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企業動向 2025.03.17 sponsored

ARグラスをいかに軽くするか? 普及のための絶対条件を考える

マイクロディスプレイを専門としたJBD社が、ARグラスの普及に必要条件となる軽量化について、コラムの中で独自の解決策を提案しています。


(JBD ハミングバード ミニII)

JBD社は2015年に設立された企業で、マイクロディスプレイデバイスを開発・製造しています。日本国内では、国立研究開発法人科学技術振興機構の「医療用ARグラス開発プロジェクト」へ超小型カラー光エンジン「ハミングバードI」を提供してます。

今回JBD社が公開したコラム「消費者向けARの鍵――軽量化」では、2012年にGoogle Glassが登場して以来、HoloLensやMagic Leapといった製品が産業分野で大きな可能性を示し、消費者向け市場の期待も膨らませてきたものの、日常生活の一部となるにはなお長い道のりが残されていると述べました。

以下はコラムの全文となります(※英語を日本語翻訳し、一部注釈を加えています)。

消費者向けARの鍵――軽量化

軽量なメガネを想像してみてください。日常のファッションに自然に溶け込みながら、視界にデジタル情報を重ね合わせ、現実世界の体験を拡張してくれる――これは決して遠いSFではなく、AR(拡張現実)技術が現実化しつつある近未来のビジョンです。2012年にGoogle Glassが登場して以来、この未来的な製品は新たな技術時代の幕開けを告げ、世界中のテクノロジー企業やスタートアップの注目を集めてきました。

それから十年以上もの間、私たちはAR技術が研究室の段階から産業応用へと移行する様子を目撃してきました。HoloLensやMagic Leapといった注目を浴びる製品は産業分野で大きな可能性を示し、消費者向け市場の期待をも膨らませています。しかし、これらの製品はまだ一般ユーザーの日常生活の一部とはなっておらず、消費者向けARデバイスが広く普及するには、なお長い道のりが残されています。

市場に出回っているAR機器の多くは、外観がかさばっていて装着感が十分とはいえないか、あるいはデザインが奇抜すぎて日常生活に溶け込みにくいという課題を抱えています。こうした障壁が、消費者向けARの普及を大きく阻んできた要因です。しかし技術が進歩を続け、とりわけ軽量化が業界全体の共通認識となったことで、ARデバイスは「ヘルメット型」から徐々に「メガネ型」へと形状を進化させ、より自然で手軽なAR体験の新時代を切り拓きつつあります。

消費者向けARの軽量化における課題

装着者の人間工学的観点から見ると、消費者向けARには「軽さ」が不可欠です。ウェアラブルデバイスとしてのARメガネは、スマートフォンに比べてより厳しい要件に直面します。

  1. 外観デザイン:自然で美しく、日常的な装いに調和すること
  2. 軽量性:一般的なメガネの重量に近いこと
  3. 装着感の快適さ:長時間の使用に耐えうるフィット感を持つこと
  4. 表示性能:優れた視覚表示とインタラクションを実現すること


(Google Glass,出典:Google[1])

これらはいずれも一見シンプルに思えますが、実際には長年にわたり消費者向けARが越えられない技術的ハードルでした。そして、この課題を克服する決め手こそが「軽量化」なのです。

Google Glassの設計を振り返ってみると、単眼プリズム方式を採用し、重量をわずか36gに抑えたことで、消費者向けARデバイスの軽量化の一つの基準を打ち立てました。しかしその後、多くのAR機器は集積度(※IC1個に組み込まれた素子の数)や性能向上を追求するあまり「ヘルメット型」へと形状が変化し、重量もサイズも日常使用には大きすぎるものとなってしまったのです。

新規性の高い機能を備えていても、ヘルメットのような装着形態を日常使いに取り入れることには抵抗が伴います。Google Glassは、機能がいくら充実していても、頭部を覆うような形状では受け入れられないという現実を改めて示したといえます。

ARの形状進化――「ヘルメット」から「メガネ」へ

近年、AR業界では軽量化設計に対する取り組みが著しい成果を上げており、デバイスの形状もヘルメット型から従来のメガネに近いものへとシフトしています。その中でもディスプレイおよび光学の方式は、AR製品の形状を大きく左右する要素です。

