Home » VTuber界を繋げる熱き男「天開司」を君は知っているか


VTuber 2019.12.15

VTuber界を繋げる熱き男「天開司」を君は知っているか

11月22日より、企画配信「ポケットモンスターソードシールド にじさんじ杯」が実施された。合計34名のライバーが参加し、当日の本放送は同時接続者数6万人超え、アーカイブの再生数は100万回超えという、VTuber史上トップクラスの視聴者数を叩きだす。ゲームサーバーの緊急メンテナンスにより日程を分割しての開催となったものの熱は衰えず、数々のドラマと伝説を生み出す配信となった。

この「にじさんじ杯」を企画するだけでなく、主催、実況、選手参加も行ったのが、にじさんじネットワーク所属のVTuber・天開司だ。エキサイティングな企画を立ち上げ、大人数をまとめあげるエンターテイナーである彼は、今年の2月から「プロVTuber」という勝負の大海に漕ぎ出したチャレンジャーでもある。今回はそんな天開司の魅力を紹介しよう。

エンタメ思考が生み出す数々の“悪魔的企画”

天開司は、2018年6月2日にデビューしたVTuber。2019年5月からはにじさんじネットワークに所属しサポートを受けているが、活動は基本的に個人運営で行っている。「バーチャル債務者youtuber」という名乗りのとおり、借金返済のためVTuber活動を行っているそうだ。自己紹介動画では「週に1回は顔を見せたい」と話しているが、2019年12月現在では生配信を中心にほぼ毎日活動を行っている。

天開司は「面白いことがしたい」「面白いことで人を楽しませたい」という生粋のエンターテイナー思考が特徴だ。それが作用してか、配信では趣向を凝らした一味違うことをしようと常に画策し「耐久企画」と呼ばれる長時間かつ劇的な企画が行われることもある。

例えば個人企画「進め!天波少年」シリーズでは、初回から「Vtuberはドン勝だけで生きていけるか?」という「PUBG」で1位を獲らないと食事ができない過酷なルールを設定していた。水や塩、ラムネといった最低限の栄養補給は行ったものの、最長で46時間40分の断食を敢行する結果となった。企画を発表した時の衝撃は凄まじく、本人も「悪魔的企画」と評するほど。流石にこたえたのか、以降の企画のルールには「飯は自由に喰う」と記載されるようになった。

https://www.youtube.com/watch?v=VIVwAEO0RQs

「天波少年」シリーズは以降も実施されており、「Vtuberはミラクル交換したポケモンだけで勝利できるか?」「Vtuberはワンナウツ契約で儲けられるか?」「Vtuberはサイコロで世界を救えるか?」など、厳しい縛りの中で活路を見出そうとする姿が魅力となっている。

スリリングな企画を実行するわりに、企画の中盤あたりでは「なんでこんな企画やってるんだ?」とやさぐれるのも見所のうちだ。一味違った企画を実行しつつ、ぼやきながらも奮闘し、素直に感情を露わにしてリアクションする姿は良い意味で人間臭い。落ち着いた声も相まって、天開司の配信は友達の家でくつろいでいるような居心地の良さがある。

一方、「くずのなつやすみ」や「ローンかえせよ どうぶつの森」といった、30分~1時間ほどの配信を毎朝実施する企画も存在する。こちらは長時間・高負荷の「耐久企画」とは真逆で、朝のルーティンのお供にラジオを聴くようなゆったりとした時間を楽しめる。

垣根を超えた数多くの人との繋がり

天開司は、高頻度で他のVTuberとのコラボ配信を行い、司会やまとめ役を多く担当している。コラボ相手は企業や個人などの垣根を感じさせないほど幅広く、数々の名コラボ配信を生み出してきた。

漫画をとことん語り合う「BANトーク」

「BANトーク」は、テーマとして挙げられる漫画を愛するVTuberが集い、思う存分トークをする企画。彼が特に愛好し、配信でもネタを使うことの多い「バキ」や「ジョジョの奇妙な冒険」「ワンピース」「スラムダンク」をテーマに実施された。

特に「バキ」をテーマとした「BANトーク」は2度開催され、2度目には皇牙サキ大空スバル加賀美ハヤトMonsterZ MATEコーサカアンジョー)が出演。BANトークでは大抵の場合未読枠の出演者がおり、原作を読んでいない視聴者への橋渡しも可能な構成となっている。VTuberたちが好きな漫画を少年少女のようにはしゃぎながら語り合う姿は視聴者にも伝播し、配信は大いに盛り上がった。

男性も楽しめる男性VTuberへ 「囚人組」コラボ

「囚人組」は、天開司・葛葉渋谷ハジメあっくん大魔王ピーナッツくんふくやマスターふぇありすの8人の集まりを指す。明確に結成されたグループというわけではなく、気心知れた男子VTuberたちの集まり、くらいの感覚だ。

