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PlayStation VR 2021.07.25

【対談】ゲーム機が深める没入感 VRに携わる僕らがPS5をやるべき理由

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が2020年11月に発売した家庭用ゲーム機PlayStation5(以下、PS5)。新たな「触覚・抵抗・音」の体感機能で、よりリアルなゲーム体験が可能になりました。

品薄が原因で手に届かない状況は記事執筆時点でも続いています。一方、発売当初は数の少なかったソフトのラインナップもそろってきました。SIEがうたう「没入感」の表現は、確かにこれまでにないゲーム体験をもたらすものです。

そんなPS5について、Mogura VR編集部が見つけたツイートがこちら。

このツイートを行なっていたのは、XR(VR/AR/MR)開発の株式会社Mark-on代表取締役のJackMasaki氏。かつてMogura VRでライターを担当していたこともあります。本記事では、Mogura VR編集長のすんくぼ(久保田瞬)と2人で実際にPS5でいくつかのゲームをプレイしながら、その魅力についてあますことなく語りました。

目次

1.機能をチェック「PS5をやるべき理由」
2.コントローラーが誘う「触覚」の新体験
3.PS5で怖さ別格「バイオハザード8」

機能をチェック「PS5をやるべき理由」

久保田瞬(以下、すんくぼ):

VR系のお仕事に携わる人が「PlayStation5(以下、PS5)をやる方がいい理由」を実際ゲームやりながら見ていこうと。どのあたりがポイントなんだろう?

JackMasaki:

DualSense ワイヤレスコントローラーに搭載された触覚のハプティクス(※)フィードバック、抵抗をボタンで操作できるアダプティブトリガー、あとPULSE 3D ワイヤレスヘッドセットの音でしょうか。映像はこれ以上キレイになっても……(笑)。

※ハプティクス……振動や動きなど人の触覚にモノの感覚を伝える技術

すんくぼ:

作る人が大変だよね(笑)。

JackMasaki:

ハプティクスフィードバック、アダプティブトリガーと音の3つは、Oculus Questのコントローラーにもない機能だし、大きな特徴。他社のコントローラーはハプティクスってほどの振動も、振動自体の繊細さもないですからね。


(PS5用ワイヤレスコントローラー「DualSense」。搭載の「ハプティックフィードバック」は新VRコントローラーに採用の可能性も。)

すんくぼ:

Returnal」やってびびったんだよね。怖くて一気にできない(笑)。

JackMasaki:

ASTRO’s PLAYROOM」もよくできてますね。コントローラーの使い方も。

すんくぼ:

あ、音と言えば、コントローラーから音が出るね。

JackMasaki:

音自体はPlayStation4(以下、PS4)でもあったけど、かなり活用されていて、いい!あと純正アプリだけに、UI一つひとつに対して反応が機敏に入ってくる。丁寧に作られてる印象だし、床を歩いたときの音や振動の違いも大きい。

すんくぼ:

もしかして床の材質によって違う?

JackMasaki:

そうそう。わかりやすいのはガラス面を歩くとき。床の質感によって振動が変わるし、振動の強さ+コントローラーの音で、よりそれらしさを出してる。

そういったプレイ中の機微な変化から、大きなオブジェクトが動いたときの振動まで、強弱が区別されていて、すごいんですよ。Nintendo Switch向けの「1-2-Switch」(※)もかなりよくできてたけど、PS5のような強い振動はありませんでした。

(※)1-2-Switch:任天堂より2017年3月3日に発売されたNintendo Switch用ゲームソフト。Switchのコントローラーに搭載された「HD振動」「モーションIRカメラ」を活用するミニゲームを多数収録している。

Switchに搭載されたHD振動と「1-2-Switch」での活用も体験したときはビックリしたなあ。

JackMasaki:

PS5は強い振動が出せるのが大きな違いですね。まぁこうしてプレイしてみると映像も十分キレイですね。(※)

すんくぼ:

そうだね。PlayStation VRのアドベンチャーゲーム「ASTRO BOT: RESCUE MISSION」のときも思ったけど、めちゃくちゃよくできてる。

JackMasaki:

それに今作はオタク向けの要素があるんですよ。ロープがPlayStation1のコントローラーのケーブルになってたり。PS5買ったら全員みんなこれやるみたいな。あとウーファー(高音、中音、低音に3分割したスピーカーシステム)の音がすごい。

すんくぼ:

掛け合わせでよくなるから、オーディオが良くなると効果は倍増するね。

JackMasaki:

可能なら最高の体験をしてもらいたいですもんね。あとファスナーを移動する表現も、よくできてます。この手触りをVR系コントローラーにつけると体験のレベルがあがる。

JackMasaki:

このガガガッて振動はよくできてる。その分クリエイターが苦労したと思んですけど、やる価値のある体験が作れてるのは間違いない。

すんくぼ:

PS4のコントローラーでプレイした前作と比べると体験を感じる表現方法が増えていて圧倒される。

JackMasaki:

