2026年5月15日、東京・大崎ブライトコアホールにて、 Japan XGRIDS Users Community 2026が開催されました。XGRIDSユーザーだけではなく建設/測量業の関係者、VR/デジタルツイン関係のクリエイターなど100人近い来場者が集まるなか、新型ハンディ3Dスキャナー「Lixel K2」の実機も展示。同機の運用によって、さらに生産性が高まるという期待を多くの人に伝える場となっていました。
広範囲+精細スキャンを同時に行えるLixel K2
Lixel K2は、XGRIDSが開発した業務向けハンディ3Dスキャナー。360度LiDAR・魚眼&高精細を組み合わせた3カメラ・RTKモジュールを一体化した本体重量約1,200gのコンパクトボディで、前モデルにあたるLixelKity K1(以下K1)の後継機にあたります。
大まかなスペックは下記のとおりです。
| Lixel K2 | |
| 本体重量 | 約1.2kg |
| LiDAR方式 | 360度・斜め配置 |
| スキャン距離 | 40m以上(反射率10%時) 100 m(カットオフ距離) |
| スキャン速度 | 200,000点/秒 |
| カメラ構成 | 魚眼パノラマ×2+前方固定カメラ×1(計3カメラ、有効画素数各4000×3000ピクセル) |
| RTK | 標準内蔵 |
| 相対精度 | 1cm |
| 絶対精度 | 3cm |
| リアルタイム動体除去 | あり(世界初) |
| ストレージ | 512GB eMMC |
LiDARセンサーの斜め配置で作業効率アップ
前機にあたるLixelKity K1はLiDARセンサー部が水平に取り付けられていました。そのため地面も含めた全方位スキャンを1回で行うためには、本体を前側に傾けて持つ必要がありました。
外観からLiDARのスキャン範囲が理解可能で、ハードウェアに対する解像度の高いオペレーターであれば、必要な傾け加減は一目瞭然。簡単に扱えます。しかしデジタルデバイスを使い慣れていない人はまっすぐに持ってしまい、LiDARによるスキャン範囲が狭まるという課題が生まれてしまいました。
そこでLixel K2はLiDARセンサーを斜め配置に変更。まっすぐに持ったとしても-7度の角度がつき、地面から上空までスキャンできます。
これは、単なるスペックアップではなく、オペレーションの改善に直結します。専門知識を持つ測量士やオペレーターを派遣しにくくても、現場スタッフによる問題の少ないスキャンが可能になるのですから。
前方固定カメラの追加——3DGSの細部描写が向上
LiDARに加え、両側面に魚眼レンズカメラ2基を備えているLixelKity K1は、点群、メッシュ、3D GS(ガウシアンスプラッティング)の制作が可能です。手軽に空間全体のスキャンが可能というメリットがありましたが、碑や看板、ポスターなどに記された細かいテキストや精細なディテールの再現など、細部の情報をスキャンするにはデジカメやスマートフォンで別途撮影を行い、データをに組み合わせるという手間が発生しました。
そこでLixel K2は50mm相当の中望遠レンズを持つカメラを追加。計3カメラ構成となり、1回のスキャンでフォトリアルな高解像画像も同時に取得可能になりました。これは3D GS生成時のディティール品質が向上するだけではなく、撮影中の時間経過によって太陽の角度が変わる・色温度が変化するという課題も解消しました。
従来はオプションだったRTKを標準搭載
スキャンした点群データに高精度な位置情報を持たせるには、GNSS(全球測位衛星システム。GPS、みちびきなど)による測位を行うRTK(Real Time Kinematic)が必要です。
LixelKity K1でRTKを使うには別売のモジュールが必要でしたが、Lixel K2にはRTKが本体に内蔵されており、コストパフォーマンスに優れています。
リアルタイム動体除去により現場での確認品質がアップ
そしてLixel K2最大の特徴は、リアルタイムな動的オブジェクト除去が可能なこと。常に人が行き交う観光地や往来といった公共の場では、スキャン中に通り過ぎた人物・車両・動物などが点群にノイズとして残留し、PCでポストプロダクションが必要でした。
Lixel K2はスキャン中に動体を検出・排除。スキャン完了直後にスマートフォンアプリで、カラー付き・ノイズ除去済みの点群プレビューが確認できるようになりました。
PCを用いたポストプロダクション後の完成品と比べれば8割相当のクオリティとのことですが、数時間待たねばチェックできなかったデータを現場で即座にチェックできることから、工程の歩留まりが改善するという期待が持てます。
ポストプロダクションソフトがメジャーアップデート
Lixel K2発売と同時リリースされた点群処理ソフトのLixelStudio 4.0は、Lixel K2との組み合わせでアライメント・レベリング精度が大幅に向上。マルチSLAMデータの統合がより安定し、ドリフトや不整合が減少するとのこと。ポストプロダクションはほぼワンクリックで実行可能で、クラウド共有やWEBブラウザ用データ/VR出力にも対応します。
XGRIDSの3Dスキャン技術はどのように活用されているのか?
XGRIDS JAPAN株式会社 Sales Director JP 伊井拓也氏による基調講演では、まず2026年4月に日本法人が設立されたことが紹介されました。日本市場では建設、測量、プラント、インフラ、映像制作、コンテンツ制作などで空間をデジタル化する需要が広がっており、XGRIDSは現場で使える3Dデータを誰でも扱いやすく提供することを目指しているとのことです。

