ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」にて、京セラ株式会社の公式ワールド「Kyocera Fine Ceramics World」が8月21日にオープンしました。
ファインセラミックスや半導体部品、通信やエネルギーといったさまざまな事業を展開する、京セラ株式会社。2022年にオープンした展示会ワールド「Kyocera Tool World」を皮切りに、レーザー技術を紹介する「Kyocera Laser World」、高耐久スマートフォンの活用例を体験できる「Kyocera Mobile World」を次々に公開。半年に1回のペースで新たなワールドを発表してきました。
そんな京セラが今回、新たにオープンした「Kyocera Fine Ceramics World」は、その名の通り「ファインセラミックス」について学べるワールド。同社の基幹事業をテーマにしたワールドということもあり、今まで以上に気合の入った内容となっています。
本記事では、そのオープンに先立って行われたプレスツアーの様子をレポートします。単なる展示会ワールドではなく、展示物をさわって体感できる博物館のようでもあり、リアルでは難しい工場見学のような楽しみ方もできる、魅力的なツアーとなりました。
これまでの京セラのワールドにアクセスできる!新たにオープンしたポータルワールド
今回のプレスツアーの集合場所は、こちらも新たにオープンするワールド「Kyocera World Portal」。
その名の通り、京セラがこれまでに公開したワールドへアクセスできるポータルを設置したポータルワールドです。京都府京田辺市の甘南備山(かんなびやま)をモチーフにした緑豊かなワールドで、展望台や神社、池などもあり、散策も楽しめそうな空間となっています。
プレスツアーは、京セラの担当者による挨拶からスタート。デジタルビジネス推進本部で本部長を務める土器手亘(どきてわたる)氏からは、京セラのメタバース施策についての話がありました。
「京セラではいろいろな部品や製品を作っていますが、それらを直接お客様にアピールするよりも、『その部品や製品によって、どのような世界を目指したいか』をお伝えすることが重要だと考えております。その世界観を体感いただくための手段として、このメタバースやVRChatが非常に有効なのではないかと。企業としても、そんなメタバースの可能性を追求するべく、引き続きいろいろなワールドを構築していきたいと思っております」
ファインセラミック事業本部事業推進部の責任者・髙木浩次朗(たかぎこうじろう)氏は、「セラミック博士ロボ」として、ツアー本編でもガイドを担当してくれました。
楽しみながらファインセラミックスについて学べるワールド
ここからは、いよいよツアーがスタート。ポータルに入って「Kyocera Fine Ceramics World」へ到着すると、大きなビルが目に入ります。こちらは京都市伏見区の京セラ本社をモチーフにしており、髙木氏によれば「社員でも見間違えるほど」の再現度なのだそう。
正面玄関からぞろぞろと屋内に入った先は、エントランスホール。
このワールドでは、順路に沿って建物の中を巡ることで、ファインセラミックスの基礎と歴史、そして京セラのファインセラミック技術を知ることができます。ところどころにクイズが出題されるゲートがあるので、しっかりと解説を読み、学びながら全問正解を目指しましょう。
「基礎・歴史・特性」のエリアでは、ファインセラミックスの歴史と特性を、金属などの従来の素材と比較しながら学ぶことができます。
展示物には、特殊な環境下で使われる専門的な部品なども含みますが、決して難解ではありません。「そもそも、それはどういうものなのか」を説明する看板もあるので、順を追って理解を深めることができます。
展示の中には、実際に手で「さわる」ことのできるものもあり、現実の博物館さながらの体験が可能。それどころか、リアルではためらわれるような、あるいはそもそも近寄れないような至近距離で眺められるのも、VRならではの魅力だと言えるでしょう。
ツアー参加者たちのあいだでも、スタッフから促されるままに展示物へと近寄り、触れて、時には感嘆の声をあげながら、展示を楽しむ光景が見られていました。
「用途」のエリアでは、ファインセラミックスの活用事例を紹介。私たちの生活にも身近な水栓用のバルブのほか、アルミの鋳造工程で使われている撹拌部品や、半導体の製造ラインを支えるロボットアームなどが展示されています。
その先の広い空間は、「製造工程」のエリア。ファインセラミックスがどのように製造されているのか、その工程を学べます。
気分はまるで工場見学ですが、髙木さんによると、現実世界の工場は「ものづくり」の基幹となる空間であり、メーカーにとっては心臓部とも言える場所。メディアも含め、基本的には関係者以外が立ち入ることはできません。しかしバーチャルなら、そんな門外不出の空間を再現し、外部に向けて公開して、広く体験してもらうことができる。それもメタバースの魅力の1つであると話していました。
