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VRChat 2024.10.15

コミュニケーションでつまづいた人を救う場所「NAGiSA」制作者・エンジンかずみの考える、VRChatで長く遊んでもらう方法


[日本人向け 1対1お話しワールド NAGiSA [JP] – VRChat]

最近になってVRChatでメニューからワールド一覧を開いたところに、日本人向けの「初めてにおすすめ!」という項目が追加された。購入可能なアバターが大量に並んでいる「AvatarMuseum10」やVRChatの基礎基本を学べる「[JP]Tutorial World」のような老舗のワールドが並ぶ中、常に人であふれているワールドとして「日本人向け1対1お話しワールド NAGiSA」という場所が登録されている。公開されたのが2024年の6月であることを考えると、今並んでいるラインナップの中では新しい部類だ。

中に入るとランダムでマッチングが行われ、VRChatユーザー同士1対1の会話が楽しめるようになっている。5分経つと自動的にシャッフルされ、別の人と対面することになる。何度も「はじめまして」と挨拶を重ねていき、ときには友人となるような出会いも経験できるのが特徴だ。

このシステムが大いにウケて、今では常時3桁以上の人が遊んでいる。同時接続者数百人(※上限30人の部屋が複数個別に立ち上げっている状況)になるのも当たり前なほどの人気ワールドだ。

このワールドを制作したのはエンジンかずみ。VTuberとして2018年から活動を続けており、最近ではVRChatで遊んでいる人に次々とインタビューを実施してVRChatの人たちの現状の統計を取ったり、普段のお仕事についての話を聞き出したりしている。

「NAGiSA」はその使いやすさと偶然性から、VRChatを紹介するVTuberやストリーマーにも愛用されている。中でも、人気Twichストリーマーのスタンミが一般ユーザーの宇宙人トコロバに偶然この場所で出会い、友情のドラマを繰り広げたことは大きな話題になった。

今回は、エンジンかずみに「NAGiSA」がどのような設計思想から生まれたのかについて、またVTuberとしてVRChatで活動している現在について話を伺った。


インタビューは「ポピー横丁-Poppy Street-」で実施。写真左は著者(たまごまご)

NAGiSAが1対1で5分の会話システムになった理由

――今はVRChatの動画で主に活動されていますが、もともと、エンジンかずみさんが過去によく投稿されていた物理エンジンを活用した動画群はすごく面白くて、よく拝見していました。

以前、強化学習(※コンピュータに特定のデータを学習させる手法)で車を走らせた動画を作ったことがあるんですけど、それが「この動画がすごい!」(※たまごまご連載のMoguLive記事)に取り上げられたんですよね。昔、1回 『イナズマイレブン』の再現動画がバズったあと、長く厳しい時代が続いていたので、記事に取り上げてもらったことで「ああ、今でも見てる人いるんだ」と、嬉しかった記憶があります。

――今はVRChatでの活動を主軸とされていますが、普段はどのぐらいの頻度でVRChatに入っているのですか?

ほぼ毎日入っています。忙しくても大体1時間ぐらい友達としゃべっています。

――現在、ご自身の制作されたVRChatのワールドの「NAGiSA」が大盛況ですが、反応や感想は見ておられますか?

結構見てますね。「NAGiSAのおかげでVRChatを続けられた、なかったらやめてたかもしれない」といった感想をいただいたりもしました。今は、初心者の方が多い印象です。というのも「NAGiSA」以前にあったVRChatの交流ワールドでは、すでにプレイヤー同士の交流が深まり、コミュニティができていて、「相手に気安くしゃべりかけられない」とか「グループに入っていけない」っていうケースが見られました。その点、「NAGiSA」では自動で人と1対1で割り当てられますし、話したい人が集まってくるから、初心者の方が参加しやすいのかもしれません。

――初心者ユーザーに与えた影響が大きいですね……そもそも、1対1形式にしたのはなぜですか?