同社の技術は、現実空間をLixel K2などのハンディ3Dスキャナで取得し、AIで高速処理し、各業種向けアプリケーションへ展開する流れで構成されます。従来の固定式レーザースキャナに比べ、ハンディスキャナとマルチSLAM技術により、現場での取得効率を向上。LiDAR SLAMに加え、ビジュアルSLAMやRTK情報を組み合わせることで、精度向上も図っています。
伊井氏によれば、K2は女性でも持てるほどの軽量スキャナでありながら、安定したエンジニアリング品質を実現しているとのこと。
![]()
またXGRIDS JAPAN株式会社 Technical Director JP 徐 帆氏のスピーチでは、海外での活用事例が紹介されました。
まずロボティクス分野では、AIやロボットが現実空間を理解するための学習基盤として、現実世界を高精度に再現した3Dデータの重要性が高まっているとのこと。具体的にはNVIDIAやTeslaが進めるフィジカルAIにおいて、大量の仮想シミュレーション学習が必要になっているそうです。
そこで中国・清華大学ではXGRIDSの3D GSデータを活用し、ロボットのシミュレーション学習を実施しています。現実に近いスケールや構造を持つデジタル空間上で、数千回規模のシミュレーションを行うサイクルを構築していると紹介しました。

映像制作・XR分野では、韓国の放送局SBSが建物やランドマークをスキャンし、Unreal Engineに取り込んで番組背景として利用しているそうです。リアルタイムレンダリングにより、実在しない空間演出をスタジオ内で実現しているのが特徴とのこと。アメリカのFOX Newsでは、歴史的ロケーションを再現するドキュメンタリー制作に採用されました。1〜2名のスタッフがハンディスキャナで12カ所を計測し、そのデータを大型スクリーンに投影することで、少人数かつ低コストで高品質な映像制作を行ったそうです。
徐氏は、「XGRIDSは、単に空間をスキャンするだけでなく、その先のシミュレーションやアプリケーション開発までを一気通貫でサポートすることを目指しています。今後も日本の皆様のご意見を伺いながら、製品とプラットフォームの改善を続けてまいります」ともコメントしていました。
株式会社アクティブリテック 第三営業部 デジタルツイン事業 営業マネージャー 野尻朋哉氏によるセッションでは、XGRIDS製品を日本市場で約1年半扱ってきた経験をもとにした活用事例が紹介されました。

新谷氏は、日本市場で起きた変化を3つに整理しました。1つ目は、専門技術者だけでなく現場担当者でも3Dキャプチャできるようになったこと。2つ目は、数日から1週間かかっていたスキャン・処理が、撮影から処理まで30分から1時間程度に短縮されたこと。3つ目は、屋外の広い敷地や街区全体のような広範囲スキャンが容易になったこと。

