バーチャルとリアルの壁を越え、さらには「次元」すらも飛び越える――。そんな新感覚のエンターテインメントイベント「X VORDER RUNWAY(クロスボーダーランウェイ)」が、9月27日、幕張メッセにて開催された。
本イベントは「ファッションショー」と「音楽ライブ」の融合を掲げ、多数のVTuber、キャラクター、そしてリアルアーティストが一堂に会した異色の祭典だ。7年前に開催された「FAVRIC(ファブリック)」(※詳細は後述)を彷彿とさせるコンセプトも、VTuberファンの熱い注目を集めていた。本記事では、その見どころをレポートする。
リアルとバーチャルの境界のみならず、「世界」の壁すら越えたライブ&ファッションショー

(【Official MV】交錯 OMNIVERSE 【X VORDER RUNWAY】 – YouTube)
X VORDER RUNWAYの最大の特徴は、音楽ライブのなかに「ファッションショー」の演出を大胆に組み込んでいる点にある。
幕張メッセに設けられたメインステージからは、客席を貫くように1本の長い通路が伸びている。通常のライブにおける「花道」にあたるこの通路を、本イベントでは「ランウェイ」に見立てているのだ。ライブ中、特別な衣装を身に纏った出演者たちがランウェイを歩き、客席の間近でポーズを決める。そんなファッションショーさながらの光景が目の前に広がる。
また、“クロスボーダー”を謳う本イベントならではの、出演者の多彩さもポイントだ。
星街すいせいさん、花譜さん、星川サラさん、橘ひなのさん、赤見かるびさん、KAWAII CLUBのカワクラさん、HIMEHINAの2人といったバーチャルシーンの第一線で活躍する面々に加え、詩羽さん、ナナヲアカリさんらリアルアーティストも参戦。
さらには、春麗さん(ストリートファイター)、久慈川りせさん(ペルソナ4)、天海春香さん、如月千早さん、星井美希さん(アイドルマスター)、B小町の3人(【推しの子】)といった、「世界」すら飛び越えた出演者たちが名を連ねているのだ。
各界のシンガー、アイドル、果ては格闘家までが同じステージに立ち、この日のための特注衣装でランウェイを歩く(※一部ゲストを除く)。まさに前代未聞の祭典である。
https://x.com/MikaPikaZo/status/2104135228818391047
見どころ①「ランウェイを使ったファッションショー×音楽ライブ」
本イベントの見どころは、ずばり「音楽ライブとファッションショーの融合」にある。
HIMEHINAの2人が歌う「V」で幕を開けたステージで、中央に現れたのは星街すいせいさん。ステージ下からせり上がってくるように登場し、颯爽とランウェイへ一歩を踏み出した。
漆黒をベースに、赤・青・クリーム色が映えるドレスを纏った彼女が、優雅な足取りで観客の目の前へと進み出る。ランウェイの先端で腰に手を当ててポーズを決めると、会場からは割れんばかりの歓声が沸き起こった。
その後も、すいせいさんと入れ替わるように星川サラさん、橘ひなのさん、赤見かるびさんが次々と登場してはランウェイを闊歩。HIMEHINAの2人も並んで歩き、最後は6人揃ってステージ上に立ち並んだ。
VTuber文化において「新衣装のお披露目」は一大イベントだが、X VORDER RUNWAYにおける「衣装」は、それらとは少々異なる意味合いを持っている。出演者それぞれの個性を活かしつつも、「ファッションショー」だからこそ、衣装には斬新さや意外性が大胆に取り入れられているのだ。
当人のイメージカラーとは異なる色合いを基調とするすいせいさんやかるびさんのような衣装もあれば、ひなのさんやサラさん、HIMEHINAの2人のような、もともとの個性を活かしつつ新たな解釈を加えたデザインもある。それは、音楽ライブでよく見られる「共通衣装」や「アイドル衣装」とも一線を画している。「このステージを歩くため」だけにデザインされた特注衣装の唯一無二性が、本イベントならではの特別感を生み出していた。
そんな特別な衣装を纏ったアーティストたちの華麗な立ち姿を、至近距離で堪能できる。こうしたファッションショー的アプローチがライブの随所に散りばめられていることこそが、X VORDER RUNWAYの大きな醍醐味だ。