たとえば、ひとつの場所に3人とか4人が集まる形式だと、しゃべれなくなる人が出てきやすいと思ったからです。それに、既存の5人くらい集まってるコミュニティをバラバラにしてみようっていう目的もありました。友達グループの輪の中に入れない人でも、1人ずつ対面だったら話せる場合もあるじゃないですか。僕もグループの中での会話があんまり好きじゃなくて、複数人の会話に参加していると「あれ、これ自分がいなくてもいいんじゃね?」と感じて帰りたくなっちゃうんですよね。また、1対1の方がお互いに深い話もできるかなとも思いました。まあ「NAGiSA」は時間が5分なんで、そこまで深いところまでにはいけないですけど、ちょっとは踏み込んだ話ができるかなって。

――なぜ5分という制限を設けたのですか?

ワールドを作っている最中に、配信しながら視聴者と一緒にデバッグしていたんですよ。「今から実験やるから、来て!」って呼びかけて、30人ぐらいに手伝ってもらっていました。その中で、「今日は時間設定を2分でやってみよう」って実験してみたら、視聴者から「2,3分は短いよね」と反応をもらって。それでいろんな時間を試してみたんです。結果、「5分がちょうどいいんじゃない」っていうフィードバックをいただいて、今の設定に落ち着きました。

――僕も「NAGiSA」に頻繁に通っています。5分だと会話が盛り上がって「もっと話したい」っていうタイミングでシュって終わる。それくらいの感覚がすごく好きです。

逆にあんまり長すぎても、会話が噛み合わない人とマッチングしてしまったときに、10分とか20分の時間を一緒に過ごすのはきついかなと。5分だったらちょっと話の合わない人でも、「あともう少しでバイバイだしな」みたいに気持ちを割り切れますよね。

ーー「NAGiSA」は利用者のマナーがいいという評判も、よく聞きますね。

今まで荒らし行為を仕掛ける人を、VRChat内でたくさん見てきたんですけど、ただ、その人たちを見て思ったのは、やっぱり「自分が目立ちたい!」って人が多いんです。そうなると、相手が1人しかいない「NAGiSA」では、そんな目立てないじゃないですか。そういう意味で(荒らし側には)うまみがない、他のユーザーたちの反応が見られないんで、「NAGiSA」にはあんまりいないのかなと感じますね。

――なるほど、相手を嫌がらせたいわけじゃないんですね。

自分が変なことをして、相手が「最悪!」って反応をくれるのが好きなんじゃないかなって。そうやって、自分が誰かに影響を与えているのを見たいんだと思うので、(「NAGiSA」では)つまんないんじゃないかなって思いますね。ただ、ラインを越えるようないたずらをしてくる人が全くいないわけではないです。なので自己防衛はしておいたほうがいいですね。アバターオーディオ(※アバターから鳴る音のこと。ボイスやワールドの音と別なのでびっくりする初心者は多い)を爆音で鳴らす人がいるので、マッチング前にアバターカリング(※相手が表示される距離のこと)を10mに調整しておくとか。「NAGiSA」の入口に書いてあることを守っていれば、基本的に視界ジャック(※画面にないものを個々の視界に映し出す行為。映像演出として使用されるが、悪用すると無理やりホラー映像を見せるなど迷惑行為につながる)などの荒らし行為の影響は受けないはずです。

――そういったユーザーへの気遣いを考えるようになったきっかけはありましたか?

自分がVRChatでのインタビュー企画を動画で投稿するようになってから、本当にいろんな人に何百人も関わってきたからですね。そもそも「NAGiSA」のアイデアも、パブリックワールドでインタビューしていく中で、誰にも話しかけられなくて、VRChatをやめちゃう人がいることに気づいたからです。荒らしについても、例えば、人の集まるワールドで視界ジャックをされても、僕は「またかー」という反応だけですませられますが、本当に嫌だと思う人もいるので、そこはやっぱりケアしてあげないとって思いますね。

――このワールドを公開後も継続的に管理しているのは、ユーザーのためという気持ちなんでしょうか?

VRChatに定住して欲しいんです。今はクローズドベータの状態ですが、初心者案内のサービスを作っていまして、それは初心者にVRChatを案内してくれる人と、誰かに案内されたい初心者をマッチングさせるためのサービスなんです。VRChatに入りたての頃に、初心者案内を受けられるかどうかって結構運なんです。パブリックワールドに行っても、誰からも話しかけてもらえなくて、そのままやめちゃう人もいるので、そこを解決したいなって感じです。VRChatを面白いコンテンツとして提唱していきたいというのが根底にありますね。

――そもそも、プラットフォームとしてVRChatはいい場所だと思いますか?

