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セミナー 2025.09.01

「楽しい」の越境が鍵 地方XRコミュニティの持続可能な育て方【XR Kaigi Hub in 札幌レポート】

2025年8月22日、国内最大級のXRカンファレンス「XR Kaigi」の姉妹イベントである「XR Kaigi Hub in 札幌」が開催された。本稿は、その中で行われたセッション「楽しいを軸に越境する人々がつなぐ地方コミュニティ活動の連鎖」の模様をレポートするものである。

XR関連の技術を軸として、開発者同士での情報共有を行う場となっている「XRコミュニティ」。全国さまざまな拠点で展開されているコミュニティ活動だが、地方での運営は、都市部とは異なる多くの課題を抱えている。どのようにして活動を始め、持続させていくのか。このテーマに対し、北海道と鹿児島を拠点に活動する2人の登壇者が、それぞれの経験に基づいたリアルな知見を語った。

話者紹介

じゅん氏(@jun_mh4g)

北海道のXRコミュニティ「Hokkaido MotionControl Network(DoMCN)」創設メンバーの一人。全国のコミュニティと連携し、地方でのイベント開催コストを下げ、持続可能な運営モデルを実践している。

あぶち氏(@abricheese)

鹿児島を拠点とするノンゲームXRエンジニア。「XR Meetup Kagoshima」および「UE KYUSHU」のコミュニティ運営に携わる。「楽しい」を原動力に、地域に根差した活動から九州全域を繋ぐ広域連携まで、精力的に活動を展開している。

地方コミュニティが抱える課題

「地方コミュニティは存続に不利」。セッションの冒頭、じゅん氏はこのように切り出した。都市部に比べて地方コミュニティは開発者の絶対数が少なく、情報や機材へのアクセスも限られるのが現状だ。そんななかで、技術コミュニティを立ち上げ、活動を継続させていくことの難しさは、多くの地方関係者が直面する共通の課題である。

じゅん氏は、まず北海道のXRコミュニティ「DoMCN」の設立経緯について説明した。2018年2月、jojomonvr氏が東京で開催された「HoloLens Meetup」に参加した際、現地の参加者から「札幌でもやりましょう」と声をかけられフットワーク軽く返事した結果、わずか2ヶ月後の4月には「札幌HoloLens Meetup」が実現。この成功を機に発足されたのが現在の「DoMCN」だという。

当初メンバーは5名ほどだったが、それぞれが全国各地へ出張するたびに現地のXRコミュニティと交流を深め、全国に仲間を増やしていった。同時に、札幌でもミートアップやもくもく会(※作業や勉強を同じ空間で実施する企画)、ハッカソンといったオフラインイベントを精力的に開催し、2019年まで活動を続けた。

他の地方コミュニティを支援することで生まれた好循環

そんなコミュニティに大きな変化があったのは、コロナ禍からだった。活動をオンライン主体に移行し、自分たちのイベントを充実させることから、他の地方コミュニティを「支援する」活動へとシフトしたのだという。イベント告知の支援、内容の実況、運営ノウハウの共有などを通じて、オンラインで他のコミュニティに貢献するスタイルへと移行することになったそうだ。

そして現在、DoMCNが開催するイベントは、外部コミュニティとの協力開催が100%となっている。例えば、全国6拠点を繋いで月1回開催されている「XRミーティング」は7年間一度も発表者が途切れたことがない。福岡のコミュニティが主催するハンズオンの会場を設営したり、東京から持ち込まれた最新ガジェットの体験会を企画したりと、協力の形態は様々だったという。

じゅん氏はこのスタイルについて、「地元のイベント開催コストが次第に下がってくるのです。その結果、ワンマンでも持続可能なイベント開催様式として確立してきました」と語る。

イベント開催コストの削減は、コミュニティに「余力」をもたらした。DoMCNはその余力を活用し、今度は他の地方コミュニティの運営を支援するという、さらなる好循環を生み出している。

鹿児島発、地域に根差す活動

鹿児島で始まったコミュニティ「XR Meetup Kagoshima」は、より属人的な「楽しい」という感情が原動力となっている。話は共同代表のあぶち氏のこれからのキャリアの話から始まった。IT企業に就職したものの、配属先の業務が合わず「このままだと3ヶ月も続かない」と感じていたという。そんな中、社内にあったXR好きが集まるコミュニティに参加したことをきっかけに、趣味でXRアプリ開発を開始。その経験が評価され、フルリモートのXRエンジニアとして働くことになったそうだ。

あぶち氏は当時を振り返り、「好きなことを仕事にできるという状況になり、それまでの業務から一転、とても楽しいと感じました。この楽しさをキープしていきたいという思いから、学習意欲がマックスになりました」と語る。そこから全国各地の勉強会へ遠征するように。地方の参加者との交流も活動のモチベーションに繋がったそうだ。