配信中のやり取りも男子学生同士のそれに近く、女性VTuberが目立つVTuber界ではありそうでなかった独特な空気感が男女を問わず好評を博した。

女性VTuberが目立つ=男性ファンが比率として多くなるVTuber界隈で、天開司は「男性が見て楽しめる男性VTuber」の道を切り拓いた人物のひとりと言えるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=qDGmovIvovc

雪山から広がる「畳」の輪

人狼とサバイバル要素を組み合わせたようなゲーム「Project Winter」が、2019年6月ごろに流行した。天開司もコラボ配信に多数参加したが、ゲームプレイとは別の部分で話題をさらうこととなる。

笹木咲、叶、葛葉、リゼ・ヘルエスタらにじさんじライバーと共に参加した「Project Winter」コラボ配信にて、パスワード入力のためゲーム画面を一時的に消したつもりが、30分近く背景の畳とコメント欄のみが表示される配信を行ってしまう。

該当部分を切り抜いた動画(ニコニコ動画)が35万再生を突破し、ゲーム画面を映し忘れるミスを「畳」と呼ぶミームが定着するなど、VTuber界に大きく波及する結果となった。配信上のミスではあるが、天開司の配信でハプニングをも楽しむ土壌が育った証左と言えるかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=lSx76isH-wY

なんでもないやり取りが楽しい「おっさんV居酒屋」

「囚人組」を少しだけ大人向けに、いや“おっさん”向けにしたのが「おっさんV居酒屋」コラボだ。天開司、舞元啓介ジョー・力一、コーサカ、ベルモンド・バンデラス環右金といった男性VTuberが酒を飲みながら過ごすという内容である。語られるのは互いの近況や構想段階の企画であったり、とりとめのない話だったりと、まさに居酒屋的。仕切る人物は持ち回りで、そもそも飲み会であるため肩ひじを張る必要もない。自然体で友人と語らう天開司が見られる貴重な配信だ。

熱い心が存分に発揮されるTRPG配信

元々の趣味であるというTRPGの配信も多い。TRPGとはテーブルトーク・ロールプレイングゲームの略で、架空の人物を演じる=ロールプレイすることで物語を作るゲーム。ある種、VTuberと似た構造を持っており、TRPG配信が広まるごとに両者の相性の良さがだんだんと知られていくようになったと言えるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=08kdXT-F11c

天開司が特にプレイしているのは、異能バトルTRPG「ダブルクロス」と「クトゥルフ神話TRPG」の2つ。「ダブルクロス」配信は、自身がGM(ゲームマスター)を務めた「ダVルクロス」をはじめ、寧々寝あげはがGMを務めた「NNNクロス」、中村やにお氏(※「ダブルクロス」の一部ルールブックの制作に携わり、関連書籍も執筆している)がGMを務めた「やにおクロス」など多岐に渡る。

また「クトゥルフ神話TRPG」配信ではVTuberのみならず、むつー氏やテラゾー氏などのゲーム実況者とも卓を共にしている。彼が出演するTRPG配信では、天開司の秘めたる心の熱さが表れたロールプレイが見どころのひとつと言える。彼が好む少年漫画のような、熱血で王道の主人公的キャラクターは必見だ。

BANsメンバーとの友情

VTuberコミュニティ「BANs」の二代目筆頭としてBANsメンバーとコラボを行うことも多い。天開司とBANsは昔馴染みでもあり、兄弟姉妹でもあるような不思議な関係。常日頃から一緒なわけではないが、いざ集まった時の息の合ったやり取りや煽り合いはずっと見ていられるような懐かしさを感じさせる。

https://www.youtube.com/watch?v=TAPZuaw1wZM

BANsメンバーとコラボする配信は枚挙に暇がないが、BANsメンバーが同サーバーに集結する「BANクラ」や「7 days to BANs」が見始めやすいだろう。

心震えるバーチャルの夏「Vtuber甲子園」

天開司持ち前の企画力が現れた配信として「REALITY FESTIVAL 3」で実施された「Vtuber甲子園」が、間違いなく代表のひとつと言える。天開司がREALITY側へ持ち込んで協力を取りつけた本企画は、にじさんじの椎名唯華や舞元啓介、ホロライブの大空スバル、upd8の歌衣メイカという個性豊かな面子が、それぞれ所属・参加するグループのVTuberを「実況パワフルプロ野球2018」の選手キャラクターとして作成し、試合を行うというもの。

本人でなくとも、良く知っているVTuberと同じ名前・似た容姿のキャラクターが打席に経てば応援に熱が入る。各々の個人配信でのキャラ育成を見守ってきた視聴者にとっては尚更だ。YouTube・REALITYでサイマル配信が行われた試合は、REALITYの総来場者数14万人を突破するほどの大盛況だった。

