7月8日、ソニーマーケティング株式会社は「Creative Solution Showcase 2026」を本社ビルで開催しました。
Creative Solution Showcaseは、最新製品やソリューション、同社の取り組みを伝える場として法人向けに開催されている展示会です。今年は「体験価値の創出」をテーマに、「ロケーションエンタテインメントゾーン」「エンタープライズソリューションゾーン」「コンテンツクリエーションゾーン」という3つのエリアで構成されていました。
注目の最新機器やさまざまな業界での導入事例が見られた本イベントですが、本記事では「ロケーションエンタテインメントゾーン」に注目。近年盛り上がりを見せている、体験型コンテンツにまつわる展示をレポートします。
ソニーの体験型展示が集結した、異彩を放つ特設ゾーン
会場となったソニー本社ビルの2〜4階では、フロアごとに多種多様な展示が並び、担当者と熱心に話し込む来場者の姿が各所で見られました。そのなかでも異彩を放っていたのが、「ロケーションエンタテインメントゾーン」です。
一般的なビジネス展示会らしい雰囲気の他ゾーンとは打って変わり、2階に設けられたこのゾーンは入口からして薄暗く、独特なムード。足を踏み入れると光の回廊のような空間が広がっており、まるでテーマパークのアトラクションに迷い込んだかのような導入となっていました。
五感をフルに刺激する多感覚シューティング「Multi-Sensory Shooting」
回廊を抜けて最初に現れるのが、「Multi-Sensory Shooting」と題したブースです。
このブースでは、「HapticFloor(床振動)」「Grid Scent(空間芳香)」「360 Reality Audio(立体音響)」「風ハプティクス」といった、ソニーの多感覚技術を統合したシューティングゲーム体験が味わえます。
最大の特徴は、音と映像に合わせて床やコントローラーが振動するだけでなく、香りや風までもが感じられること。筆者はタイミングが合わず体験できなかったものの、ブース後方にまでほんのりと漂ってくる香りをたしかに確認できました。
視界いっぱいに広がるCrystal LEDの迫力もさることながら、これだけの大画面であるにもかかわらず、映像は非常に滑らか。ビジネス向けの展示会でありながら、多くの参加者が声をあげて楽しそうにプレイしていたことも印象的なブースでした。
空間再現ディスプレイをさらに広く自由に!「“ここにいる・ある”空間再現システム」
映像分野の技術やソリューションは展示会全体で数多く見られましたが、なかでも目を引いたのが「“ここにいる・ある”空間再現システム」のブースです。
ソニーの「空間再現システム」といえば、最近はイベントや店舗での導入事例も増えつつある「ELF-SR2」がまず思い浮かびます。3D映像を27インチのディスプレイに映し出し、体験者は裸眼のまま、まるでそこに実物があるかのように見ることができるデバイスです。
一方、今回展示されていた新たな空間再現システムは、その何倍ものスケール。ブースには、底面と縦2面、計3面のCrystal LEDで構成された大型ディスプレイが鎮座していました。100インチ以上のサイズにも対応可能とのことで、担当者によると「やろうと思えば、実物大の車を空間に再現することもできる」そうです。
裸眼で3D映像を楽しめるELF-SR2とは異なり、こちらの新システムでは3Dグラスを採用。マーカーを取り付けたグラスとモーションキャプチャーカメラを用いてユーザーの顔の位置情報や視線を取得することで、どの角度からでも立体的に見える仕組みになっています。
実際に3Dグラスを装着して覗き込んでみると、比較対象として置かれた実物のデッサン人形の横に、立っている女性の姿が視界に飛び込んできました。「映し出されている」というより、「立っている」という表現を自然と選んでしまうほどの実在感。別の角度から観察しようと顔を動かしてみても、映像が大きくブレたり破綻したりすることはありません。

