国内でも高い認知度を誇るVTuberグループ「にじさんじ」。YouTubeチャンネル登録者が100万人を超えるVTuberが複数所属し、メディアへの露出も増えるなど、VTuber市場でも大きな存在へと成長しました。
にじさんじではこれまでいくつものプロモーション案件を受け持ってきましたが、その中にはVTuberと密接な関係を築き、ときには新たなムーブメントを生み出した例もあります。本記事では、にじさんじの中でも印象深いプロモーション活用事例をピックアップして紹介します。
志摩スペイン村
「志摩スペイン村」は、三重県にあるテーマパークです。スペインの異国情緒あふれる外観やサービス精神旺盛なパレードなど、もともと魅力的な場所でしたが、立地などの関係から、あまり来場者が訪れないことで知られていました。
このスペイン村の話題を配信で取り上げたのが周央サンゴさんです。人がいないことをイジりつつも、想像以上に美味しかったチュロスや、何度も繰り返されるテーマ曲のイントロなど、独自の視点でこのテーマパークの魅力を複数回に渡って語り続けていました。その内容を下に、ファンが切り抜き動画を作成。結果、YouTubeやX(旧Twitter)で大きく拡散され、志摩スペイン村の知名度に貢献しました。するとスペイン村側(※近畿日本鉄道会社のグループ会社にあたる株式会社 志摩スペイン村)も周央サンゴさんのことを認知し、スペイン村の村長にあたる影山豊社長がVTuberを調べ、「バーチャルアンバサダー」としてのコラボの打診が進みます。
\\みなさま〜(重大発表)‼️//
周央サンゴ × 志摩スペイン村
コラボイベント開催決定🎉🎉🎉期間中、ンゴちゃんが志摩スペイン村バーチャルアンバサダーに就任💞🦩
▼特設サイトhttps://t.co/L7ovByM6de#志摩スペインゴ村 pic.twitter.com/AMgVE0sekn
— 志摩スペイン村【公式】 (@SSV__official) December 27, 2022
1度目のコラボでは、志摩スペイン村らしい過剰なまでの大々的なPRが話題に。近畿日本鉄道の傘下のため、周辺地域の交通関連のキャンペーンも実施し、志摩周辺の地域振興のひとつになりました。
\\みなさま〜(重大発表)‼️//
周央サンゴ💞🦩
壱百満天原サロメ💯🦂
志摩スペイン村🇪🇸🥘💃🏻
コラボイベント開催決定🎉🎉🎉#志摩スペインサロメンゴ村 へ来て!ですわ〜!
▼特設サイトhttps://t.co/V1bPzX9AzD pic.twitter.com/RqDIGZIYe6— 志摩スペイン村【公式】 (@SSV__official) December 14, 2023
2度目のコラボでは、にじさんじでも特に勢いに乗るVTuber壱百満天原サロメさんと周央サンゴさんによるキャンペーンを実施。1度目のコラボで、志摩スペイン村自体の魅力が広がったことで、志摩スペイン村自体の魅力を知った来場者がコアファンになったことも相まって、長期旅行の観光地として認知が広がりました。
この一連の出来事は単なるコラボではなく、VTuber、企業、ファンが望むものがうまく組み合わさり、稀に見る成功例となりました。
ポイント
・志摩スペイン村の観光地としての魅力を、VTuber自身が咀嚼(そしゃく)したことで、クオリティが高いプレゼンテーションとなり、視聴者にその魅力が伝わった。
・志摩スペイン村側がVTuberをきっかけに訪れた新規層を取り込めるほど、大々的なPRを実施し、高評価を得た。
・コラボを長期間継続したことにより、コアファンが増加。にじさんじファンの聖地巡り的な場所となった。
にじさんじの地方自治体&地域振興プロモーションについて
このような地域と密接に関わったプロモーションは、スペイン村以外にも複数あります。
長野県小諸市では戌亥とこさんとのコラボとし、小諸市ゆかりの島崎藤村の詩「初恋」を楽曲化して発表しました。また、市の広報誌の表紙に、戌亥とこさんが描かれたことでも話題となりました。
人気番組企画「にじさんじのB級バラエティ(仮)」では、番組ロケで各地域の特産品を紹介してきました。さらに大型フェスイベント「にじさんじフェス」では、ステージに登場した蒸し牡蠣などを食品コーナーで販売。当日の参加者により、長蛇の列ができました。
J-1コラボ
にじさんじとサッカーのJ1クラブチームとのコラボは、3年間継続している息長いコラボのひとつです。各クラブチームにライバーが当てられ、それぞれクラブチームのユニフォームを着た姿のグッズが販売されました。
横浜F・マリノス 対 鹿島アントラーズ 戦を見に行きました
雨天の試合、前半の終盤から雨風が強くなり冷え込んで両チームとも厳しい条件下での試合だったと思います!
