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VTuber 2021.03.03

VTuber文化はロシア語圏にも広がっている 有識者に動向を聞いてみた

現在、英語圏や中国語圏、ポルトガル語圏などにも広がりつつあるVTuber文化。MoguLiveではこれまで、VTuber雲母ミミさんやバーチャル翻訳者のDenise(デニス)さんのインタビューなどから、その動向を追ってきました。

そんな中、noteに「ロシア語VTuberがめちゃくちゃ面白ことになってるからマジで語らせてくれ」が公開。ホロライブ所属の獅白ぼたんさんがロシア語圏で大きな人気を獲得していることや、現地VTuberが次々と誕生していることなどが紹介され、話題となりました。

さらに記事の中では、2017年ごろからすでにロシア語圏のVTuberが誕生していたことや、VTuberグループが登場しはじめていることなどが、具体的なVTuber名をピックアップしつつ解説されています。

今回は、noteの執筆者であるすらさんにメールインタビューを実施。昨今のロシア語圏での広がりについて見解をお聞きしました。

すらさんに聞く「ロシア語圏でのVTuber文化とは?」

――すらさんがロシア語圏でのVTuberの盛り上がりに気づいたのはいつごろでしょうか?
また当初はどのような感想を抱かれていましたか?

普段からVTuber絡みの海外ニュースをほぼ毎日追いかけていたら、盛り上がりに気づいてしまったという感じです。

最初のきっかけは獅白ぼたんさんのチャットが、ロシア語コメントでいっぱいになっているというreddit(※英語圏でのソーシャルブックマークサイト。ひとつのトピックについての議論やコミュニケーションが可能)の分析データを見たときでした。(その時はまだ違和感しかなかったのですが)

次のきっかけは、ニュースサイトや掲示板でVTuberという単語が母国語で、自然に用いられはじめたからです。ちなみにロシア語でVirtual YouTuber(VTuber)はвиртуальные ютуберы(витубер)と呼ばれています。その単語で検索をして、Froggyさんを見つけ、ロシアのVTuberファンコミュニティを見つけ、そこでVTuberの会社が設立されていることを知り、これは盛り上がりはじめているんだなという確信を得ることができました。

その時は直感的にヤバイと感じました。ロシアでVTuberの情報を発信するメディアをほとんど見かけないぐらい、まだまだブームと言えない状況で、会社を立ち上げるやつは、詐欺グループか、最高にクレイジーな野郎しかいないんじゃないかなと。

――ロシア語圏でのVTuberにはどのような特徴があるとお考えでしょうか? 日本のVTuberとの違いなどはありますか?

これはロシアだけではないのですが、アバターの3D率が高いということです。VRoidモデルの製作者や、VTuberの海外事情に詳しいDeniseさんのご意見を聞いても事例が多いらしいです。

ロシアのVTuber129名をざっと見ても、7割ぐらい3Dモデルじゃないかなと。逆に3Dモデルをすでに持っているのに、2Dモデルをとりいれたりと、日本の3Dモデルお披露目配信と逆の事例が出てきています。

性別は判別しにくいですが、見た目が男子のアバターは4割ぐらいで、日本のVTuberよりも割合が多いような気がします。

アバターそのもののデザインで言えば、うまく言語化できないのですが、目の周りの化粧具合や顔がすらりとしている特徴的なデザインをちらほらと見かけます。あまり自信がないのですが、北欧カラーのような落ち着いた色合いでもあるような気がします。他の有識者の方にもうかがってみましたが、やはり海外特有のカワイサがあるという意見がでています。

配信動画の傾向でいえば、ゲーム実況だったり、歌だったりは特に変わりないです。ただ日本のアニメや海外のミームとアバターを組み合わせてMADのような動画を作成するのは、海外特有じゃないかなと思います。(国内のVTuberを追い切れてないので自信をもって言い切れないのですが)

――特に現在注目しているロシアVTuberはどなたでしょうか? その理由もお聞かせください。

3人です、どうしても3人あげたいです。


KIRISHIBA

1人目はVOCALIVEの創設者KIRISHIBAさんです。KIRISHIBAさんがLGBTQ+のコミュニティにかかわっていること、そしてKIRISHIBAさん自身のアバターの水色とピンク色にそのストーリーが込められています。