(左に実物のデッサン人形が置かれており、ディスプレイには手前の女性を含む複数の人物が映し出されています。この写真では上から俯瞰したような見え方になっていますが、これはちょうど「上から俯瞰する」位置からカメラを構えているため。顔を動かして視点を変えると、横から見たり、下から見上げたりするような見え方に変化します)
また、別のシーンでは車の内部を好きな角度から覗き込むことができました。内装の質感まで伝わるほどリアルで、しかもそれが想像以上に奥行きのある広い空間として投影されていることに驚かされます。

(写真では「3面ディスプレイに映し出された車内」にしか見えませんが、3Dメガネ越しに見ると、これが立体的に浮かび上がります。顔を動かすと、ステアリング周辺やダッシュボードを覗き込むことも可能。写真左右で光っているのは、3Dメガネの位置情報をトラッキングするためのOptiTrackです。ブース上方などにも複数台設置されていました)
この新システムのユースケースとしては、立体物を取り扱うデザインやクリエイティブの現場はもちろん、エンタメ・ライブ分野での活用も想定しているとのこと。今回はあくまで研究開発段階の参考展示とのことでしたが、今後の実用化や展開が楽しみです。
注目を集めるエンタメ向けロボットシステム「groovots」
ロケーションエンタテインメントゾーンの入口で見られたシューティングゲームもインパクトがありましたが、会場奥で一際存在感を放っていたのが、エンターテインメント向け群ロボットシステム「groovots(グルーボッツ)」です。
groovotsは、LEDパネルを備えた複数のロボット群によって構成されるシステム。ブースでは、映像演出を映し出しながら滑らかに移動するロボット2機(幅約0.3m×高さ約1.3m)と、縦横約2mの大型LEDパネルにCGキャラクターを投影して動き回る大型ロボットがデモンストレーションを行っていました。
一見するとLEDディスプレイ部分に目が行きがちですが、本システムの要となっているのは、本体下部の「台車」の部分です。
「何時何分のタイミングで、指定した位置に移動し、この映像を出す」といった綿密なプログラムによって動作。床に貼られたマーカーの上を通過する際に、指示通りに動いているかをシステム側で確認しているそうです。ちなみに開発には、ペットロボット「aibo」や自動車のセンサー技術のノウハウも活かされているとのこと。
また、groovotsはすでに実際のライブステージにも導入されています。今年1月には『アイドルマスター』シリーズの如月千早武道館単独公演「OathONE」に、2月にはアイドルグループ・22/7の「ナナニジライブ in ジャパンフェスタ」に登場しました。
特に1月の武道館ライブでは、12台の小型groovotsを色とりどりに輝かせる演出や、大型groovotsによって「キャラクターをステージの“外”へと歩かせる」表現が大きな話題を呼びました。筆者自身も客席からその光景を目撃していましたが、今回改めてこのロボットを間近で見て、想像以上の大きさと映像の鮮明さに驚かされました。
担当者によると、今回展示されていたgroovotsは、実際に武道館ライブで稼働していた機体そのものだそうです。客席から見たステージ演出が強く印象に残っていた筆者としては、至近距離で対面したことで、まるで“ご本人”に会えたかのような不思議な感動がありました。
現状はLEDディスプレイを活用したステージ演出がメインですが、今後は他の活用方法も検討していくとのこと。例えば、ディスプレイの代わりに照明を搭載して「動く照明」として運用したり、カメラを搭載してより臨場感のある映像を撮影したりといった、映像表現にとどまらないアイデアも模索しているそうです。
音声ARからインタラクティブ展示まで、最新事例が集合
今回は残念ながらすべての展示を網羅することはできなかったのですが、同ゾーンで見られたその他の注目ブースもダイジェストで紹介します。


(音声ARサービス「Locatone(ロケトーン)」のブース。サッポロビール博物館の音声ガイド「The Story of SAPPORO BEER ~星を追う羅針盤~」と、岐阜県の史跡を巡る「歴史体感シリーズ 決戦!関ケ原」のデモを体験できました。単なるコンテンツ制作にとどまらず、ユーザー分析も可能なプラットフォームとしての強みをアピールしていました)



