか?
チー氏:中国では動画視聴などのメディア消費のために使われます。米国とヨーロッパでは、SwitchだけでなくSteam Deck、ROG Allyなど多くのゲーミングデバイスが非常に人気ですね。ゲーミングと生産性が市場の推進力となっています。
日本市場でも、私たちは注目していただいていると感じています。特にProject Auraについての最新の話題は、注目と興奮が高まっていると感じます。
いつか任天堂や他のコンテンツ会社など、日本企業とのより多くのコラボレーションができることを期待しています。
ーーメガネ型デバイスは(機能だけでなく)、ファッション性、解像度、快適性など、ユーザーのニーズは多様ですが、それぞれの需要にどのように対応しているのでしょうか?
チー氏:確かにそもそも個人によって求める要素が非常に多様です。Redditやユーザーのフォーラムでも、価格を気にせず最高解像度を求める人もいれば、外見を気にしない人もいて議論が絶えません。
私たちは常に、皆のための共通基盤になることを目指しています。フォームファクター、解像度、消費電力が完璧なバランスをとれている状態です。チップ、ディスプレイ、解像度、すべてを革新できる企業があるとすれば、XREALは最初にそれを行う会社の一つだと信じています。
しかし、1つの製品で世界中のニーズを満たすことはできません。ウェアラブルディスプレイ用に1つ、空間コンピューティング用に1つの製品で皆を満足させることは不可能です。
ユニバーサルだからこそ、すでにXREALの製品にはデザインの独自性があります。Project Auraの写真を見れば、Air、Air Proの後継であることが簡単に認識できるでしょう。すでに私たちはバランスへの答えを見出しています。






