XR/メタバース/VTuber専門メディア「MoguraVR」は毎週、Podcast「もぐラジオ」を配信中。「テック・コンテンツ業界の最前線を掘る」というコンセプトのもと、すんくぼ(MoguraVR編集長)とゆりいか(MoguraVR副編集長)が業界の注目トピックを語ります。
今回のもぐラジオでは、日本で本格発売されたスマートグラス「Even G2」を紹介します。36gの軽量設計とカメラなし・スピーカーなしの割り切った仕様で、毎日使えるデバイスとして仕上がっているのか、実際に使い続けた編集部の視点からお伝えします。
(※本記事はポッドキャスト「もぐラジオ」の対談内容を要約・編集したものです)
Even G2とは何か? — 情報提示型スマートグラスの基本を押さえる
ゆりいか:199回のテーマは「Even G2毎日使えてスゴいぞ!スマートグラスの行方を語る」です。
すんくぼ:ゆりいかさんが戻ってきまして、今日は2人でEven G2というスマートグラスをつけて収録しています。
ゆりいか:前回はXREALとVITUREを並べてかけていましたよね。今日は違うデバイスです。
すんくぼ:そうです。Even G2が日本で本格発売されましたので、今日はこれを取り上げます。私の手元には発表のあった11月に即日予約を入れて、1月中旬にCESから帰ってきたら届いていました。それ以降、平日は基本的に毎日かけています。
ゆりいか:私は3日前に届いたばかりなので、まだ新鮮な感想をお伝えできます。
すんくぼ:ずっと使い続けている私と、使い始めたばかりのゆりいかさんとでそれぞれの視点から語っていきましょう。このデバイスがパーフェクトかと言えば正直そうは思っていないので、気になる点も含めて話していきたいと思います。
ゆりいか:まず、Even G2とは何か、というところから始めましょう。
すんくぼ:今かけているこのグラスですが、両眼に緑色の文字や記号が映るように表示されます。いわゆるARグラス(現実空間にデジタル映像を重ねて表示するタイプのデバイス)とは異なり、自分の視野の中に情報が出るだけという、情報提示型と呼ばれるタイプのデバイスです。XREALやVITURE、HoloLensやMagic Leapといったデバイスとも全く異なります。カレンダーやリマインダー、ドキュメントの台本を表示するといった使い方ができます。
ゆりいか:ドラゴンボールのスカウターのような、シンプルな情報表示という感じですね。
すんくぼ:ARの教科書的な分類で言えば、情報提示型というのが正確な表現のようです。操作はツルの後ろ部分でのタップやスクロールが基本です。
ゆりいか:起動時にレクチャーが出てくるので、慣れるまでそれほど時間はかかりませんでした。
スペックと価格 — 36gの軽量設計とカメラなし設計
すんくぼ:デザイン面で言うと、バッテリーはツルの耳かけ部分に収まっています。
Ray-Ban Metaのように全体に薄く回路が分散しているのとは少し違う構造です。ボタンは一切なく、重さは36gです。今まで色々なARグラスを試してきましたが、ダントツで使いやすい軽さです。普通のメガネとほぼ変わらない感覚でかけられます。
ゆりいか:スマートグラスをかけているとはわかりませんね。
すんくぼ:他のスマートグラスと比較する際のポイントは大きく4つあります。何が表示されるか、カメラの有無、スピーカーの有無、そしてマイクです。Even G2はカメラなし、スピーカーなしで、マイクのみ搭載という構成です。
ゆりいか:相当削ぎ落としていますね。
すんくぼ:カメラがない分、バッテリー持ちがよく、熱もほぼ発生しません。1回の充電で約2日以上動作し、充電ケースと合わせれば2週間以上は普通に使えます。マイクはAIとのやり取りや、リアルタイム翻訳・文字起こしなどの機能に使います。
ゆりいか:視野の表示が結構広くて、屋外でもしっかり見えますね。
AI機能についても触れておくと、Even AIというソフトが入っていて、話しかけると対話型AIとして応答してくれます。
すんくぼ:「ヘイ・イーブン」で発動するやつですね。会話を文字起こししながら、わからない単語の意味を出してくれたり、文脈を要約してくれたりします。リアルタイム翻訳もあって、日本語から英語への字幕もかなりスムーズに表示されます。
ゆりいか:テレプロンプター(舞台上で演者の手元に台本を映し出す装置のこと)機能もあって、講演や取材の場面で手元を見ずに台本を確認できます。ナビゲーション機能でGoogle Mapと連携して経路案内もできますし、スマホ通知の表示にも対応しています。
すんくぼ:日本語のニュース対応については、最近のアップデートで一部のメディアへの対応が始まったようですが、言語設定が英語のみで表示されているようです。
