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企業動向 2024.11.05

Nianticが新プロジェクト「Niantic Park」、専用3Dスキャナーを使いデータ化、公園でのAR体験を加速

Nianticは、11月1日に新たなプロジェクト「Niantic Park」を明らかにしました。東京都にある都立明治公園を運営するTokyo Legacy Parks株式会社と戦略的パートナーシップを締結。公園におけるAR体験を拡充し、デジタルの力で公園の魅力をさらに高めることを目的としています。


(Niantic Parkのロゴ。「AR」の文字が隠れている)

Nianticは「ポケモンGO」「モンスターハンターNOW」など位置情報を使った人気スマートフォンゲームを複数展開しています。また、3Dスキャンアプリ「Scaniverse」やARアプリ制作ツール「ARDK」、WebXR制作ツール「Niantic Studio」など、ARを実現するための要素技術から開発者向けの各種ツールなど、物理世界にデジタルを重ねる体験の実現に向けて様々な取組を行なっています。

今回発表された「Niantic Park」は、Scaniverseのスキャン技術を用いた専用デバイスで、特定の場所の高精度な3Dスキャン(Gausian Splattingによる点群生成)を行うというもの。Niantic自身が詳細な3Dマップを作成し、画像を利用して位置情報を生成する技術「Visual Positioning System(VPS)」を活用します。これにより、公園内の正確な場所に結びついたAR体験やサービスが作成ができるようになります。


(今回、初めて発表されたNianticのオリジナルスキャナー「Photon」。まだ日本国内にはないが、2024年中には到着し、公園の3Dスキャンを完了させる予定とのこと)

この試みのパートナーとして選ばれたのが、東京都と東京建物らが共同運営するTokyo Legacy Parksであり、場所としては新国立競技場の前庭に位置する「都立明治公園」です。

発表に合わせて開催されたプレス向けの記者会見では、Nianticと東京建物、Tokyo Legacy Parksがパートナーシップについて説明、メディアからの質疑に応じました。

都立明治公園は、公園の管理を行政と民間が協働して行う公募設置管理制度(Park-PFI)を活用した公園です。これまで、公園は行政の運営するものがほとんどでしたが、今後は20年間の維持管理を官民協働で行うとのこと。Niantic Parkとのパートナーシップは「都市公園の可能性を広げるデジタルレイヤーの試み」(Tokyo Legacy Parks株式会社 代表取締役 川治 利夫氏)と説明されています。現実空間が重視される公園での体験をARで拡張することに意欲的です。

なお、取得するデータは主に屋外。屋内は東京建物が管理するサウナ施設などのテナントをスキャンするかもしれない(Tokyo Legacy Parks株式会社 取締役 黒田 敏氏)とのこと。

Nainticは、公園の3Dデータを活用し、「Nianticの既存のゲーム『Ingress』『Pokémon GO』『Pikmin Bloom』『Peridot』『モンスターハンターNow』を通した体験を含め、都立明治公園を来園者が新しい方法で公園を探索し、特別な体験ができる場所にもしていきたい」(株式会社Niantic 代表取締役社長 村井説人氏)といった話も。Niantic自身が展開するゲームでも新しいコンテンツが展開されるだけでなく、ARDK・Niantic Studioを通じて、データを解放し、。

開発者らが公園で体験できるデジタルコンテンツを公開できるようにするとのこと。サードパーティによるAR体験が増えていくことにも期待しています。


(Ingressで都立明治公園をテーマにしたポイントの例)

Nianticの村井氏は、今回公園を選んだ理由や、「Niantic Park」がこれまでのNianticの各種コンテンツやツールとの違いを語りました。「大きなポイントは、普通の民間の場所ではなく、公園であるという点です。非常に大きくて不特定多数の方が自由に集まれるパブリックなスペースです。そこに特殊な技術が加わると何が起きるのか、チャレンジしたい」。

Nianticは、すでにScaniverse上でマップ機能を搭載しており、さらに「ポケモンGO」や「Ingress」にはユーザーによる3Dスキャンをゲーム要素として組み込んでいます。すでに「世界の3Dマッピング」を進めている中で、今回の高精度な3Dマップデータはどういった扱いになるのでしょうか。

「いまScaniverseやポケモンGO、Ingressで3Dスキャンを行なって、すごい量の3Dデータが蓄積しています。これらは点でして、さらに増えることでエリアになり、さらに面になっていきます。まさに、この面の部分をどう作っていくかをやっていきたいと考えています。今回はそもそも公園というエリアを高精度にとることになり、面を提供します」(村井氏)、個人ユーザーの作った点をつなげるボトムアップの3Dマッピングと、高精度な3️Dスキャンによる3Dマッピングの両方のアプローチを組み合わせ、今後は世界の3Dマッピングを進める構想のようです。

まだ滑り出したばかりのこのプロジェクト。ユーザー数が非常に多いNianticのゲームだけでなく、サードパーティの様々なプレイヤーによるコンテンツが溢れることに期待したいところ。コンテンツの配信方法が開発者任せになると、せっかく共通の明治公園のコンテンツでも散在してしまいます。「現時点では明確にお伝えできないが、サイトでの整理やポータルのようなものは今後作られるべきだと思っている」(村井氏)とのこと。

現実とデジタルの体験を軸として公園を盛り上げる取組。都立明治公園は実験フィールドとしてチャレンジすることになる。その今後に注目したい。


(左から、Tokyo Legacy Parks株式会社 取締役の黒田 敏氏、同代表取締役の川治 利夫氏、株式会社Niantic 代表取締役社長 村井説人氏、川治氏と黒田氏は東京建物株式会社の新規事業開発部との兼務)


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