「目指すのはVRMMORPG」gumi國光氏、よむネコ新清士氏が語った世界展開の必要性

3月10日、gumiは決算発表会にて、VRゲーム開発を行う株式会社よむネコのグループ化を発表しました。

gumiは國光宏尚社長のもと、2015年末よりVRへの取組を開始。2016年1月にVRスタートアップへの半年間のインキュベーションプログラムを実施するTokyo VR Startupsを立ち上げ現在第2期プログラムが進行中です。同9月には韓国でSeoul VR Startupsを立ち上げているほか、米国のVR/AR領域専門ファンドThe Venture Reality FundにGP(無限責任組合員:General Partner)として参画し、世界中のVRスタートアップに投資を行ってきました。

一方、株式会社よむネコは、ゲームジャーナリストの新清士氏が立ち上げたゲーム制作会社です。Tokyo VR Startupsの第1期に参加して支援を受け、2016年11月にはguimiなどからシードラウンドの資金調達を実施、12月には1作目のVRゲームである『エニグマスフィア』(以下、エニグマ)をOculus Riftのコントローラー「Oculus Touch」のローンチタイトルとしてリリースしました。

エニグマスフィア公式PV

https://www.youtube.com/watch?v=Nw7dt0h7xEw

よむネコは、なぜスタートアップとして次の資金調達を行う道ではなく、グループ会社化という道を選んだのでしょうか。Mogura VRでは、gumiの國光氏、よむネコの新氏の両名にインタビューを行いました。

國光宏尚氏:株式会社gumi代表取締役社長、株式会社よむネコ取締役会長(非常勤) 2004年にカリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、様々なインターネット関係の新規事業を立ち上げる。2007年6月、モバイルを中心としたインターネットコンテンツを提供する株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任(現任)。2015年12月、VR系のスタートアップを支援する100%子会社「Tokyo VR Startups 株式会社」を設立し、代表取締役に就任(現任)。2016年2月、海外VR/AR市場への投資を目的としたベンチャーキャピタルファンド「VR FUND,L.P.」に出資し、ジェネラルパートナーとして運営に参画。

新清士氏:株式会社よむネコ代表取締役社長 慶応義塾大学商学部及び環境情報学部卒業後、ゲーム開発会社を経てIT・ゲームジャーナリストとして日本経済新聞電子版等で、ゲーム開発・産業についての専門記事を執筆。16年5月に発売した『VRビジネスの衝撃「仮想世界」が巨大マネーを生む』(NHK出版)は、Amazonの「IT」部門で1位を獲得している。教育者でもあり、デジタルハリウッド大学大学院准教授でゲームラボを担当。日本初のVR専門のインキュベーションプログラムを行うTokyo VR Startups株式会社 取締役も務める。「エニグマスフィア~透明球の謎」ではディレクターを担当。

「今が攻め時」

――さっそくですが、今回、グループ化に至った経緯を教えてください。

新清士氏(以下、敬称略):
よむネコは、Oculus Touch向けに『エニグマスフィア』(以下、エニグマ)を12月にリリースしました。現在は3月31日配信予定のVive版『エニグマスフィア:エンハンスドエディション』の準備をしています。20日には、梅田ジョイポリスでも、アーケード版が稼働を開始しました。そんな中で次の段階をどういう風に進むべきか、議論していたんですね。よむネコがいただいている資金を使いながら、その市場の中で次回作であるエニグマ2をどう戦略的に作っていくかということを検討していました。

今の日本のVR市場を見ると急激にVRゲームの需要が増える状況にはなっておらず、今後の数字が読みにくい状況です。また、アメリカへのマーケティングも課題です。エニグマを出してみてよくわかったのは、アメリカで知名度もないよむネコ単体でアメリカに直接リリースしてソフトを売っていくことは結構大変だったということです。「どうしよう」となったときに國光さんから「いやいや攻め時でしょう」と。

