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業界動向 2025.09.10

総動員数約45万人を記録、沖縄発のメタバース企画「OKIVFES」はなぜ熱狂を生んだのか?【XR Kaigi in福岡レポート】

2025年9月2日、国内最大級のXRカンファレンス「XR Kaigi」の姉妹イベントとして「XR Kaigi Hub in 福岡」が開催された。XRに関心を持つ多くのビジネスマンや開発者が集うなか注目を集めたのが、沖縄発の地域メタバース「バーチャル沖縄」の挑戦を語るセッションである。

沖縄のエンターテインメント企業、株式会社あしびかんぱにーが手掛けるこのプロジェクトは、なぜこれほど多くのファンを惹きつけ、熱狂的なコミュニティを生み出しているのか。本レポートでは、同社のエグゼクティブプロデューサーである大浜未有希氏の講演をもとに、大規模バーチャルフェス「OKIVFES(OKINAWA JAPAN VIRTUAL FES)」の成功の軌跡と、その裏にある戦略、そして今後の展望を紐解いていく。

話者紹介:大浜 未有希 氏

株式会社あしびかんぱにーエグゼクティブプロデューサー。沖縄県出身、新卒として同社の立ち上げから参加。ご当地VTuber「根間うい」のプロデュースを手掛けた後、沖縄の魅力を世界に発信する「バーチャル沖縄」事業を牽引する。沖縄への深い愛情と、「遊び心を持って沖縄から世界を楽しくする」という企業のミッションを体現する。

コロナ禍が「バーチャル沖縄」の契機に

そもそも、なぜ沖縄という一地方から大規模なメタバースプロジェクトが生まれたのか。その原点は、沖縄への「愛」と、コロナ禍における「危機感」であった。

あしびかんぱにーは、沖縄に本社を置く総合エンターテインメント企業である。ゲーム開発から始まり、VTuber事業、リアル店舗運営まで、沖縄の魅力発信を軸に多角的な事業を展開してきた。そんな彼らがメタバース事業に本格的に乗り出す直接のきっかけとなったのが、2021年のコロナ禍である。大浜氏は当時の状況をこう振り返る。

「コロナ禍によって地方の観光業が大打撃を受け、沖縄の主要観光地である国際通りから人が全くいない状況を目の当たりにしました。国際通りのお土産問題に直面し、賞味期限が迫るお土産が行き場を失うという悲鳴が届いたのです」

この状況を打破するため、同社は当時開発を進めていたバーチャル空間上の「国際通り」の発表と絡め、ある施策を打ち出す。それは、制作費を募るのではなく、「行き場のないお土産をリターン品としたクラウドファンディング」であった。この挑戦は多くの支援を集め、「バーチャル国際通り」は華々しいスタートを切ることとなった。

こうして生まれた「バーチャル沖縄」のコンセプトは、「デジタルとリアルの融合」である。メタバースで旅前の期待感を醸成し、旅後の思い出を共有する場とすることで、リアルな観光へのリピートを促す。沖縄のファンを世界中に増やし、新たな地域創生の形を発信していくというビジョンがあったのだ。

“初”づくしの第1回OKIVFES、広告なしで10万人動員

「バーチャル沖縄」の挑戦は、2022年に大きな飛躍を遂げる。沖縄県が主催する公式イベント「世界のウチナーンチュ大会」との連携を機に、自社予算も投じて参加者をさらに楽しませるための独自企画として、第1回「OKIVFES」が開催された。

この第1回は、初めてづくしの挑戦であった。沖縄という一地域に特化した大規模なVRChatフェスは世界初。再建中の首里城を舞台にしたり、琉球舞踊をVTuberが披露したりと、沖縄の伝統文化との連携も前例のない試みであり、調整には多大な時間がかかったという。

そして、最大の挑戦は、VRChatユーザー以外、すなわちメタバースに馴染みのない「一般層」へのアプローチであった。大浜氏は「これまでのコンテンツはVRChat内で遊べるものが中心でしたが、今回は一般の方に広く興味を持ってもらうため、VRChatというデバイスを一旦横に置き、ブラウザコンテンツに力を入れ、集客を検証しました」と語る。VTuberファン、沖縄旅行好きの女性、ビジネス層という3つのターゲットを設定し、「1クリックで沖縄に行けるメタバース」というコンセプトを掲げた。

結果は驚くべきものであった。VRChat内での広告宣伝がほとんどできなかったにもかかわらず、総動員数は10万人を達成。しかし、その内訳は想定とは異なり、VRChat経験者が中心で、ブラウザ経由での一般層の集客は困難を極めた。

だが、この挑戦は思わぬ熱量を生み出す。イベント最終日、「もうこのワールドに来られなくなる」ことを知ったユーザーたちが、「みんなで沖縄の夕日を見つけて写真を撮り思い出を作ろう」と自発的な企画を立ち上げ、多くの参加者を集めたのだ。この出来事に、大浜氏は「メタバースは高いエンゲージメントを持ったユーザーが多いと言われますが、それを実感しました」と、大きな手応えを感じたという。数字だけでは測れない、コミュニティの確かな熱がそこにはあった。

地元との信頼関係から生まれた首里城ホラー

第1回の反省と手応えを踏まえ、2023年に開催された第2回OKIVFESは、さらに挑戦のギアを上げる。特に注力したのが、沖縄企業との連携である。「まずは検証として参加してみませんか」と声をかけ、多数の企業コラボレーションが実現した。

