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テック 2017.07.30

NVIDIAリサーチ、VRに立体感をもたらす新技術を開発



半導体メーカーNVIDIAのリサーチ部門であるNVIDIA Researchが、ヘッドマウントディスプレイで映像をより立体的に表示する技術を発表しました。

同社は新技術のデモを、ロサンゼルスにて開催されているコンピューターグラフィックスのカンファレンスSIGGRAPH 2017にてデモ展示を行います。

VR/ARに立体感を生み出すには

VR/ARで没入感を生み出す要因として、3Dのオブジェクトや映像を立体的に表示できるという点がありますが、現在のディスプレイ表示では立体感を生み出しにくいという問題があります。

人間が立体感を認識する際、左右の目から微妙に角度の異なる視覚情報が入り、この2つの目の情報のズレを基に立体感を把握します。また、焦点を合わせた物体の距離に応じて、左右の視線が交差する角度が異なります。これによって自分と物体との距離(奥行き感)を把握します。

しかし、VRヘッドセットのディスプレイは目から決まった距離にあり、近くにあるものも、遠くにあるものも、ディスプレイに表示されるすべての物体は同じ距離から目に届きます。

視線が交差する角度がいつも同じであるため距離を認識する機能が働かず、したがってディスプレイ表示される映像に立体感を十分に感じることができません。これを「輻輳調節矛盾」といいます。

今回、NVIDIAが発表したデモは、この「輻輳調節矛盾」を解決するものであり、『Varifocal Virtuality』と『Membrane VR』という2つの技術を発表しました。

『Varifocal Virtuality』とは

『Varifocal Virtuality』は、ホログラムを用いてディスプレイ表示に立体感を生み出す技術で、「色収差」を用います。

色収差とはカメラ用語でよく使う言葉ですが、焦点の合っていない箇所がぼやけて、青や緑、赤の像が重なって見えることです。画像編集では「色ずれ」というエフェクトとしても知られています。

カリフォルニア大学バークレー校Banks Labの調査結果によると、人間の脳が物体の位置を認識する際に、この色収差を用いるとのことです。

『Varifocal Virtuality』はこの特徴を活かし、ホログラムに色収差を用いて立体感を生み出します。視線がフォーカスしていない箇所を色ずれして表示することで、映像に奥行き感を生み出すものです。

この技術を用いると、VR/ARデバイスの軽量化、薄型化につながるとのことです。

『Membrane VR』とは

NVIDIAはもう一つ『Membrane VR』という技術のデモを披露しました。これもバーチャル空間に立体感を生み出す技術で、NVIDIAとノースカロライナ大学、ザールラント大学、マックス・プランク研究所との共同開発によるものです。

この技術の特徴は、膜(Membrane)状の鏡を使用することで、変形可能な鏡をディスプレイとして使用します。ユーザーの視線をトラッキングして、それに応じて膜状の鏡が変形することによって、ユーザーが遠くのものを見ている時は近くのオブジェクトがぼやけて写り、近くのものを見ているときは遠くのものをぼかして表示することが可能になり、立体感を生み出すことができます。

現在、ヘッドマウントディスプレイの映像に立体感をもたらす技術は研究対象になっており、最近ではOculusのリサーチ部門、Oculus Researchが「Focal Surface Display」を発表しています。

(参考)
UploadVR / NVIDIA Research At SIGGRAPH Aims To Fix VR Headset Limits(英語)
https://uploadvr.com/nvidia-research-aims-to-fix-vr-headset-limits/

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