またメールインタビューを受けている最中に投稿された動画で、アバターの性別を切り替えるという斬新な発想を生み出し続けています。国内の一部の視聴者からはVTuberはLGBTQ+を茶化してるというご意見をたまに聞くのですが、海外におられる方がVTuberのアバター文化の意味を理解して実践してくれているのは、日本のVTuberいちファンとして、安心するというか、嬉しいというか、心強いです。あの方が箱として企業として成長していけばしていくほど、VTuberが良い方向へと向かってくれるんじゃないかなと予感があります。


Mana


Planya

そして、2人目と3人目は、WePlanetの創業者Manaさんと、Planyaさんです。WePlanetはロシア語を話す高品質なVTuberをコミュニティにもたらすことなどを目標に掲げており、並々ならぬ覚悟を感じます。その覚悟は言葉だけでなく、コミュニティやスケジュールをちゃんと管理していることなど、端々から伝わってきます。それに創業者2人のバックグラウンドにも注目です。

Manaさんは、VTuber黎明期からVTuberとして活動され、初期からのクオリティはピカイチです。また動画で「他のロシア語圏VTuberにも登録してね」「私達のコミュニティがホロライブみたいにすごすごになる。ホロライブよりもすごすごかも!」(訳者による日本語字幕より)という強気な発言もあって、ロシアでVTuberを拡大するんだという野心をあらわにしています。

また30分ちかくにもなるHololiveの解説をしていて、日本国内のVTuberをそれなり見ている私から見ても、すごいと思わせる分析力を持っています。間違いなくただのビックマウスではないです。

Planyaさんは出身地が東京で、日本国内で活動をしていたのではという興味深いウワサ話がでています。また配信者としては起業する前からYouTubeで精力的に活動していて、キズナアイさんやホロライブのようなプロになるという目標をかかげ、「Button Online」というロシア語のオリジナルソングを個人で作り上げています。

――ロシア語圏でのVTuberの視聴者層に何か特徴はありますか?

まず「〇〇ジャンル」のユーザーが(視聴者層に)多いという特徴は感じられませんでした。アニメ好きでVTuber好きな方もいましたし、アニメを知らないけれどVTuberが好きな方もいました。かと思えば「カワイイボイス」が苦手だと、おっしゃる方もいました。

少し話がそれますが、では「なぜ現地で獅白ぼたんさんが流行ったのか」ということになります。これは仮説になってしまうのですが、VTuber視聴者の共通の特徴として、愛国心が強いのではないかなと考えています。

獅白ぼたんさんがロシアで流行るきっかけの1つは、ロシア語を使っていたことです。自分の公開した記事もなぜかロシアのVK(※ロシア最大のSNS)で公開されていて、Twitterにわざわざ「いいね」をつけてくれるぐらい自国に興味を持ってくれることを喜んでいたように思います。

同様の現象としては宮澤伊織氏のSF小説「裏世界ピクニック」も、ロシア(旧ソ連)の古典SF「ストーカー(路傍のピクニック)」をオマージュしていることで、ロシア人気を獲得しています。

――ロシアでのVTuberの盛り上がりは今後どのように発展していくとお考えでしょうか?

いくつか考えられます。
ひとつは日本国内で起きた現象をなぞるように、ロシア国内でも同じようにVTuberが盛り上がり、その国独自のプラットフォームに溶け込みながら発展していくのではないかなと。先行例としては、英語で話すHololiveENVshojoが出てきて、TwitchでVStreamerが増え始め、redditではVTuberを寝ずに追っかけるというVTuberガチ追い勢が存在しているということです。とても日本国内のVブームと似ている気がします。

もう一つは、VTuberが爆発的に増えずに、箱という文化が先行して、企業が成長していく可能性です。ロシアではVTuberよりもHololiveという言葉が国内で多く検索されているという逆転現象が起きています。(というより世界全体でも、その現象がでているのですが)

つまりVTuberという個人でアバターで配信する文化にふれる前に「箱という配信スタイルで儲かる」という情報にふれるので、企業が先行するんじゃないかなと。

またWePlanetのManaさんは動画内で「他のロシア語圏VTuberにも登録してね」「私達のコミュニティがホロライブみたいにすごすごになる。ホロライブよりもすごすごかも!」という箱の強さを理解して、発信していることも影響するんじゃないかなと思います。

――ありがとうございました。

(参考)note


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