フランスの360度カメラメーカーGiropticは、3月5日同社の閉鎖を発表しました。同社の公式ホームページに「It’s hard to say goodbye(つらい別れのお知らせ)」と題した投稿が掲載されています。理由は「大型の取引が破談したため資金難に陥った」とのこと。
早期から360度カメラの開発に取り組んできたGiroptic
同社は2008年に創業し、360度カメラの開発に取り組んできました。2014年にはKickstarterにて360度カメラ「360cam」のクラウドファンディングを行い、全世界の約4,000人から約142万ドル(約1.5億円)を集め、注目を集めました。当時登場し始めていたOculus RiftなどのVRヘッドセットで撮影した世界全体を体験できるカメラとして、早期に登場しました。
その後、360camは開発が遅れ、2016年に出荷。さらに2017年にはスマートフォンに挿すタイプで廉価な360度カメラ「Giroptic iO」を約3万円で発売しました。
競争への対応と市場開拓に苦戦か
Giroptic社によると、現在同社には45名の社員が在籍。2017年には全世界に2万台の360度カメラを出荷しました。しかし、その売上は、新たに起こりつつあるVRや360度カメラの市場において、同社のビジネスを継続させるには「十分ではなかった」と公式ホームページには記載されています。「ここ8ヶ月は、ビジネスをスケールさせるべく大手スマートフォンメーカーとの協議を進めていましたが、最後の最後で交渉がまとまらなかった」とのこと。
2014年のKickstarterなど滑り出しは良さそうに見えたGiropticでしたが、その後Ricoh Thetaや後発になる中国のInsta360などが次々と新製品を出し、ハードウェアスペックもソフトウェアによる処理も向上が続いています。
2014年当時は画期的だった2K画質の360度動画撮影も現在ではローエンド機で4K撮影が可能になりました。360cam、Giroptic iOとも、競合が増える中でポジショニングに苦戦したと考えられます。
今後、VRの普及に伴い360度カメラも大きな市場になることが予想されるだけに、道半ばでの閉鎖となります。
(参考)Giroptic公式