――攻め時ですか。

國光宏尚氏(以下、敬称略):
日本市場で本格的な勝負ができるようになるのは、スマホで今のルームスケール型(部屋サイズを歩き回れるタイプ)のハイエンドVRができるようになったとき。それまで日本のVRゲームを作るメーカーは、海外でしっかりと実績を残す体制を作っておくことが必須になると感じています。
新:
短期的に見てこの1年だけではなく、数年間で市場が立ち上がることが明確な以上、あとは数年間どういうアプロ―チをとるか考えた結果のグループ化です。アメリカでは、『Job Simulator』のように売上が3億円を超えて成功しつつあるスタジオや『Raw Data』のSurviousのように50億ドルを調達する企業も出てきています。2年3年分の資金ということで何十億円という単位で資金調達ができているため、資金を確保できていないスタジオとの差は非常に大きくなります。

――VRはノウハウが物を言いますよね

新:
そういう意味では、「VRゲームの市場がないわけではない」ということはほぼ証明されていて、市場規模は毎年毎年広がっていくと推測しています。アメリカでは、着実に数は増えていき、マーケットが広がっていく推測が立てやすいですね。ただし、日本国内ではPCゲームのマーケットが立ち上がるのは考えづらい。PlayStation VR(PSVR)が中心になるとは思いますが、ハードウェアの販売台数も急に増えるとは考えにくく、立ち上がりはゆっくりになりそうです。

――海外展開を見据えている、と。

新:
アメリカで売るとなると、アメリカ向けのVRゲームを作らなければいけないですし、世界最先端の開発チームを維持し続けたいと考えています。gumiグループに入ることにより、年間予算をいただき、資金を得ながら開発が可能になります。また、これまで実績を重ねてきたgumiの海外マーケティングチームとも連携が取れるという点も大きな要因です。

――グループ化するということは、資金調達を繰り返しながらの運営ではない道を選んだということですね。

新:
グループ会社化するデメリットがあまり浮かばなかったですね。我々も当初からすると予想外ではありますが、gumiの持ってるアセットを利用したほうが確実に有利になるという判断です。

 

――よむネコの開発チームにgumiのエンジニアさんも入ってくるという形で開発していくことになるのですね。

新:
はい。遠からず、gumiの新宿にある東京オフィスに引っ越し致します(笑)。我々は結局のところ、より短い単位で良いコンテンツを作りたい。今回のグループ化は非常に腑に落ちる結論です。開発を加速させて、いいプロダクトをお客さんに提供するためのスピードを重視しました。
國光:
gumi側からすると3つの要素があると思っています。1つ目は、成功例が出てきていること。1年半前は「VRのマーケットは来るのか?来ないのか?」という状態だったところから、ハードが発売され、1億円以上の売上を達成するタイトルのがいっぱい出てきて、ビジネスモデルが徐々に確立されつつあります。

2つ目は、日本のマーケットがないということ。今後は、欧米を中心にした家庭用マーケットと韓国と中国を中心にしたネットカフェなどののロケーションベースという流れになっていくと考えています。日本の市場がまだないので、いずれにせよどちらかに売っていくしかありません。

3つ目は、日本の会社が海外でVRのコンテンツを売るときにどんなコンテンツ作っていったらいいだろうか、という議論を重ねる中で、僕らがたどり着いた結論が、よむネコとも考えが一致したことです。海外の人が期待しているのは、ソードアートオンライン的なものではないかと。

――いろいろな話が出てきましたね。まずは1点目について詳しく聴きたいと思います。実際どういったビジネスモデルができつつあるのでしょうか。

國光:
欧米とアジア圏で2つに分かれると思っています。欧米はハイエンドの家庭用が中心です。各社、当初はPCゲームと同じ感覚で作りこんで40ドルで売るという方向でしたが、いまその方向で考えてる会社はかなり少なくなってきています。コンテンツの量が少なくてもいいから先にマーケットに出して10ドルや20ドルでプレイしてもらいつつ、追加パッケージを3か月に1回程度10ドルくらいで追加していきながら作り込んでいっています。

――ユーザーのフィードバックをもらいながら回していくというモデルですね。

國光:
ユーザーから「どんな追加機能がほしいか」などのフィードバックをもらって、かなり密接にコミュニティを形成していくのが一つの勝ち筋なのではないか、と考えています。このモデルのいいところは2つあります。1つはVRの市場が変化する市場だから、いきなり開発が一年後とかになってくると何が売れるのかもよく分かりません。早期にリリースしながらマーケットをしっかり見て新しいノウハウを入れて作ってくほうがいいものができる可能性が高まります。そして、同時にユーザーのエンゲージメントも高まっていきます。

