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「集英社XR」が発足。組織の垣根を超えて日本のコンテンツを送り出す、集英社とTHINK AND SENSEの仕掛け人にインタビュー

2021年11月9日(火)、株式会社集英社がクリエイティブチーム「集英社XR」発足を電撃発表した。日本において最も知られた出版社のひとつである株式会社集英社が、XR技術を活用したコンテンツを打ち出す――それも「ポケモン GO」や「Ingress」で知られるナイアンティックとパートナーシップを結ぶというのだから、驚きの声も少なくないだろう。集英社は数々のエッジの効いたプロダクトを送り出してきた株式会社ティーアンドエス(T&S)のクリエイティブチーム、THINK AND SENSEとタッグを組み、このチームを作り上げた。

今回Mogura VR Newsでは、集英社のXR事業開発課課長稲生晋之(いなきしんじ)氏と株式会社ティーアンドエスの代表取締役社長、そしてTHINK AND SENSEのプロデューサーを務める稲葉繁樹氏にインタビュー。「集英社XR」チームの設立経緯やその内側、そして彼らが目指すビジョンを訊いた。

写真左:稲生晋之/Shinji Inaki
1972年生、埼玉県出身。1996年より20年にわたって集英社で漫画編集者を務め、のちライツライセンス部門を経て新規事業開発部門に。ライツ部門では週刊少年ジャンプ創刊50周年事業や国内外の数多くの映像化事業を担当。新規事業部門では、集英社作品の海外映像化事業統括マネージャーも務めつつ、2021年、「集英社XR」チームの立ち上げを行う。

写真右:稲葉繁樹/Shigeki Inaba
1981年生、福岡市出身。株式会社ティーアンドエス代表取締役社長、同社R&D;部門であるTHINK AND SENSE部のプロデューサー。デジタルコンテンツや映像、広告、イベントなどの様々な分野において活躍。2020年10月より集英社新規事業のプロデューサーとして活動。集英社XRのチーム創設メンバーであり、現在は企画・開発の双方でプロデューサーを担当。

共同で新しいコンテンツのあり方を探る

――今回組織として立ち上がった「集英社XR」の設立経緯を教えていただけますか。

稲生晋之氏(以下、稲生):

集英社は今年で設立95周年、2026年には100周年を迎える企業となります。「週刊少年ジャンプ」は2018年に50周年を迎え、これまでにも「DRAGON BALL」や「ONE PIECE」をはじめ、最近では「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」など、人気作を発表してきました。

今後、「本を読む」「雑誌を読む」といった印刷物に寄った体験を求める読者は減少していくと見られています。私たちも出版物という形に加えて、新たなコンテンツのあり方を再構築していかなければならない、そんな未来の出版社のイメージを描いていきたいと思っていました。こういった観点からXR領域にはずっと注目していましたが、今回THINK AND SENSEさんやナイアンティックさんとの協力体制を築き上げられたことで、いよいよ具体的なものを発信できるタイミングがやってきたわけです。

今回、11月2日より、集英社内でXRの専門チーム「集英社XR」を発足させました。THINK AND SENSEにも内部から参加していただいており、一緒にXR領域におけるコンテンツやメディアを開発していくプロジェクトにしていきたいと考えています。

稲葉繁樹氏(以下、稲葉氏):

ナイアンティックとのパートナー契約についてはTHINK AND SENSEが「Pokémon GO AR展望台」などの制作に関わっていることもあり、私たちの方から話を持ちかけています。昨年発表された「Niantic Lightship ARDK」で何か作れないだろうか、というところからスタートし、集英社の新規事業プロデューサーとしてナイアンティックと交渉を重ねて実現しました。

――「専門的なチーム」というお話がありましたが、具体的にはどのような組織なのでしょうか?

稲生:

少年誌・青年誌、女性誌をはじめとした編集部門とライツ部門、広告部や宣伝部などの営業部門からとても優秀な面々が揃いました。集英社XRの目標は「自分たちが携わっているコンテンツを、最先端の技術でさらに素晴らしいものにすること」。最先端の技術開発部分はTHINK AND SENSEにパートナーとして関わっていただきつつ、企画立案から具体的なコンテンツ制作まで一気通貫で行う予定です。私たちが素晴らしいXRコンテンツをリリースすることで、他企業の方々が「自分たちもこんなことをやりたい!」とお声がけいただくケースもあるでしょう。その際のプロジェクト提案や企画、開発も考えていくつもりです。

XRの可能性は、ベテランの編集者たちも目を輝かせる

――今回の事業には、既存メディアの編集者の方々が大きく関わってくるわけですね。

稲生:

私たちは常日頃から、読者の皆さんがどういったコンテンツを求めているのかを考えながら編集や出版を行ってきました。今回の事業でもこういった「キュレーション能力」を大いに活かしたいと考えています。

――編集者の方々は今回の新規事業についてどのように捉えているのでしょうか?

