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VR動画 2021.08.14

【VR映画ガイド第61回】ボリュメトリック技術を使った本格スリラーは、夢と現実があいまいに……

ボリュメトリックキャプチャで作られた陰謀に満ちた物語

ここ最近ボリュメトリックキャプチャ(現実の場所や空間、人物もしくは人の動きを3Dデータ化する技術)が注目を集めています。VR映画に関してもボリュメトリック技
術を使った作品が増えており、以前この連載でも紹介した「Still Here VR」にも要所要所で利用されていました。

今回紹介する「Awake Episode One」では記憶、夢、現実の境界線が曖昧な世界を描くのにボリュメトリックキャプチャ使われていました。フォトリアルCGと融合した空間の中を、体験者が自由に移動できるようにデザインされています。

シナリオは大ヒットゲーム「レッド・デッド・リデンプション」を手がけたクリスチャン・カンタメッサが担当。陰謀に満ちた複雑な物語にどんどん引き込まれていきます。

全8エピソードのシリーズ作品で、エピソード1では主人公のハリーが奇妙な夢を繰り返し見るところから始まります。その夢には不可解なメッセージが隠されており、その謎を解き明かすところから物語が進んでいきます。

オススメのポイント

1. ボリュメトリックキャプチャを使った演出の可能性

この作品を見て、ボリュメトリックキャプチャを使った作品は今後たくさん出てくるだろうと思いました。人や動物などの動きが3Dデータ化され、少し距離を取って対象物を見ると服の皺や髪の毛などが自然に思えます。

人間や動物などをボリュメトリックキャプチャで撮影し、実写映画作品とは少し違う、良い意味で違和感のある雰囲気を作り出すことができています。

ただ近接で見た時の人の顔の凹凸などのディテールには問題がありました。アイテムを手に物を持つ際の不自然さなどもも気になるところでしたが、こうした点は今後改善されていくでしょう。

またボリュメトリックキャプチャの良さの1つは、リアルな物を3Dデータ化しておけば、同じデータをVRだけでなく、フレーム映像やAR、MRなどにも転用できることもあげられるでしょう。

今後さらにクオリティが上がったボリュメトリックキャプチャが様々な分野で活躍していくようになると、想像を超えた全く新しい表現が出てくるようになりそうです。

2. 新たなストーリーテリングの開発

今作では体験者は空間の中を歩き回れます。体験者の立つポジションによって、作品の見え方が変わります。

たしかに空間を自由に歩けたり、周辺の人物や物に触れたりするのは面白いのですが、ストーリーテリングを仕掛けるには相応な演出が必要です。体験者にあまり自由性を持たせてしまうと、物語が進みにくくなってしまう恐れがあるからです。

そこで、光る球に触れさせることでストーリーが流れるようにしたり、VRのコントローラーを振動させたりして、体験者に行動を促す工夫をしていました。こういった工夫はVR映画全般に必要なものと言えるでしょう。

3. 体験者の存在

体験者は冒頭からコントローラーをつかって様々なアクションをする必要があります。手元に光の粒がずっとついてまわるので、自分は何かしらの役割を与えられた登場人物であることを認識させられるのです。

ただしばらくは自分が何者なのか分かりません。そのため最後の最後に役割が分かった瞬間は、少し感動しました。このようなPOV(一人称視点)の作品にとって一番のフックは、体験者に自分自身が何者なのかを考えさせることかもしれません。自分のアクションの意味を一つひとつ考えながら作品に没入できるのです。

エピソード1では、違和感のある世界の中で自分自身がリアルな世界にいるのか、夢の世界にいるのかがわからない中で物語が進行します。最後は気になるところで終わるので、次のリリースが待ち遠しくなりました。

作品データ

タイトル

Awake Episode One

ジャンル

ドラマ

監督

Martin Taylor

制作年

2018年

制作国

オーストラリア

本編尺

約20分

視聴が可能な場所

Viveport:
https://www.viveport.com/87247573-c18e-4b31-ac00-e5b56b86579b
Steam:
https://store.steampowered.com/app/845900/Awake_Episode_One/
Oculus Store:
https://www.oculus.com/experiences/rift/2084362931627708/

Official Launch Trailer

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