――2点目でおっしゃっていたように、アジアの状況は全く異なりそうですね。

國光:
アジアでは、ロケーションベースのビジネスが大きくなりつつあります。スペース単位の収益性を上げるための取組が行われていたり。さらに今後はロケーションにあったゲーム性が出てくると思います。カラオケボックス型の、部屋を貸してしまって、VRを楽しみながら飲食をするといったモデルも出てくると思います。僕らゲームを作る側は、サーバー単位で一ライセンスあたり100ドルといったライセンス契約になっていくだろうなと。

開発体制の強化による加速

――gumiの決算説明資料には、自社開発も進めていくという記述がありますが、gumi本体もVRゲームの開発を手がけていくということでしょうか。

國光:
グループ化の目的の1つとしては、当然gumiのマーケティングチームや開発チーム、デザインチームとよむネコが協力していくということがあります。VRならではのコンテンツを作っていくと同時に、一緒に協力するうちのメンバーがVRゲーム開発のノウハウを吸収していて、他のスタジオに持って帰り、そこでもVRのゲームを作り始める体制をつくっていきたいと思っています。

 

両名が見据えるVRの可能性

――ところで、お2人はVRのどういった部分に可能性を感じているのでしょうか。

新:
世界の中に入っていく没入感が非常に大きいです。没入感はテレビモニターでは得られない強い感動と強力な体験を可能にすると思っています。エニグマのユーザーテストのときに、回数を重ねていくに従って多くの方がVRに魅力を感じてくれるんだと、確信に変わっていきました。

https://www.youtube.com/watch?v=MH6Rl_deNec

――新さんはジャーナリストになる前はゲームを作られていたかと思います。ゲームに関わろうと思ったきっかけとVRに関わろうと思ったきっかけは似ているのではないでしょうか。

新:
似てますね。僕の大学時代はマルチメディアブームでした。その時にハイパーリンクを使った『Myst』(※)みたいなゲームが登場したんですね。当時のものなので、表現としては今から見るととても貧弱でしたが、3D空間を歩いて回るという内容に魅力を感じました。VRはその延長線上にあって、もう一度到来した新しいものなんですね。私はそこを同一視していて、「ああ、もう一度そういう時代が来るんだ」という想いですね。

(※)『Myst』:アメリカのパソコン用ソフトメーカー「Cyan」が作ったパズルアドベンチャーゲーム。独特な世界観と謎解きが特徴的。

――國光さんはいかがでしょうか。

國光:
僕はVRには2つの可能性があると思っています。1つは次世代型エンタテイメント機器としての可能性、もう1つは次世代型のネットワーク端末としての可能性。前者はWiiやPS4の次にくるものとしてのVRの未来です。いままでゲームコンソールの歴史を見ても、お客さんはいままで見たことのないすごい体験にお金を払い続けてきました。Wiiが1億台以上売れましたけど、なんで1億人もの人買ったかというとWiiがいままで感じたことのないような面白い体験を提供したからです。高品質なVR体験は、最初にWiiを触ったときの感動と比べてもはるかにすごい。体験としてはVRは今までに全くなかったすごい体験というのを提供できるのは間違いない。必要なのは、クオリティの高いVRならではのコンテンツが出てくることと、ハードウェアが安くなることです。

2つ目の次世代のネットワーク端末としての可能性は、スマートフォンの次にくる空間を使うインターフェース、という意味合いです。空間を使うインターフェースとして考えると、VRは入口にすぎません。その後ARときて最終的にはMRにつながっていきます。スマートフォンではなく空間を使う時代は間違いなくやってきます。

VRのゲーム機器としてのVR機器の未来は安泰だろうと思っています。今後のVRのハードの伸び、進化も大体予想がついていて、ここから1年以内にスタンドアローン型のVRHMD(※)が登場しますので、気になるのは価格くらいです。