稲生:

チーム発足から数日後ですが、さっそく様々なアイデアが飛び交っていますね。なかには、ベテランの編集者が目を輝かせながら「これはできないのか?」「あれはできないか?」と次々と質問してくれることもありました。

――期待感やモチベーションがとても高いと。

稲生:

「これまで印刷物というメディアの特性ゆえに実現できなかったアイデアが、今回の事業を機に実現できるかもしれない」という思いは、それぞれの編集者の心を突き動かしていくと思います。例えば漫画であれば、コマ割りや構成の技術や見せ方によってキャラクターたちの動きを表現しています。そういった技術自体は変えずに漫画が作られていく一方で、作家さんや編集者が「キャラクターのアクションをリアルに表現してみたい」といった思いがあればそれも組み込めると思います。我々の誇る技術部分に更なる変化を加えていけるところが「集英社XR」がまず目指す面白い部分だと考えています。

https://www.youtube.com/watch?v=5KI5wb_ki5E

(ナイアンティックのARプラットフォーム「Niantic Lightship」本格展開に併せ公開されたデモ映像。他にも「ONE PIECE」のキャラクターが出現し街中を歩く様子や、海賊船サウザンドサニー号がビルの合間から出現し空を飛ぶさまが映し出された)

――今のお話は非常に興味深いものに思います。今年の10月にアメリカ航空宇宙局(NASA)がAR演出を盛り込んだコミックスを発表して話題となりましたが、日本ではまだまだ漫画それ自体にARを盛り込むといったケースは少ないように感じます。

稲生:

漫画であれば当然そういった可能性の広がりがありますし、一方でファッション誌でも新たなライフスタイルやブランド、商品価値をARで視覚的に表現し、全く新しい体験として伝える、といったことができるようになると思います。

――ファションブランドの領域ではARの活用が非常に積極的になってきていると思います。

稲生:

新型コロナウィルス感染症の拡大後はファッションイベントの中止やブランドショップの展開縮小が相次いだこともあり、AR等で商品に触れてもらう場をファッションブランド自ら作るようになりました。

ファッション誌は、「読者の方にファッションの魅力や新しいライフスタイルを提案する」媒体です。今回の集英社XRでは、様々な発想やコンセプトを実現できる土台が整ったがゆえに「これもできないだろうか?」「こういった機能は追加できないか?」と、ブランドサイドに負けないアイデアがファッション誌部門からも次々と湧き出している状態なのだと思います。

当初こそ先端技術の話なので、各媒体の編集者がこの事業を面白がってくれるのかが不安な点ではありましたが、稲葉さんのおかげもあって強く興味を持ってくれています。

稲葉:

集英社の経営陣や編集者の方々と話をしていると、信じられないほどたくさんのアイデアをいただくんです。コンテンツに対するこだわりの強さを非常に感じました。これぞ日本を代表する作品を手掛けている出版社の力だと思います。新しい技術を使ってどんな素敵なことができるのかを考えてくださるので、たしかな手応えのあるコンテンツが生まれると予感しています。

稲生:

編集者はみんな語りだすと止まりませんからね(笑)。行ったことのない場所への「楽しい旅行」を計画しているかのようです。

アイデア同士をぶつけ合う

――先ほど話されていた通り、集英社からはさまざまな名作漫画や小説などの作品が出版されています。こういったコンテンツが、XR技術とどのように組み合わさるのでしょうか?

稲生:

弊社の漫画のキャラクターやストーリーにXR技術を組み合わせることで、コンテンツを力強く、そして魅力的にユーザーの皆さんに届けられるのだとすれば、事業を依頼していただく企業の方々にとっても良いことだと思います。

また、XR技術のポジティブな面が業界全体に向けてアピールできる良い機会にもなるのではないかと。せっかく先進的なテクノロジーが発表されたとしても、利用方法や魅力が伝わりづらければ、各企業様が活用するようになるまでには時間がかかるかもしれません。技術に魅力的なキャラクターやストーリーを組み合わせて、それをユーザーが使ってくれることで、その実用性がより伝わりやすくなり、世間にも広がるようになると思います。

稲葉:

集英社の新規事業開発部内にある「XR事業開発課」に弊社から企画・クリエイティブ・エンジニア合計15名が組み込まれ、ここに至るまで稲生さんとともに企画・調整を続けてきました。さまざまな関係者の方と話を重ねていくうちに「技術に溺れてはならない」ということを改めて痛感させられました。企画書にあるアイデアが本当に突き抜けたものであるかどうかが重要だ、というのも集英社という企業文化の学びのひとつでしたね。

