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ゲーム・アプリ 2019.04.20

誰でもVRゲームクリエイター Nintendo Labo VR Kitの真髄「ガレージVR」徹底紹介

2019年4月12日、任天堂株式会社から「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」でVRゲームを遊べる「Nintendo Labo Toy-Con 04:VR Kit」が発売されました。MoguraVRではこれまでにVR Kitの開封・組み立てレポートと各種ゲームのレビューを掲載しています。

今回はその第3弾として、VR Kitに収録されているVRゲームを作るモード「Toy-ConガレージVR」を紹介します。ガレージVRではどういった事ができるのかを解説し、実際にゲームを作るところまでをレポートします。

目次

Toy-Con ガレージVRとは?
まずはお手本トピックを見てみよう
キャラクターを動かすことにチャレンジ
お手本ゲームを真似てみた
実際にゲームを作ってみる
完成作品1「ヒトVSクルマ」
完成作品2「マグロつかみどりほうだいVR」
まとめ

Toy-Con ガレージVRとは?

Toy-ConガレージVRは、ゲームモードの「わかる」の下にあるマンホールの右側から進むことができます。最初から入ることはできませんが、Nintendo Laboシリーズに収録されている「Toy-Conガレージ」を一度起動することで入れます(ガレージのゲームを作る必要はありません)。

これまでのToy-Conガレージは、Joy-Conの振動やセンサー、本体の画面やスピーカーなどを使うことで、ダンボールで作った楽器で音を鳴らしたり、実際に物を動かして遊べるようになる「プログラミングツール」といった側面がありました。親子で工作を楽しみながらゲームがどうやって動くのかを学べる、今の時代ならではの知的玩具として高い評価を受けています。

一方で、ゲーム外への出力方法は振動など限られたもののみで、例えばJoy-Conの操作でラジコンのようにクルマを走らせるといったものを作ることはできませんでした。

今回のガレージVRでは出力先がVR空間となっており、これまでのシリーズよりもできることが圧倒的に増えています。もちろんUnityなど開発者向けのゲームエンジンと比べると制限が多いため、規模の大きいゲームを自作することは難しいですが、ユーモラスな素材が多く用意されており、発想次第では十分に面白い作品を作ることが可能です。

なお、プレイヤーが操作するキャラクターに追従するカメラはVRモードに非対応となっています。実際にガレージを体験すると分かりますが、カメラはオブジェクトに設置できる一方、オブジェクトは設定次第であらぬ方向に回転するので、VR酔いへの対策かと思われます。

まずはお手本トピックを見てみよう

ゲームを始めるとお手本トピック「1:ようこそToy-ConガレージVRへ」が始まり、ガレージVRでできることをキャラクターたちがフレンドリーな語り口で解説してくれます。お手本トピックへの行き方は、画面の左側のアイコンをタッチすると、「ファイルせんたく」や「設定」などのメニューが表示されるので、その中から「お手本トピック」を選択します。

ガレージの基礎は「入力」「出力」のノードをつなぐことで、これによりゲーム画面内のモノを動かせたり、エフェクトをかけたりできます。まず最初に教わるのは、直方体を画面に置くこと。「2D編集画面」にて配置したものは、三角アイコンの「あそぶ」に切り替えると実際のゲーム画面に反映されます。

ガレージVRには「3D編集画面」も用意されており、Joy-Conのポインタを使うことでゲーム画面内のモノの位置や大きさを直接調整できます。ポインタは2D編集でも使うことはできますが、画面タッチに比べると細かい設定を選択するときの効率があまりよくありません。筆者は携帯モードでの使用をおすすめしますが、まずは自分なりに使いやすいやり方を探してみるのがいいと思います。

キャラクターを動かすことにチャレンジ

次に、作り方を理解するために、まずはサンプルを改造して自分なりにアレンジしてみようと思いましたが……この通り、ひとつめのサンプルだけでも多くのノードで構成されており、ゲーム制作やプログラミングの初心者を躊躇させるほどのハードルが立ちふさがります。なので、まずはトピックを参考にしてもっと簡単そうな「キャラクター」の動かし方から始めてみます。

まず初めに、出力から「ヒト」を置いてみました。どう見てもロボットのようですが、ヒトと言っているので間違いありません。とりあえず置いた「ヒト」ですが、これにコントローラーからの「入力」を組み合わせることで、自由に動かせるようになります。まずはスティックの上下・左右をヒトの前後・左右とつないでみます。正しく設定されているのであれば動くはずですが、果たして……。

まったく動きません。

ですがこういう時はあせらず、設定を見直してみます。どうやら、Joy-Conを本体につけたときに対応させなかったことが原因のようでした。ゲーム制作では、どうして思う通り動かないか考え、地道にひとつずつ直していくことが大切です。

無事動きました。こちらは携帯モードでの画面ですが、切り替えることでVR視点にもできます。なお、キャラクターを動かす際、「いどうきじゅん」がワールドかカメラかで動き方も変わってきます。自分の作りたいゲームに合わせて設定してみましょう。

お手本ゲームを真似てみた

お手本トピックの「4:ゲームを作ってみよう」のゲームが分かりやすくシンプルなので、こちらを真似てみようと思います。トピックを再生するとそのままサンプルが出現するので、参考にしてゲームをコピーしてみます。