XGRIDS製品は日本市場で、まず測量・建設設計分野を中心に導入が進んでおり、据え置き型レーザースキャナーの代替や現況図・平面図・立面図の作成に使われています。また製造業では工場のレイアウト管理やデジタルツイン構築の領域で利用されているとのこと。XR・ゲーム分野ではMeta QuestやApple Vision Pro向けの3Dアセット制作や、VTuberライブ配信。大学では研究やデジタルアーカイブ、都市モデリングに活用されています。さらには鉄道、プラント、電力、自動車、不動産、テレビ放送など多方面にも広がっています。

共通しているのは、現実空間をフォトリアルな3Dデータとして取得し、CG、ゲームエンジン、VR/ARと組み合わせることで、従来より短時間かつ低コストで業務用データや空間コンテンツを作れる点です。
野尻氏は新しく登場したLixel K2の発売を機に、日本の3Dスキャン・モデリング市場は、ここからさらに新しく、かつ劇的に変化していくとコメントしていました。
「この技術を全く使わない人は、実は一人も存在しない」
株式会社ホロラボ 代表取締役 CEO 中村 薫氏がモデレートするディスカッションのテーマは、「XGRIDS製品はどのようなユーザーの道具になっていくか」「”現場がまるごと撮れる”が当たり前になっていく」「Lixel K2はどこまで広がるか」の3つです。まず1つめのテーマに、野尻氏が答えます。
野尻:正直なところ、この技術がどうしても刺さらない業界を強いて挙げるとすれば、インターネット上で完結するSaaSを提供するような、実物のアセットを持たない企業くらいではないかと思っていました。 しかし、そうした企業であっても、おしゃれでデザイン性の高いオフィスを構えているケースが多々あります。その自慢のオフィスをXGRIDSで高精度にスキャンし、オンラインの会社説明会などでバーチャルオフィスツアーとして求職者に見せる、という活用手法が成り立ちます。そう考えると、世の中に『この技術を全く使わない人』というのは、実は一人も存在しないのではないかと考えています。」
「”現場がまるごと撮れる”が当たり前になっていく」のお題に対し、伊井氏は属人的なスキルを持たない人でもある程度の測量が行えるメリットを話します。
伊井:「従来だと、簡単な調査でも測量士さんに依頼しなきゃいけないところがありました。しかし測量士さんのスケジュールに空きがなく、待つ期間が長いと建設が進められません。しかしXGRIDSのスキャナーがあれば、専門知識を知り尽くしたわけではない新入社員でも、最低限の現場調査ができるようになってきたんですよね。」
「Lixel K2はどこまで広がるか」という問いのなかには、他のXGRIDS製品とLixel K2をどう選び分けるか、使い分けるかの話題があり、ここについて徐氏が答えます。
徐:「まず(LiDARの有効距離が長いハイエンドモデル)Lixel L2 Proは、測量がメインの方が使われています。ハンディスキャナーとしてだけではなく、車載やドローンなどに搭載するモジュールも充実しています。(3D GS制作に適した)Portal Camはビジュアル性が強いコンテンツ制作に向いています。Lixel K2はまだハンディ3Dスキャナーを試したことがなく、さらに点群と3D GSの両方のデータが欲しいという方にお勧めできます。」
「3Dスキャン」という新たな職能
イベント会場では他にも、VRChatやclusterといったソーシャルVRプラットフォームで展開するバーチャルツインコンテンツを作るためのスキャナーとしても価値がある、という議論がありました。従来、VTuberライブ配信の背景や没入型XRコンテンツの空間素材は、フルCGで構築するか、複数のスキャナー機材や人員を導入して現実を取り込む必要がありましたが、Lixel K2なら小規模チームで現地に入り、短時間のスキャンで測量グレードの点群データと高品質な3DGSの両方を一度に取得できるメリットがあります。
一方で、扱いやすくなったからといって、誰が使っても同じ成果になるわけではありません。スキャン経路、光の環境、対象との距離などを理解しているかで、3D GSの見栄えや点群データの使いやすさには差が出ます。ハイクオリティな写真や動画の背景にカメラマンの技能があるように、空間スキャンにも撮影者としての技能が必要です。
今後、Lixel K2が現実空間をXRコンテンツで展開するフィールドカメラとして認知されるようになれば、このスキャナーが空間キャプチャを担う新しい職能の入口になる可能性があるのではないか、と感じます。












