HTC NIPPONは2026年4月21日、新型AIグラス「VIVE Eagle」の製品発表会を開催した。 会場では、AIの未来予測と日本市場への強い意欲が語られた。 実機から伝わる質感や質疑応答の様子を交え、その様子をレポートする。

2026年4月21日、東京都内にてHTC NIPPONの新製品「VIVE Eagle」の製品発表会が開催された。会場では、HTC グローバル シニアバイスプレジデント・Charles Huang氏が登壇。さらに、HTC マネージャー・政田 雄也氏、HTC NIPPONセールス&マーケティング責任者・山下 賢治氏らが製品の詳細を語った。
「AIへの質問は7割が仕事とは無関係」Charles Huang氏の語るパーソナルAIに最適なデバイス

発表会の幕開けとして登壇したCharles Huang氏は、現在のAI利用の実態と、同社が描く未来のデバイス像について語った。Huang氏は「業界は生産性や効率性に焦点を当てているが、実際の人々の利用シーンはもっと個人的なものだ」と指摘する。
「2025年のデータによれば、19億件を超えるAIへの質問のうち、実に73%が仕事とは無関係なものであった。人々はAIを、セラピーやコンパニオンシップ、生活の整理、そして人生の目的を発見するために利用している。AIの利用は非常に個人的なものへと根本的に転換している」
Huang氏は、このパーソナルAIの真の可能性を引き出すには、従来のスマートフォンのような「親指と画面操作を前提としたデバイス」では限界があると主張した。
「ポケットに入れっぱなしのスマートフォンとは異なり、眼鏡は人々が毎日身につけ、持ち歩くものだ。AIグラスこそが、次世代スマートデバイスの新たな標準フォームファクターになると確信している。私たちは、プライバシーを侵害することなく、あなたの生活に力を与えるコンパニオンを設計した」
フレームに凝縮された、一日中身に着けるための意匠と光学技術

そのうえで、あらためて紹介されたのが、「VIVE Eagle」だ。重さ49g未満の軽量設計で、AIアシスタントを搭載したスマートグラスだ。音声コマンドによる写真・動画撮影、音楽再生、AIアシスタントによる質問応答、リアルタイム翻訳などが可能。AIアシスタントはOpenAI GPTおよびGoogle Geminiに対応している。
政田雄也氏は、「VIVE Eagle」を「テクノロジーを誇示するためのガジェット」ではなく、あくまで「生活に溶け込むアイウェア」と説明した。
「朝起きてから寝るまで、違和感なくかけ続けられること。そのためにフレーム単体で43g(デバイス全体は約49g)という驚異的な軽さを実現した。重心バランスや耳へのフィット感は、眼鏡へのこだわりが強い層さえ納得させるレベルを目指している」
実際に披露されたスマートグラスは、内部の精緻な構造が微かに透ける半透明のフレーム。レンズには世界最高峰の光学技術を持つZEISS(ツァイス)を採用し、視認性と安全性を両立させたという。
また、音響については「周囲を遮断するのではなく、現実の音とAIの声をシームレスに混ぜ合わせるオープンイヤー設計にこだわった」とのこと。カメラ搭載については「自分の視線で見た景色をそのまま記録できるカメラも、スマホを構えた瞬間に失われる『場の空気』を守るための選択だ」と説明している。スマホを向けると、いかにも撮影していることが相手に伝わってしまい、緊張感が場に広がるが、スマートグラスの撮影であれば、そういった心配がない。日常の中で自然と使えるというコンセプトはこういった機能にも繋がっていると言えそうだ。
プライバシー保護を強調
とはいえ、スマートグラスのカメラ機能搭載については、現在世界各国で賛否両論の状態だ。盗撮のハードルが低くなるのはもちろん、撮影したデータをAIが無断で利用してしまう危険性も否定できない。現在は、デバイスが黎明期にあるため大きな問題には繋がっていないが、それでもプライバシー保護は重要な問題となるだろう。
発表会で最も熱がこもったのは、プライバシーへの配慮に関する説明だった。カメラ搭載グラスが抱える「盗撮」への懸念に対し、政田氏はハードウェアによる解決策を示した。
「撮影中を示すLEDライトは、物理的に塞ぐとカメラが起動しないようセンサーと連動している。また、眼鏡を外せば即座に機能がオフになる。テクノロジーは、周囲の人々からの信頼があって初めて社会に溶け込める。私たちはこのルールに妥協しない」
質疑応答にて、「LEDを直接壊した場合はどうか?」と質問したところ、同様に撮影が不可能になるという回答が得られた。
また、AI機能「VIVE AI」については「ISO27001」 および「 ISO27701」を取得しており(※)、ユーザーデータが販売されたり、学習用途に利用されたりすることはない。これは、個人利用はもちろんのこと、企業がスマートグラスのビジネス利用を検討する際にも、重要なポイントになりそうだ。
※「ISO27001」 および「 ISO27701」:「情報の安全性」と「プライバシー保護」の国際規格。個人の権利を守る考え方が取り入れられており、預けたデータが不正利用や流出から守られる体制が、第三者機関によって証明されている。
KDDI・パリミキと仕掛ける国内展開。4月24日発売、8.2万円からの市場投入

