2026年3月18日、POPOPO株式会社は、スマートフォンアプリ「POPOPO(ポポポ)」の提供を開始した。
同日開催されたサービス発表会には、取締役を務める川上量生氏、GACKT氏、西村博之氏、庵野秀明氏、そして代表取締役社長の矢倉純之介氏が出席。さらにゲストとして俳優の佐藤健氏、映画監督の手塚眞氏も登壇し、錚々たるメンバーが並ぶ発表会となった。
「AI時代を前に人間が作る最後のSNS」というティザー映像のフレーズも話題になっていたが、はたしてどのようなアプリなのか。注目の発表会の様子をお届けする。
スマホ版メタバース?カメラのいらないテレビ電話?「POPOPO」が持つ5つの特長
公式サイトでは「カメラのいらないテレビ電話」と銘打たれている、スマートフォン向けアプリ「POPOPO」。
一方で気になるのが、川上量生氏が紹介映像の中で話していた「スマホ版メタバース」というフレーズだ。公式サイトにも「スマホ用メタバースの正解とは『通話アプリだった説』をPOPOPO株式会社は提唱します」との記載があり、開発に際してメタバースの存在が念頭にあったことが伺える。
POPOPOは「SNS」なのか、「テレビ電話」なのか、それとも「メタバース」なのか。発表会で登壇者たちが語った言葉も交えつつ、まずはこのアプリの特長を見ていこう。
特長①「カメラがいらない、手軽に使えるテレビ電話アプリ」
「テレビ電話」を標榜するPOPOPOだが、最大の特長は、スマホのカメラで自分を映す必要がない点にある。
通話を開始すると、ユーザーの分身となる「ホロスーツ(アバター)」がバーチャル空間に現れる。だが、タッチ操作で動かしたり、カメラで自分の動きを追従させたりすることはできない。その代わり、ユーザーの声に合わせて体を揺らしたり、笑い声に反応して笑顔になったりと、自然体で喋っているような身振り手振りを交えつつ体を動かしてくれる。
POPOPOのコンセプトは、「普通の会話をエンタメに」。
顔出しの心理的ハードルをなくし、事前準備や配信中の難しい操作も一切排除しながら、対面で会話しているような心地よさを実現する。矢倉純之介氏は、あくまで「会話」そのものに特化し、いかに気持ちよく話せるかを最優先したアプリであると強調した。
特長②「日常会話が映画のように。職人芸の自動カメラワーク」
その心地よさを支えているのが、通話中に声のトーンや間に合わせてカメラカットがリアルタイムで切り替わる、POPOPO独自のシステムだ。
このカメラワークの演出監修を務めた手塚眞氏は、映像表現における「法則」の重要性について言及。自身が手掛けたカット割りについて、以下のように述べつつ、通話アプリに「映画」の文法を持ち込んだPOPOPOの可能性を語った。
「カット割りには法則があります。今回は劇場映画1本分に相当するカット数を使用し、会話の流れを邪魔せず、かつ楽しみを増幅させる自然な流れを作ることに苦心しました。今後はさらに演出を凝ったカメラワークも追加していきたい」(手塚氏)
このカメラワークには、俳優として数々の現場を経験し、ライブ配信でファンと交流する機会も多い佐藤健氏も驚きの声をあげていた。
「仮想空間に何台もの擬似カメラがあって、自動でカット割りもライティングもカメラワークをしてくれる。初めて見たときは、テレビ番組の対談を見ているかのようなクオリティの高さに驚かされました」(佐藤氏)
特長③「雑談を番組へ。一瞬で始まる生配信機能」
テレビ通話と言えば、基本的には一対一や少人数で行うプライベートなものだ。しかしPOPOPOでは、それをそのまま「番組」として公開・配信できる。「友達と電話をするだけでコラボ配信ができる」ことも、このアプリの大きな強みと言える。
1人でラジオのように話すことはもちろん、最大30人でのコラボ配信にも対応。自分のフォロワーに配信中であることを知らせる「スーパーコール」機能は、まるで実際の電話着信のような通知が表示されるユニークな仕様だ。