コントローラーや表現だけでこんなに質が高く、体験がよくなるという。あ、あと風の感じもすごいですよ。

すんくぼ:

おおお、風のギミックすごい!!!最初の数分やってこのゲームすすめるの止まってたけど、もっとやった方がいいね。ステージが進むほどいろんなギミック出てきて、それぞれコントローラーを使った新しい表現を使ってる。

JackMasaki:

一個一個のギミックが、体験として丁寧に作られてるんです。

コントローラーが誘う「触覚」の新体験

JackMasaki:

それから、弓を打つとき、アダプティブトリガーが重くなる。ちゃんと弓を引き絞る感じがよく出てますよね。体感でわかるから、移動とか他の操作に集中できます。

すんくぼ:

これは気持ちいいなあ。キューッと振り絞ってる感じが指から伝わってくる。

JackMasaki:

他のゲームだと「Returnal」でメインウェポンを切り替えるとき、アダプティブトリガー(※)が使われています。ゲームに集中しながら直感的に操作できて、さらに体験の質も上がってと、まさにメリットだらけ

※アダプティブトリガー…「Returnal」では、L2ボタンを浅く押すと照準モードになり、引っかかるような感触がある。そのままL2ボタンを深く押し込むと、集中攻撃ができる。

すんくぼ:

「Returnal」のアダプティブトリガーを押し込む操作は最初気づかなかった。今までにない挙動すぎて。

JackMasaki:

強いて例えるなら、ニンテンドーゲームキューブのコントローラーかな。水を放射して進めるゲーム「スーパーマリオサンシャイン」とかが近いです。LRボタン深押しでその場でマリオの向きを変え、浅押しで水を放射して歩くみたいに差別化していました。PS5は、アダプティブトリガーの段階がゲームによって可変なのも大きい違いですね。

すんくぼ:

ゲームによってアダプティブトリガーの設定が変わっているのか!

JackMasaki:

そう。ゲームの中でも状況やコンテンツによって違いますね。わかりやすいのは「バイオハザード8」(以下、バイオ8)。武器ごとに違った硬さになって反応が体験できる。これできるのは今のとこPS5だけです。

すんくぼ:

押し込みの固さも変わる?

JackMasaki:

固さも変わりますね。正確にいうと固さというか、段階をたくさん設けてる感じ。一回弓を打つとわかりますよ。

コントローラーのR2L2で引き絞るとかなり固くなってるはず。次にホームボタンを押してゲームを中断してからR2L2を押してみてください。柔らかくなってます。

すんくぼ:

おぉ全然違う!

JackMasaki:

露骨に変わりますよね。この機能がVRコントローラーに搭載されると一気に変わるなと。

すんくぼ:

こんなに違ったんだ。「Returnal」はカクカクと2段階ぐらい。だから気づかなかった…。ホーム画面とか他のゲームで普通に押し込んでたのが、急に途中でやたら固くなってるから止まってる感じがあって、さらにグッって押し込まなきゃいけない。これはすごく面白いけど、仕組む側は大変だろうな。

JackMasaki:

作る側はめちゃくちゃ大変。

すんくぼ:

見た目と音だけでも大変なのに。触覚の曲線みたいのも描かなきゃいけない。でも、触覚のデザインってこれから複雑化していくと考えると面白いね。ハードが追いついててきたらからこそようやくデザインできるようになった、と。

JackMasaki:

PS4までは、PCユーザーはSteamで同じタイトルがあるからいいって人もいるけど、このコントローラーが出たことで、PS5でやる価値が大きく出てくると思います。

すんくぼ:

そうだね。この差は大きいな。バイオ8も今のところSteamとPS4とPS5、あと今後Xboxで出るよね。

JackMasaki:

どのハードでやるかってときに、これまでパソコン持ってた人はSteamでよかったんだけど、これからは「PS5で出てるなら、PS5でやろう」って方向に変わると思う。

すんくぼ:

そういえば、DualSenseはiPhoneでも使えるはず。PS5に繋がなかった場合、振動の機能はどうなっているんだろう?

JackMasaki:

PS Remote Playというリモートプレイのできる専用アプリがあって、DualSenseはをBluetoothでiPadにつなぐと、ちゃんとアダプティブトリガーとかもそのまま使える。iPadの他にiPhoneやWindows PCにもつながりますよ。

すんくぼ:

PS5のタイトルをリモートで遊ぶときにコントローラーが同じように使える、と。

JackMasaki:

あくまでPS5とネットワークを介して通信しています。PS5のコントローラー自体のアダプティブトリガーは振動します。例えばWindows PCにPS5のコントローラーを有線でつないでいてもちゃんと動きますよ。

すんくぼ:

そういう意味では、SteamでPCゲームをただ普通にやるためにDualSenseを使ってもアダプティブトリガーは使えないと……。SteamでもいよいよPlayStationフランチャイズのゲームが登場しているから、もしかしてって気もするけどね。

JackMasaki:

今後対応するといいですよね。

JackMasaki:

