Home » 「にじさんじフェス2022」を振り返る 幕張メッセ会場に「VTuberがいる」という感触


VTuber 2022.10.14

「にじさんじフェス2022」を振り返る 幕張メッセ会場に「VTuberがいる」という感触

10月1日(土)と2日(日)の2日間、幕張メッセで開催された「にじさんじフェス 2022」。会場規模やVTuberの参加人数を考慮すると過去最大級の企画で、それだけに非常に多くの参加者の姿が見られた。

正確な動員数は未だ発表されていないが、現場を2日間実際に巡った限りでは、参加者の多くが10代〜20代の若年層で、女性の姿が特に多かった印象だ。

実際のところ、現地では何が展示され、どういった企画があったのか、また参加者は何に熱い視線を向けていたのかについて振り返っていく。

「VTuberが幕張メッセにいる」という感触

今回のフェスの何よりの特徴は「VTuber本人が現場にいる」という感触を参加者に強く与えてくれたところだろう。例えば、演劇やライブの事前、幕の上がらないステージの袖の方から「いくぞ!」や「おおっ!」という本人たちの生の掛け声が漏れ聞こえてきた。まだ本番が始まっていないにも関わらず、掛け声に驚き、拍手を送るファンは非常に多かった。そこで「ここから始まるのは本当に本人たちが現場で見せるライブなんだ」と気を引き締めたファンも少なくなかっただろう。

もちろん「バーチャルな存在は場所を選ばずに活動できるのが利点なのだから、どこから発信しても体験価値自体は変わらない」という価値観もある。しかし「にじさんじ」に関しては「(VTuberが)この姿のまま、こう生きている」という、日常での実在感が大切なコンセプトのひとつとなっているので「現場に本人たちがいるという感触を観客に与える」ことは特に重要だったと考えられる。

その「現場にいる」という感触は会場の展示でも確かめられた。ホール内のメッセージフラグや美術部ブースなど、各所にはライバーたちの直筆の落書きがあり、現地でなければ書けないようなメッセージなども見られたのだ。それについて、リアルタイムの放送やTwitterで「〇〇という場所に〇〇というメッセージを書き残した」といった報告を本人たちが上げており、その報告をきっかけにメッセージを確かめに行くといったファンの数も多かった。


(樋口楓の私服展示。多くのファンが驚いていた)


(月ノ美兎の自宅にあるマネキン像。配信などでも度々話題となっている)

またVTuberの私物展示を見られるブースも面白い試みだったと言える。私服や小物、自作した食べ物のナンまでそろっており、本人たちの配信外での様子を垣間見られる内容となっていた。このような展示の工夫に「(人の不在の時間ではあるが)本人たちが確かにそこにいるんだ(orいたんだ)」と感動した観客も多いだろう。まさに現地に行ったからこそ得られる特別な体験価値だった。

文化祭らしさを印象づける展示づくり

もうひとつ特徴的だったのは「学校の文化祭」的なコンセプトを企画の展示の前面に出していたところだ。映像の流れるガーデンステージの上部には、学校の時計台のような建築物が設置され、ステージ両端には教室を模したブースがある。参加者は入口から進むと、遠くにある時計台の校舎を見ながら、お目当ての教室(展示ブース)を観覧していく……といった構成となっている。


(ヤン ナリが配信で完成させた「にじさんじ」全員集合の一枚絵)


(黒井しば制作の「いぬ」の彫刻)

展示ブースにも文化祭の雰囲気はあり、「美術部」などにはVTuberたちの作成したイラストや書道作品、絵葉書、彫刻などが飾られている。「にじさんじ」では絵や文字などの表現に秀でた才能を持つ者も多く、それぞれの力作が間近で見られるのは、ファンにとって嬉しいところだろう。なかには作品を制作すること自体が珍しいVTuberのものもあり、その点でも見応えがあった。

有料イベントでも、ライバーがフェス用の特別Tシャツを着た姿で登場したところも文化祭らしい。言い換えれば、全体的に手作り感があり、出演者たちが土台の部分からフェスづくりに関わっているかのように思えてくる。実際、終了後の打ち上げ話を聞いてみると、演劇プログラムや特別授業などは、本人たちが率先して動いていた部分も多かったようだ。VTuber側が受け身ではなく積極的にフェスに関わったという部分が見られたところも、良かったポイントとして挙げられるだろう。

オンラインとオフラインの活用術

今回のイベントでは、同時間帯に複数の場所で企画やイベントが開かれているので、2日で全てを見て回ることは現実的に不可能になっている。その分、YouTubeでのリアルタイム生配信が充実しており、有料配信や一部の事前告知された配信を除いて、ほとんどの生配信のアーカイブが残されている。

そのため自分が体験できなかったイベントは後から確認できるのも特徴だった。実際、参加者は空き時間に会場外側の休憩スペースでスマートフォンを開き、オンラインで生配信を視聴する人も少なくなかったと思う。またYouTubeで誰がどのイベントに出演しているのかを確認しながら現地を巡る人も見られた。


(長蛇の列が途切れなかったローションカーリング)

また、このオンライン配信の充実ぶりは、食事ブースや体験型アトラクションの列に並んでいた人ほど嬉しいものだったかもしれない。なぜなら今回の各ブースはどこも非常に長蛇の列ができており、昼頃はどこも60分以上待ちという状態となっていたからだ。スマホで配信を横目に見つつ、待機時間を耐えたという人もいただろう。

今後の期待できるポイントは?

にじさんじの今回のフェスはもちろんのこと、今年はホロライブの「hololive SUPER EXPO 2022」や花譜の武道館ライブ「不可解参(狂)」など、VTuberの大型イベントが多く開催されている。その背景には、各企業がコロナ禍の中でも開催できるような対応策をしっかり取れるようになったこと、VTuber文化全体の規模が急速に拡大したこと等があるだろう。そもそも、ひとつのVTuber事務所だけで幕張メッセ規模のイベントを打ち立てられるようになったという事実自体が驚かされるものであるはずだ。

また、この規模のイベントで大きなトラブルや混乱がなく、無事終了まで進行されたことも見過ごせない事実だ。その裏にはVTuber本人たちを含む多くの会場関係者たちの、想像できないほどの努力が結実したからこそ達成できたものだと想像がつく。こういったケースが積み重なっていけば、VTuber文化全体で実現できる試みの幅は大きく広がることになるだろう。そういった意味でも「にじさんじフェス 2022」が達成したことは非常に大きいものだ。

「にじさんじ」の次の一手には何が来るのか、今はただそのことばかりが気になっている。

公式サイトはこちら。
にじさんじフェス 2022 (nijisanji.jp)

撮影:けいろー
執筆:ゆりいか


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード