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活用事例 2020.02.28

米国で進む“VR核実験”……その課題とは

VRを用いたシミュレーションは、医療やビジネスの場、そして軍事演習など、用途の拡大を続けています――その最たるものとしては、米国におけるVRでの核実験が挙げられるでしょう。しかし、このような現場でのVR利用について、疑問を呈する専門家も少なくありません。

核爆発をVRで再現、内側からその爆発を見る

1992年、米国は核実験の停止を決めました。以降核兵器設計のツールとなったのが、コンピューターによるシミュレーションです。始めは二次元の画面内でしたが、近年VRを用いた3Dのシミュレーションが導入されています。

ロスアラモス国立研究所のVR実験室“CAVE(Cave Automatic Virtual Environment)”では、バーチャル空間で核爆発を再現。ヘッドセットをつけ、爆発の「中」に立って見ることができます。現実には不可能な体験を、繰り返し行えるのです。

VRシミュレーションの負の側面とは?

この一見安全な手法に対して、懸念の声も上がっています。その理由は、核実験が現実に与える影響からの隔絶です。実際の核実験であれば、爆発によるクレーター等の影響を目で見て、大きさを感じることができます。しかしVR内の実験では、これがありません。その結果、核兵器の破壊力、ひいては倫理的な問題への思いが至らなくなることが憂慮されています。

さらにVRが科学全体に及ぼす影響についても、負の側面が指摘されています。ある研究者によれば、若手の設計者らはプログラムを構成するコードを深く理解しないまま利用。自らが実行しているシミュレーションが、正しいと思い込んでいるということです。つまり、誤ったシミュレーションに基づいて結果が導き出される懸念があります。

正しく問題解決を行っているか

もちろん現場の科学者やエンジニア、設計者らは、VRシミュレーションのメリットを歓迎しています。手軽に、再現が難しいシチュエーションを作り出せるという点は、経済的にも時間的にも、多大なプラスの効果をもたらすでしょう。

一方で、上述のような懸念があることも事実です。正しくないコードで描かれた正しくないシミュレーションは、時に大きな事故を引き起こす可能性もあるでしょう。ある科学者はこう語ります――「検証する、というのはとても難しいことです。しかし、証明することはオプションではないのです」と。

(参考)salon


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