ウクライナの航空パイロット訓練にMR(Mixed Reality)ヘッドセットが導入されました。フィンランドの高性能XRヘッドセットメーカーVarjoと、フライトシミュレーター企業Dogfight Bossが共同で開発したF-16戦闘機のMRシミュレーターが、ウクライナ空軍に納入されました。このシステムは、パイロットの訓練を加速させ、実戦に近い環境での練習を可能にします。
MRを活用したパイロット訓練は、従来の方法と比べて多くの利点があります。パイロットは、実際のコックピット環境を再現した物理的な操縦桿やスロットルを操作しながら、MRヘッドセットを通じてバーチャルな飛行空間を体験できます。同時に、実際の計器類をパススルー映像で確認することができるため、より現実に近い訓練が可能になります。これにより、パイロットは安全な環境で高度な技術を習得し、実機での飛行時間を効率的に補完することができます。
Varjoのヘッドセットは、航空機シミュレーターでの採用が急速に増加しています。同社のXRヘッドセットは、すでに60以上の防衛関連組織で使用されており、その中には米国陸軍のバーチャル集団訓練(RVCT)プログラムも含まれています。RVCTプログラムでは、Apache、Chinook、Blackhawkヘリコプターの携帯型訓練にVarjoのヘッドセットが活用されています。
今回ウクライナに納入されたシステムは、キーウの戦闘機パイロット基地に設置されました。これにより、ウクライナのパイロットたちは、現在の戦争状況下でも、国内で安全に訓練を継続することが可能になります。Dogfight BossのCEOであるLukas Homola氏は、「約1年にわたる詳細な微調整とEUのF-16パイロット教官の協力による広範なテストを経て、ウクライナ初の完全に機能するF-16シミュレーターを納入できたことを光栄に思います」と述べています。
このMRシミュレーターは、ウクライナが現在直面しているパイロット訓練の課題に対する重要な解決策となる可能性があります。ウクライナは、デンマークやオランダなどのNATO加盟国からF-16戦闘機の供与を受けており、老朽化したソビエト時代のMiGやスホーイ機の代替を進めています。しかし、F-16の操縦には専門的な訓練が必要であり、米国や欧州の訓練プログラムの定員には限りがあるため、十分な数のパイロットを育成することが困難な状況でした。
Dogfight Bossによると、このMRシミュレーターの受け入れは非常に好評で、協調訓練シナリオをサポートするための追加ユニットに対する緊急のニーズがあるとしています。今後、さらに8台以上のシミュレーターがウクライナ軍に納入される可能性があるとのことです。
(参考)Road to VR
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