地球上の生命の起源を探るVR
今回紹介する「David Attenborough’s First Life」はイギリスの動物学者、植物学者であるデイビッド・アッテンボローによるアッテンボローシリーズの1つです。この連載でも第78回でデイビッド・アッテンボローが植物に焦点を当てた「Traders and Invaders – Kingdom of Plants」を紹介しました。
「David Attenborough’s First Life」では4.5億年前の地球上の生命の起源を探ります。生命がそれまでの単細胞生物の時代から海底を自由に動き回り捕食するような生物の時代への変化を見ることができます。5つの目を持つオパビニア、恐ろしい顔をしたアノマロカリス、トゲのあるミミズのようなハルシゲニアなどの古生物が見事なCGで蘇り、360度を8K 60fpsのVRで体験できます。
もともと「David Attenborough’s First Life」は2010年にBBCで放送されたドキュメンタリーで、2部構成のシリーズとして製作されました。これは2011年のエミー賞を受賞しています。その後、2015年にPS VRなどで公開するためにVR化され、この時にも「World Summit Award」や「Museum & Heritage Award for Innovation」などを受賞しています。そして、2021年にAlchemy ImmersiveがOculus、ZOO VFX、1.618 Digitalと共同で8K・60fpsのVRにしています。
オススメのポイント
1. 美しいCG
オパビニア、アノマロカリス、ハルシゲニアなどのカンブリア期の古代生物が見事なCGで蘇っています。カンブリア紀は海中で三葉虫、フデイシなど様々な海洋生物が現れた時代ですが、特殊な形をした生物が多く、それまでの単細胞生物から多様性が一気に増した時代でもあることをリアルなCGで体感できます。
しかも、それらが目の前で生き生きと動き回ります。もともとはテレビ用に作られたCGでしたが、VR空間で動くものに見事に変換されています。また海中の浮遊物もとてもリアルです。
以前この連載でも取り上げた深海VRの海中の様子を比べてみても面白いかもしれません。
2. 360度だからできる同時に展開すること
前述した通り、「David Attenborough’s First Life」はもともとはテレビで放映されたドキュメンタリーでした。そこでもCGで再現された古代生物がフレームの中で動き回っていました。VRとの違いを考えた時、フレームを外れて360度に展開された時に空間を感じ、没入できることが大きいことであると思います。
また物事を並列かつ同時に見られるのも大きいと感じました。例えばアノマロカリスが捕食するシーンはカットを分けられていますが、捕食者と非捕食者のどちらの方も認識する感覚が強くなる気がします。
もちろん、演出の工夫でどうにかなる部分もあると思いますが、VRであると遠くにいるアノマロカリスを見つけ、それがどう捕食するために迫ってくるのかを追いかけられます。同時に何かが起こっている時に、それを並列的に表現できる強さがVRにはあると感じます。
3. 体験して得る知識
CGの技術はこれからも進歩し、そう遠くはない未来、現実と見間違えるくらいの映像を作り出すことができるようになるでしょう。そして、その技術とVRを用いることで、書物で得る知識だけでない、体験による知識を獲得できる日がじきに来るのだと思います。
また、もう実用化されている部分もありますが、社員研修などでロールプレイングで使われている部分も今後どう発展していくのかもまた面白そうです。それらがどのような学習効果をもたらすのか、いい面も悪い面もあると思いますが、興味深く思います。
作品データ
タイトル |
David Attenborough’s First Life |
ジャンル |
ドキュメンタリー |
監督 |
Matthew Baker Jones |
制作年 |
2015年(Oculus TV版:2021年) |
制作国 |
イギリス |
本編尺 |
11分18秒 |
視聴が可能な場所 |
Oculus TV: |
Trailer
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