見どころ②「アイドル、VTuber、アーティストが入り乱れる夢のコラボステージ」
アーティストたちが歩く通路はファッションショーの「ランウェイ」であると同時に、音楽ライブの「花道」としても機能する。
そのため、「VTuberが花道を歩きながら歌唱する」という、リアルイベントではなかなかお目にかかれない新鮮なパフォーマンスが本イベントでは次々と展開されていた。
さらに見逃せないのが、界隈の垣根を越えた夢のコラボレーションだ。
2曲目に登場した花譜さんは、KAWAII CLUB(カワクラ)さんと共演。観客に手を振りながらランウェイを進み、「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」を熱唱した。
2番ではカワクラさんがバトンを受け取るように客席側へ進み出る。同じように客席の近くまで来て歌った後はステージに戻り、最後は2人で向かい合ってのパフォーマンスが行われた。
「ペルソナ!」の掛け声で始まった「Reach Out To The Truth(First Battle)-Revival-」では、星川サラさんの歌唱に合わせて久慈川りせさんがランウェイをウォーキング。
続くMCでは、間近で見る“りせちー”の圧倒的アイドルオーラにサラさんが限界化する一幕もあった。
B小町(有馬かな、ルビー、MEMちょ)による「POP IN 2」では、途中で劇場を思わせるレッドカーテンが降り、ランウェイ先端で歌っていた3人が橘ひなのさん&HIMEHINAの2人へ瞬時に入れ替わるというイリュージョンのような演出で会場を沸かせた。
また、「フライドマリアージュ」では赤見かるびさんと星街すいせいさんが“フライドポテト列車”に乗って登場。中央に向かってとことこ歩きながら歌う愛らしい姿を見せた。
このバーチャル界の歌姫との夢の共演には、かるびさん自身もMCで「特別な1日になった」と喜びを露わにしていた。
アニソン色が強く、会場が高揚感に包まれた橘ひなのさんの「大♡大♡大♡大好き」。久慈川りせさんとコラボし、「私たちの思い届いてるー!?」という煽りと、2人からの「大好き」の連呼に観客のボルテージも急上昇。
そして、幅広い層のファンが集まっている会場中が一体感に包まれたのが、「GO MY WAY!!」のステージだ。
天海春香さん、如月千早さん、星井美希さんの3人に加え、終盤にはカワクラさん、赤見かるびさん、橘ひなのさん、花譜さんが合流し、客席の熱気は最高潮に達した。
見どころ③「物理法則を無視したコンボ炸裂!?会場をどよめかせた春麗の演舞」
全体的に「アイドル色が強いライブ」という印象も受けるX VORDER RUNWAYにおいて、異彩を放っていた1人の出演者がいたことも書き記しておきたい。
「GO MY WAY!!」の熱気冷めやらぬ会場で突如モニターに映し出されたのは、格闘ゲームでおなじみの「Here comes a new challenger!」の演出。客席からのざわつく声を切り裂くように、橘ひなのさんとカワクラさんが歌う「恋しさと せつなさと 心強さと 2023」のイントロが鳴り響く。
そしてそこへ、1人の格闘家がステージに現れた。春麗さんだ。
それまで各界のシンガーやアイドルが立っていたステージにおいて、彼女の存在感は圧倒的だった。肉体の厚みが違う。体幹が違う。佇まいが違う。
逞しい脚でランウェイを踏み締め、先端でポーズを決めた瞬間、どよめきとも歓声とも悲鳴とも受け取れる声が、客席から響いた。ファッションショーでも音楽ライブでも見たことのない、常人の動体視力では捉えきれないほどのキレッキレな動きで、数々の格闘ポーズを披露したのだ。
驚きはこれだけではない。ランウェイから一度姿を消した彼女は、しばらくしてステージ袖に再登場する。
ひなのさんとカワクラさんの2人と一緒に歌うか踊るかする――のかと思いきや、彼女のパフォーマンスは想像を絶するものだった。ステージ中央で歌う2人に向かって歩き出し、凄まじい速度で「技」を繰り出し始めたのだ。そう、「技」である。
衝撃波のエフェクトを伴いながら、スピニングバードキック、天昇脚、百裂脚などを次々に連発していく。どう見てもコンボが繋がっている。あまりの跳躍力に、ステージの高い所まで跳び上がった彼女の姿がフレームアウトする瞬間すらあったように映った。



