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VTuber 2019.12.22

いちからの“2019年の挑戦”から見えてきたものは? CEO・田角陸氏インタビュー

バーチャルライバーグループ「にじさんじ」を運営するいちから株式会社。2019年8月には約7億円の資金調達を行い、10月には大規模なリアルイベント「にじさんじ Music Festival~ Powered by DMM music~」を開催。さらに海外事業にも注力し、中国VTuber事業「VirtuaReal Project」のほか、インドネシアにて「NIJISANJI id」、インドにて「NIJISANJI in」、韓国にて「NIJISANJI KR」などをスタートさせています。

今回MoguLive編集部は、いちから株式会社CEO・田角陸氏にインタビュー。いちからのこの1年の歩みをどのように考えているのか、またにじさんじへの思いや今後の方針などについてお聞きしました。


(いちから株式会社CEO・田角陸氏)

海外展開と新規事業、身を乗り出した2019年

――2019年のいちからを振り返って、最も大きな変化は何でしたか?

田角陸氏(以下、田角):

にじさんじの運営については、“ライバーが活動していく上での環境づくりに徹するべきだ”と考え、この1年を通して整備してきました。その成果が徐々に実りはじめていて、ライバーもより多様な表現ができるコンテンツをファンへ届けられるようになったと感じています。

――2019年8月には約7億円の資金調達を実施されましたね。その際に告知していた海外展開や人材確保、新規事業などについてはいかがでしょうか。

田角:

まず国内の事業部の人材や配信機材の導入などに力を入れました。こちらは継続的に投資していく段階だと思っています。海外展開は中国VTuber事業「VirtuaReal Project」のほか、インドネシア「NIJISANJI id」でのデビュー、インド「NIJISANJI in」韓国「NIJISANJI KR」でのオーディションなどを進めているところです。それに合わせ、各国の人材面での先行投資を行っている、という状況ですね。

――新規事業に関しては「ユメノグラフィア」に注力しているという状況ですか?

田角:

そうですね。「ユメノグラフィア」はVR空間でキャストとコミュニケーションが取れるというサービスで、VTuberのように1対多でコミュニケーションを取るのではなく、1対1で密なやり取りができます。

この「キャストとより密なコミュニケーションが取れる」ことが面白さの根本だと考えていて。お客さんとキャストがほぼ対等であるため、キャストはお客さんの話を相槌を打ちながら聞くことができます。ライブ配信ではすべてのコメントに対応するのは困難ですが、こちらではそれが可能です。キャストごとにキャラクターや性格もさまざまで、「話し上手」や「聞き上手」など、それぞれ得意なことが違う点も魅力といえますね。

インドネシア・インド・韓国、それぞれの“にじさんじ”

――あらためて海外事業についてお聞きします。今年の7月からスタートした「NIJISANJI id」ですが、現状インドネシアでの反応はいかがでしょうか?

田角:

インドネシアでの需要や反響には驚きました。オーディションの発表を現地のイベントで動画にて発表した時は、大声で声援を送ってくれるファンの方々が見られるなど、熱狂的な人気が感じられましたね。現在もそれぞれのライバーたちが、YouTube登録者数を順調に伸ばしています。

――11月に公開されたインドの「NIJISANJI in」や12月公開の韓国「NIJISANJI KR」はどういった狙いでスタートされたのでしょうか。

田角:

インドは人口も多く、個性的な国だと思っています。今までの成功体験を活かしにくい部分はありますが、市場規模を考えると大きな可能性が眠っている国ですね。いわゆる日本人好みのキャラクターが受けにくいことも考慮して、インドで活動するライバーは少しローカライズしています。

田角:

一方の韓国は日本と文化の近い国のひとつで、もともとアニメやライブ文化が発達しているなど、日本の「にじさんじ」の強みを活かせると考えています。

――今後の海外展開の予定も、すでに?

田角:

もちろん次の国は考えています。日本のアニメコンテンツの市場規模をみると、日本と海外全体で同等の市場があると言われています。VTuber市場も同じような割合になると思っているので、積極的に海外に挑戦する価値はありますね。

コアファンから新たなファン獲得へ繋げる

――田角さんは、“バーチャルライバーがファンに愛される理由”はどのようなものだと考えていますか。

田角:

僕は“距離感”がポイントだと思います。一方通行ではなく、双方向にコミュニケーションを取れることで、人とライバーとの距離が近くなりますし。例えば遠い親戚よりも近くの友人と遊んだ方が楽しいのと同じように、自分たちと距離が近いと感じられるライバーを見て、楽しんでいるのではないかと。

――にじさんじはライバー側も、活動を継続する上でのモチベーションが非常に高いように感じられます。

田角:

イベントなどを通してその道のプロフェッショナルと触れる機会があり、それがひとつの理由かもしれませんね。ライバーにもある種のプロ意識が芽生えていると感じています。

――今後もにじさんじ全体で多くのファンを獲得するためには、どのような方法が必要だと考えていらっしゃいますか?

田角:

まずはにじさんじのコアファンの方々に喜んでもらうことで、SNSや口コミを通して新しいユーザーが増えて来ると思っています。新しくファンになった方々もライバーの活動に魅了されるほどにコアファンとなっていきます。このようにして、ライト層からコア層を生み出すサイクルを拡大すれば、継続的に成長できる事業になるのではないかと。

そのためにもファンからの支持を強くし、楽しめる、熱狂できる体験を提供していきたいです。そのひとつとしてイベントは重要だと思っているので、来年以降からイベントの数やバリエーションを増やしていきたいですね。

――新規ファンのために入りやすい入り口を作るのは大変なことに思いますが、その点はどうでしょうか。

田角:

これはどのエンタメでも見られることだと思いますが、コンテンツには「入りやすさ」と「深さ」という2つのパラメーターがあって、それぞれ相反する性質があります。にじさんじの場合は「入りやすさ」と「深さ」の両方を押し出せる可能性があると思っているので、その部分に関しても挑戦していきたいですね。

2020年、いちから株式会社が目指すものは?

――2020年、いちから株式会社はどのように成長すると予想していますか?

田角:

多くの人を惹きつけ熱狂を生み出すことに関しては、ライバーたちの活動のおかげできな自信がつきました。今後はより多くの人が、コンテンツや体験に積極的に参加したいと思ってもらえるような力をつけていきたいですね。

田角:

いちからは“世界中のファンの方々を引きつけるコンテンツを作ること”を中長期的な目標にして、今後もさまざまなプロジェクトに挑戦し続けていきます。

――ありがとうございました。

(取材:MoguLive編集部、協力:いちから株式会社)

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(更新履歴:2019/12/23/12:00……「NIJISANJI KR」について追記)


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