ハラハラする展開が続きましたがマリノス勝利!
会場の盛り上がりも凄くてとても楽しかったです!#にじJ1クラブコラボ #Jリーグ pic.twitter.com/9Nuj2b3S2o— レオス•ヴィンセント🥼🌱😺にじさんじ (@Leos_Vincent) March 18, 2023
わぁーん!!ホーム最終戦敗北ーー🥲🥲
あまり、ボールを持たせて貰えなかったねー
強かった‼️‼️‼️
みなさん、1年お疲れ様でした(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
またきまーす𖦹꒰˵• ﻌ •˵꒱𖦹𓂃𓈒💜🐻#sanfrecce #ぶちあつ!#サンフレッチェ pic.twitter.com/Da5qZ3pBzJ— 静凛💜 (@ShizuRin23) October 29, 2022
公式によるグッズなどの展開だけでなく、にじさんじライバー側が、観戦生配信を実施したり、実際に試合へ足を運んだりと、サッカーについて知ろうと前向きに動いたことが、ファンの好感度向上に一役買いました。Jリーグファン側も、にじさんじを知ろうという方向に動き、VTuberファンがJリーグを一緒に見るために動画配信サービスに加入したりと、サッカーファンとVTuberのお互いの歩み寄りによって、息長いコラボに繋がったと言えます。
FC東京担当の成瀬鳴さんは元々サッカー好きでしたが、このコラボをきっかけに、当時・FC東京所属だった渡邊凌磨選手とゲームを通じた交流が実現したケースもあります。2024年は各チームの担当ライバーが変更されましたが、その際、Jリーグファンやクラブチーム側からこれまでの担当ライバーへの感謝の声が届いており、双方が良い関係を築いてきたことが伺えます。
ポイント
・サッカーのコアファンに寄りそうようなライバーの活動(一緒に応援する)が、ポジティブな評価を得た。
・3年という継続的かつ長期のコラボによって、サッカーファンにも一次的なものではない認知が広がった。
にじさんじ甲子園
「にじさんじ甲子園」は、天開司さんが開催していた「VTuber甲子園」という実況パワフルプロ野球の対戦企画を、舞元啓介さんがにじさんじ内のイベントとして継承したものです。同時にパワプロの公式協力が発表され、優勝チームに報酬が与えられるなど全面バックアップ。以降、夏の定番イベントとして定着しています。
【🎊 にじさんじ甲子園開催決定!】
パワプロ2020様ご協力のもと「にじさんじ甲子園」が開催されます!!
にじさんじ球児たちのアツい夏を見逃すな!
ドラフト配信日 7/26(日)20:00~23:00
チーム作成期間 7/27(月)~8/9(日)甲子園開催日 8/14(金)~8/16(日)#にじさんじ甲子園 #パワプロ2020 pic.twitter.com/yfOpgQNXHt
— にじさんじ公式🌈🕒 (@nijisanji_app) July 22, 2020
年々、協賛するスポンサーが増え、KONAMIだけでなく、サードウェーブのPCブランド「GALLERIA」やドコモの携帯料金プラン「ahamo」なども参入。さらに、パワプロゲーム内の球場の看板に他PR企業の看板を掲示し、特定の看板にホームランボールが当たると景品(ゲーミングPC)がライバーに贈呈されるという、この企画のためのみのゲーム内実装も行われました。
何より、本企画を主催した舞元啓介さんのモチベーションが高く、このイベントを多くのファンに広めようと積極的に活動。第一回開催の際、運営スタッフが一部配信を有料イベントとして押し出そうとしたものの、舞元さん側が強く拒否し、誰でも見られるイベントとして継続したという経緯があります。また、第一回の時期がコロナ禍であり、開催されなかった甲子園をリスペクトする姿勢も高く評価されました。
プレイヤーとして参加しているライバーだけでなく、選手として名前を貸しているライバーも積極的に応援する姿勢を見せ、公式放送の同時視聴会が複数のチャンネルで実施されています。また、実際にはコラボしていなかったライバー同士が、甲子園を通してチームメイトとしての関係性が生まれ、国内外問わず現実のライバー関係に影響することもありました。
ポイント
・PRとして請け負った企画ではなく、「ライバーが主体的に楽しんでいるところに企業が協力する」というかたちになったため、出演者側の企画にかけるモチベーションが非常に高い。
・視聴者側はコラボ案件動画として視聴するのではなく、純粋に大型企画として楽しんでいる(有料イベントにしなかったことで、PRであるというイメージも薄まっている)。
にじさんじのゲーム系プロモーションについて
にじさんじでは任天堂やYoster、Hoyoverseなど、幅広いゲームメーカーとのコラボ案件が行われており、VTuberとゲームプロモーションの相性は良いとされています。また、「ポーカーチェイス」などのゲーム内に、にじさんじライバーがプレイアブルキャラクターとして実装された事例もあります。