これまでとは雰囲気の違う、壁が全面ディスプレイになっている廊下を進み、クイズゲートを抜けると、「極限世界」に到着。深海から宇宙まで、さまざまな極限状態の環境下で活躍しているファインセラミックスを、間近で見ることができます。
ファインセラミックスが使われているのは、マリアナ海溝の11,000m級の深海でも耐えられる海底地震計の耐圧容器や、すばる望遠鏡のカメラのレンズを支えるパーツ、国際宇宙ステーション(ISS)から光通信を行うために使われている部品など。
月面の空間では、ニュースで見覚えのある人も多いだろう小型月着陸実証機「SLIM」が展示されています。このメインエンジンのスラスター部品に、京セラ製の窒化ケイ素セラミックスが使われているのだそうです。
また、浮かんでいるこちらのSLIMの3Dモデルは、JAXAのデータを使って再現しているとのこと。簡易3DモデルはSLIMプロジェクトのサイトでもダウンロードできますが、VR空間で実物大のものを見る機会はそうそうないのではないでしょうか。京セラにとっても意義深いプロジェクトだったそうで、注目の展示の1つだと言えそうです。
最後のクイズゲートを抜けると、展示エリアは終了。ここでファインセラミックス検定の結果が出ます。認定レベルは4段階あり、全問正解で「博士」の称号をもらえるとのこと。日替わりで出題内容も変わるそうなので、ぜひ何度も挑戦してみてください。
これからも続いていく、京セラのメタバース施策
冒頭にも書いたように、京セラがVRChat上でワールドを公開するのは今回が初めてではありません。
2022年には、切削工具などの展示や、高能率加工によるカーボンニュートラルへの取り組みを紹介する展示会ワールド「Kyocera Tool World」をオープン。翌2023年には、レーザー技術を紹介する「Kyocera Laser World」を、2024年1月には、高耐久スマートフォンの活用例を体験する「Kyocera Mobile World」をそれぞれ公開しています。
今回新たにオープンした「Kyocera Fine Ceramics World」はこれらに続く4つ目の京セラのワールドとなりますが、これまでの「集大成」と言ってしまっても良さそうな内容でした。
特に今回は、京セラの基幹事業であるセラミックがテーマということもあってか、ワールド自体もこれまで以上に気合が入っている印象を受けます。内容もボリューミーで見ごたえがあるだけでなく、個々の展示物の造形や、バーチャルならではの見せ方にも注力した、より洗練された展示会ワールドとなっていました。
すっかり恒例になりつつある京セラのメタバース施策ですが、このように、「自社の取り組みを伝える展示会ワールド」を継続して公開しているケースは、そこまで多くはありません。
企業によるメタバース施策の多くが単発で終わってしまうなかで、半年に1回のペースで新しいコンテンツを発表し続けている。そんな京セラの取り組みからは、メタバース上でのコンテンツの見せ方や、自社の取り組みの伝え方、ユーザーを巻き込んだ企画の考え方など、学べることも多いのではないでしょうか。そのうえで、新たにポータルワールドも作成し、引き続きメタバース施策に取り組んでいくことを表明した京セラの今後にも注目です。
21日にオープンした「Kyocera Fine Ceramics World」では、今回もこれまでと同様にガイドツアーが実施されます。8月21日〜23日にかけての3日間、毎日3回の日程で、誰でも参加できるツアーイベント。
企業のメタバース活用に興味がある人はもちろん、VRChatを始めて間もない人でも参加しやすいイベントかと思いますので、気になる方は参加してみてはいかがでしょうか。
ワールドはこちら
Kyocera World Portal / 京セラ
https://vrchat.com/home/world/wrld_69f4d08d-e94d-4fe3-8f4a-d4a7c3707e7a
Kyocera Fine Ceramics World / 京セラ
https://vrchat.com/home/world/wrld_a61c5bb6-946a-42ca-a115-3200757aec47
ガイド付き一般ツアーイベントについて
- 開催期間:2024年8月21日(水) 〜 23日(金)
- 開始時間:20:00 / 21:00 / 22:00(約50分)
- プラットフォーム :VRChat
- 参加方法 :VRChatID「kyocera1」にフレンド申請してJoin(Friend+開催)
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