もともと僕自身がそういった超越したものを目指していたので、編集者の方々も僕たちのアイデアに理解を示してくださいました。テクノロジーだけでない、アイデア同士のぶつかり稽古というものが、集英社では非常に重要視されていますね。作っているだけではなく、様々な人達と幅広く会話しているかどうかというのが、XR業界にとっても大切だと改めて気付かされました。

――それぞれの領域のアイデアの掛け合わせが技術を進歩させ、より多くの人に広まるコンテンツへとつながっていくということですね。

稲葉:

そのとおりです。また今後様々なコンテンツを打ち出していくにあたって、「集英社XRはナイアンティックのARDKを最も面白く使えるチームだ」ということを各方面に知ってもらう必要があります。例えば今回のパートナーシップが発表される以前から、社内ではARDKの研究開発を積み重ねてきましたし、おかげで各企業へのプレゼンテーション時に「XRでこのようなことが可能になる」という具体的なものを見せられるようになりました。

週刊少年ジャンプ50周年、それを機に考え始めたこと

――そもそも、集英社とTHINK AND SENSEはどのようなきっかけからパートナーシップを締結するに至ったのでしょうか?

稲葉:

AR Roppongi x Ingress」を実施した際に、稲生さんが見に来てくださったのがファーストコンタクトでしたね。その当時がちょうど「週刊少年ジャンプ」50周年で、ちょうど稲生さんが漫画の新しいこれからを模索されていたタイミングだったんです。「Ingress」を話のきっかけに、今後の新しい技術やアイデアについてお互いに共有するようになりました。当時の僕はいち漫画ファンとして縮み上がるような思いでしたが(笑)。定期的に相談会を開いて、編集部にも招待していただいていました。


(「AR Roppongi x Ingress」)

稲生:

私は漫画の編集者を20年間ほど務めて、その頃ライツライセンス部署にいたんです。そこで漫画の様々なメディアミックスの強さや影響力というものを実感として感じました。テレビアニメ化やゲーム化の影響力が大きいのは当然といえば当然なのですが、それがどのような現場で生み出されているのかを肌で感じた大事な時期だった気がしています。

その一方で、映像作品やゲーム等は、今後表現方法やそれを支えるビジネスのあり方を含めて、もう一歩進化していく必要がある、と意識するようになりました。それについて考え始めたのが「週刊少年ジャンプ」50周年にあたる2018年だったんです。

もちろん、これからの漫画をはじめとする各メディアの新しい未来を考えるのは現役編集者の仕事です。したがって私は主役ではないのですが、彼らに何らかのサジェストをできるような新しいものを探す必要があります。意識的に新しいひとたちとの出会いを模索しているうちに、THINK AND SENSEの仕事ぶりに興味を惹かれ、現在に至りました。

稲葉:

個人的には、サラブレッドの子馬を育てるように優しく・時に厳しく包み込んでくださったように感じています(笑)。

日本のコンテンツを世界に向けてアピールするために

――最後に、この「集英社XR」が今後見据えているビジョンについてお聞かせください。

稲葉:

漫画に限らず新たなメディアのあり方を追求していきます。そのための研究開発も進めていきますし、プロダクトの開発も行っていきます。ナイアンティックとのパートナー契約は国内に限定したものではないので、海外での事業展開も視野に入れています。

また集英社のコンテンツのみを発信することだけを目的にはしておらず、日本のエンタメ業界全体を盛り上げていきたいと考えているので、様々な企業様や組織と協力しながら日本のストーリー・コンテンツを世界にアピールしていく、というのが大きなビジョンです。

稲生:

ナイアンティックは集英社を「日本のエンタメ企業の代表としてパートナーに選んだ」のだと認識しています。それだけに責任は重く受け止めています。先ほど稲葉さんがおっしゃったように、日本のさまざまなエンタメ企業や我々のことを面白く思ってくださる方々と、皆で手を取り合って未来を一緒に描いていきたいですね。THINK AND SENSEも非常に心強い仲間として頼りにさせていただいています。

――集英社がXR技術を取り入れたコンテンツ作りの先導的な役割を果たすことで、興味を持つ企業は非常に多いのではないかと思います。

稲生:

これまでご一緒できなかった方々とも、一緒にやっていきたいと思います。日本発の面白いものをより世界に発表していくためには、いま何をすべきか。日本は豊かで深みのあるコンテンツ、ストーリーを紡ぐという点では、他の国に決して譲らない力があると思いますし、今回のXR技術の活用でより世界に証明できるのではないかと期待しています。まずは集英社が、そのことを伝えていけたらと考えています。

――ありがとうございました。

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