リリース日の夜には実際にGACKT氏からのスーパーコールが実際に発生し、SNS上で大きな話題となった。
特長④「フォローしている“あの人”と直接話せるかも!? 投稿募集&抽選機能」
配信アプリとしてのPOPOPOは、視聴者が能動的に番組へ参加できる機能を備えている。その象徴的な機能が、「投稿募集」と「抽選機能」だ。
配信者が特定の「お題」を指定すると、視聴者はメッセージや画像を投稿して応募することが可能になる。募集を締め切ると抽選が始まり、最大10人の視聴者の投稿が画面の下に表示される。配信者はその中から好きな投稿を選んで、内容を表示しながらトークをする――というものだ。この機能ではお題だけでなく、通話相手も募集できる。
配信者が「お題」を指定すると、視聴者はメッセージや画像を投稿できる。募集を締め切ると自動で抽選が始まり、最大10人の視聴者のアイコンが画面の下に表示される。配信者はその中から好きな投稿を選んで、画面上に表示するという仕組みだ。この機能はトークのネタとしてだけでなく、通話相手を募集する際にも活用できる。
大勢のファンを持つインフルエンサーにとって、流れるコメントをすべて拾うのは困難だが、この抽選方式なら公平性を保ちつつ、深い交流が可能になる。既存の配信アプリでも意外に少なかったこのシステムは、視聴者・配信者双方にとって画期的な機能と言えそうだ。
長年トップアーティストとして活動するGACKT氏も、POPOPOのコミュニティツールとしての側面に強い期待を寄せている。発表会では以下のように期待を語りつつ、同日夜には実際に複数人のファンと通話をして、POPOPOでの配信を楽しんでいた。
「ボクらミュージシャンやアイドルの立場から見たSNSの課題として、『ファンを広めるためにSNSを使いたいのに、それを使うことでファンクラブが意味をなさなくなっていく』というコンフリクトがあった。その点に関して『こうやったほうがいいんじゃないか』というアイデアも出しました。POPOPOはボクらみたいな表現者にとっても、良いコミュニティが作れる場所になると思っています」(GACKT氏)
特長⑤「アバターではなく、ファッションとして纏う“ホロスーツ”」
POPOPOでは、「アバター」という言葉を使わない。より手軽に着替えられる服のようなイメージを込めて「ホロスーツ」と呼称しており、サービス開始時点で既に400種類以上がラインナップされている。
ホロスーツはアプリ内のショップで購入し、ワンタップで着替えが可能。ミッションをクリアすると付与される無償コインでも購入できるため、無課金でもある程度は着せ替えを楽しめる。もちろん、チャージして使える有償コインもある。
バリエーションも実に豊かだ。人間や動物といった定番から、寿司、楽器、さらには「天体」や単なる「記号」といったシュールなものまで揃う。「論破王(ひろゆき氏)」や「一流(GACKT氏)」といった本人公認のユニークなスーツに加え、今後は『エヴァンゲリオン』や『東方Project』、「すとぷり」といった人気IPとのコラボも予定されているという。
また、一部の商品に「売り切れ」の概念を導入している点も興味深い。販売数が限定されているホロスーツもあり、ショップではすでに完売している商品も散見された。希少性がユーザーの所有欲を刺激する、デジタルファッション的な側面も持ち合わせているようだ。

(筆者が購入した「記号:EXIT」のホロスーツ。棒人間の頭部に記号が乗ったシンプルな姿だが、喋る姿には不思議な愛嬌がある。なお、このスーツは夜には売り切れていた)

(ビジュアル監修に携わった庵野秀明氏。「横にいる川上さんに巻き込まれてここに立っています」「本当はよくわかんないですけど、多分おもしろいと思うので、みなさんよろしくお願いします。詳しくは川上さんに聞いてください」とぶっちゃけて、会場を笑わせる一幕もあった)
「生理的な気持ちよさ」への挑戦――Zoomやテレビ電話に感じていた“緊張感”を払拭する設計思想