(全国のショッピングモールで展開する屋内テーマパーク「リトルプラネット」のアトラクション。投影された映像の上を歩くとインタラクティブな変化が起きる「DISCOVERY GARDEN」や、描いた絵が立体になってスクリーン内を動き回る「DRAW YOUR WORLD」「SKETCH RACING」、お絵かきAIクイズ「SKETCH DUNGEON」などを楽しめます)

(インタラクティブなテーブルトップ技術「FanTable」。コラボカフェを想定した展示となっており、テーブル上の料理をカメラが検知して映像を投影します。イラストの位置や向きも認識しているため、お皿を動かすと映像も連動。エンタメ領域のほか、ボードゲーム、知育教材、ファシリテーションや建築シミュレーションでの活用も想定されています)

(ソニーが手掛けるロケーションバリュー企画の実績紹介ブース。製品販売や技術提供ではなく、「そのロケーションの魅力をどう引き出し、どのような空間表現をするか」というコンセプト立案からシステム導入までを一気通貫でサポートするサービスです。予算や目的に応じて、他社製品の提案も柔軟に行うとのこと)

(ライブやコンサートにおいて、観客が持つLEDライトを無線で制御し、舞台演出の一部に組み込むことで一体感を創出するLEDペンライトシステム「FreFlow(フリフラ)」)

(スポーツIPの活用事例として、日本女子プロゴルフ協会公式アプリ上で提供されている各種機能を紹介するブース)
ソニーが推進する「体験価値の創出」への本気度
冒頭でも触れた通り、今年のCreative Solution Showcaseは3つのゾーンで構成されており、本記事で取り上げたロケーションエンタテインメントゾーンはその一部に過ぎません。
エンタープライズソリューションゾーンやコンテンツクリエーションゾーンでも、放送や医療、教育、製造、建設など、多岐にわたる業界へ向けた最新ソリューションが数多く展示されていました。

(建築現場向けのVRコーチングや、医療映像プラットフォーム「NUCLeUS」など、VRヘッドセットを活用したソリューションの展示も散見されました)

(モバイルモーションキャプチャー「mocopi」を使ったオンラインフィットネス「Avatar Fit Party」のブース。「自分がアバターの姿になって動く」という体験そのものや、「VTuberが使っているデバイスである」という事実に新鮮さを感じている来場者の声も聞かれました)


(マーカーレスのカメラトラッキングシステム「OCELLUS」と、バーチャルプロダクション向けに最適化されたLEDディスプレイ「VERONA」による、リアルと配信を両立したライブソリューション「Live ARイマーシブライブ」の展示と、システムの解説)
多種多様なBtoB向けソリューションが並ぶなか、会場全体の“顔”とも言える入口付近の2階フロアに、あえてロケーションエンタテインメントゾーンが大きく展開されていたこと。それは、ソニーが「体験」の価値をいかに重要視し、ビジネスの柱として強く打ち出していこうとしているかの表れと言えるでしょう。
報道関係者向けに行われた事前レクリエーションでも、ソニーマーケティング株式会社B2Bビジネス本部の中川一浩氏が次のように述べていました。
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、未知の体験価値、あるいは感動体験を生み出すことに、これまで以上に注力していきたいと思っています」
ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパス(存在意義)を掲げています。その実現に向けて、ハードウェアやシステムの提供にとどまらず、それらを掛け合わせて生み出される「体験」そのものに深くコミットしていく――。
今回の展示会は、まさにその宣言を裏付けるかのように、ソニーが思い描く次世代の「体験価値」を肌で感じられる刺激的な空間となっていました。
今回お披露目された先端技術やソリューションが、今後どのような形で私たちの日常やエンターテインメントの現場に浸透し、新たな感動をもたらしてくれるのか。現実とバーチャルの垣根を越えてソニーが創り出す“体験”の未来から、ますます目が離せません。










