HTC Viveの登場により、ゲームなどVRの中で歩くことが実現しつつあります。UnityやUnreal Engine 4などのゲームエンジンで作られた3DCGの中を歩くことはスペースとデバイスさえあれば簡単にできるようになりました。
では、実写のコンテンツはどうでしょうか。
結論から先に言ってしまうと、360度撮影を行った場合撮影できるのは平面的なイメージのみ。静止画や動画の中を実際に歩くこことはできません。例えば、何箇所か視点となるポイントを決めておき、そのポイントをワープして移動することが精一杯です。奥行きも含めた、光線空間全体を捉えるライトフィールド・カメラの登場が待たれています。
しかし、全く異なるアプローチをしているのがRealities.io。複数枚の写真から3DCG空間をハイクオリティなグラフィックで構築した結果、ヨーロッパの様々な場所を歩きまわりまるでその場にいるかのように感じられるほどのクオリティで(正確には)実写風に再現しています。
GDC2016で展示されていたため、体験をしてきました。
Realities.ioは、世界の様々な場所を実際に実写で体験できるようにするHTC Vive向けのプラットフォームアプリのリリースを予定しています。
https://www.youtube.com/watch?v=B8FPunc_RTE
アプリでは、地球を目の前に、手に持ったコントローラーで地球儀のように地球を回して、行きたい場所を選びます。
今回のデモで体験できたのは、フランスの廃校、ドイツの城などの合計4箇所。静止画ですが実写の中をあるくことができる体験は、実写系のコンテンツの体験としてこれまでにない実在感がありました。
覗きこむことなども可能。HTC Viveのルームスケールの範囲を歩けるだけでなく、コントローラーを掲げてレーザーで任意の移動先を決めてワープができます。ワープ先でも自由に動けるため、一度作成してしまえば、その中をそのままに歩くことができます。
城のシーンでは屋上に上がって遠くの町並みを眺望できました。
また、解像度が粗いということもありません。廃校を見ていたときに教室の角に転がっていた壊れたテレビのそばにしゃがみ込むと、配線のディテールに至るまで綺麗に見て取ることができました。
3DCGのため、3DCGのグラフィックを追加することも可能です。城の屋上からインフォメーションを見る様子。
Realities.ioのCEOで共同創設者のDominic Eskofier氏によると、このプロジェクトは、「実写のVRコンテンツもその中を動けてこそVRになる」という想いからスタートしたとのこと。複数枚の通常の写真を1シーンあたり数百枚撮影して、それを再現していくとのこと。写真同士の視差が最大となるように一連の写真をとり、地点同士の距離を計算して奥行を出します。テレビやイスなど複雑な形をしている物体は、複数の角度から奥行を撮影します。写真を撮る作業はおよそ2時間で完了し、その後、Realities.ioの技術によって360度の1シーンへと作り上げます。全行程合わせて、シーンは数日で出来上がります。
「画質は落ちますが、スマホのカメラでとった写真ですら作ることができてしまいます。世界中のなかなか行けない場所に行けるようにしたいです。」と語っていました。
なお複数枚の写真を組み合わせてハイクオリティな3DCGに再現する技術に関してはGraphine社の技術を使用しています。
このRealities.ioの技術は、写真を元に3DCGを限りなく実写に近づけたというもの。体験した筆者には実写としか思えない仕上がりでした。現在3名のチームとのことですが。今後、さらに多くのコンテンツがプラットフォーム上で展開されていくことに期待したいところです。
(参考)
This is Not a Still Photo: Realities.IO’s Photogrammetry VR Scenes Could Change Tourism Forever – UploadVR
http://uploadvr.com/realities-io-video-photogrammetry/