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メタバース最新動向 2025.05.05

【インタビュー】Robloxで長期的に成功するには?個人とチーム、正反対の方針を貫くクリエイターに直撃

世界中で急成長を遂げるゲームプラットフォーム「Roblox」。クリエイターが自由な発想でゲームを開発し、多様な成功モデルが生まれる中、ひときわ目立つ個性を持った開発者たちがいる。中でも、まったく異なるスタイルで成功を続ける二人のクリエイターの存在は、Robloxの可能性を象徴的に示している。

一人は、一切の妥協を許さず、「Bee Swarm Simulator」を完全な一人プロジェクトとして開発。10年近く運営し続けて30億回を超えるプレイ数を叩き出した異色の個人開発者ピアセン・ハーバット氏。もう一人はRobloxで起業し、30名規模のスタジオSplitting Point Studiosを率いながら、70億回以上プレイされた人気タイトル群を生み出し続ける若手経営者ジャンゼン・マドセン氏だ。

一方は徹底した個人主義を貫き、もう一方は組織の力を最大限に引き出す経営者として手腕を振るう。対照的な二人だが、どちらもRobloxというプラットフォームの特性を体現する存在であり、その経歴や考え方は極めて興味深い。

Mogura VR編集部では、Robloxにおける成功の秘訣や開発哲学、コミュニティ運営などをテーマに、ピアセン・ハーバット氏とジャンゼン・マドセン氏にインタビューを実施した。


(今回、インタビューに答えてくれたピアセン・ハーバット氏(左)とジャンゼン・マドセン氏(右)、クリエイター同士、仲も良いという)

Robloxとの出会いとクリエイターへの道

――まず自己紹介をお願いします。Robloxをプレイヤーとして始めた時期と、クリエイターになったきっかけ、そしてそれからの変化について教えてください。

ジャンゼン・マドセン氏:私は2017年にRobloxを始めました。あるパーティーでRobloxを見て、そのプラットフォームの楽しさと遊び心に惹かれました。当時21歳で、翌日にさっそくRoblox Studioをインストールしてゲームを作り始めました。

それから2週間ほどで最初のゲームを完成させ、それが数年間で私の最も人気のあるゲームとなりました。その後、Splitting Point Studiosとしてメンバーを雇用し、現在は15人のフルタイム従業員がいます。ゲームをいくつも制作し、買収も行ってきました。

今では合計で70億回以上のプレイ数を記録し、15人のフルタイムスタッフを含む30人ほどのチームです。2017年以降、プラットフォームは大きく変化し、ゲームのクオリティも信じられないほど向上しています。


(Splitting Point Studiosの公式サイトより)

ピアセン・ハーバット氏:私はプレイヤーとしては、2009年1月にRobloxに参加しましたが、Robloxは単なる子供向けのものだと思っていました。クリエイターになったのは高校卒業直後でした。Robloxで「Bee Swarm Simulator」をリリースする前は、自分のゲームエンジンを開発し、モバイルゲームを作ろうとしていました。6年以上続けましたが、そのプロセスに疲れてしまっていたんです。その後、Robloxのゲーム「Jailbreak」についての記事を読み、そのクリエイターたちの成功を知りました。

しかし実際にプレイしてみたところ、「Snow Shoveling Simulator」というゲームに刺激を受け、2ヶ月でBee Swarm Simulatorを作りました。2018年3月のことです。一晩で25,000〜30,000人の同時接続プレイヤーが集まり、当時としては大きな成功でした。それ以来、ずっとこのゲームを運営しています。

もう7年経ちますが、今でも人気を維持しています。年に数回の大型コンテンツアップデートを行っていますが、他のクリエイターほど頻繁ではありません。それでも勢いは衰えていません。

――今でも一人で開発されているのですか?