また「Vtuber甲子園」では天開司は実況解説に回っているが、本企画の前身とも言える企画「実況パワフルクズ野球」では椎名唯華との対決を行っている。こちらの配信も、「Vtuber甲子園」に勝るとも劣らないドラマチックな展開で話題となった。

https://www.youtube.com/watch?v=DWBhGiRkJ8M

天開司とのコラボ配信を経て、彼の人当たりの良さについて言及するVTuberは多い。サングラスをかけた強面な容貌とは裏腹に、誰に対してもフラットな態度やきめ細かい気配りが出演者・ファンに伝わり、広い交友関係や企画の成功に繋がっているのだと思う。

「プロVTuber化」を決意、にじさんじネットワークへの加入

デビューから数々の交流や企画をこなしてきた天開司は、2019年2月に大きな決断を下す。

公開された動画「スラムBANク」は、漫画「スラムダンク」のパロディで、「BANs」のメンバーや元メンバーがアフレコを行っている。最後は「天開司、プロVTuber化決定」「お仕事お待ちしております」という挨拶で締めくくられている。プロVTuber化、つまり「専業VTuber」としてやっていくことがこの動画をもって発表された。

VTuber業界自体、まだまだはじまったばかりの世界である。そんな中で専業化を決意するのは相当な覚悟と愛が必要だろう。VTuber活動をする中で出会った楽しさ、仲間、VTuberそのものへの愛で、天開司は一歩を踏み出した。

さらに、2019年5月にはにじさんじネットワークにも加入。にじさんじネットワークは、にじさんじ運営のいちからよりVTuber活動上のサポートを受けられるサービスだ。にじさんじ所属ではなくあくまで個人での活動を行い、かつにじさんじメンバーとの交流もしやすいという立場は天開司にぴったりだろう。冒頭で紹介した「ポケットモンスターソードシールド にじさんじ杯」の開催にも繋がったと思われる。

外部出演増加、麻雀アプリの公認プレイヤーに

また同時期に外部出演も増加。元々天開司が好んで行っていた麻雀配信「天開司の神域麻雀」が運営の目に留まったのか、白上フブキとともにオンライン麻雀ゲーム「雀魂-じゃんたま-」の公式番組に出演している。番組内で雀魂公認プレイヤーとなった。

公認プレイヤーとなってからは、麻雀配信の頻度が増加。手堅いながらも国士無双などの撮れ高になりそうな手は貪欲に狙い、見るものを飽きさせない。

https://www.youtube.com/watch?v=glVqQwf-PYA

「神域麻雀」は、なんと東京ゲームショウにも出張。VTuber鴨神にゅうやプロ雀士の都美氏と共演し、会話回しや麻雀など八面六臂の活躍を見せた。

「歌うこと」への思い入れ そしてソロライブ実現へ

自己紹介動画でも語られたように、楽曲カバー動画も投稿している。少し掠れたような、それでいて耳に心地いい歌声は必聴だ。普段の配信と似ているようで違った天開司の一面を楽しめる。

また、天開司は花譜1stライブ「不可解」開催後の雑談配信で、花譜の歌に関する話とともに、自身の歌への想いを吐露している。

取り柄がないと感じていた中学生の自分がはじめて褒められたのが歌だったこと。音楽の道を志すも、なかなか上手くいかなかったこと。誉め言葉ばかりでない周囲にも悩み、歌そのものへの想いも複雑になっていく。花譜の歌が、そんな過去の自分に突き刺さったという。

感情が溢れる中で歌への想いを打ち明けた雑談配信から2か月後、天開司は新たな楽曲カバー動画「イージュー☆ライダー」を投稿する。

そしてついに11月6日、池袋のライブ劇場「harevutai」のオープニングフェス内にてソロライブが実現した。あわせて、オリジナル楽曲が製作中であることも明かされる。天開司の今後の活動は大型企画やゲーム実況のみならず、歌の方面にもさらに広がっていくに違いない。

天開司の魅力とは?

彼は大型企画を実現させてしまう実力とVTuber界でも随一の人脈の広さをもつ。しかし、天開司の一番の魅力は、それでも飾らない等身大の人柄にある。

時には酒に酔って管を巻いたり、ゲームの仕様や理不尽な偶然に憤慨したりする姿も包み隠さず見せていく。等身大の人間が工夫や努力を重ね、次々に大きなことを実現する姿に、人々は惹かれて集まってくるのだ。

2020年1月1日には、天開司がファンを公言している東雲めぐとのおせちコラボ配信を控えている。推しVTuberとともにはじめる縁起のいい2020年にどんな活躍を見せてくれるのか、期待が高まるばかりだ。

執筆:佐藤ホームズ

(参考)天開司 公式TwitterYouTubeチャンネル


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード