トヨタ自動車が2016年に設立した研究所、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(Toyota Research Institute, Inc.、TRI)は、家庭用ロボットの開発プロジェクトを公開しました。このプロジェクトではロボットへタスク(家事)を教える際にVRを活用し、効率的な学習を図っています。
家庭用ロボット開発の課題
TRIが開発するのは、食器の片付けや掃除などを行う家事ロボットです。こうした家事支援をロボットが行う際に問題となるのが、各家庭により環境がまったく異なる点。そして同じ家庭でも、その時々で物の配置等が変化する点です。特定のシーンで特定のタスクをこなすようプログラミングする方法では、対応が難しくなります。
そこでTRIは、様々な環境下でロボットに任意のタスクを行わせる手法を採用しました。ロボットは見えている状況と行動をリンクさせて学習。次に似たようなシーンに遭遇した際、どのように行動すべきか分かるようになる、というものです。
VRでロボットの視点を体験
この学習プロセスで活躍するのがVRです。ロボットには複数の3Dセンサーやカメラを設置し、開発者はVRヘッドセットを装着します。開発者はロボットの視点を体験しながら、モーションコントローラーを使いリアルタイムに操縦し、ロボットがその記録を分析。この手法によって、ロボットに開発者が直接「教える」ことが可能です。
さらにVRを用いた操作で一台のロボットに効率的にタスクを学習させ、その内容を他の機器にも展開する、という手法を採っています。
TRIによれば、現在は「リサーチプロトタイプの段階であり、商用化には遠い」とのこと。一方、「将来的には、例えば高齢者の生活支援を行うようなシステムを目指している」ということです。