ハーバット氏:Bee Swarmは最初から一人のプロジェクトです。私は自分のコンテンツに完全なコントロールを持ちたいと思っています。コーディング、アートなどコンテンツの全ての構成要素が好きなので、ゲームのアイデンティティを維持したいと考えています。だから今でも一人で作業しています。

――マドセンさんは15人のチームで、何タイトルを管理していますか?

マドセン氏:現在3つのタイトルでライブオプス(運営)を行っています。まもなくリリース予定の新しいゲームも開発中です 。小規模なプレイヤーベースのゲームもあり、定期的に更新していませんが、これまでに所有・制作したゲームは約50タイトルにのぼります 。


(Splitting Point Studiosで15億アクセス以上を記録している看板ゲーム「Dusty Trip」)

――お二人は他のプラットフォームでもゲームコンテンツを作られていたのでしょうか。

ハーバット氏:はい、僕は先ほども話したようにモバイルプラットフォームです。Stencilという別のモバイル向けのゲームエンジンを改良して自分独自のゲームエンジンを作っていました。途中でボクセルエンジンを作ったり、そのエンジンを使ってRTSゲームを作ろうとしたりと、何年もかかりました。
最適化の追求やゲームエンジンの可能性、スコープなど(コンテンツ以外のこと)について考えることに没頭してしまうんです。その経験があったからこそ、Robloxでの開発は驚くほど簡単でした 。以前はクロスプラットフォームのレンダラーをどう書くかなどを心配していましたが、Robloxではすべてが魔法のように機能するのです 。

――マドセンさんはどうですか?Roblox以前に他のプラットフォームでゲーム制作の経験はありましたか?

マドセン氏:Roblox以前にUnityやUnreal Engineを少し触ったことはありますが、本格的な開発経験はありません 。Robloxは、ゲームを作って2ヶ月でリリースできる唯一のプラットフォームでありエンジンだと思います 。数日で作ったゲームが商業的に成功することさえありますから、本当にすごいことです 。

「ソロ開発」と「チーム開発」それぞれのスタイル

――お二人は全く異なる体制ですね。チーム構築についてどう考えていますか?

マドセン氏:ピアセンさんは天才だと思っています。多くのことを一人でこなせる人です。僕はもっと普通なので、一緒に働いている素晴らしい人たちがいます。私よりも才能のある人たちです。

みんなで力を合わせて素晴らしいゲームを作っています。ピアセンさんのようなスキルセットを一人で再現するのは非常に難しいことです。かなりユニークなケースですが、時々そういう人が現れるんですよ(笑)

ハーバット氏:情熱を持って一つのゲームを作り、それが突然成功することがあります。僕のゲームは広告などを一切必要としませんでした。ただただ情熱で作っただけです。

とはいえ、最近成功しているのは、特に若い才能を含むRoblox出身のいわゆるネイティブなクリエイターの才能を組織化する能力に秀でている人々です。ジャンゼンさんのような人たちはそれを完璧にこなしています。

――マドセンさんのチーム内の役割分担は一般的なゲーム会社と同じですか?

マドセン氏:アーティストに関しては標準的なパイプラインがあると思います。3Dモデラーやコンセプトアーティストなど、通常のゲーム開発と似ています。プログラミングはより汎用的な傾向があります。

逆にそれ以上のバックエンド専門やAIプログラマーなど特定の専門家はあまりいません。プログラミングができてプラスで何かそれ以外のことができる人がいるという感じです。少しVFXをやったり、バックエンドシステムを作ったり、フロントエンドの戦闘システムを作ったりと、プログラミングスキルは汎用的ですね。

――お二人のコンテンツ制作プロセスは非常に異なります。インスピレーションを得る方法などを教えていただけますか?