(歌声を響かせる2人の横で、次々に技を繰り出しながらステージ中央へと迫る春麗さん(写真奥))
バーチャルな存在であるVTuberの中には、魔法などの特殊能力を持つ者も確かにいる。だが、リアルイベントのステージ上で、ここまで物理法則を逸脱したパフォーマンスが展開されることは極めて稀だ。
春麗さんの演舞は、現実のライブ空間とゲーム世界がバグのように混じり合う、まさに“世界”を越境するクロスボーダーな体験だった。
バーチャル×ファッションの原点「FAVRIC」の系譜
本イベントを語る上で避けて通れないのが、2019年9月に同じく幕張メッセで開催された「FAVRIC(※)」の存在だ。
「FASHION × VIRTUAL × MUSIC」をテーマに掲げ、遡ることちょうど7年前に開催された同イベント。バーチャルアーティストが特注衣装でリアルのランウェイを歩くという、当時としては類例のない試みで、大きな話題を呼んだ。
X VORDER RUNWAYは、そのFAVRICの精神とフォーマットを色濃く受け継ぎつつ、リアルアーティストや「世界」の枠を超えたアイドルたちをも巻き込んで進化を遂げた、正統な系譜にあるイベントだと言える(※)。実際、開催が発表された際には、FAVRICを想起するファンの声がSNSでも散見されていた。
では、7年越しに開催されたX VORDER RUNWAYは、FAVRICと比べてどのような違いがあったのだろうか。
(※事実、X VORDER RUNWAYを主催する株式会社Awardは、かつて株式会社ガールズアワードとしてFAVRICの企画に携わっていた経緯がある。なお、FAVRICは2020年にも開催予定だったが、コロナ禍の影響を考慮し実施が見送られている)
次元の境界を超えた「リアル」とのクロスボーダー
最大の違いは、やはり「リアルアーティスト」がラインナップされている点だ。出演者が全員「バーチャル」な存在だったFAVRICに対し、今回は詩羽さんとナナヲアカリさんが「リアル」側の代表として参戦している。

(客席から一番近いランウェイ先端にナナヲアカリさんが登場して始まった、「ダダダダ天使」。星川サラさんの高音と星街すいせいさんの低音が重なり、心地よいハーモニーを響かせた)
特筆すべきは、ステージ上に「リアル」「バーチャル」という区分けが存在しなかったことだ。詩羽さんもナナヲアカリさんも、VTuberと同じくこの日のための特注衣装を身に纏い、肩を並べて歌い、同じランウェイを歩いた。
つまり、「VTuberだからランウェイを歩けない」「リアルアーティストだから行けない場所がある」といった制限がなく、全出演者が同じ条件でパフォーマンスをしていた(少なくとも客席からはそのように見えた)、というわけだ。
このように、VTuberとリアルアーティストが同じ場所で並び立つステージを見ていると、バーチャルとリアルが溶け合うように感じられる瞬間がある。リアルな存在がそこを歩く姿を目の当たりにすることで、同じランウェイを歩くVTuberたちの実在感もまた、より強く裏付けられていたのだ(物理法則を超越していた春麗さんは別として)。

(詩羽さんがステージ袖に登場するやいなや歓声が上がり、赤見かるびさんと並んで歩きながら歌唱した「シャトーブリアン」。途中、詩羽さんがランウェイを歩くシーンも見られた)
「通り道を作る」から、「足を用意する」へ

(【ライブ本編】X VORDER RUNWAY【冒頭無料パート】 – YouTubeより)
前方にメインステージがあり、そこから客席に向かって、1本の通路状のステージ――ランウェイが伸びている。ライブ中は、メインステージに設置された大小複数のLEDモニターとランウェイ直上のパネルが光り、パフォーマンスを彩る映像やエフェクトが投影される。
一見するとFAVRICとX VORDER RUNWAYのステージ構成は共通しているが、目に見えてわかる違いもあった。2019年のFAVRICを現地で見ていた人は、会場に入った時点で「おや?」と首を傾げたのではないだろうか。
決定的な違いは、ランウェイの構造そのものにあった。

(FAVRICにて。ステージ上のモニターに映るバーチャル空間の映像と、現実のパネルが連動する演出が見られた)
FAVRICでは、ランウェイ上に無数のパネルを並べることで、VTuberが歩くための「通り道」を物理的に構築していた。パネルに映像を投影し、モニター内の動きと同期させることで、あたかも現実にVTuberが歩いているように見せていたのだ。
しかし、X VORDER RUNWAYのランウェイ上には、そのようなパネルが一切置かれていなかった。ランウェイ直上にはFAVRICでも見た演出用のパネルが設置されているが、肝心の「通り道」となるパネルが用意されていなかったのだ。

