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お知らせ 2025.12.12

VRChatのビジネス・自治体活用にはどのような可能性があるか? GMOペパボが明かす“数字と本音”【XR Kaigi 2025レポート】

バーチャル領域(XR / メタバース / VTuber)の担い手に向けた業界カンファレンス「XR Kaigi 2025」が、2025年12月1日から3日にかけて開催されました。

数々のセッションや展示を見ることができた本イベントの中から、本記事ではGMOペパボ株式会社をピックアップ。2025年に「メタバース推進室」を設立し、法人や自治体向けにメタバース活用支援を実施している同社によるVRChatの活用事例を紹介します。

VRChatのビジネス・自治体活用について

12月2日に行われたセッションでは、GMOペパボ株式会社メタバース推進室の濱田璃空氏と、VRChat Inc. Business Development Japanの北庄司英雄氏が登壇。

「VRChatのビジネス・自治体活用について」と題して、2024年初頭にメタバース推進室を設立したGMOペパボの1年間の取り組みを振り返りつつ、企業や自治体がVRChatをどう活用すべきかのヒントが語られました。

iOS対応でユーザー層が拡大 VRChatの現在地は?


セッションでまず語られたのが、VRChatの現状について。7月にVRChat社にジョインした北庄司氏によると、iOS版に対応したことで現在は新たなユーザー層が流入しているとのこと。具体的な数字は話せないものの、ダウンロード数は「順調に伸びている」との話でした。

また、同社ではVRChatをいわゆる「メタバース」ではなく、バーチャルリアリティの中で人がどのように関わるかを突き詰めた「イマーシブソーシャルメディア(イマーシブソーシャルネットワーク)」と捉えているとコメント。

そのうえで、グローバル目線でも日本の存在は非常に大きく、VRChatとの親和性が高い日本のカルチャーと日本市場の重要性にも言及しました。

面談に70名超が殺到!採用活動でのVRChat活用

そんなVRChatを使ったGMOペパボの事例として最初に紹介されたのが、一対一で話せる交流ワールド「NAGiSA」を使ったスーパーカジュアル面談です。

この取り組みでは、エンジニアやデザイナー、ビジネス職の志望者とアバターの姿で面談を実施しました。関連する施策として、自社ワールドを使った新卒説明会も開催しています。


VRChatでアバター面談や新卒説明会を行うメリットとしては、以下の点が挙げられました。

  • 物理的な移動コストがかからない
  • お互いにアバターを纏うことで圧迫感がなくなる
  • 外見や属性にとらわれないフラットな対話ができる

濱田氏は「採用活動とVRの相性は意外に良い」として、VRChatユーザーの高いITリテラシーやクリエイティビティが、同社の求める人材像とマッチしていた点を強調。今回の面談では定員10名に対し70名超の応募があり、実際に1名の本採用が決まったそうです。

ちなみに、北庄司氏も普段からNAGiSAに行くことがあり、ユーザーとの会話を楽しんでいるとの話。マッチングした人に「何をきっかけにVRChatを始めたのか」「どんなデバイスを使っているのか」といった話も聞きながら、ヒアリングも兼ねているそうです。「ちょうど昨夜もNAGiSAで話していた」という一言には、会場から好意的な笑いも聞こえてきました。

インターネット黎明期のようなカオス感と、どんな企画でも許容される雰囲気

GMOペパボの事例として次に紹介されたのが、7月に開催された「#VRC全校集会」。これは一言で説明すると、「校長が夏休みに買ったバイクを生徒に自慢する集会」です。

要するに「校長先生の自慢話を聞かされるだけのイベント」なのですが、会場の体育館ワールドではいろいろなシチュエーションでバイクと過ごす校長の写真が飾られていたり、「歴代校長のTシャツ」を購入できたりと、そこかしこにシュールな要素が散りばめられています。



濱田氏によると、この企画の下地にはVRChat特有の「集会」カルチャーの存在があったそう。そもそもGMOペパボがVRChatに興味を持ったのも、インターネット黎明期のようなカオス感と、こうした企画が許容される雰囲気があったためだと言います。

「この企画を通して何を伝えたいかと言うと、『このくらい適当でもいいんだよ』ということで……」と言いかけた濱田氏に対して、「適当じゃないでしょ!(笑)」と北庄司氏がツッコミを入れる一幕も。実際には制作に2ヶ月ほどかかっていると補足しつつ「企業さんや自治体さんにはハードルを高く設定せず、好きなようにやっていただきたい」とまとめました。

VRChat × 伝統文化を活用したシティプロモーション

12月3日には、「VRChat × 伝統文化を活用したシティプロモーション」と題したセッションを実施。

このセッションでは、VRChatを活用して伝統文化を発信している鹿児島県日置市と島根県江津市の事例が紹介されました。登壇者は、メタバース推進室の濱田氏に加えて、日置市「ネオ日置計画」担当の重水憲朗氏、江津市創造力特区デザイナーの福山賢一氏です。

鹿児島県日置市:複数のプラットフォームで展開する「ネオ日置計画」とは?