また「信長の野望」では、他に例を見ないケースも。イブラヒムさんがライバーを戦国武将として登場させる企画「にじライバーの野望」を実施し、好評を博したことでコーエーとの公式コラボが実現。本人監修の独自シナリオがゲーム本編のDLCとして追加されました。
アパレル&化粧品関連
2Dもしくは3Dの姿で活動するため、一見するとVTuberと相性が悪そうな印象のアパレル&化粧品関連のプロモーションですが、にじさんじではライバーと絡めた積極的な取り組みが行われています。
アパレルWEBストア「ドットエスティ」の案件配信では、本人たちが選んだファッションコーデを披露。それぞれのファッションが好評を博し、ライバーがドットエスティと一緒にデザインしたファッションの販売が実現しました。
CyberZのアクセサリーブランド「Dinamis」では、東京駅/阪急大阪梅田駅の広告に、デビューした直後の「Idios」のメンバーを起用。その後も、ライバーをイメージしたコラボネイルを発表するなど、密接なイメージ戦略を打ち出しています。
他にも、香水の定期便「カラリア」、スキンケアブランド「アンレーベルラボ」、クレンジングスキンケアブランド「パーフェクトワン」など、幅広く実施しています。
にじさんじはVTuber事務所の中で女性視聴者率が比較的高く(※2023年4月期:男女比率:男性60%、女性40%)、ファッションやコスメなどへの関心が高いことも、上記のプロモーションの多さと関係していると言えます。「好きなVTuberのアイテムを身にまといたい」というファンに人気です。にじフェスなどのリアルイベントでは、そういったファッションアイテムを身に着けて訪れる参加者(特に若年の女性層)も多く見られます。
ポイント
・全般的にVTuberたちの衣装や色合いをイメージしたり、本人たちのアイテムを再現した商品が多い(衣服、香水など)。
・好きなVTuberのアイテムを身にまといたい層をターゲットとしてプロモーションをしている。
その他:意外なコラボや特殊な企画で話題になる例も
単発の商品プロモーション企画の場合、にじさんじでは、これまであまり関係性のなかったライバー同士がコラボし、話題になる例があります。近年で大きな話題となったのは、椎名唯華さんと社築さんは「neruco」のマットレス体験配信です。これまで特に親しいというイメージのなかった2名に、意外な距離の近さが見られたことから、ファンの間で好評となり、結果としてスカパーや二度目のマットレス案件などに繋がっています。
また、ライバー側が特定の商品やコンテンツに強い関心を寄せていたがゆえに始動した企画も少なくありません。例えば、月ノ美兎さんの強い要望で実現した、リアル脱出ゲーム×にじさんじ「次元交わる学級会からの脱出」では、理想の脱出ゲームの企画書を配信しています。
にじさんじでは、ライバーの自主性の発揮された企画が話題になることが多く、YouTuber・インフルエンサーのようなかたちで注目を集めている点も特徴的です。そのため、デビューからの念願の夢として、特定のコンテンツや商品とのコラボを掲げるライバーも多く、それまでの下積みを応援するファンの応援も相まって、一般的なプロモーション以上に「コラボの達成」を喜ぶ傾向があります。そういったストーリーラインが、ファン側から可視化されやすいことも見過ごせないポイントと言えるでしょう。
まとめ:プロモーション施策の長期化
にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社の「2024年4月期第3四半期決算資料」によれば、プロモーションの売上高は、40億4900万円で、前年の23億400万円から大幅に上昇。同年のLive Streamingによる売上高(※YouTube収益など)の49億4700万円と比較しても、ANYCOLOR株式会社の重要な収益源となっていることが分かります(最も高い売上高となっているのは、コマース売上高で、142億1300万円です)。※決算資料より引用
今回、特徴的なプロモーション事例を探る中で、大きな共通項として言えることは、ライバー側のモチベーションが高く、自発的な企画を他企業と連動しながら上手く成功させた事例については、単発の企画に収まらず、長期的な企画として息長く続く傾向があることです。ライバーと企業が相互に手を取り合い、距離感を近づけるような施策を長期的かつ地道に行っていくことが、スペイン村やJリーグなどの大型施策の成功につながったと言えそうです。そこには、リアルタイムに活動スタイルを更新しながら、個人の成長する姿を見せるにじさんじライバーの配信スタイルと相性の良さも関係しているのかもしれません。今後も、MoguLive編集部ではVTuberの特徴的なプロモーション事例について深く掘り下げて紹介していきます。