大きなきっかけとなったのは、2023年8月に三重県で開催された「XR Meetup Mie」だった。後に「XR Meetup Kagoshima」を共に立ち上げることになる、鹿児島在住のサメ氏とその場で偶然に出会い、「じゃあ鹿児島でまた会ってみようよ」という約束を取り交わすことに。その話が第1回目のミートアップイベントへと繋がり、あぶち氏が運営メンバーとなっていたという。

コミュニティの活動をさらに深化させたのが、オリジナルコンテンツの開発だった。展示イベントで使えるコンテンツを作りたいという思いから、メンバー3名がわずか1ヶ月でVRシューティングゲーム「タツノオトシゴXR」を制作することになった。

このゲームは、日本で唯一タツノオトシゴの観光養殖を行う鹿児島県の「タツノオトシゴハウス」と連携し、2024年の年越しイベントで24時間展示を実施。さらに「XR Kaigi 2024」のクリエイターズスクエアにも出展し、累計体験者数は1,000人を突破。自分たちの手でコンテンツを生み出し、地域と連携しながら発表の場を設けることで、コミュニティは新たなフェーズへと進んだのである。

仲間と場所がコミュニティ成長の鍵

現在、「XR Meetup Kagoshima」は月1回のゆるい「もくもく会」を活動の中心に据えている。各々が作業や学習を進め、困ったときには助け合う。このスタイルが定着した背景には、いくつかの幸運があった。

一つは、活動を応援してくれる施設との出会いだ。ゲーミングPCを無料で利用できる施設を会場として確保できたことで、PCを持っていない初心者でも気軽に参加できる環境が整った。もう一つは、「顔の広いメンバー」の存在である。様々なジャンルのコミュニティに参加しているメンバーが、新たな参加者を連れてきてくれることで、自然な流入経路が確保されているという。

あぶち氏は、「『この人に参加してもらいたいから、この人の予定を聞いて会う日にイベントを立てよう』というように、特定の人をターゲットにしたイベントを心がけています。必ず参加者がいる状態になるので、心理的安全性を保ったままイベントを続けられます」と語った。

さらに、鹿児島での活動と並行して、あぶち氏はもう一つのコミュニティ「UE KYUSHU」を立ち上げる。これは、九州というより広い地域を対象に、ゲームエンジン「Unreal Engine」の最新技術情報を届けることを目的とした活動だ。これまでに福岡、鹿児島、長崎で、講演や展示、ハンズオンなどを実施している。

「UE KYUSHU」が特に心を砕いているのが、イベントのアーカイブ動画を必ず残すことだ。オフラインイベントが主流に戻りつつある中で、地方在住者が最新情報に触れる機会が減ることを危惧したあぶち氏は、「地方でも最新情報に触れたい、誰も取り残されない社会になればいいのにという思いから、アーカイブを残すことを強く意識しています」と、その意義を強調した。

同時に、現地参加のメリットを創出するため、イベント開催地の観光情報を交換したり、参加者でツアーを組んだりと、現地での体験価値を高める工夫も凝らしている。

コミュニティ活動の価値と未来

XRコミュニティの運営で重要な点について、あぶち氏は下記のようなポイントが重要であると語った。

  • イベントに参加する、参加したかった意思を表明する
  • コミュニティの存在・活動を広める(SNSでのリポストなど)
  • イベント実況や参加した感想を投稿する(ハッシュタグ付きで)

直接的な運営参加だけでなく、こうした小さなアクションの積み重ねが、コミュニティを支える大きな力となる。

セッションの最後に、あぶち氏はコミュニティ活動を通じて得られたものについて語った。
「1人で実現できないような大きな展示ができた」「業界への認知度がアップした」といったメリットが挙げられたが、特に「仕事も趣味もXRなので、楽しんでいるだけで仕事としてもスキルアップしていくというのは面白い」といった発言は、XRコミュニティを継続するモチベーションのひとつとして非常に重要と言えそうだ。

「XR Kaigi Hub」の熱気は、次なる都市へ

2025年9月2日、レソラホールにて「XR Kaigi Hub in 福岡」が開催されます。GMOペパボ株式会社や大丸松坂屋百貨店といったXR業界をリードする企業による最新技術の体験ブースや、業界のキーパーソンによるセッションが予定されています。福岡のXR・AI・メタバースに関心のある皆様、この貴重な機会をお見逃しなく。参加は無料ですので、ぜひご来場ください。

●XR Kaigi Hub in 福岡
開催日程:2025年9月2日(火)
会場:レソラホール
〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神2丁目5-55
https://hubinfukuoka.peatix.com/view

●XR Kaigi Hub in 大阪
開催日程:2025年9月11日(木) / 12日(金)
会場:eスタジアム なんば本店
https://hubinosaka.peatix.com/view

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