アメリカ大手新聞社のニューヨーク・タイムズ社は、同社が配信するアプリ「The New York Times」の一部記事をARで配信しています。ARで配信される最新のニュースの中には、2018年6月に発生した、グアテマラのフエゴ火山噴火に関する報道も含まれています。
このARコンテンツはその場にいるかのようなリアルな情報を届ける一方で、AR配信の課題も浮き彫りにしています。
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700枚以上の写真を使ってコンテンツ制作
NYタイムズのアプリ(iOS/Android)を使い、読者は火山による被害をリアルに目にすることができます。3D画像を原寸大のサイズに切り替えることも可能です。
同誌のレポーターNiko Koppel氏は、「我々はこの災害による被害を、新しい方法で読者に伝えられると考えました。(ARによって)読者はまるで災害の現場に立っているかのように、報じられた事件や被害により迫ることができます」と話しています。
ARコンテンツに用いられたのは、噴火から5日後の6月8日、現地に住むカメラマンが撮影した727枚の写真です。Koppel氏は「カメラマンに、どうやって3D化用の写真を撮影すべきか教えました。つまり、後からソフトウェアで編集するために、あらゆる角度から被写体をとらえるということです」と説明しています。
噴火から16日後の配信が示す課題
ARコンテンツは6月19日、噴火発生から16日後に配信されました。死者150人以上というこの大規模な災害の残す爪痕を、読者にリアルに伝えるものとなっています。
しかしその一方で、ARを利用したニュース配信は、速報を伝えるにはまだ不向きである、という事実も示すことになりました。ツイッターであれば数秒、テレビであれば数時間。そして新聞なら数日内に報じるニュースを、2週間以上経ってから報道する、というのは不十分なように思われます。
2Dの写真を3D化し、ARコンテンツを制作する技術がより一般的になるまでは、残念ながらAR配信のペースは月刊誌並みにとどまりそうです。NYタイムズのAR配信開始から約半年が経過しましたが、この間わずか5つのARコンテンツしか公開されていません。この事実からも、速報に弱いというAR配信の課題がうかがえます。
(参考)Next Reality