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VR体験施設 2018.07.23

VR普及のカギを握る“施設型VR” その3つのポイント

VR/ARやゲーム市場のリサーチを手掛けるSuperData Researchは、今後のVRの普及に向けて、ロケーションベースVR(施設型VR)の重要性を「ロケーションベースVRは、3つの観点からVR普及のカギを握っている」と説明しています。

2018年の市場規模は2億ドル

空港のターミナルやショッピングモールなど、VRを体験するスペースが世界各地に登場しています。2018年には、ロケーションベースVRの売上は全世界で2億ドル(約220億円)にのぼると推計されています。これはVRゲームに次ぎ、VR産業では2番目の規模です。

一方、個人が自宅で楽しむVRについては、残念ながら順調に普及しているとは言いがたい状況です。2018年現在で稼働しているデバイスは約1,500万台。米国で保有されるTV台数の1億2,000万台という数字と比べると、明らかに見劣りしています。

このように、「一家に一台」ペースでVRが普及するにはまだ時間がかかると思われます。しかし、VR普及のためには、まずVRについて人々に知ってもらう必要があります。そして「VRとは何か?」を知るためには、体験するのが一番でしょう。自分でデバイスを揃えるまでもなく、ショッピングモールやVR体験施設に行けば、VRは簡単に体験することができます。

SuperData Researchは以下3つの理由から、ロケーションベースVRがVR普及のカギを握ると考えています。

アクセシビリティ(利用しやすさ)

第一に挙げられているのは「アクセシビリティ(利用しやすさ)」です。VRを体験できる場所は、ゲームセンターに限らず、映画館、ショッピングモールなど、様々な所に増えています。HPでロケーションベースVRを統括するJoanna Popper氏は次のように述べています。「ロケーションベースVRは、コンテンツを体験するのに最適な場所です。専門のスタッフも付いているので、スムーズな体験ができます」

また、VRを体験することによる効果は直接体験した人だけにとどまりません。VRを体験した人は、周りにそのことを話すでしょう。この「口コミ」がVRの普及に大きな効果をもたらします。米国のあるショッピングモールで提供したVRコンテンツでは、体験者の97%が「友人にも勧める」と回答しています。質の高いVR体験を誰もが利用しやすくすることで、多くの人がVRについて知るようになります。

3年で5倍の急成長

次に、その急速な成長が挙げられます。SuperData Researchの推計では、2021年にはロケーションベースVRの売上は10億ドル(約1,120億円)近くまで拡大するとされており、2018年現在の2億ドルに比べると、およそ5倍の市場規模となります。

この急成長に貢献しているのは、VR専門の体験施設だけではありません。例えばVRヘッドセット「HTC Vive」のプロダクトおよびオペレーションを担当するVinay Narayan氏は、全米110以上の店舗でVRアトラクション「Jurassic World VR Expedition」を提供する複合チェーン、Dave & Buster’sの影響力を指摘しています。このサービスでは、多くの人へ、大規模にVR体験を届けることが可能です。

VRゲームを導入した従来のゲームセンターの寄与もあります。VRコンテンツを探しているわけではない人が、ゲームをプレイしに訪れ、偶然VRに出会う機会を作る、というわけです。

収益性

最後に、ロケーションベースVRの運営により収益を上げられるという点が挙げられます。どのような施設にするかにもよりますが、PC向けVRヘッドセットを数台とハイエンドPCを揃え、管理用の設備を整えるだけならば投資は必要ありません。

ただし継続して利益を上げるためには、来客が途切れないことが必要です。ここで重要になるのが「アクセシビリティ」です。ショッピングモールなど、常時人が訪れる場所に設置するのがポイントとなります。

また、著名なIPを使用した作品であることも、収益に直結します。例えばThe VOIDが提供する「ゴーストバスターズ」のアトラクションは、観客を呼び込むのに非常に有効です。さらに「複数人で楽しめる」コンテンツであれば完璧と言えるでしょう。

これに対し、家庭用のVRコンテンツはマネタイズが課題となっています。まだVRゲームへの課金システムは一般的でないため、継続して収益を得るには限界があります。解決策として、家庭用のコンテンツの売上が停滞してきた時点でロケーションベースVRにライセンス供与し、アーケードゲームで収益を上げる、という戦略も考えられます。

今VRに必要なのは「認知」されること

総括すると、2018年現在のVRに一番不足しているものは「認知」です。人々がVRの存在を知るだけでなく、実際に体験し、VRがどのようなものか実感することが必要になってきます。

その影響力はエンターテイメント分野だけではありません。現在、エンタープライズ向けVRには46億ドル(約5,170億円)が投資されていると言われています。VR技術について人々が知れば、ビジネスへの応用もさらに進むでしょう。

このようにロケーションベースVRは、世界の人々へVRの真の力を知らせるために、重要な位置を占めるものです。もちろん全てのロケーションベースVRの運営が成功しているとは言えません。しかし、VRの普及を進めるために、魅力的なVR体験を提供し続けることが必要だと、SuperData Researchは締めくくっています。

(参考)SuperData Research


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