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いよいよVR部門結果発表 「ヴェネツィア映画祭」レポート(後編) – VR映像プロデューサー・待場勝利の「VR映画の夜明け前」第18回

今年のVenice VRの結果は!?

ベネツィア映画祭が先日、閉幕しました。
今回で3回目となるVR部門のコンペティション「Venice VR」の結果は、VR最高賞がアメリカ制作、Céline Tricart監督の「THE KEY」です。Céline Tricart監督は数々のVR映画作品を制作し、中でも2018年に制作した「THE SUN LADIES」はクルド人の女性兵士を取り上げた作品で、かなり難しいテーマを非常に見やすく、テンポよく描き、SXSWやSundance Film Festivalで大変話題になりました。

今回も社会問題の非常に難しいテーマに革新的なVR映画表現で挑戦しています。現実と仮想空間を組み合わせた新しい演劇を見ているような作品です。ユーザーはある夢を言及するために仮想空間に入り、真実を探っていきます。その真実とは現実にある世界的な問題ということが判明し……あまり詳しいことを書くとネタバレになるので、ここまでにしておきます。Céline Tricart監督はVR映画製作者としてスタイルが確立しつつある非常に注目の監督です。

https://vimeo.com/330903525

VRエクスペリエンス賞は前編でも紹介したブラジル制作、Ricardo Laganaro監督の「A LINHA」でした。この作品は本当に可愛らしい作品で、ぜひいつか日本で体験できるようにしたいと思っています。またRicardo Laganaro監督は大変日本が大好きで、日本のアニメーションや特撮に影響を受けていると話していました。次回作も楽しみです。

最後にVRストーリー賞はナイジェリア制作、監督はJoel Kachi Benson氏の「DAUGHTERS OF CHIBOK」でした。この作品はナイジェリアにあるチボック村で本当に起きた、テロリストボコ・ハラムが女子学生寮を襲撃し、10代の女子学生246人を誘拐した事件を取り上げています。その痛々しい家族の思いや村の人たちの話を360度実写映像ドキュメンタリーで描いていきます。特に派手な展示でもなく、インタラクションも無い作品です。スクリーン映画のようなクローズアップという感情を揺さぶる映像演出は無いのですが、360度映像で実際に起こった事件を淡々と語る演出は非常にリアルで、真っ直ぐに自分の心に突き刺さりました。

https://www.youtube.com/watch?v=WmfOvvAkZWg

今回は見た目が派手だったり多額の制作費がかかっただけの作品ではなく、本当にVRで映像表現するということをよく考えた作品が選ばれ、個人的にはこの3作品が選ばれたことは非常に嬉しい思います。

大健闘した日本勢

今回大変喜ばしかったのが、招待された40作品の中で日本人が関わった作品が5作品もあったことです。しかも、Competition部門に3作品もノミネートされています。昨年は2作品でOut Of Competitionだけだったことを考えると、大健闘と言えると思います。

Competitionにノミネートされた3つの作品を紹介すると、まず前編でも紹介した素晴らしい展示ブースを作っていた「A LIFE IN FLOWERS」で、日本人フラワーアーティストの東信氏の世界をVR空間に表現する作品でした。また「INORI」は台湾の制作ではありますが、監督はLiu Szu-ming氏と日本で版画家、現代アーティストとして活躍している小松美羽氏です。アーティストとしての小松氏の世界観をVRで表現した作品で、すでに小松氏の作品で圧倒されるのですが、それをVRによって小松氏の描く作品世界の中に入って体感する作品になっていました。映画祭期間中に小松氏のライブパフォーマンスもあり、大変話題になりました。

3つめは、昨年のBest Of VRに続きベネツィア映画祭2度目の東弘明監督による「GHOST IN THE SHELL: GHOST CHASER」です。言わずと知れた「攻殻機動隊」の世界をVRで描いた作品です。「攻殻機動隊」自体が世界でも超有名な作品でもあるため、公開前からすでに話題になっており、どの回も予約でいっぱいになっていました。作品は前評判通り、非常にクオリティが高く、今回の中で一番エンターテイメントな、人を純粋に楽しませる要素がたっぷりと詰まった作品でした。ただ、元々はhexaRideという6方向稼働する座席に座ってみるための作品なのですが、今回VR THEATERブースで360度見渡すだけになってしまったのは少し勿体なく思いました。

BIENNALE COLLEGEと一緒に作った作品「Feather」

手前味噌にはなりますが、ここで筆者がプロデューサーとして関わった作品「Feather」にも触れておきたいと思います。この作品は伊東ケイスケ氏が監督し、今回のヴェネツィア映画祭のVR部門「VENICE VIRTUAL REALITY」にて正式招待作品としてプレミア上映されました。

BIENNALE COLLEGE CINEMA VRという、バーチャルリアリティの領域において新たな才能を発掘・育成するため2017年より毎年ヴェネツィア・ビエンナーレの主催により開催されているプログラムがあります。第3回目の開催となる2019年には世界各国から12プロジェクトが選出され、Featherは日本チームとして開催史上初めて本プログラムの対象プロジェクトに選ばれました。Featherの制作チームは、2019年2月に約1週間のワークショップに参加し、ストーリー開発、ビジュアライズ・テクノロジー等の各領域のエキスパートと共に構想をブラッシュアップしました。Featherはワークショップを経て、日本としては初めてBIENNALE COLLEGEの協力のもと完成させたVR映画作品です。


Photo by Andrea Avezzù. Courtesy La Biennale di Venezia

このワークショップはチームにとっても私にとっても、VRとストーリーテリングに関して、様々な角度から深く考えるキッカケを与えてくれました。それこそVR映画に関しては教えてくれる先生も参考書も無いので、各業界の方々と朝から晩までVR映画について議論ができたのは私の宝物になっています。どこかの機会にここでの経験をまとめて日本の皆様にご紹介したいと思います。

まとめ

当記事に記載した通り、今回のヴェネツィア映画祭は日本勢が大健闘をしたと思います。会場では色々なところで日本、日本という声が聞かれました。しかしコンペティションへのノミネートは果たしたものの、まだ一度も日本の作品が賞を獲得できてはいません。次回のヴェネツィア映画祭を期待したいと思います。また、これらの作品が、今後きちんと日本でも体験できる場所があるのかが大きな課題です。良い作品を、ちゃんと良い環境で体験できる場所をなんとか作っていかなければなりません。
 

こういったVRとストーリーテリングでの表現方法はまだ始まったばかりです。きっと新しいクリエイターたちが、今後も私たちの想像もしない表現をVRで制作してくると思います。そんなクリエイターたちがたくさん出てくるようにまだまだ頑張っていかなければならないなと思いました。
 
※本記事の内容はあくまで私見に基づくものです。ご了承ください。



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