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Meta Quest 2020.02.27

【Oculus Quest】ハンドトラッキングでゲームは楽しめるか? 実践してみた

フェイスブックの一体型VRヘッドセットOculus Quest(オキュラス クエスト)に、ハンドトラッキング機能が実装されてから数か月が経過しました。

本機能はユーザーの手の動きでVR内の操作を行えるシステム。今はまだハンドコントローラーによる操作が主流ですが、その傾向を大きく変える可能性を秘めています。

現時点では、ハンドトラッキングで“公式に”操作できるのは、ホーム画面とOculus公式の一部アプリのみ。しかしサイドローディングアプリ「SideQuest」では、ハンドトラッキングに対応したゲーム(デモ)が、非公式ながら複数リリースされています。

本記事では同アプリでリリースされているハンドトラッキング対応ゲーム「Tea for God」「Interdimensional Matter」「Might of the Gods: Sun Shard」で、ハンドトラッキングの使い勝手は実際どうなのかを実践します。なお、今回紹介するタイトルは、いずれも無料でダウンロード可能です。

Tea for God

VOID ROOMことインディーゲームクリエイターのJarosław Ciupińs氏が開発を進めているローグライクのVRFPSです。2019年7月にQuest版がリリースされ、アップデートでハンドトラッキングに対応しました。

本作最大の特長は、VRヘッドセット側で設定したガーディアン(境界線)スペースに合せてマップが自動生成されるシステムです。固定のマップ(地形)内を移動していく通常のVRゲームとは異なり、プレイ中、ガーディアンの範囲外に身体が出てしまう心配は、ほぼありません。

「Tea for God」にはワープ移動が実装されておらず、プレイヤーは実際に身体を動かして移動する必要があります。しかしマップ生成システムのおかげで、プレイ中一度も周囲の家具や物に身体をぶつけることはありませんでした。

ハンドトラッキングの仕様は、コントローラーの各種操作をハンドジェスチャーによって代替する仕組みです。正直、この仕様には限界があると感じました。精度に問題があり、狙った動作がスムーズに行えない場合があるからです。


(ハンドジェスチャーの操作一覧。“指鉄砲”は上段の左から2番目)

また人の指の形によるかもしれませんが、銃を抜くために必要な“指鉄砲”のジェスチャーが、筋が痛くなるほど広げなければ認識されないのも難点。プレイ中やや苦痛が伴いました。現時点ではハンドコントローラーによる操作の方がより快適と思われます。

Interdimensional Matter

パズルゲーム風の作品で、Felix Herbst氏が制作しました。ゲームの流れは非常にシンプル。目の前に現れる黒いオブジェクトを、同時に出現する黄色いオブジェクトに入れます。完了ボタンを押せば次のステージに進めます。

本格的なゲームというよりは、ハンドトラッキングを試すための短編デモという雰囲気の作品です。実のところオブジェクトを収納しなくても、ボタンさえ押せばクリア扱いになります。


(“念力波”は手によって、それぞれ紫と緑で表示されます)

オブジェクトは、手から発せられる“念力波(フォース)”と、摘まむ動作で動かせます。念力は物体の近くに手を近づけて発動します。

オブジェクト同士の当たり判定に悩まされましたが(おそらく意図的な仕様)、操作自体はとても直感的でした。ハンドトラッキングもスムーズに動作してくれます。恐らくVRに触れたことがない人でも、簡単にプレイできるでしょう。シンプルな作風とハンドトラッキングが噛み合った好例といえます。


(後半のレベルは正攻法ではクリアできません)

Might of the Gods: Sun Shard

本作は巨大な神となり、迫ってくる怪物をなぎ払っていくゲームです。「SideQuest」で公開されているのはハンドトラッキングに対応したデモ版となります。

起動すると、ミニチュアの広場と小さな剣と宝箱、画面右側に3つのアイコンが表示されます。宝箱を開くとステージが始まり、小さなモンスターが大量に出現。剣にはライフが存在しており、モンスターに削りきられるとゲームオーバーです。プレイヤーは手の動きに加え、パワー(撃てる剣/ビーム)を使って、剣を守らなければなりません。

「Interdimensional Matter」と同様、非常にシンプルなゲームで、ハンドトラッキングもしっかりと機能しています。両手を振り回してモンスターをなぎ倒していくのは爽快でした。パワー選択の反応にやや感触の悪さがありましたが、トラッキングというより、アイコン側の判定の問題と思われます。

総評:今後の性能向上を期待

2020年2月現在、 ハンドトラッキングのVRゲームへの導入は簡単なゲームシステムなら問題ないが、複雑な(多くの)操作が要求される作品は難しいのが現状であると筆者は考えます。

ハンドジェスチャーによる操作も、煩雑さを考えると、細かい指の動きを必要としない、2~3パターンを仕込むのが限度でしょう。個人的な意見ですが、VRFPSなどの場合は、(ゲーム内の)腕部にハンドコンピューターを仕込んだり、身体の特定の場所を触ったりすると、操作を“分散”させることが、多くのコマンドを無理なく実装するための解決策になるかもしれません。

またQuest側についても、現在のハンドトラッキング機能では腕を伸ばすと、トラッキングが失われることが多いという難点があります。ゲームを問題なく遊ぶには、上記画像のように、腕を少し曲げた姿勢をキープする必要があります。フェイスブック側が同機能を正式に実装させるまでに、この問題を解消する必要があるでしょう。

現時点では、個人(インディー)クリエイターが作った作品が公開されている程度ですが、今後は各VRゲームスタジオや大手のゲーム企業などが、ハンドトラッキングを使ったVRゲームの在り方を本格的に模索していくはずです。“専門”のチームが、同機能の使い方をどのように見出しゲームに組み込んでいくのか、注目していきます。

執筆:いのうえ


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