製作者やファンたちの熱い気持ちがたくさん込められた作品
「狼と香辛料VR」は人気ライトノベルのVRアニメーションです。クラウドファンディングで資金を集め制作したことからも、製作者やファンたちの熱い気持ちがたくさん込められた作品でした。VR映画というよりは舞台を観ている感じです。3つのストーリーが描かれ、ホロとロレンスの関係性がよく分かります。非常にほっこりするストーリーになっています。
オススメのポイント
1. 空間
ロケーションは1か所で、森の中にある水車小屋の中で話は進みます。小屋という狭い空間が、より空間を感じさせます。雨が降っている演出によって、外は寒そうで、焚火は映像なのに手を近づけると暖かく感じました。狼少女のホロが小屋の中を縦横無尽に歩き回るので自然と空間を見回すことができます。
2. キャラクターの存在感
ホロが生き生きとしていて、自分と会話してくれたり、わがままを言って干し葡萄を食べたりしている姿が可愛かったです。またホロが自分の隣に座ってくれる体験は、彼女の体温まで感じられるくらい存在感がありました。
ホロの尻尾に触ると、触った感覚がすごくリアルに感じられます。自分の大好きなアニメキャラクターが空間に存在し、様々な表情を見せてくれるという、ファンにとってうれしいVRならではの体験がしっかりとしています。
3. 体験者の設定
冒頭、ベンチからロレンスを客観的に見ているのですが、自分が座っているいるベンチの位置に彼が来ると、自分がロレンスの目線になれる演出が非常に新鮮で興味深かったです。この時、自分自身が考えていないセリフが自然と出てくる感じは不思議な体験でした。体と頭が別々になったような不思議な感覚がありました。
4. シーン展開
個人的にシーン転換がVR映画の大きな課題だと思っているのですが、演劇の演出のように空間の中に新たな空間を出現させるシーン転換は、非常にスムーズだと感じました。
例えばホロがパン屋さんの夢を語るシーンは、何もない小屋の中に魔法のようにパン屋が出現し、ホロが楽しそうに夢を語りかけてきます。ストーリーを止めることなくワクワクするシーンになっていました。
5. その他
私が一番印象的だったのは、ロレンスが椅子から立ち上がってドアから出ていく最後のシーンです。今まで一心同体だったロレンスが自分から離れてドアに歩いて行き、自分自身は椅子に座ったまま取り残されます。ホロだけが私の存在に気がついたのか、じっとこっちを見るシーンはドキっとしました。
自分がロレンスではなかったことがバレてしまったのか等、色々と考えてしまいました。不思議なシーンでしたが、非常に興味深いものになっていたと思います。
本編とは違うのですが、ふれあいモードがとても良かったです。コントロールを使ってホロと触れ合えるので、単なる見ているだけではなく、1番ホロの存在を感じられました。本編でも、もう少しホロと触れ合えるシーンがあると、もっと新しいVRストーリーテリングコンテンツになるのではと今後に期待しています。
作品データ
タイトル |
狼と香辛料VR |
ジャンル |
VRアニメーション |
企画・シナリオ |
支倉 凍砂 |
公開 |
2019年 |
本編尺 |
体験者による |
製作国 |
日本 |
体験可能な場所 |
オンライン:Oculus Store, Steam Store, PlayStation Store, My Nintendo Store |
PV
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