ゆりいか:価格は税込み9万9800円です。
すんくぼ:視力矯正が必要な方は専用レンズが別途必要で、そちらが2万5000円から3万円ほどかかります。合計で12〜13万円程度を想定しておいたほうがよいでしょう。Even G2の場合、レンズ部分に表示機構があるため、Even Realities社の専用レンズのみ対応しています。
リングコントローラー「Even R1」との連携
すんくぼ:もう1つ紹介が必要なデバイスが、指につける「Even R1」です。もう1ヶ月つけています。Even G2と連動するスマートリング(指輪型のウェアラブルデバイス)で、グラスの操作をツルではなく指のタップやスクロールで行えます。脈拍や睡眠スコアといった体調管理機能もあり、Galaxy RingやOura Ringのようなスマートリングとしての機能も備えています。
ゆりいか:本体を操作するために常に腕を上げなくて済むのはいいですね。
すんくぼ:ポケットに手を入れたまま操作できるので、ハンズフリーで使いたい場面で特に便利です。グラスとRingのセットで12万円ほど、リング単体は約4万円です。個人的にはRingはほぼ必須だと思っています。
ゆりいか:Meta Ray-Banだとリストバンド型コントローラーになりますが、リングの方が邪魔になりにくそうですね。
本格化する日本市場への展開
すんくぼ:購入方法についても触れておきます。Even G2は日本で正式に販売されています。発表からほぼ間を置かずに国内発売がアナウンスされていて、Even Realities社が日本市場を重視していることがよくわかります。現在は銀座と名古屋に店舗があるJun GINZAさんで取り扱いが始まっていて、店頭での試着と度入りレンズでの注文も可能です。今後はEC販売や国内代理店の拡充といった動きもアナウンスされています。
ゆりいか:Ray-Banとは違って、日本で買えることがまず大きいですよね。
すんくぼ:XREALはすでに家電量販店にも並んでいますし、Even G2もそういった流通経路が増えていくかもしれないですね。
3日間使ってみたファーストインプレッション
すんくぼ:ゆりいかさんは3日間使ってみていかがでしたか?
ゆりいか:全体的にポジティブな印象です。買えるなら買いたいと正直思っています。まず軽量さが際立っています。これまで様々なスマートグラスやARグラスを試してきましたが、長時間使えないものがほとんどでした。コードが必要だったり充電が短かったりして、すぐ外さなければいけないデバイスが多かった。それを今回間違いなくクリアしています。
すんくぼ:ミニマルな設計ですよね。
ゆりいか:表示がシンプルで整理されていて見やすいですし、デザインもおしゃれです。ARグラスだと結局PCの画面を見ているような感覚になりがちですが、Even G2は独自のUIが搭載されていて、新しいものを使っているというワクワク感があります。あと個人的には、スマホを見る機会が減るというデジタルデトックス的な使い方にも魅力を感じています。
すんくぼ:スマホを取り出す回数は明らかに減ります。通知の内容がグラスで確認できるので、着信のたびにスマホを出す必要がなくなります。
ゆりいか:時間も上を向くだけで確認できるのはいいですね。スマホ首になりにくい。
すんくぼ:まさに、スマホが出てきてからの20年ほど、人類は下を向き続けていましたからね。
ゆりいか:機能として一番使いたいのはリマインダーです。タスク管理がごちゃつきがちなので、グラスでパッと見えると助かります。情報を統合して見せてくれるデバイスとしての役割に期待しています。
毎日使い続けているすんくぼの評価と気になる点
すんくぼ:私が毎日つけたいと思っている理由の一番はバッテリー持ちです。Ray-Ban Metaも改善されてきましたが、朝から使っていると午後にはバッテリーが切れてしまいます。メガネというデバイスである以上、1日中使えないのは致命的です。2日以上持つEven G2はその点をクリアしています。
すんくぼ:前世代のG1と比べて輝度が改善されたことで、屋外でも十分使えるようになりました。他のデバイスだと直射日光で見えにくくなる問題がありましたが、Even G2はかなり実用的です。G1の頃は別売りのサングラスキットが必要でしたが、今はそれなしでも問題なく使えます。
すんくぼ:字幕・文字起こし機能も便利で、会話を記録したい場面で役立っています。表示の消え方もアプリで設定できて、私は5秒で消えるように設定しています。常時点灯でないので視界の邪魔になりにくいです。