最後に、セールス&マーケティング責任者の山下賢治氏と、パートナー企業であるKDDIの近藤氏より、日本国内での販売戦略が発表された。
「新しいテクノロジーを一過性の話題で終わらせたくない。日常生活の中で役に立ち、安心して使えること。これを土台に広めていきたい」と山下氏は語る。そのための戦略として、眼鏡専門店「パリミキ」や通信キャリア「KDDI」とのタッグが組まれた。全国約70店舗のau Style等で実機体験コーナーを設置し、実際に装着してAIの利便性を確認できる環境を整えていくという。
価格は、サングラスレンズおよびクリアレンズが税込82,500円、調光レンズモデルが税込98,000円。カラーバリエーションはブラック、ベリー、コーヒー、グレーの4が展開される。
ディスプレイ非搭載の理由。技術進化次第では搭載も検討。

これまでVRヘッドセットやトラッキングデバイスの販売を中心に「バーチャル空間」への没入を得意としてきたVIVEブランドが、あえて「ディスプレイを搭載しない」という選択をしたVIVE Eagle。取材の終盤、質疑応答ではディスプレイについての言及があった。ディスプレイ非搭載の理由について、 Huang氏は次のように回答した。
「理由は非常にシンプルです。現時点でAIとのベストなインターフェースは言語(音声)だと考えているからです。ディスプレイを搭載すると、まず重量が重くなりますし、重量バランスも難しくなります。また、消費電力や発熱の問題もあります。何より現在のディスプレイ技術では、ユーザー体験として十分ではないと判断しました。テクノロジーが十分に進化してから、次の段階として検討したいと思っています」
現在、スマートグラスは、音声のみのタイプから、映像表示をメインとしたもの、緑文字でシンプルな情報のみを表示するものまで様々なタイプがある。今回、VIVE Eagleは音声一本で絞ってきたが、今後様々なバリエーションが出てくることも否定していない。その点で、すでに次なる一手が気になるところだ。
実機体験
記者会見後、早速実機を体験してみた。

上がブラックフレーム + クリアレンズ、下がコーヒー(ブラウン)フレーム + サングラスレンズ。一見すると普通の黒縁眼鏡、サングラスに見えるデザインとなっている。レンズとテンプル含め、「Rokid スマートAIグラス」と同じくらいのサイズ感だった。
「VIVE Eagle」を実際に手に取ったところ、仕様上の重さが同じ「Rokid スマートAIグラス」と比較して、重心のバランスが良いと感じた。あくまで両者を比べた上での感想だが、「Rokid スマートAIグラス」はレンズ部分よりもテンプル(つる)部分に若干重みがあるためか、持ち上げた際にぐらつきやすい印象だったのに対し、「VIVE Eagle」は重さを意識させない持ち心地だった。
次に機能だが、カメラ(写真)、文字起こしと要約、スピーカーの3つを体験した。(AIアシスタント機能は時間の都合で見送り)

まずはカメラ機能。アプリ上で撮影した写真を確認できる。体験コーナーを試しに撮影した(右)。「Rokid スマートAIグラス」のカメラと同様、縦の撮影範囲が広く、慣れが必要に感じた。今回のテスト機は未対応だったが、音声での撮影もできるという。
右が録音後の文字起こし、左がAIを使って文字起こしを要約したもの。要点の他、参加者が二人(筆者、体験担当者)いることも認識している。会議などに使うには十分そうだ。
最後にスピーカー機能。会場が少し騒がしいという条件下ではあったものの、音量50%程度だと対面ではほとんど音は聞こえず、耳を近づけてやっと聞こえるレベルだった。
VIVE EagleのAIアシスタント機能は、音声コマンドによってハンズフリーで操作を行う。写真や動画撮影といった基本操作はもちろんだが、特に注目したいのは視覚情報を活用したコマンドだ。
例えば「この場所はどう?」と問いかけるだけで、今見ている店舗のレビューを即座に確認できる機能である。わざわざスマートフォンを取り出して店名を検索する手間が省けるため、街歩きにおける利便性は極めて高いと感じた。
また、筆者が最も期待しているのが、VIVE AIへの記録・メモ機能だ。「この住所を記録して」「駐車した場所をメモして」といった指示を出すだけで、AIが情報を記憶してくれる。
筆者も、スマートフォンを取り出すのを億劫に感じ自分の記憶を頼りにした結果、ショッピングモールで自分の車を探して彷徨った経験が少なくない。他にも両手が塞がっていて「後でメモしよう」と思ってそのまま忘れてしまうこともしばしば。そんな日常の些細なストレスも、「VIVE Eagle」があればスマートに防ぐことができそうだ。
今回は時間の都合でAIアシスタント機能は体験できていないが、入手した際にはこれらのコマンドの精度や応答スピードを徹底的に試してみたい。(その他の音声コマンドはこちら)
白熱するスマートグラス開発競争、リードするのは?
競合するスマートグラスが次々登場するものの、現状購入前に体験が少ないデバイスがほとんどだ。そんな中で「VIVE Eagle」は、他のスマートグラスと比較して体験・購入・修理対応店舗が多い。特に、購入前に実機に触れる店舗が多いのは大きなメリットであろう。(デモ体験が可能な店舗はこちら)
また、カメラへの配慮やISOなどプライバシー保護に注力している点も評価できる。買いやすさ、プライバシー保護への取り組みは、日本市場をリードすることにつながるかもしれない。
Makuake応援購入金額が4億円を突破している「Rokid スマートAIグラス」、日本での発売が予定されている「Ray-Ban Meta」などに対し、「VIVE Eagle」は今後のどのようなアップデートや差別化を図っていくのか、注目を続けたい。
参考
先方提供資料