プラットフォームというかサービスとしていいなって思いますね。そもそもVRがめちゃくちゃ好きだったんですよ。昔は自分で放送するときにバーチャルキャストをよく使っていたんです。2020年ぐらいまでは、VRChatはまだUdon(※VRChatのSDK3から追加された、ギミック作成の際に使うプログラミング言語のこと)がなかったんですが、バーチャルキャストは「Lua.」っていうスクリプト言語を使えたんですよ。それを使って、いろんなギミックを作れっていたんですけど、VRChatが「Udon Sharp」(※UdonでC#風に書くことができるプログラミング言語のこと)を出してから、結構自由度が高くなって、いいなと思うようになりました。

――クリエイター志向の人に合うプラットフォームになったってことですね。

そこを差し置いても、VRSNSのいいところは、小学生の放課後のような感じで気軽に誰かと集まれるところじゃないですか。社会人になってくるとなかなか「明日遊ばない?」って簡単に約束できないので。それがVRになることで解決されて、友達もできやすいのは、いいですね。

「NAGiSA」が起こしたゲームチェンジ

――「NAGiSA」を訪れた新規のユーザーの方々にはインタビューをされましたか?

しましたね。今はスタンミさんのVRChat体験配信の切り抜き動画がすごくバズった影響で、ある程度VRChatの様子をイメージしながら「NAGiSA」に入ってくれる人が多いと思います。個人的に感じたのは、最近入ってきたユーザーさんは、アバター改変をはじめるのがやたら早いことですね。自分でUnityを勉強している人もいるんですけど、周りの人から教えてもらったという人が結構多くて。スタンミさんの影響で始めた人は友達を作るのが早くて、コミュニケーション能力の高い人が多いのかな? と勝手な考察をしてましたね。

――スタンミさんの配信に「NAGiSA」が使われたときはどう思いましたか?

スタンミさんの配信が終わった後ぐらいに、知り合いからDMがむちゃくちゃ来てたんですよ。「『NAGiSA』が出てるよ!」みたいな。単純に、嬉しかったですね。

――他にも「NAGiSA」を使っているストリーマーさんも増えましたね。

VRChatのパブリックでインタビューするにあたっての、一種のゲームチェンジが起こったんじゃないかと思うんです。今までは配信者がパブリックワールドで「今撮影をやってるんですけど、インタビューしてもいいですか?」って聞いていたわけですよ。いきなり知らない人にそんなこと聞くのって怖いじゃないですか。でも「NAGiSA」だったら1対1なので、許可取りが楽なんです。あとVRChatで撮影していると、ワールドに複数人いると音が混ざっちゃったり途切れちゃったりしがちなんですよね。そういう心配もないので、「NAGiSA」はVRChatのパブリックインタビューの敷居をかなり下げたのかなって思っていますね。

――VRChatでの活動を、NAGiSAでのインタビューから始めるストリーマーさんも多いですね。

ワールド制作者としての自分はそれでいいんですけど、YouTuberとしての自分としてはそれで競合が増えたって言い方もできるわけで(笑)。いろんな人がやりはじめたら、見る人も分散するんで、自分で自分の首を絞めているかもしれないです。ちょっと頑張らないといけないなーと思っています(笑)。

――エンジンかずみさんがテーマ性を持ってVRChatインタビューを始めたのはなぜですか?

それは物理演算動画シリーズをやめた理由にも繋がってくるんです。元々Unityの物理演算を使って、マンガやアニメの必殺技を再現する動画をやっていたんですが、去年の2月くらいから活動を再開して、最初は200再生とか300再生だったんです。そこから『ブルーロック』っていうアニメを題材に「原作のようなスピードは出せるのか」などを物理的に検証する動画をアップしたら、30万再生まで伸びたので「活動再開して、ここまで伸びるなんて自分天才じゃん!」みたいなことを思ったんですよね。そしたら1ヶ月後とか2ヶ月後ぐらいに、流行りのアニメじゃなくて自分の好きなもの、『イナズマイレブン』や『ドラベース』など、昔のアニメの再現をした動画を投稿したら、再生数2000くらいまで下がっちゃって。