一体型設計が主流になり始めた当初は、HoloLensなどの製品に演算ユニットや電源、各種センサーをすべて内蔵する必要があったため、ヘルメット型の外観は避けがたいものでした。しかし、オフアクシス光学や自由曲面プリズム、Birdbathといった技術が採用されるにつれ、ARメガネはよりコンパクトで軽量な方向へと急速に発展を遂げています。

(Rokid Glasses, 出典:Rokid[2])

ここ数年では、消費者向け利用シーンを重視する企業が相次いで軽量化を意識したARメガネを発売しています。たとえばRokid Glasses、DreamSmart StarV Air2、Vuzix Z100などが代表的で、これらはいずれも光波導の薄型・軽量性を生かすことで、AR軽量化の新たな潮流を形成しています。

MicroLED:全天候型ARのベストソリューション

通常、光学エンジンはメガネの蝶番部分に配置されます。簡単にいえば、光学エンジンの体積が小さいほど蝶番のサイズを縮小でき、外観も自然で美しく見えるのです。その逆もまたしかりといえます。

今回の軽量化ブームで光波導が主流となったのは、その薄型・高透過率といった利点に加えて、これと組み合わせる光学エンジンの形式が深くかかわっています。従来、光波導は主にLCoSやDLP光学エンジンと併用されてきましたが、それらは体積が1ccを超えることが多く、消費電力も大きいため、軽量設計を求められるARメガネには向きにくい側面がありました。

一方、MicroLED方式のマイクロディスプレイは、高輝度・小型・省電力といったメリットを兼ね備えています。LCoSやDLPと比べても物理サイズが格段に小さいため、ARメガネの外観デザインをさらに洗練させることが可能です。これらの特性は、軽量化や全天候での利用を重視するARメガネに最適といえるでしょう。


(JBD ハミングバード MicroLED プロジェクターシリーズ)

実際、市場にすでに存在するMicroLEDベースのARメガネの多くは、JBD社の光学エンジンを採用しており、その数は30機種以上にも上ります。同社は「Hummingbird(カラー)」「Hummingbird Mini(モノクロ)」という2種類のMicroLED光学エンジンを展開しており、特に最新の「Hummingbird Mini II」は体積が0.15ccと業界最小クラスを誇ります。DreamSmart StarV Air2やINMO GO2などのARメガネにも採用され、超小型・軽量なAR体験を実現しています。

最強のAIプラットフォーム:AI+ARの潜在力は無限大

近年、AI大規模モデルが普及し、AI応用はますます日常に浸透しています。ARメガネがAI技術と組み合わさることで、音声・映像を用いた自然なインタラクションを実現し、AIの潜在能力を最大限に引き出せます。他のAIハードウェア形態と比べても、ARメガネはハンズフリーで瞬時に情報提供や意思決定サポートができるため、AIハードウェアとして極めて大きな将来性を秘めているのです。

軽量化されたARメガネは、通常のメガネに近い装着感を提供すると同時に、直感的な操作感をも可能にします。たとえば、会議の記録やタスクのリマインダー、生活のあらゆるシーンでのサポートなど、AIとARの融合がもたらす利便性と効率性は、かつてないレベルに到達しつつあります。


(DreamSmart StarV AR Smart Glasses[3])

Google Glassがもたらした先駆的な試みから、MicroLEDマイクロディスプレイの技術的ブレイクスルーに至るまで、消費者向けARメガネは少しずつ軽量化と全天候対応へ向けて進化を続けています。AI技術の融合は、この流れにさらなる活力を吹き込み、ARメガネは現実世界とデジタルの世界を結びつける架け橋としての役割をますます強めています。

今後、技術がさらに洗練されるに従い、軽量化されたARメガネは日常生活の必須アイテムとなるだけでなく、仕事やエンターテインメント、個人のライフスタイルなど、より幅広い分野でも重要性を増していくでしょう。私たちは、全く新しいスマート・インタラクションの時代への大きな一歩を踏み出そうとしているのです。

参考(リファレンス):
[1]. https://artsandculture.google.com/asset/google-glass/5AF0gg8wJ1qicw
[2]. https://global.rokid.com/pages/rokid-glasses
[3]. https://flyme.global/pages/starv-air

今回のコラムは公式サイトで全文公開(英語)されています


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