Metaは、日本時間9月26日に開催された開発者会議Meta Connectにて開発中のARグラス「Orion」を発表しました。Orionはプロトタイプではありますが、視野角70度など現時点で展開されているあらゆるARグラスの先を行く、非常に高性能かつメガネの形状を実現したデバイスです。
Orionは、約70度という広い視野角を実現しながら、一般的なメガネと変わらないコンパクトなデザインを両立しています。ディスプレイ、操作性、処理能力など、あらゆる面でMetaのこれまでの研究開発を通じて、これまでのARグラスにない機能を搭載しています。MetaはOrionを、ARグラスの未来形として提示し、デジタル世界と現実世界をシームレスに融合させる新たなコンピューティング体験の可能性を示しました。まずはパートナー向けに限定的に提供されます。一般向けの発売時期は未定となっています。
ARグラスの開発には、コンパクトな形状でありながら高性能なディスプレイと処理能力を実現するという大きな課題がありました。Metaは、この課題に長年取り組んできました。Orionの開発では、成功確率を10%未満と見積もるほどの困難に直面しましたが、様々な技術革新により克服したとしています。
Orionの最大の特徴は、約70度という広い視野角を持つディスプレイです。これは、これまでのARグラスの中で最も広い視野角であり、マルチタスクや大画面エンターテイメント、等身大のアバターなど、没入感のある体験を可能にします。この広視野角を実現するため、Metaは炭化ケイ素でレンズを製作し、複雑な3D構造のウェーブガイドや、マイクロLED技術を採用しています。
空間や手などの現実認識をするために7基のカメラを搭載。アイトラッキング用のセンサーやスピーカー、バッテリーなどを搭載し、
Orionは、操作には、音声、視線、ハンドトラッキング、そしてEMG(筋電図)リストバンドを組み合わせたシステムを採用しています。EMGリストバンドは、わずかな筋肉の動きを検知し、指先で軽くタップするだけで写真を撮ったり、手をほとんど動かさずにメニューを操作したりできます。
処理能力を確保しながら、グラス本体をコンパクトに保つため、Orionにはワイヤレスのコンピューティングパックが付属します。このパックには、Metaが独自に設計したカスタムプロセッサーを含む2つのプロセッサーが搭載されており、低遅延でのグラフィックレンダリングやAI処理を可能にします。
放熱対策として、NASAが衛星の冷却に使用するものと類似した素材を採用しています。さらに、電力効率の高いカスタムシリコンにより、通常数百ミリワットの電力を必要とする処理を、わずか数十ミリワットで実現しています。
Orionでは、スマートアシスタント「Meta AI」を利用して、現実世界で見ているものを理解し、有益に視覚化することができます。また、ハンズフリーのビデオ通話やメッセージングが可能で、ARゲームを楽しんだり、複数のウィンドウでマルチタスクを行ったりすることもできます。
Orionは現時点では一般向けに発売される予定はありませんが、Metaは一般消費者向けのデバイスに繋がる製品プロトタイプだ、と宣言。今後、ディスプレイの品質向上、さらなる小型化、生産規模の拡大による価格低下に取り組む予定です。Metaは、Orionの取組をきっかけに、デジタル世界と現実世界を融合させた次世代のコンピューティング体験の実現に向けて、着実に歩みを進めるとしています。