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テック 2016.12.06

VRを使った教育に効果はあるのか?学習意欲や理解度を調査

中国、北京の高校で天体物理学を題材にVRを用いた授業と従来の教育手法を比較した実験が行われました。その結果、VRを用いた授業の方が、生徒の理解度および知識の定着率が向上し、学習意欲も高まる結果になりました。

中国における教育の課題

現在、中国の教育制度は新たな発展段階にありますが、制度的には問題も多く、教育方法の改善も課題の1つです。このような中で、従来の教師から一方的に伝えるという授業方法も、学生の学習意欲を高めることはできないため、授業内容に興味を持てないでいます。

数年前に、オンライン教育と題してアニメーションなどによる教材も作られましたが、あまり効果を上げていません。これらの方法は、教師から生徒への一方通行の授業になっていたためではないかと考えられます。従って、VR用のヘッドセットを用いてインタラクティブな教育コンテンツを作成すれば、生徒の学習意欲を高めることができるのではないかと考えました。

今回の実験で題材としている天体物理学は、天体の分析や、理論、構造などを学ぶ学問であり、実験などを行うのが難しい分野です。従って、従来は教師が用意した教材を生徒に伝える程度しかできませんでした。このような分野でVRを使った授業の効果を実験しました。

実験の概要

学生を以下の図のようにVRを使った授業と、従来の授業を受けるグループに分け、さらにテストを受けるタイミングが授業直後、または授業から2週間後に受けるグループの4グループに分けます。このように分けることで、授業直後に内容を理解している割合と、2週間後に知識が定着しているかの調査を行うことができます。

グループに含まれる学生は、Grade A(優秀)からGrade C(可)までの学生が等分に含まれるようにして基礎学力の差がないようにして、男女も同数となっています。実験の準備から調査までの概要は以下の図の通りです。本実験では、授業後に行うテストの結果と、生徒への学習意欲に関するアンケート結果から結果を分析しました。

VRIT:VRを用いた授業を受けた直後にテストを受けたグループ

CIT:従来の教育手法で授業を受けた直後にテストを受けたグループ

VRRT:VRを用いた授業を受けた2週間後にテストを受けたグループ

CRT:従来の教育手法で授業を受けた2週間後にテストを受けたグループ

実験結果

最初に、授業直後にテストを行ったVRIT、CITグループの平均点を比較してみます。下記の図のように、VRITグループの平均点は93であるのに対し、CITグループの平均点は73点で27.4%もVRITグループのほうが点数が高い結果となりました。

従来の授業では、自分の想像力や教師からの理解で学ぶしかありませんでしたが、VRによる授業でインタラクティブに授業内容を体験することができたため、良いテスト結果となったと考えられます。

また、VRによる授業を受けたGrade Cの生徒のテスト結果が、従来の授業を受けたGrade Aの生徒よりも15.8%成績が良いという結果になりました。この結果によりVRは学習意欲を引き出し、楽しみながら学ぶことで、知識を吸収しやすくなるのではないかと考えられます。

次に、2週間後にテストを受けたVRRT、CRTグループのテスト結果を見ると、VRRTグループの平均点は90点、CRTグループの平均点は60点とVRRTグループの平均点が32.4%も平均点が高い結果となりました。VRITとCITのときの差が27.4%だったことを考えると、差が開いていることが分かります。すなわち、VRの授業を受けた方が知識の定着率が高かったため、2週間後でも高得点をキープできたと考えられます。

学生へのアンケート結果でもVRによる教育は非常に高評価でした。下記のアンケート結果でも、VRを使った授業を受けた学生のほとんどが好意的な印象を持っています。

VR体験を体験したことがない生徒も「すごい!まるで宇宙の真ん中にいるように感じられるし、とても綺麗!」と歓声が上がっていました。

VRを使った教育コンテンツに最適なのは語学学習?

本実験では天体物理学という科学分野を題材に調査していますが、最近の調査では、VRの臨場感あふれる授業コンテンツが語学学習において大きな成果を上げるのではないかと言われています。中国に本拠地を置くCHOCENGLISH.com社はVRを使った授業を行うアプリや、VRを使った外国語学習用アプリを開発しています。

彼らは、VRは英語教育に非常に適していると考えています。なぜなら、英語学習は科学ではなくスキルだからです。科学を習得するには、知識の蓄積が必要ですが、スキルは習慣化して自然に使えるようになることが重要であり、VRを使うと自然に英語を使う環境をシミュレートできます。その結果、効率的に英語を学ぶことができるとしています。

教育分野、特に実際に実験などができない宇宙関連や、原子構造などもVRでは可視化できます。抽象的にしか説明できなかったものが具体的に見て、体験できれば、学生は効率的に学ぶことができるため、将来への可能性が広がるのではと期待されます。

(参考)

A Case Study – The Impact of VR on Academic Performance – (英語)

http://cdn.uploadvr.com/wp-content/uploads/2016/11/A-Case-Study-The-Impact-of-VR-on-Academic-Performance_20161125.pdf

※Mogura VRはUploadVRとパートナーシップを結んでいます。


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