すんくぼ:気になる点もあります。まずRingです。操作上はほぼ必須だと思いますが、人差し指につけているため、箸やペン、マウスといった日常動作に支障が出ます。枝豆がつまめなくなったほどです。タッチセンサーの感度が高く、意図せず指が当たっただけで表示が出る誤作動もあります。子供に触られて誤作動するという状況も起きました。
ゆりいか:利き手とは逆の手につけた方がいいみたいですね。
すんくぼ:まさにそういった日常生活への影響は割り切るか、改善を待つしかない部分です。なくしそうで怖いというのも正直ありますね。
もう一点、起動時の接続の遅さとアップデートの頻度が気になります。発売直後ということもあり、毎日のようにアップデートが入りますが、グラスとスマホ間の通信が遅く、数十MBのアップデートに時間がかかります。ただ、アップデートのたびに確実に使い勝手が改善されています。1ヶ月前と今とでは体験がかなり変わりました。メニューのカスタマイズができるようになったり、感度設定が追加されたりしています。改善への取り組みが速いチームだという印象を持っています。
誰に向いているか、そして今後の可能性
すんくぼ:結論として、非常に良いデバイスですが、万人向けではないと思っています。Even Realities社はプロフェッショナルなビジネスパーソン向け、特に目の前に文字情報が出ることで仕事が捗る人たちをメインターゲットとしています。インタビューでもジャーナリストには特に向いていると話していました。
ゆりいか:取材で使えるかもと思いました。特に英語でのインタビューはこれまで難しかったので、リアルタイム翻訳があれば挑戦できるかもしれません。普段たくさん文章を書く方にも向いていると思います。
すんくぼ:Even Realitiesは、Apple Watch開発チームの出身者が作った会社で、機能や性能だけでなく体験設計まで考えているのがよく伝わります。それが他のデバイスより頭一つ抜けている印象につながっています。
すんくぼ:もう一つ大きなポイントが、年末から1月頭にかけて始まったパイロットプログラムです。これは外部の開発者がEven G2向けのアプリを作れるようにするSDK(開発キット)の提供で、今後Even Hubというアプリストアもオープンする予定です。
ゆりいか:Even Realities側が作っていない新しいアプリが登場するわけですね。
すんくぼ:App Storeの登場でiPhoneが大きく化けたように、このエコシステムが開放されることで予想外のものが生まれる可能性があります。早速オンデバイスAIのエージェントとの組み合わせがSNSで話題になっていました。Ray-Ban Metaでも同様の動きが始まっていますが、Even G2は表示機能があり、さらにバッテリー持ちも長い。半年後にはかなり変わっているかもしれません。
ゆりいか:拡張性が高いのは期待できますね。
スマートグラスの今後 — ブランドの多様化と取捨選択
ゆりいか:Even G2に並ぶ後続はこれから出てきそうですか?
すんくぼ:増えていくと思います。XREALやVITURE、Rokid、Lenovoなど日本市場に来ているものもありますし、情報提示型のグラスも増えるでしょう。産業利用の面でも、物流現場向けのスマートグラス活用などが進んでいます。その技術がコンシューマー向けに逆輸入されることもあるかもしれません。
ゆりいか:デザインがよければ、それこそ物流企業モデルみたいなものが出てきたら面白いかもしれません。消費者がブランドで選べる時代になってくる。
すんくぼ:Ray-Banのお店でもスマートグラスが普通のメガネと並んで売られていますよね。家電量販店ではなく、メガネを選ぶ中にスマートグラスが選択肢として入ってくるというのは大きな変化だと思います。Even G2もJun GINZAさんで普通のメガネと並んで選択肢になっているわけですから。
ゆりいか:今のEven G2はまだ「これで十分」と言い切れる瀬戸際にある段階だと思っています。カメラがついたバージョンが出れば便利になる一方で、バッテリーや熱の問題、デザインの維持という難しいバランスがあります。
すんくぼ:Ray-Ban Metaもカメラありで使うと消費が激しくなります。各社がどの機能を削り、どこを強化するかという取捨選択が問われていますね。Even G2はその絶妙なバランスを今のところうまく出せているかもしれません。
ゆりいか:スマートグラスが気になっている方は、ぜひ実際にかけて試してみてください。Jun GINZAさんでは予約すれば体験もできます。今後もスマートグラスのレビューを続けていきますのでよろしくお願いします。
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