2D編集モードだと、直方体の階段が横に並び、横には操作する「ヒト」、正面にはものを発射する装置が置かれています。ポイントとなるのは、それぞれに設定されている「ふるまい」です。直方体はぶつかっても動いたり壊れたりすることがない一方、ヒトは“こわれる”設定になっており、発射装置は“こわす”設定となっています。結果、ヒトが階段を登っている間に飛んでくるボールに当たると壊れるようになります。

右上にも注目。「モノ(ヒト)が壊れると>タイマーで2.00秒後に>リトライ」になるよう、ノードがつなげられています。または、「Xボタンを押すと>リトライ」となっています。こうやって配置したモノ以外にもゲームのルールを設定できます。

そして、とりあえずサンプルを真似して作ったものがこちらです。まだ手探り状態だったので、直方体の数は減らして作ってみましたが、サンプルとほぼ同じ動きをしています。ただ、発射装置や一番上まで上がったときに鳴るクラッカーの位置がなかなか上手く設置できなかったので、3D編集に切り替えてだいたいの位置を決めてから、設定で細かな位置調整をしました。こういったときに3D編集は便利です。

実際にゲームを作ってみる

さて、ここからが本番です。編集部からのお題である、「何かゲームを作ってみる」ことに挑戦します。今回は見た目がお気に入りの「クルマ」を使って何かできないか試してみようと思います。

クルマはヒトと同じくコントローラーの入力で動かすこともできますが、ヒトを操作してクルマは自動で動いてもらったほうが面白いかもしれません。そこで、アクセルとハンドルの部分に「定数」を入れてみました。

定数は画面中央下にある「中点」から設定が可能で、ここで1.00を設定すると、ずっとアクセルが入れっぱなしの状態になります。この定数を入れるやり方は非常に重要なポイントです。さきほどのスティックの上下・左右も、その方向に倒すことで定数が入りっぱなしの状態になっています。

少し難しいですが、この定数1.00を入れるやり方はあらゆる場面で使用でき、モノを動かし続けたり、BGMを鳴らし続けたりするなど、大切なテクニックとなるので覚えておくとよいでしょう。

ちなみに先ほどのクルマのアクセルは、1.00で前進、-1.00で後退します。ハンドルは1.00で時計回り、-1.00で反時計回りします。ただしこのままだとひたすら旋回しながらヒトをひき続けてしまう悲しいゲームとなってしまうので、いくつかの条件を重ねてさらにアレンジをしてみます。一体どういったゲームができるでしょうか……?

完成作品1「ヒトVSクルマ」

先ほどのクルマにアレンジを加えて、完成したゲームがこちら。クルマが左右に蛇行しながら走り回るので、それをヒトが追いかけ、射撃したボールで撃墜するゲームを作ってみました。最初はクルマがどこまでも遠くに行ってしまうので、画面端に来るとワープして中央に戻るようにしています。もちろんVR対応です。

クルマを自動運転で左右に蛇行させるために、こういったノードをつなげています。こちらでは、アクセルは最初から入りっぱなしとなる一方、1秒経過するごとにハンドルが前進か左右に切り替わるようにしました。これを成立させるために「タイマー」、「ワイヤーワープ」、けいさんの「ランダム」と「マイナス」を使っています。

ゲームルールこそシンプルですが、クルマが端に行ったときどの位置に戻すのが正解か、プレイヤーがVRを見渡すためにどの位置にカメラを置くのがよいかなど、考えなくてはいけないことはたくさんあります。しかし、それを解決するための材料はちゃんと揃っていることが、VRガレージの魅力的な部分だと思います。

完成作品2「マグロつかみどりほうだいVR」

せっかくVRなので、360度の視界やセンサーを活かしたゲームは何かできないか考えた結果、こちらの作品を作ることにしました。Joy-Conのセンサーを使って画面内に手を伸ばし、泳いでいる「マグロ」を直接捕まえるといった内容です。シュールなマグロ素材がわざわざ用意されているので、これを使ってバカゲーを作ってねという任天堂からメッセージ(?)に応えてみました。

前回のクルマで使ったものを改良したノードを「UFO」につけ、空中でも自動で移動するように設置。されにその「UFO」の見た目を透明にし、マグロと連結することで海での回遊を表現しています。ただ、クルマと同じように入力すると動きがおかしくなるので設定をし直し、ワープはより複雑化させています。制作の難易度はやや高めです。

Joy-Conでモノをつかんだり、360度見回せる視界はまさにVRならではの遊び。早急に作ったためゲームルールは用意できなかったですが、これをもとに改造をすれば、いろんな遊び方につなげられるかもしれません。

まとめ

ガレージVRでゲームを作ってみた感想ですが、ルールやエフェクト、操作などを細かく設定できるので、かなり深くまでこだわったゲームが制作できるツールだということに気づきました。また、これまでゲーム開発者しか携わってこなかったであろう「VRゲームの制作」を一般向けにした意義は大きく、遊ばせながら開発者のタマゴを育てる「Nintendo labo」の真髄がここにありました。

一方で「マリオメーカー」のように誰でもイチからゲームを完成させられるほど簡単ではなく、ゲーム制作ツールである以上、ひとつひとつの機能を少しずつ理解しながら地道に作業をこなしてしていく必要があります。エンターテイメントよりも理論的かつクリエイティブな要素が強いため、Toy-Con同じく作ることが好きな人向けだと感じました。

とはいえ、VRのゲームを作れる体験は貴重です。工作やゲームで遊ぶためにVR Kitを買った方でも、試しにチャレンジしてみると新たな扉が開けるかもしれません。


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