数々の特長が示されたPOPOPOだが、発表会を通して最も印象に残ったのは「気持ちよさ」「心地よさ」というキーワードだ。
川上氏は、20年前にニコニコ動画のプロトタイプを見た際、「最初はコメントが画面を覆うなんて酷いサービスだと思ったが、使い続けるうちにだんだん気持ちよくなってきた」というエピソードを披露。POPOPOにも通底する可能性を、次のように語った。
「Zoomやテレビ電話は生理的に気持ちよくない。使いたくないんですよね。ところが、声だけだとちょっと寂しい。POPOPOは『生理的に気持ちよくなってしまう』という要素がある。そこに賭けてみようと思って始めたプロジェクトです」(川上氏)
この「気持ちよさ」を実現するため、アプリには細かな設計が施されている。特長②のカット割りもそうだが、その一つが「視線」だ。POPOPOのカメラワークは発言者に合わせて切り替わるが、正面から「見つめられる」ようなアングルは意図的に避けられている。
発表会で流された紹介映像では、「人間は見つめられると緊張し、あまり愉快な気持ちにはならない。だからこそ、過去のテレビ電話サービスは大きな成功を収められなかったのではないか」という指摘があった。だからこそ、POPOPOはカメラアングルにこだわった画面づくりをしているのだそうだ。
ただ、映像では「ひろゆき氏が横向きで配信をすることが多いのも、カメラ目線だと圧迫感があり、視聴者が減ってしまうから」という説明もあったが、ひろゆき氏自身はそういった要素を強く押し出すつもりはないらしい。
期待しているのは、「なんとなくこれだと長く気持ちよく話せるよね」「他の通話サービスだと何か物足りないよね」と感じてもらえるようなサービスになること。
この「使い続けることで心地よく感じられるようになり、それ以外では物足りなくなる」という感覚は、2人だけでなく、代表の矢倉氏やCTOの岩城進之介(MIRO)氏のコメントとも通じるものがある。POPOPOの真価は、アプリが日常の風景に溶け込んだ頃にこそ、より鮮明に実感されることになるのかもしれない。
POPOPOはアバター文化を一般層へ広げる“入口”となるか
発表会でのデモンストレーションを目の当たりにして、筆者が抱いた最初の印象は「アバター機能があるClubhouse」だった。1人でラジオ感覚で話せる一方で、スピーカー同士のコラボレーションも楽しめる。仲間内だけでなく、知らない人とも「通話」でゆるく繋がれる空気感は、少なからずClubhouseと通じる部分がありそうだ。
他方で、「アバターの姿になって、バーチャル空間で友達とおしゃべりを楽しむ」という部分に着目すると、それは既存のメタバースの「日常」そのものでもある。VRChatやclusterなどのソーシャルVRでは多くのユーザーが日々そうして過ごしているし、オンラインゲームでも同じような光景が見られるかもしれない。
「自分では操作のできないアバターを配置して、他人と一緒にバーチャル空間で過ごす」という点では、goghとの共通性も感じられる。アバターのテイストや空間のビジュアルが似ているわけではないが、そこはかとなく近しい雰囲気があり、「通話機能のあるgogh」と捉えることもできるかもしれない。
配信アプリとしての機能に目線を移すと、REALITYや17LIVE、ツイキャスなど定番のサービス名が思い浮かぶ。ただし、配信アプリの主要な機能を踏襲してはいるものの、ギフト(投げ銭)のポイント数で競うランキング型イベントはない。あくまでも「通話」に軸足を置いていることで、どちらかと言えばLINEやDiscordが想起される部分もありそうだ。
細かい部分で言えば、コインなどを受け取れるミッションとスタンプカードの機能や、プレミアム会員になると解放される「スーパーレーン」は、ソーシャルゲームでおなじみだ。ほかにもストーリーズや配信中のエモートなど、SNSやゲームで目にする定番の機能がそこかしこに盛り込まれている。