(【ライブ本編】X VORDER RUNWAY【冒頭無料パート】 – YouTubeより)
どうやってランウェイを使うのか――。その答えは、1曲目で明かされた。ステージ中央に設置されていたLEDモニターが、ランウェイ上を客席に向かって移動し始めたのである。
平面だと思われていたモニターの正体は、客席のどの角度からも映像が見える、移動式のLEDモニターだった。筆者の席からはほぼ正面しか見えていなかったが、後ほど配信で確認してみたところ、どうやら三角柱の形状をした三面モニターのようだ。
無数のパネルで「通り道」を作るのではなく、モニターそのものをVTuberの「足」として移動させる。これこそが、X VORDER RUNWAYが打ち出した新たな解答だった。
無数のパネルによって「通り道」を作るFAVRICの手法でも、「ランウェイを歩くVTuber」を実現できてはいた。しかしパネルの性質上、見る角度によってVTuberの姿が平面に見えたり、パネル同士の隙間で見切れたりしてしまう問題があった。
一方、移動式モニターを採用した今回は、何よりも「奥行き」による実在感が段違いだった。
ランウェイを物理的に移動してくるため、歩いてくるVTuberの姿が徐々に大きくなり、目の前まで迫ってくる感覚をはっきりと味わえる。遠目に見て「歩いている」だけでなく、「近づいてくる」というこの接近感は、FAVRICでは体験できなかった新たな感動だった。
次なる革新に期待が膨らむ「クロスボーダー」の現在地
X VORDER RUNWAYは、7年前に開催されたFAVRICの精神を色濃く受け継いでいることを感じさせるイベントだった。
だが、それは単なるリバイバルにとどまらない。「ファッションショー×音楽ライブ」というコンセプトを2026年の最新技術で実現しつつ、「界隈を越えた夢のコラボレーションを見られる音楽フェス」としても楽しめる、意欲的なイベントだったと言える。
一方で、今回のイベントが完成形であるとも思えない。移動式LEDモニターは確かな実在感と奥行きを生み出した反面、技術的な制約からか、「ランウェイ上でアーティスト同士がすれ違う」といった演出は見送られていたからだ。
かつてのFAVRICでは、出演者たちが次々にランウェイへと歩み出し、先端でポーズを取り、通路を往復する際にすれ違うという、ファッションショーならではの光景を見ることができた。しかし今回のイベントでは、最大3名のアーティストが横並びで「同時に歩いてくる」ことはあっても、「ランウェイ上ですれ違う」という場面は見られなかった。
とはいえ、空間演出やライブ技術が日進月歩で進化を続ける昨今。もしこの革新的なイベントに「次」があるならば、我々の想像をさらに超える進化を見せてくれるはずだ。
本記事で紹介できたのは、全編のパフォーマンスのごく一部にすぎない。配信アーカイブは12月26日までと長期にわたって視聴可能なので、当日の熱狂を追体験したい人も、細かな演出をじっくり見返したい人も、ぜひその目で確かめてみてほしい。
関連リンク
- 公式サイト :https://xvorder-runway.com
- 公式X:https://x.com/X_VORDER_RUNWAY
- 配信アーカイブ:https://xvorder-runway.spwn.jp/_events/evt_C1EeN6DGhTi4uO5GHRdg
セットリスト
- 「V」HIMEHINA
- 「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」花譜、KAWAII CLUB
- 「一世風靡」花譜、星街すいせい
- 「Reach Out To The Truth (First Battle) -Revival-」久慈川りせ、星川サラ
- 「True Story -Revival-」久慈川りせ、星川サラ
- 「GO MY WAY!!」天海春香、如月千早、星井美希、KAWAII CLUB、赤見かるび、橘ひなの、花譜
- 「恋しさと せつなさと 心強さと 2023」橘ひなの、KAWAII CLUB
- 「フライドマリアージュ」赤見かるび、星街すいせい
- 「シャトーブリアン」詩羽、赤見かるび
- 「サインはB -New Arrange Ver.-」有馬かな、ルビー、MEMちょ
- 「POP IN 2」有馬かな、ルビー、MEMちょ、橘ひなの、HIMEHINA
- 「ダダダダ天使」ナナヲアカリ、星川サラ、星街すいせい
- 「明日の私に幸あれ」ナナヲアカリ、赤見かるび、花譜、久慈川りせ、橘ひなの
- 「大♡大♡大♡大好き」橘ひなの、久慈川りせ
- 「恋の押し売り」星川サラ、赤見かるび
- 「愛包ダンスホール」HIMEHINA、花譜
- 「ビビデバ」星街すいせい、詩羽、ナナヲアカリ、HIMEHINA
- 「交錯 OMNIVERSE」赤見かるび、天海春香、詩羽、花譜、如月千早、久慈川りせ、橘ひなの、春麗、ナナヲアカリ、HIMEHINA、星井美希、星川サラ、星街すいせい
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