――なるほど、『ブルーロック』のファンの方が見ていたから、他の再現動画はあまり話題にならなかったと。

別に僕の動画のファンになってくれたわけじゃなかったんだって思ったんです。じゃあ生き残っていくためには、そのまま流行りのアニメをずっと追い続けて、それを物理演算で検証していくしかないのかな……と考えたときに、それは結構しんどいと思って。そんなとき、たまたまVRChatでの生放送で中国の方に「中国でもお砂糖って文化はあるの?」ってV、インタビューしたんです。そしたら「たまにやっている人がいるよ」と回答を聞けたので「『日本人にお砂糖の経験ありますか?』って100人に聞いて統計取ったら、面白いかもな」と思って、最初の企画を立てました。インタビュー相手に5個ぐらい質問して、それぞれをまとめて動画に出す形式にしたんです。

――VRChatの中で100人に質問するのは、ものすごく大変ですよね。

めちゃくちゃ大変でしたよ。インタビューするだけでも1週間かかるし、インタビューしたものを一旦EXCELシートにまとめるんですよ。それを見ながら「じゃあこの人のパートはここの動画で使おう」と、それぞれ割り振って動画を作っていました。

――そんなに細かくデータをまとめているとは、緻密な作業ですね……。

最初の頃はそもそもVRChat動画を定期的に投稿している人がほとんどいなくて、単発の「VRChatを始めるには」や「初心者おすすめのワールド」とか、初心者向けの動画は多かったです。自分はVRChat始めたばかりの人にも見てほしいけど、やっぱりVRChatやっている人が見ても楽しめる動画を作りたいっていう思いがあったんです。初心者のVRChatの始め方動画は初心者しか見なくて、継続的には見てもらえないなと思ったんです。

一度は心折れた人たちの復帰の場所としてのNAGiSA

――VRChat全体を見ても、新規の人たちが増えて、盛り上がっている印象があります。エンジンかずみさんはこの流れをみて、気になったことはありますか?

イベントでJOIN戦争(※人数制限のあるイベントに一斉に入ろうとすること。ひとつのワールドには人数制限があるため、倍率があがると当然厳しくなる)の起きるところが多くなったみたいな話はたまに聞きますね。元々そんなに人が来るようなところじゃなくても、JOIN戦争が起こっているそうです。

自分が「NAGiSA」にいるときにも「ずっとNAGiSAにしかいません」っていう人にも会うんですよ。それから、「NAGiSA」のユーザーで意外と多いのは、復帰した人たちです。「2年ぐらいVRChatをやっていなくて、今まで遊んでたフレンドとかコミュニティとのつながりも切れてしまった。、かと言ってすでにランクがTrusted(※VRChatのやり込みが表示されるシステムの最上位)まで上がってしまっているから気軽に話しかけられないし、かといって自分から話しかけに行くのは怖いし……」といった話を聞いたこともあります。「ここだったら自動で誰かとマッチングするから、こっちから話しかけに行かなくてもいいんだ」と知って、利用してもらっているようです。

――以前、エンジンかずみさんがスタンミさんと遭遇している生放送のアーカイブも見たんですが、あれは偶然なんですか?

狙って「スタンミさんと当たりたい」からと行って当たることはできないですね(笑)。運に任せるしかないシステムです。

――あのような奇跡のドラマを見られるのも「NAGiSA」のいいところですね。他のストリーマーさんもその奇跡に期待して、撮れ高を探している感じがします。

ただ、そこがちょっと、難しいところでもあるんですよ。1対1でコミュニケーションをとれる空間として提供したんですが、配信になると1対大勢の視聴者になるわけじゃないですか。となると配信していないユーザーの側は気軽に発言できなくなります。プライベートなことは生放送だったら特に言えないじゃないですか。

だから「『NAGiSA』での配信を禁止してほしい」っていう声もあるんですよね。僕もそれは理解できるんですけれども、一方で僕はYouTuberでもあるわけなんですよ。「じゃあ他の人は配信禁止だけど僕だけOK」とも言えない。「全員配信しちゃいけないし、動画も撮っちゃいけない」ってなると、先ほど話したような復帰したユーザーのための導線がなくなっちゃうんですよね。かといって配信OKの「NAGiSA」と配信NGの「NAGiSA」を分けたとしても、人が割れちゃうのでどっちか必ず枯れると思うんです。難しいなと考えているところです。

――NAGiSAに対して、ユーザーから「こうやってくれたら嬉しい」といった要望はありましたか?