こうして羅列すると、既存サービスの機能の“いいとこ取り”をしているだけの、独自性のないサービスに映るかもしれない。ところがおもしろいことに、実際に自分で使ってみると、既視感を覚えることはあっても「まったく同じ」とは感じないのだ。
それどころか、これだけいろいろなサービスが思い浮かんだにもかかわらず、「では、結果的にどれが一番近かったのか」と言われると……正直に言って、これと断言できるものが存在しない。どれとも似ているように感じるが、どれとも似ていないようにも思えてくる。
たしかに「テレビ電話」ではあるのだが、配信アプリでもある。メタバースのようにも見えるが、LINEやDiscordのようでもある。「〇〇っぽい」と類似例を示そうにも、あまりにも多様な要素をはらんでいるため、一言で言い表す適切な単語が見当たらない。わかりそうで、わからない。
既存のカテゴリーで一言に括れないこの得体の知れなさは、川上氏がかつて自著で述べた「コンテンツ」の定義を想起させる。
「コンテンツとは、わかりそうで、わからないものである」
(川上量生『ルールを変える思考法』Kindle版 位置No.962より)
独自性を保つ上では、明快で他社が追随しやすい差別化を行うよりも、何が差別化なのか、ちょっと考えただけでは理解できないものであり続けることが大切だというのが僕の考えです。
(川上量生『ルールを変える思考法』Kindle版 位置No.889より)
「なんとなく知ってはいるが、まだ未知の部分があるもの」は、人の興味を引きやすい。特にPOPOPOの場合、先ほど名前を挙げたような「〇〇っぽい」に当てはまるサービスが多いため、より幅広い層の関心の対象になってもおかしくなさそうではある。
では逆に、特定の「〇〇っぽい」が思い浮かばない、これまで「アバター」や「メタバース」という言葉に馴染みのなかった人の目に、POPOPOはどう映るだろうか。筆者個人の考えとしては、巨大な「入口」になる可能性を秘めているのではないかと思う。
凝ったキャラクターカスタマイズも、空間内の移動操作も、配信のための機材準備も一切いらない。用意されたホロスーツを選び、ただ誰かと通話を楽しむ。そのシンプルさこそが、POPOPOの最大の武器だ。
実際、リリース翌日の日中に配信を見て回っていたところ、クリエイターやネット住民、VTuberといった層だけでなく、「Yahoo!ニュースでアプリを知ってインストールした」という高齢世代のユーザーの姿もあった。この圧倒的なハードルの低さこそが、アバターコミュニケーションの裾野を広げるための鍵となるはずだ。
3Dアバターの共通フォーマット「VRM」を設計・提唱し、バーチャルキャストの立ち上げにも携わっているCTOのMIRO氏は、自身のXにて、リリース時にVRMの持ち込みに対応しなかった理由を次のように明かしている。
サポートサイトのFAQでも書かれていて気づいている人もいますが、POPOPOリリース時はVRMアバターの持ち込みはできないです。VRMは他ならぬ自分自身が推し進めてきた理念ですから、やるかやらないかで言ったらもちろんやります。ただ、POPOPOで成し遂げたいと思っていることがもうひとつあるんです。… https://t.co/PtiZ9WH8xs
— MIRO (@MobileHackerz) March 18, 2026
POPOPOが普及するということは、これまでVRデバイスやハイスペックPCを持たなかった層に「アバターで過ごす楽しさ」を伝えるという、極めて意義深い一歩となる。それは巡り巡って、VRChatやclusterといったソーシャルVRの世界にとっても、将来的なユーザー層の拡大という大きな恩恵をもたらすだろう。
純粋な「会話」の心地よさに特化することで、日本のXR・アバター文化を一般層へと接続する壮大な試金石。POPOPOが今後、私たちのコミュニケーションのあり方をどのように塗り替えていくのか、その動向を注視していきたい。
















