PCからヘッドセットまで総合的に“VR体験の質”を計測できるベンチマーク『VRScore』


BasemarkはVR環境のベンチマークソフトウェア『VRScore』を正式に発表しました。これは低コストのハードウェアと組み合わせてPCのレンダリングからVRヘッドセットで表示されるまでの正確な遅延の計測ができるソリューションとしています。

VRシステムにおける遅延計測の難しさ

VRシステムの動作環境は、PCやヘッドセットなどのハードウェア、ドライバ、アプリケーションといった各プラットフォームが密接に連携しているため、それぞれでパフォーマンスを最適化するアプローチが混在しており、単純な数値で比較できないという問題があります。

VRのベンチマーク測定には、『VR Mark』を提供しベンチマークソフトウェアで有名なFuturemark社も解決策を検討しています。高価な光センサーアレイとオシロスコープを用いて、アプリケーションがレンダリングした瞬間からユーザーが実際に体験するまで(motion to photon)の遅延を計測するのが可能になりました。Futuremarkはソフトウェアベースのベンチマークを選び、このソリューションは製品化されませんでした。理由の一つとして、ハードウェアのセットアップ次第で結果のパフォーマンスに影響するからです。従って、ヘッドセットへの表示までを計測するソリューションが求められていました。

安価なハードウェアで遅延の計測を可能にした『VRScore』

ヘルシンキに拠点を置くBasemark社は多くのパフォーマンス計測ソリューションを開発しています。最もよく知られているのは、モバイルデバイスのグラフィクス性能を計測するための『Basemark X』です。

同社はVR向けの新しいソリューション『VRScore』を発表しました。本ソリューションは、PCハードウェアとVRヘッドセットを測定してPCレンダリングからVRヘッドセットに表示されるまでの遅延を計測できるようになります。『VRScore』のパッケージには、ベースパフォーマンステスト用ソフトウェア(DX11、DX12に対応)、PCのサウンドカードにあるMic-inジャックに刺して使用する光センサー『VRTrek』が含まれています。ベンチマークは以下の3つのセクションに分かれています。

System Test

本テストは、純粋にPCのレンダリング性能を計測します。Crytek社が開発したVRアプリケーション『Sky Harbor』を実行し、体験中のフレームレートを計測します。ベンチマークは3Dでレンダリングされ、あらかじめ決められたヘッドセットの動きに沿ってレンダリングし。VR体験をシミュレートします。体験中は、なるべく速いフレームレートで動作するようにレンダリングされ、複数回繰り返します。本テストはあくまで、PCの性能を測定しているだけで、次のVRヘッドセットを用いたテストを行う必要があります。

VRTrek Test

本テストでは、VRTrekセンサーデバイスを使います。VRTrekはPCでレンダリングされる画像とVRヘッドセットに表示される画像の間の遅延を計測します。本テストで表示されるのは、先ほどのSystem Testと同じループですが、ヘッドセットを通して表示され、遅延時間の計測を行う準備をします。

VRTrekデバイスには、高さ調節可能なスタンドに取り付けられた2つの受光センサーが含まれています。スタンドの高さを調整し、VRヘッドセットの各レンズの前に置きます。続いてセンサーから出ているオーディオケーブルをPCのサウンドカードのMic-inジャックに差し込むだけで準備完了です。

VRヘッドセットのディスプレイ上で規則的にフラッシュすると、Trekはマイクポートを介して輝度のアナログ計測値をPCへ送信します。VRScoreベンチマークは、これらの値を読み込み、フラッシュコマンドのタイミングと実際のフラッシュを比較して遅延を測定します。VRScoreベンチマークでは、ドロップしたフレーム、フレーム遅延、VRヘッドセットで受信した重複フレームまで検出できます。

https://www.youtube.com/watch?v=dcIU0dLbWXM

以下が、VRTrekデバイスの技術仕様の概要です。

パラメータ仕様
受光可能なスペクタクルレンジ近赤外から深い青/紫まで
レスポンスタイム8μs
視野角(FOV)12°
正確度0.2 ms
精度< 0.01ms

VR Experience Mode

これは、単純にSky Harborソフトウェアのベンチマーク部分を自分自身で体験できるものです。Road to VRの記者であるBen Lang氏は去年のGDC後にVRScoreのデモを体験しましたが、いままで見たこともないような綺麗なVRコンテンツだと絶賛していました。

VRScoreは、現時点でHTC Vive、Oculus Rift、OSVRに対応しており、Road to VRのレビューではOculus Riftを使用しています。

注目すべきは、NVIDIAのMulti-Resolution ShadingとLens Matched Shadingといった機能に対応していることです。両方ともGPUレンダリングの負荷を軽減して、全体のパフォーマンスを向上させることを目指しています(現在はDX11のみ対応)。また、ベンチマークは、HMDのネイティブ解像度以外でもテストできます。今回は試していませんが、スーパーサンプリングをテストするオプションもあるようでした。

残念ながら、出荷遅れのためにVRTrekデバイスはこの記事の執筆時点で間に合っていませんが、到着次第より詳細なレビューを行っていくとのこと

VRScoreは2017年第2四半期に法人向けにProfessional版とFree版をリリースする予定です。これらの違いはBasemark社のサイトに掲載されています。

 

(参考)
First Look: Basemark’s ‘VRScore’ Benchmark Arrives With a Unique Solution for Accurate Testing – (英語)
http://www.roadtovr.com/first-look-basemarks-vrscore-benchmark-arrives-unique-solution-accurate-testing/

VRScore™ PC – The Essential VR Testing Tool – (英語)
https://www.basemark.com/vrscore/

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この記事を書いた人

  • あつぽん

    日本でMRシステムの開発に携わった後アメリカへ渡り、VR/MRシステムを企業へ導入するための検討・開発に従事。現在は日本在住。

    人間の能力そのものを拡張させるテクノロジー「ヒューマンオーグメンテーション」のコンセプトに惹かれ、その界隈の動向に強い関心を持っています。その中で実用化フェーズにあるVR/MRの盛り上がりをより広い範囲へわかりやすく伝えていきたいと思っています。

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