(※)スタンドアローン型のVRHMD:PCもスマートフォンも不要の一体型VRヘッドマウントディスプレイのこと

――普及のためにも価格は重要ですね。

國光:
頼むから10万円切ってくれ(笑)。10万円を切ってくれるといまよりも買いやすくなって出荷台数も伸びてくると思います。スタンドアローンのHMDとスマホで同じようなことができるようになると一気に市場が立ち上がってくる。それまでにしっかり準備をしていた会社が成功するのではないかと考えています。

――VRというテクノロジーに感じる可能性というのは、まさに國光さんが目指している方向性とも一致しているということですね。

國光:
gumiは、情報革命時代を代表する世界No.1のエンターテイメント企業になる、というビジョンを掲げています。テクノロジーが進化するとそのテクノロジーに合ったメディアやプラットフォームが出てきて、“ならでは”のハイエンドなコンテンツが出てきます。そこを作っていきたい。僕らは一番最初はガラケー、今はスマートフォン向けにハイエンドなゲームを作ってきました。今後はVRならではのハイエンドなコンテンツをつくることが重要だと考えています。延長線上にあるんですよね。

その後は、当然ARならではのゲームを考えたら、当然VRとは違ってくるゲームが出てくるでしょう。その次はAIを完全に活用した形のハイエンドのゲームってなんだろう、とか。うちの会社は絶えず新しいテクノロジーならではの新しい体験って何?」という答えを追い求め続けています

「目指すのはVRMMORPG」

――先ほど國光さんから、グループ化の3つ目の要因として、最終的に目指しているものが一致したという話がありました。海外の人が期待しているのは、ソードアート・オンライン的なものではないかという部分ですね。最後にこの部分を詳しく聴きたいと思います。

國光:
日本発VR版のMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)を作っていきたいということですね。日本の会社ならではのVRゲームとして、世界中の人が求めているゲームとして、みんなでプレイするMMORPGがあると思っています。
新:
よむネコのミッションは、「プレイヤーが非常に居心地のいいVR環境を構築し、インタラクションできるような環境をつくっていく」ことです。現在開発しているVRゲームの延長線上として、最終的にはRPG的なものになっていくかもしれないと思っていました。エニグマも、たとえばハンマーを剣にしたりして、成長要素を足せばRPG風になっていきます。当然グラフィックのクオリティも上げていかなければいけませんが。國光さんが言っているようなMMORPGのヴィジョンとすごく近いものになっていくわけです。それに、われわれがアメリカの市場に向けてFPSを作るってのはほとんど自殺行為じゃないですか(笑)

――向こうの十八番ですからね(笑)

新:
日本人が作るもので、RPGで作っていくとキラーコンテンツになるだろう、という戦略的な読みもあります。

――今後VRゲームに関しては、日本市場がどうなっていくか不透明な中で不安な開発者もいるかもしれません。今後への意気込みをお願いします。

新:
市場の成長は確実に起きています。昨年末よりも今年の年末は確実に普及台数は増え、Oculusもすでに値下げをしていて、Viveも値下げをしてくるでしょう。そういう意味では普及する条件はむしろ整ってきてるように感じます。

世界最高クラスのVR専門のゲーム開発スタジオになるという大きな目標に掲げて色々なタイトルを開発していきたいと思います。「本気でVRゲームを作りたい」と思う人がいれば、ぜひ参加してもらいたいです。今回のグループ化を機会に、より攻められるような環境を整えていきたいと思っています。

國光:
今後はしっかりと準備してきた会社がその市場を取っていくことになります。キラーコンテンツが出れば一気に普及しますので、3年後の未来に向けて、そのキラーコンテンツとなり得るVR版MMORPGを自分たちで作って世界へ出していきたいですね。

――最後に力強い言葉をありがとうございました。

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この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。
    現実を進化させることができるVRに無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。これまでに体験したVRコンテンツは展示、配信合わせて500作品以上。現在ももちろんコンテンツを体験し続けており、VR業界の情報集約と提供、コンサルティングに強みがある。また、海外の主要なVRイベントでは必ず現地に足を運び、取材やネットワーク構築を行っている。2016年は6回渡米。

    Twitter:@tyranusii

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