甲冑姿で登壇した重水氏がまず熱く語ったのが、日置市が取り組んでいる「ネオ日置計画」について。

2022年8月に始動したこのプロジェクトのテーマは、「すぐそこにある日本のふるさと」。物理的な交流が難しかった新型コロナウイルス禍において、デジタルを活用した交流ができないかを模索する中でスタートしました。

具体的にはまず、NTTコノキューが提供する仮想空間プラットフォーム「DOOR」でメタバース空間「ネオ日置」をオープン。城下町や市内の名所を忠実に再現し、2年間で30,000人が来訪するメタバースとして話題になりました。しかしDOORのサービス終了に伴い、プラットフォームを移行することに。現在はcluster版とRoomiq版が公開中です。

ネオ日置を再構築するタイミングで一度総括を行なった重水氏は、これまでのブラウザベースのプラットフォームでは、「見学だけで終わってしまう」という反省点があったと指摘。

そこで、自由度が高く、メタバースの可能性を最大限に生かせるプラットフォームとして選んだのが、VRChatでした。

現在はGMOペパボのサポートを受けつつVRChatワールドの制作を進めており、2026年1月に公開予定。その中で特に力を入れているのが、戦国時代の島津氏に由来する「太鼓踊り」です。太鼓踊りをワールド内でデジタルアーカイブとして残しつつ、将来的な継承者や移住者の確保にも繋げられないか。そのような期待を寄せています。

島根県江津市:「石見神楽」をグローバルへ

続いて、江津市創造力特区デザイナーの福山氏からは、地元で愛される「石見神楽」のメタバース化プロジェクトが紹介されました。

毎週のように公演が行われるほど地域に根付いており、後継者不足にも悩まされていない石見神楽。しかし「県外ではあまり知られておらず、知ってもらうための情報発信もできていない」という課題がありました。

とはいえ「東京から最も遠いまち」とも言われる江津市に来てもらうのはハードルが高く、東京や関東で公演をしようにも、遠征資金を考慮すると難しい。せっかく地元で愛される伝統芸能があるのに、その魅力を伝えることができていない。そんなもどかしさがあったそうです。

そこで江津市が石見神楽の発信場所として選んだのが、VRChatです。


メタバースならば地理的な制約がなく、どこからでもアクセスできますし、何回だって公演を実施することができます。また、メタバースサービスの中でも特にリッチな演出や表現を取り入れられる点も、VRChatの魅力。しかもグローバルなサービスなので、海外ユーザーに向けて日本の伝統芸能をPRすることもできます。

そうして公開された石見神楽ワールドは、1週間で10,000アクセスを記録。同時にBOOTHで配布を始めた神楽衣装も、5,000ダウンロードされました。

(他にも大阪・関西万博 地方創生SDGsフェスへの出展や、VTuber・敷島てとらさんへのPR動画の制作依頼といった施策も紹介されました)

伝わりにくい「メタバース」の施策を実現するにあたって、行政や議会をどう説得した?

その後のディスカッションでは、自治体ならではの興味深い話も飛び出す展開に。「どのように企画を通したのか」というトークテーマでは、両自治体のアプローチの違いが浮き彫りになりました。

「具体的な数字を示すことで行政を説得した」と語ったのは、江津市の福山氏。理解してもらうのが難しい「メタバースとは何か」を事細かに説明するのではなく、来場者数や経済効果、どのくらいの予算でどれだけの効果が期待できるかを数字で示すことで企画書を通したそうです。

一方、先の見えないコロナ禍で税金を使わずに施策を進める方法として、クラウドファンディングに活路を見出したのが、日置市の重水氏。ネオ日置計画ではこれまでに4回のクラウドファンディングを実施し、集まった約3400万円でプロジェクトを進めてきたのだそう。「“目に見える協力者”の存在を示すことで議会を説得した」という話が印象的でした。

自治体によるメタバース活用を継続していく上で、資金調達は重要なテーマです。セッションの終盤には、企業版ふるさと納税制度を活用することでプロモーションを実施している江津市の事例も語られました(参考:企業版ふるさと納税 – 江津市ホームページ)。

このセッションでは、日置市・江津市ともに、市民や企業からの協力を得ることでシティプロモーションを継続していることが明らかになりました。言い換えれば、市民や企業、そしてVRChatで過ごすユーザーやクリエイターを巻き込む共創の仕組みこそが、自治体メタバース活用の生命線であるのかもしれません。

展示ブースには、VTuber向けデザインサービスも

エクスポエリアのGMOペパボブースでは、セッションでも紹介のあったコンテンツが展示されました。「#VRC全校集会」などの活用事例を紹介する映像展示のほか、「ネオ日置計画」のVRChatワールドの一部を一足先に体験することができました。

ネオ日置のVRChatワールド体験では、VRヘッドセットをかぶると目の前に神社を再現した空間が広がっており、伝統芸能「太鼓踊り」を間近で見られます。

まだ制作途中とのことでしたが、踊り手たちが身にまとう伝統衣装は細部まで作り込まれていることがわかります。スタッフさんによると、実際に使われる衣装や道具を撮影し、それを参照しつつ細部までモデリングしているのだとか。このワールドでは3種類の太鼓踊りが体験できるようになるそうで、1月の公開が楽しみです。


他には、VTuber向け配信画面デザインサービス「Alive Studio by GMOペパボ」を体験できる展示も。背景やコメント欄だけでなく、BGMや効果音も自由にカスタマイズして配信画面をデザインできるサービスです。

タイマーやカウンター、お題ルーレットといった便利な機能も使えて、しかも簡単に導入できることから、個人で活動するVTuberのあいだで利用者も増えつつあるサービス。ブースでは実際にキャラクターを動かすこともできたため、立ち止まって試す来場者の姿も見られていました。

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