ハーバット氏:私はアップデートが非常に遅いことで知られていますし、告知した時期よりもずっと後になることもあります 。非常に瞑想的なアプローチをとっていて、ノートを取りながらアイデアを練り、時間をかけて熟成させます 。

「Bee Swarm Simulator」のアップデートをリリースする時、ゲームを根本的に変えるようなものにしたいと考えています。人々が予想していないようなものを作りいのです。多くの時間を、じっくり考え、オリジナリティを追求することに費やしています。

Robloxの多くのゲームは、毎週のエピソードコンテンツのような、連続したリリースによって成功していますが、「Bee Swarm Simulator」は全く異なります 。各アップデートには数ヶ月かかり、その間はノンストップで開発に没頭します 。

今年リリースしたアップデートの中にも、5年前のノートにアイデアが書かれていたものがあります 。

マドセン氏:私も少し同じように熟考するアプローチをとることがあります 。インスピレーションの多くはRoblox自体から得ていますね 。Roblox上の他のゲームを見て、アイデアが触発されることが多いです 。

――マドセンさんは、多くのものを同時に作り、何が成功するか見極めるアプローチをとっていると聴きました。

マドセン氏:新しいプロジェクトを始めるとき、たくさんのアイデアが浮かびます 。Robloxは非常に簡単にゲームを作れるので、複数の異なるプロトタイプを同時に作成することがよくあります 。

ゲームが形になっていく感触を確かめながら、気に入らないものは切り捨てていきます 。「Wacky Wizards」というゲームも、一度は開発を中断したものでした 。しかし2年後に作り直したところ、大成功を収めたのです 。

――プロトタイプはこれまでどれくらい作ったのでしょうか?

マドセン氏:初期の頃はたくさん作っていました。おそらく80から100くらいでしょうか。今はプロジェクトの選び方が上手くなったと思います。

――コミュニティ運営についてもお伺いします。DiscordやRobloxグループ機能を使ってユーザーコミュニティを管理されていると思いますが、どのように運営されていますか?

ハーバット氏:「Bee Swarm Simulator」がどのようなものになるか最初はわかりませんでした。Roblox独自のジャンルなので、外部で参考になるコンテンツを見つけるのは難しいので、コミュニティの意見を聞いてゲームの方向性を形作ってきました。

私のDiscordサーバーには75万人ほどのメンバーがいますが、管理は大変です 。現在はモデレーター不足と、コミュニティからの要求が時に非常に強くので、現在は一時的に閉鎖しています 。コミュニティの声を聞いたり、YouTubeでの反応を見たりすることは、ゲームを良くしていくために非常に重要です 。

Robloxグループも持っており、一時はRobloxで最大のグループでしたが、主にプロモーション用です 。友達のプロフィールでゲームを見つけてもらうためで、グループを通じてメッセージを送ることはあまりありません 。

――現在はどのようにユーザーの意見を聞いていますか?

ハーバット氏:アルゴリズムによってです 。Redditのサブレディットを購読していなくても、Roblox関連の不満や意見は目に入ってきますし、YouTubeも同様です 。再生回数が300回程度の特定の動画でも、「Onett(私のユーザー名)はこれを今すぐ修正する必要がある」といった内容が、私に届いてしまうのです 。これが非常に役立っています 。


(多くの動画がアップロードされるBee Swarm Simulator)

マドセン氏:私たちにはコミュニティマネージャーがいます 。複数のDiscordサーバーを運営しており、素晴らしいスタッフチームがいます 。また、フィードバック収集にはRobloxグループのウォール(掲示板)をよく利用しています 。

アップデートを行うと、グループウォールを見てプレイヤーの反応やバグ報告を確認します 。これは私たちの開発サイクルにおいて非常に重要な部分です 。グループウォールのフィードバックが、私たちにとっては最も示唆に富んでいると感じています 。

クリエイティビティと収益化のバランス

――クリエイターにとってゲームビジネスを考えるのは本当に難しい問題だと思います。コンテンツとしてのゲーム制作と、収益を上げるビジネスの間には微妙なバランスがあると思いますが、お二人はクリエイションとマネタイズについてどう考えていますか?