結構ありましたね。会話デッキのカードが置いてあるんですが、「『NAGiSA』のワールドの海を釣り堀にして、釣り上げた魚に会話のためのテーマがついてるみたいなギミックを作ったら面白いんじゃないか」というのは配信中にコメントをもらったこともありました。

――面白い要素ですね! 会話に詰まっても楽しめる。

良いワールドって、ただ展示するよりも体験が大事だと思っているので、なるべく一緒に遊べるようなギミックを追加したいのですが、NAGiSAは1個オブジェクト追加するとなると、16部屋全部同じところにグローバルオブジェクトを追加しなければいけない(※2人の部屋が16個同時に動いている仕組みのため)。だから、通信量が重くなっちゃうんですよね。「NAGiSA」はシャッフルさせるために高速同期させているのですが、、それがズレる恐れがあります。そこのバランスを取れるかどうかが技術的な課題ですね。

――「この機能があってすごく良かった」というユーザーの声はありますか?

延長と退出ボタンの変更です。昔はユーザーが押したら即抜けという設定にしていたのですが、退室予約制になってよかったというのは言ってもらえました。

新しい体験は需要へのアイデアから生まれる

――VRChat公式メニューのワールド欄に「初めての人におすすめ」として「NAGiSA」が載っているのは快挙だと思いました。事前に公式から連絡などがあったのですか?

ないですよ(笑)。「NAGiSA」がリリースされたのって今年の6月だったと思うので、短期間で代表的な他のパブリックワールドと並ぶというのは、普通はないことなので「わぁ嬉しいな」とは思いましたね。人の集まる雑談系のパブリックの交流ワールドを今から起こして人を集めるのって死ぬほど難しいと思っていますし、既存のワールドの改良版ぐらいのクオリティじゃ全然ダメなので、(これから本格の交流ワールドを作るとすれば)根本的に新しい価値を提供できないといけないのかなと思っています。

――そういう意味では「NAGiSA」は今までなかった体験かもしれません。エンジンかずみさんの考える、“VRならではの体験”ってどのようなものですか?

たとえば「枝豆を持つとちゃんと豆が出る」みたいなことです。凝ったワールドでも展示だけのところでは、確かに一周して満足はするんですけど、見たあとすぐ退出しちゃゃうと思うんです。けれどもここにオリジナルのギミックがあって、手で触れて遊べたり、綺麗な写真を撮ってXに投稿できたり、みたいな体験こそ大事だと思っています。「NAGiSA」は1対1でお話しできる空間をシステムとして提供する、目に見えない体験を与えることを意識しています。あとはコンセプトですね。例えば「なでなでマッチング」などもそういう意味では体験です。人の奥底に隠れている需要とか願望みたいなものを見つけ出してワールドとして形に出すというのが、継続的に人に来てもらえる条件なのかなって思っています。

――「体験」には驚くようなアトラクションがなくてもいいんですね。

そうですね。綺麗なモデルが置いてあれば人が来ると勘違いしがちですが、そうじゃなくて、需要がどこにあるかのアイデアだと思います。個人的にそうしたアイデアをかたちにするのがうまいのがCHIHAYAさんですね。「FUJIYAMA」の作者の方ですが、他にも「なでなでマッチング」「VR睡眠マッチング」といったワールドも出しており、人の需要を見る才能があると思いますね。

――ありがとうございます。最後に、エンジンかずみさんの今後やってみたいことを教えて下さい。

最近は人の職業、仕事に興味があります。やっぱり今のVRChatでのインタビュー動画シリーズは、VRにちょっと興味ある人は見てくれるけど、興味のない人には届かないので、外側に導線を広げたいなと思っています。

この前は日本VRバーチャルリアリティ学会で講演の機会をいただいたり、今度も大学で公演する予定があります。そうやって外側にVRChat自体を知ってもらう活動を広げていきたいですね。

それから、作りたいワールドが何個かあります。NAGiSAが持っている課題を克服するようなワールドのアイデアがあるので、来年になると思うんですが、みんなをまた驚かせるようなワールドを作りたいですね。


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