九州大学発のディープテックスタートアップのKOALA Techが5.7億円を調達しました。同社はXRデバイスに活用できる次世代ディスプレイ技術、「レーザー版有機EL」の開発・実用化を手がけています。本技術により、従来ディスプレイでは実現が困難だった高輝度な画像表示が可能となり、屋外での使用に課題のあるXRデバイスの実用性を大きく向上させることが期待されています。
今回の資金調達はシリーズB追加ラウンドとして実施されました。既存投資家の「九州広域復興支援ファンド」やPropagator Ventures ASに加え、新規投資家として京都大学イノベーションキャピタル、ゆうちょ Spiral Regional Innovation Fund、九州電力、株式会社エイチ・アイ・エスなどが参加しました。これにより、同社のシリーズB累計調達額は9.2億円となります。
KOALA Techは2019年3月に創業された九州大学発のスタートアップで、有機光エレクトロニクスの世界的権威である安達千波矢教授の研究成果をベースに開発に取り組んでいます。2022年には経済産業省J-Startup KYUSHUにも選定されています。
同社はスマートフォンなどで広く使われている有機EL技術(OLED)を基盤に、「レーザー版有機EL」(有機半導体レーザーダイオード(Organic Semiconductor Laser Diode, OSLD)と呼ばれる発光素子の実用化を目指しています。2024年5月には、米国で開催されたディスプレイ関連の国際会議「SID Display Week 2024」において、同社の青色発光素子が優秀論文賞を受賞し注目を集めています。
本技術の特長は、従来のディスプレイでは難しかった高輝度な画像表示を実現できる点です。特に、スマートグラスなどのXRデバイスでは、屋外での使用時に周囲の明るさに画像が負けてしまう課題がありましたが、「レーザー版有機EL」はこの課題を解決できる可能性を持っています。またデバイスの小型化・軽量化も同時に実現できるため、XRデバイスの普及における重要な技術として期待できます。
今回調達した資金は、青色に続く赤色、緑色の発光素子の開発加速に充てられます。3色の発光素子が揃うことで、フルカラーディスプレイとしての実用化に向けた検証を進めることが可能となります。
また、発光寿命などの特性向上にも取り組み、実用化に向けた課題解決を進めていく予定です。併せて、研究開発や事業開発の体制拡充のため、優秀な人材の確保にも資金を投じていくとしています。
(参考)プレスリリース