Metaは、ARグラス開発プロジェクト「Project Aria」の研究用ツールキット「Aria Research Kit(ARK)」を世界中の研究者に対して提供する旨を発表しました。本ツールキットには、AndroidとiOS向けのコンパニオンアプリに加え、Web およびデスクトップ上のツール群、リアルタイムでAriaグラスからPCにデータをストリーミングできるSDKが含まれます。なおARK使用にはMetaへの申請及び、同社からの承認が必要です。
「Aria Research Kit(ARK)」は、承認された研究パートナー向けに提供される研究エコシステムです。研究者はProject Ariaグラスとツール群を、AI、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)、ロボティクスなど、幅広い研究テーマに活用できます。
ツールキットには、AndroidとiOS向けのコンパニオンアプリに加え、Web およびデスクトップ上のツール群が含まれています。またSDKを使用すると、リアルタイムでAriaグラスからPCにデータをストリーミングすることが可能です。併せて、画像データのプライバシーを確保するための顔とナンバープレートのぼかしモデル「Ego Blur」もオープンソースとして提供されています。
「Project Aria」は2020年9月に発表された研究開発プロジェクトで、搭載されたカメラとAIを使って現実空間の3Dマッピングを行うほか、音声系を拡張するデバイスです。研究用AI搭載グラスの開発に必要なソフトウェアとハードウェアの要件調査を目的としています。当初はMetaの社内利用のみを想定していましたが、研究コミュニティへのアクセス提供の価値が認識され、現在では研究機関での活用を推奨しています。
なお「Project Aria」で用いるデバイス自体は一般販売を目的としていない実験用デバイス。米国などで発売中のMetaのスマートグラス「Ray-Ban Meta」や、開発者会議Meta Connect 2024で発表されたARグラス「Orion」とは異なる研究開発プロジェクトです。
活用事例も幅広く紹介
今回のARKリリースに併せて、MetaはARKを活用した研究開発事例を4つ紹介しています。
(ブリストル大学では、Ariaグラスのセンサーを使用して3D再構築を行い、参加者とオブジェクトの動きを追跡する研究を実施。本研究は人々の様々な行動を一人称視点映像と複数の外部視点映像で捉えた「Ego-Exo4D」プロジェクトの一環)
(アイオワ大学は将来の補聴器技術の開発に取り組む。聴覚障害者が困難を感じる環境の理解に向けて、Ariaの複数のマイクを音源方向の特定に活用)
(インド情報技術大学では、事故防止のための運転者意図予測プロジェクトを実施。Ariaの視線追跡データと外部車両検出機能を組み合わせた研究を行う)
(カーネギーメロン大学のロボティクス研究所では、視覚障害者向けの屋内ナビゲーションアプリ「Navcog」の開発にAriaを活用。従来のBluetoothビーコンへの依存度を下げ、より複雑な環境でのサービス提供を目指す)
活用研究データのオープンソース化を推奨
「Aria Research Kit(ARK)」の利用を希望する研究者は、projectaria.comより応募可能です。なお、Metaは参加した研究コミュニティに対して、Ariaを使用して構築したデータセットやモデルのオープンソース化を推奨しています。
(参考)Meta