3Dモデルの身体を持つVTuberが増えた現在、欠かせない存在となるのが「モーションキャプチャー」。カメラを介して現実の身体の動きを読み込み、3Dモデルの動きに反映させるシステム・ツールの総称です。
VICONなどを導入した豪華なフルトラッキング技術を使ったVTuber事務所がある一方で、モバイルモーションキャプチャー「mocopi」などのトラッキングツールや、モーションキャプチャー系の映像ツールなどで、独自にVTuberを“動かす”ために工夫しているクリエイターが数多くいます。今回は、自宅や外出先でも気軽に活用できるようにアイデアを出しているVTuberをピックアップして紹介します。
VTuberの工夫(mocopi編)
鈴木勝:現実の動きを反映させたバーチャルなキッチン
3Dモデルを持っているにじさんじのVTuberは、「にじ3D」と呼ばれるライバー専用アプリを利用することで、自宅の配信環境でも3D配信ができます。しかし今回鈴木勝さんがクリスマスに行った配信は、その一歩上を行く内容となっていました。
それは、「クリスマスチキンの調理の様子をモーションキャプチャーでリアルタイムに収録する」といった配信です。mocopiを装着し、現実の動きを3Dモデルに反映させ、バーチャルなキッチンと現実のキッチンの位置を合わせることによって、自然に料理をしているような映像を収録しています。
3Dながら本当に調理をしていることが感じられる配信となっており、例えば食器や調理器具を触ったときの音や蛇口の水道音、食材を冷蔵庫から取り出すために背中を向ける動きなど、細かな部分からも現在何をしているかが伝わってきました。
専用の背景イラストが必要なため、同じことをしようとするとコストや手間は多くなりますが、手元カメラでの料理配信よりもダイレクトに動きを反映させられるため、実在感がとても高まるのが大きな魅力です。
ぽんぽこ・ピーナッツくん:mocopiによる外出ロケ動画
甲賀流忍者ぽんぽこさんのチャンネルでは、相方のピーナッツくんとともにmocopiによる外出ロケを早い段階で行ってきました。代表的な動画は「はだかモコピ」。冬の野外で裸になってmocopiを試す体当たり企画ですが、初期のソフトウェアバージョンながら、mocopiのトラッキング力を活かしたユニークな動画となっています。

(長野県 かまくら村のレポート動画より)
ぽんぽこさんとピーナッツくんは以降もロケにはmocopiを常用しているようで、ロケ先での動きと現実の背景が融合し、VTuberがあたかも実在するような動画を作っています。2人はパペットや着ぐるみでのロケも実施していますが、mocopiの場合は何かを食べるときや運動との相性が良く、場面によって上手く使い分けている印象です。
Peaky Hikers:農作業の様子をモーキャプで撮影
Peaky Hikersは群馬県にて夫婦で活動するVTuberユニットですが、近年活動の中心が農業となり、自分たちが作った新米6.3トンを完売させたことでも話題となりました。撮影の方式は3Dモデルと実写を使い分けていますが、モーションキャプチャーを使って農作業の様子を撮影し、3Dモデルに反映させた動画も投稿しています。
モーションキャプチャーの面白い使い方の一例として、アルピナさんがコンバインで稲を収穫する様子をmocopiで撮影したシーンが挙げられます。まだ慣れないコンバインの操作をしている姿がアバターに反映されており、普段は見ることのないコンバイン操縦者の動きがよく分かる内容となっていました。
Peaky Hikersの場合mocopiの利用場面はやや短めですが、動きを見せたい要所に挟むことで印象に残りやすい作りとなっていました。意外にも農業という野外活動とモーションキャプチャーの相性は良く、新たな可能性を感じられます。
これまで紹介したとおり、mocopiの利用は汎用性が高く、コストや必要な技術がそこまで高くないのも相まって、比較的誰でもチャレンジしやすいのが大きなメリット。mocopiには周囲の風景と合成させるAR背景機能もあり、スマホ1台から始められるのも強みでしょう。
VTuberの工夫:独自技術&VR関連デバイス編
三珠さくまる:モーキャプ利用したチャレンジと動画解説
個人VTuberの三珠さくまるさんは、積極的にモーションキャプチャーを利用した動画を投稿しています。得意とするジャグリングの動きを3D配信に活かしているだけでなく、積極的な外出ロケを行っており、現実の身体の位置にアバターを合成によって、流鏑馬やスカイダイビングまで独自の技術で実現しました。
また、モーションキャプチャーの解説動画も投稿しており、マーカーやIMUなど本来非常に難しい技術が使われているモーションキャプチャーを、一般視聴者にも分かりやすく説明しています。他にもモーションキャプチャーを活かしたさまざまなチャレンジ動画を投稿しているので、個人でどんなことができるのか学びたいなら、三珠さくまるさんの動画ぜひチェックするのをなどを追うことをオススメします。
また自分の配信だけでなく、「顔だけをVTuberに変更できる自作ツール」といったアプリケーションも公開中。動画や静止画を後付けして合成できるようになっており、パラメーター調整なども可能です。
1000日後にダンスが上手くなるアッシュちゃん:フルトラによるVRChatダンス
VTuberというカテゴリからはやや外れますが、VRChatで積極的に活動するユーザーのなかにも、トラッキング技術を積極的に活用する例があります。
例えば、VRChatユ-ザーのくまちゃん氏は、3Dアバター「アッシュ」を使った動画「1000日後にダンスが上手くなるアッシュちゃん」を2023年からXに投稿。2026年1月に1000日目の動画を投稿し、大きな反響を呼びました。
1日目 pic.twitter.com/4iHjY454sQ
— 1000日後にダンスが上手くなるアッシュちゃん (@DanceASH) January 17, 2023
1000日目 pic.twitter.com/ojoal1JqrD
— 1000日後にダンスが上手くなるアッシュちゃん (@DanceASH) January 17, 2026
1日目の動画の時点でも十分上手いと思えるダンスでしたが、1000日目の動画では素人目にも分かるほど手足の動きのキレが増しており、最後まで目が離せないクオリティーとなっていました。同時にリアルの姿でのダンスも同時投稿しており、リアルとバーチャルの成長具合をともに楽しめます。。
こういった動画制作に欠かせないのが、VRChatでのフルトラッキングツールです。VRChatをプレイする場合、基本的にPCやVRヘッドセットだけでも十分楽しめますが、全身にデバイスを装着させることで、アバターに人間の動きをより反映させられます。特にダンス分野においては必須とも呼べるもので、より精度を高めるために高額の光学式デバイスを揃える方も少なくありません。
まとめ
近年3Dアバター用スタジオの進化と増設によって、大規模なライブが実現するようになったVTuber。注目を集めるパフォーマンスをするには大規模な予算や大人数の協力が必要に思えますが、その一方でそういったスタジオが使えない状況でも、個人のアイデア次第で驚きの動画が作られ続けています。
特に手軽に利用できるmocopiの登場以降、VTuberにおける3D配信の可能性は大きく伸びた印象で、いままでの型を破った撮影パターンが増えてきました。モーションキャプチャーのフル撮影だけでなく、実写やナレーションと組み合わせることで柔軟な対応も可能で、個人の範囲で利用できる環境でもアイデア次第で面白い動画を作りやすくなりました。
他にも、トラッキングツールを利用せず、Webカメラでアバターを同期する「Webcam Motion Capture」や「VMagicMirror」といったツールもあり、気軽かつ簡単にキャプチャーできるツールは年々増加しています。
VTuberが動き回ることで出来る企画はまだまだ無数にあります。もしかしたら「あっ!」と驚くようなアイデアが近くに眠っているかもしれません。