ハーバット氏:Robloxの最高な点の一つは、私がビジネス面についてほとんど考えなくても良い純粋な環境を維持できることです。広告を出さず、一人だけなので、給与計算の心配もありません。

ビジネス的な側面が心理的に入り込んでくると、コンテンツを変えてしまう可能性があります。代わりに、私は常に子供のような、Robloxのプレイヤーの一人のような気持ちでいられます。それが日々の制作活動に表れていると思います。ビジネスのことを考えていないからこそです。

マドセン氏:私たちは従業員がいるので、コストについて考えるのは少し怖いです。ゲームをマネタイズしていますが、過度な収益化にならないこと、そして「Pay to Win」(課金者が有利になるゲームの構造)にしないことは難しいです。

時にはうまくいき、時には間違うこともありますが、常に学び続けているという感覚です 。

――Robloxのマネタイズシステムは年々拡大しています。課金の種類を増やしていますが、それはお二人にとって恩恵があったのでしょうか?

マドセン氏:数年前に導入されたプレミアム配当(※)は素晴らしいですね 。開発者は何も考える必要がありません 。地域ごとの価格最適化も、私たちのチームの担当者が行っていますが、非常に成功しています 。

※プレミアム配当:Robloxで「プレミアム」に登録しているユーザーがエクスペリエンスに参加する時間の割合に基づいて、Robuxを獲得できるシステム。クリエイターが課金について複雑な検討を経て設定を行う必要はない。

ハーバット氏:Robloxには、ゲームの収益化に道徳的な抵抗を感じるピュアな開発者もいますが、プレミアム配当のような仕組みのおかげで、彼らも努力に見合った収益を得られるようになりました 。僕はサブスクリプションなどは利用していませんが、プレミアム配当のようなシステムは間違いなく役立っています 。

「Roboxはまだ始まったばかり」

――ここ最近で、Robloxユーザーの行動や傾向に変化を感じていますか?

マドセン氏:時間が経つにつれて、Robloxのユーザーはより洗練されてきていると思います。(アプリを開いて最初に表示される)フロントページのゲームはより複雑になり、より深いテーマを探求するようになっています。

プラットフォーム自体も成長しています。2年前には100万CCU(同時接続ユーザー数)に達するゲームは珍しかったですが、今では頻繁に見られるようになりました。

ハーバット氏:大きな違いは、Robloxがかつてないほど大きくなりつつも、より断片化していることです。より多様な人々がいて、コンテンツ配信のレコメンデーションがよりパーソナライズされているため、より小さなサブカルチャーが増えています。

以前のRobloxは、ログイン時に誰もが同じ人気ゲームを見るような、大きな単一のトレンドが文化になってました。今はよりターゲットを絞った、ニッチなゲームでも成功することができます。

―― 確かに、2-3年前はイカゲーム(Netflixで人気のドラマシリーズ、閉じ込められた登場人物たちがゲームをクリアしていくサバイバル展開が特長)関連のコンテンツばかりな時期もありましたよね。ディスカバリーシステムが変わってきているんですね。最後に、お二人の今後の計画を教えてください。

マドセン氏:Robloxはピークに達しているように見えるかもしれませんが、実際はまだ始まったばかりだと思います。過去2-3年の成長を見ると、次の3年ではゲーム業界で最大のセクターになる可能性があります。

その一部であることはとても素晴らしいことだと思います。Roblox以外でゲームを作ることは考えられません。

ハーバット氏:私は目の前のことに集中していて、長期的なことはあまり考えていません。今はBee Swarmに取り組んでいますし、維持し続け、成長させていきたいと思っています。

いつか別のゲームも作りたいと思っていますが、Bee Swarmの良いところは、様々なコンテンツを作れることです。各アップデートで新しいものに取り組んでいるような感覚です。そしてとても献身的なコミュニティがいます。

短期的には、今後数年間はBee Swarmを続けていくつもりです。とても幸運なタイミングで参入でき、Bee Swarmは長く続くゲームで、多くの人に知られています。この機会を活かしていきたいと思います。

―― ありがとうございました!


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