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業界動向 2018.07.27

VRゲームのアーケード化を支援、人気開発スタジオが新企業立ち上げ

人気VRゾンビシューティングゲーム「Arizona Sunshine」の開発を行ったVertigo Gamesは、VRコンテンツのアーケードゲーム化を進める別会社Vertigo Arcadesを立ち上げたことを発表しました。Vertigo Arcadesでは「Arizona Sunshine」のアーケードゲーム版リリースを予定しており、その他のコンテンツについても、デベロッパーがアーケードゲーム化を行うサポートをするとしています。

自社コンテンツに限らず幅広くアーケード化

Vertigo Arcadesによれば、すでに40か国の300以上の施設と連携を予定しており、同社が手掛けるタイトルは欧米市場のアーケードタイトルの約2割を占めようとしています。Vertigo Gamesの「Arizona Sunshine」や「Skyworld」に加え、既に「Space Pirate Trainer」、「Island 359」といった他のゲームスタジオの人気タイトルについてもアーケード化を予定しています。

「Arizona Sunshine」のアーケード版は、今年8月のリリースを予定しています。無線で動作するヘッドセットを使用し、最大4人のプレイヤーが一緒にプレイ可能となります。またVRの触覚技術を手掛けるNomadic社と共同で“オリジナルな”アーケード版「Arizona Sunshine」も開発中、こちらは今秋リリースとしています。

メディアVentureBeatはこの件に関し、Vertigo Arcadesのマネージングディレクター、Richard Stitselaar氏にインタビューを行いました。


(Vertigo Arcadesマネージングディレクター、Richard Stitselaar氏)

小規模なデベロッパーの開発をサポート

――ロケーションベース(施設型)VRに関する計画について詳しく教えてください。

Stitselaar氏:
Vertigo Arcadesを立ち上げたのは今年前半です。「Arizona Sunshine」は非常に人気を集めたため、我々はアーケード版についても検討を進めていました。家庭では出来ないような体験を実現すべく、もっとクールなものを作れるよう試作を重ねました。この半年から8か月取り組んできて、ようやくリリースできて嬉しいです。

――Vertigo Arcadesは、今後何に注力しますか?

Stitselaar氏:
アーケード版のコンテンツに注力します。コンテンツと、それを動かすツールセット作りです。その一つとして、パートナー向けにソフトウェア開発キットを作り、提供します。異なるバックパックやトラッキングシステムに対応するロケーションベースのVR開発は、とても手間がかかるものです。VRに携わるのは、いまだインディーのデベロッパーが多く、開発資金や人も不足しています。我々が「Arizona Sunshine」のアーケード版開発を元に作ったツールセットがあれば、開発の手間を減らすことができます。

――将来的にアーケードゲームパブリッシャーになるのですか?

Stitselaar氏:
いえ、もっと開発寄りのことを手がけます。我々はゲームを設置する様々な施設とコネクションを作ってきました。このネットワークは、小規模なデベロッパーにとっては非常に価値があるものです。従業員の少ないデベロッパーは、1つ1つの施設と契約を取り交わすことも困難です。しかしVertigo Arcadesと提携すれば、全ての施設とコネクションを持てますし、また我々のツールセットを利用することもできます。

またゲームの制作にしても、我々はVRゲームスタジオと繋がりを持ち、専任のスタッフを置いています。開発者は契約業務に煩わされることなく、次のタイトルの制作に注力できるというわけです。

今後収益の拡大を確信

――マネタイズはどのように行う予定ですか?

Stitselaar氏:
いくつかのモデルを検討しています。最も売り上げを出せそうなのが、プレイ時間に応じて課金するモデルです。アーケードゲームの売り上げの一定の割合を徴収します。もう一つは、月々、四半期ごとなどに一定のライセンス料を徴収する方法です。

――家庭用ゲームよりも施設向けVRの方が収益が上がりやすいのでしょうか?

Stitselaar氏:
現時点ではノーです。しかし今後は十分に収益を上げられると判断し、新会社を興しました。これから「Arizona Sunshine」のアーケード版をリリースし、収益は拡大していくと考えています。

年齢対応などアーケード版独自の工夫

――「Arizona Sunshine」のアーケード版について、プレイ人数は家庭用よりも増えますか?

Stitselaar氏:
現時点では家庭用と同様、最大4人までです。しかしこれはスペースの制約によるところが大きく、今後はプレイ人数を増やせると考えています。

――アーケード版ではプレイヤー同士がぶつかる心配がありませんか? 他にも何か懸念点はないでしょうか?

Stitselaar氏:
はい、これこそツールセットにも盛り込んだことです。プレイヤー同士が近づきすぎると、画面に警告が出て人が近くにいることを知らせます。また、「Arizona Sunshine」には非常に恐ろしいシーンもあるため、パニックになってしまう人もいます。これに対して、“パニックになった時ボタン”のようなものを設け、一時的にシーンから離れ、現在地を把握できるようにしました。

また年齢制限のある18歳以下でも一緒にプレイできるように、年齢に応じて暴力シーンのレベルを変えようと考えています。家庭用ゲームでも国ごとに暴力シーンのレベルを変えていますので、年齢ごとに変えても楽しめると思います。

家庭用とは全く違う体験

――アーケード用ゲームと家庭用ゲームはどれくらい違いますか?

Stitselaar氏:
全く違います。ゲームの構成、コア技術、登場するものなどは同じです。しかし施設型のゲームでは、視点なども異なってきます。家庭用ゲームのエリアの制限を取り払って作ったアーケード版は、とてもクールな出来栄えです。

――様々なコントローラーやプラットフォームにはどう対応しますか?

Stitselaar氏:
我々のツールセットでは、一般的なプラットフォーム、トラッキングシステム、コントローラー全てに対応します。例えば足のトラッキングをしたいと思えば、Viveのトラッカーを靴につければ対応可能です。プレイヤーの動きに合わせて、画面の中の足も動きます。逆に、画面の中で身体の部分を表示しない、という選択でも問題ありません。

施設型のゲームはプレイする場所に大きく依存するため、どこにでも対応できるよう、自由度を高くしています。

――「Arizona Sunshine」のアーケード版はいつリリースされますか?

Stitselaar氏:
アーケード版は2週間前に発表し、現在導入を進めています。また、Nomadicとのオリジナル版が体験できる場所など含め、詳細は近いうちに発表される予定です。

(参考)Venture Beat


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