また、ユーザーとの共創も本格化。クリエイターが制作した作品を公式コンテンツとして展示する企画や、強力なVTuberとのコラボレーションも実施された。なかでも異彩を放ったのが、沖縄のシンボルである首里城を舞台にした「ホラーワールド」である。観光とホラーという異色の組み合わせは、大きな反響を呼んだ。この企画が実現した背景には、運営の沖縄への真摯な想いと、それを受け止める地元との信頼関係があった。

大浜氏は「首里城の方々からは『足元に触れてもらえる人が増えるなら、頑張ってやっていきなさい』と温かいお言葉をいただき、好き放題やらせていただきました。沖縄への愛を持って取り組んだことが、こうした協力に繋がったのだと思っています」と、舞台裏を明かした。

プロモーション戦略も進化を遂げた。第1回の課題であった一般層へのアプローチとして、VRChat内で活動する「マイクロインフルエンサー」を多数起用。彼らにイベントを事前体験してもらい、そのコミュニティ内で情報を拡散してもらう戦略が功を奏した。フォロワー数が数十万という規模でなくとも、特定のコミュニティ内で高い認知度を持つインフルエンサーの発信が、大きな期待の波を生んだのである。

ブラウザをやめ、VRChat特化で同接1万人を記録

2025年3月、第3回OKIVFESは大きな決断を下す。これまで試行錯誤を続けてきたブラウザコンテンツを完全に廃止し、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」に特化することを決めたのだ。

その理由について大浜氏は、「沖縄の魅力を伝えるには、ブラウザコンテンツの体験深度が浅いと判断し、より高い没入感と楽しい体験を提供するため」と説明する。選択と集中。この決断が、OKIVFESを新たなステージへと押し上げた。

VRChatに特化する一方で、新たな挑戦も忘れない。バーチャル・シンガー「初音ミク」とのコラボレーションが実現。沖縄の自然とクリエイターの作品が融合したワールドは、大きな話題を呼んだ。さらに、マイクロインフルエンサー戦略を昇華させた「公式アンバサダー制度」を導入し、より組織的で強力な情報発信の仕組みを構築した。

これらの施策が実を結び、第3回の総動員数は前回の1.5倍となる45万人を記録。特筆すべきは、ライブイベント中の同時接続者数が1万人を達成したことである。メタバース市場において3,000人から5,000人でも高い数字とされる中、これは驚異的な記録であった。

参加者の属性にも変化が見られた。一般的なVRChatのイベントでは海外ユーザーが6割以上を占めることが多い中、OKIVFESでは日本人ユーザーが7割に達した。「しっかりと日本の方にイベントが届いたことを示しています」と大浜氏は分析する。VRChatに特化し、日本のコアなファン層に深く突き刺さるプロモーションを展開した結果であった。

「推し地域」を作るファンコミュニティの成功と課題

3回にわたる開催を通じて、OKIVFESが確立した成功モデルとは何だったのか。大浜氏はその核心を「地域のファン、そしてそのコアファンを生み出し繋がることができた点」にあると語る。参加者のリピート率は高く、それでいて新規参加者も多い。常に高いエンゲージメントを保つファンのサイクルが、熱狂の源泉となっているのだ。

しかし、その成功の裏で、大きな課題にも直面している。それが「予算の課題」、つまり事業の継続性である。

「私たちは沖縄県から資金提供を受けているわけではなく、民間企業が多額の資金を投じて事例を作っているため、これを継続していく仕組み作りが業界全体の課題だと考えています」

メタバースの価値が「体験」や「プロモーション」にあることを丁寧に伝え、過度な期待とのギャップを埋めていかなければ、企業との継続的な連携は難しい。それでも、大浜氏の視線は未来を見据えている。「VRやメタバース、XR市場は今後も成長していく」と確信し、地域のメタバースが100万人規模になることも夢ではないと語る。

その未来を実現するため、あしびかんぱにーは挑戦を始めている。今年11月には、バーチャルフェスのリアル版を沖縄で開催する計画だ。さらに、沖縄県だけでなく他の自治体とも連携し、「連合で一つの受け皿を作ろうと動いています」という。

一企業の挑戦から始まった沖縄のメタバースは、今や地域や企業の垣根を越え、日本の地域創生の新たな可能性を切り拓こうとしている。沖縄の「あしび(遊び)」の心が生んだ熱狂は、これから全国へと広がっていくだろう。

記事内クレジット:©ガチャムク

次回の「XR Kaigi Hub」は大阪!

「XR Kaigi Hub」の熱気は、次なる都市へ。2025年9月11日、12日の2日間にわたり、eスタジアムなんば本店にて「XR Kaigi Hub in 大阪」が開催されます。関西のXR・AI・メタバースに関心のある皆様、この貴重な機会をお見逃しなく。

XR Kaigi Hub in 大阪
開催日程: 2025年9月11日(木)・12日(金)
会場: eスタジアムなんば本店
公式サイト: https://hubinosaka.peatix.com/view

国内最大級のカンファレンス「XR Kaigi 2025」が東京で開催!

そして、年間の総仕上げとして、国内最大級のカンファレンス「XR Kaigi 2025」が東京ポートシティ竹芝で開催されます。バーチャル領域の担い手がノウハウや技術をシェアし、繋がり、高め合うことを目的とした本イベントに、ぜひご期待ください。

XR Kaigi 2025
開催日程: 2025年12月1日(月)〜3日(水)
会場: 東京ポートシティ竹芝
公式サイト: https://xrkaigi2025.studio.site/


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