有名プロダクションが大規模予算でVR映画を制作
昨年、劇場公開映画「パラサイト」がアジア映画で史上初のアカデミー作品賞を受賞し、全世界から注目されました。今回紹介するのは、その「パラサイト」を制作した韓国の大手制作会社Barunson E&A;が手掛けた大規模予算のVR映画「Stay With Me(邦題:私のそばにいて)」です。
主演はNetflixのドラマシリーズで話題になっている「愛の不時着」でグ・スンジュン役を演じたキム・ジョンヒョンと「サイコだけど大丈夫」でヒロインのコ・ムニョン役を演じたソ・イェジです。監督は「ロードオブザリング」や「コンスタンティン」など、数々のハリウッドメジャー作品のビジュアルエフェクトを担当したBryan Ku監督です。
ミュージシャンの夢を持っているが、人前で歌うことができないウジン(キム・ジョンヒョン)とパントマイムパフォーマーになる夢を持つヨンス(ソ・イェジ)のほろ苦い初恋物語。2018年のCannes Next VRや釜山国際映画祭で紹介されて大変話題になりました。
オススメのポイント
1. 演出の細やかさにプロの技術が見える
作品のクオリティはかなり高いです。冒頭のウジンが海中に飛び込むシーンや、真っ暗闇の中にウジンの部屋とヨンスの部屋だけが浮いているシーン、夜の街を出て行ったヨンスを追いかけるウジンのシーンなど、ビジュアルエフェクトを得意とする監督の経験が存分に生かされています。
VRにとってどういう演出が有効なのかを色々とチャレンジしながら制作されていることがよく分かります。
2. 360度3D映像への挑戦の意味
この映画では、360度3Dで撮影するための計算がなされており、さらにはグリーンバック撮影を撮影して、映像を合成していました。
日本のVR映画では、180度3D作品はよく見られますが、360度3Dの作品がそれ程ありません。(海外映画祭では、当然のように360度3Dの作品がメジャーです)
360度3Dは全方位を立体に見せる必要があるため、実写のみで制作するとかなり難しいと言われています。しかし、うまくいけば360度2Dの映像よりも没入感や現実感があり、登場人物が本当に目の前にいるような感覚になります。
3. スクリーン映画 VS VR映画
これほどの制作規模の作品をまだ日本では見たことがありません。ストーリーもVR映画用にオリジナルで書かれ、監督をはじめ、制作チームはスクリーン映画の技術力の高いスタッフが集まっていると思われます。
一方でスクリーン映画としての演出では成立するのですが、VR映画としてはちょっと難しいシーンもいくつかありました。1つのシーンでカットバックするのはVRとしては馴染まないかと思います。ヘッドマウントをかぶると視点が変わるので、突然カットバックが入ると没入が削がれてしまい、自分がどこにいるのか迷ってしまいました。
この作品の中で積極的に多くのVR演出を挑戦しているため、今後VR映画を制作する人たちにはとても参考になる作品だと思います。もちろん純粋に作品を楽しみたい人たちも、今勢いのある韓国ドラマをVRで見ることができるので、オススメです!
作品データ
タイトル |
Stay With Me(邦題:私のそばにいて) |
ジャンル |
ドラマ(ラブロマンス) |
監督 |
Bryan Ku |
制作年 |
2018年 |
本編尺 |
37分49秒(前半:15分12秒 / 後半:22分51秒) |
制作国 |
韓国 |
体験できるサイト |
VR Square(近日配信) |
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