それにしても「Returnal」はPS5専用タイトルだけに丁寧に作られています。押し込みもすごい画期的だし、打ったあとのリロードも振動でわかりやすくなってる。

すんくぼ:

セカンダリーウェポンのチャージが終わったときが気持ちいい。

JackMasaki:

ガクッと強い振動で。音も本当によくできてます。今後、サードパーティのゲームだと、振動や音までどれくらい丁寧に作られるか気になるところです。

すんくぼ:

「Returnal」が出てくる前のPS5向けのサードパーティのゲームは、見た目がちょっとキレイになっただけで、あんまりPS5の良さが活かしきれていない印象。

JackMasaki:

元々出てたゲームのリメイクも多いですからね。

すんくぼ:

Demon’s Souls」や「Devil May Cry 5」もキレイなリメイク版って感じでちょっと惜しかった。

JackMasaki:

ライザのアトリエ2」も大きく変わった点がわかりづらかったし。今後発売される専用タイトルがどのくらい作り込んでくるかですね。発売延期になったけど「DEATHLOOP」とか。

専用タイトルということでは、「Returnal」は一つの節目だったと思います。ちゃんとコントローラーの良さをゲームに落とし込んでる作品ですね。家庭用ゲーム機でここまで出せるのはすごい。ロードもめちゃくちゃ時間短いし。

すんくぼ:

PS5の特長を活かして、ロード時間短いのは良かったね。あと「Returnal」で感動したのが、ゲームスタート時のメニュー画面がないこと(※)。

※Returnalはゲームオーバーになるとスタート地点に戻されるローグライクゲームだが、ゲームオーバー後の演出がそのままゲームスタートに戻る演出になっており、メニュー画面が一切存在しない。

JackMasaki:

あれは本当にすごいです。クリアするか終わるかしかない。

すんくぼ:

常にゲームの世界に居させられるという。

JackMasaki:

普通メニュー画面があって、ゲームスタートっていう具合になるんですが、その工程を省いてるのがすごい。

すんくぼ:

すでにレビュー等でも言われているように難易度とホラーチックな雰囲気で人を選んでしまうゲームなのがなんとも。みんな履修すべきなのに、薦めきれない(笑)。説明要素も少ないから、やりながら途中で気づいていく感じだよね。

JackMasaki:

そうそう死んで覚える(笑)。「Returnal」はリスクとリターンをどうとっていくか、よく設計されています。僕は「Returnal」はPS5のWii Sportsだと思っています。Wiiリモコンの使い方がわかった上でゲームして遊べる的な立ち位置。「Returnal」に近くて、万人受けするものが出てくるといいですね。

PS5で怖さ別格「バイオハザード8」


(「バイオハザード」シリーズの8作目の「バイオハザード ヴィレッジ」)

すんくぼ:

最後は「バイオ8」か…。

JackMasaki:

バイオ8は特に振動とアダプティブトリガーでPS5ならではの感覚が実現しています。たとえば、弾を打つ時、ボタンが引っかかって止まるようになってて、押し込むと打てる。このときの武器ごとに作りが違ってて、すごく良くできてるんです。

すんくぼ:

ほんとだ。気持ちいい。

JackMasaki:

武器を持っている感がある。

すんくぼ:

確かに、一発打ったときの振動も全然違う。

JackMasaki:

あと舞台になっているこの屋敷が大画面だと怖いんですよ。夜中に1人でやるの怖すぎる(笑)。追ってくるおばちゃん(ドミトレスク夫人)は倒せないので恐怖ですよ……。コントローラーを体験したい気持ちと怖い気持ちがせめぎ合う。いわゆるホラーゲームあるあるだけど、倒せない相手がずっと追いかけてくるのって怖い。

すんくぼ:

辛い!どんだけ時間かけて作ったんだ……。ところで、この辺の振動は地響きぐらいだね。

JackMasaki:

やっぱりそこがまだサードパーティ製の弱いところですね。おそらくまだサードパーティの会社も振動やハプティクスに対するノウハウがないのが理由。ノウハウが溜まれば、タイトルごとに移植できるし、これから変わっていくと思う。今は他のプラットフォームで出てる作品はそこが後回しになってますね。

すんくぼ:

スナイパーライフルにしたら、扱ってる感がすごい!

JackMasaki:

そうそう。違う武器使ってるんだって感じ。シューティングゲームはVRゲームと相性がいいですし、期待したいですね。

すんくぼ:

そういうの考えてるんだろうな。

JackMasaki:

PS4のリメイクが出たときに、どれぐらいアダプティブトリガーつけてリメイクするか。刀を扱う「SEKIRO」とか日本タイトル系は移植に苦労するかも。

(SIEは現在PSVRの次世代機を開発中。発売時期は未定で、2021年内発売は予定なし。価格未定)

すんくぼ:

そういう意味ではPSVRの次世代機も楽しみ

JackMasaki:

コントローラーにハプティクスのアダプティブが載るといいですね。

すんくぼ:

お披露目が待ち遠しいなあ。それでは今回はありがとうございました。


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